ToLOVEる - FIRE GENERATION - 作:改造ハムスター
てれってーー
………………
どうも、アッシュです。
ただいま、誰もいない部屋で、10年前の特撮番組を流してます。
『なんでもかんでも
燃やして解決っ!』
「……解決してねぇだろ、バーカ」
私はテレビのヒロインに向かって、リモコンを投げつけた。
「放火の刑罰が、何かわかってんのかよ」
ああ、
ザック……
あの日、彩南高が全焼した。
3日で建ったけどね。そして全員軽傷。そんな世界です 笑
でもザックは、日本の監獄にいる。
あの後どっかから、すごく優しくて、綺麗な、光の雨が 降ってきて、火はおさまった。気を失ったザックは警察に連れていかれた。私も、兵士も、警察も、「お友達」たちも、最後まで、誰もザックを止められなかった。
あの雨はなんだったんだろう。デビルークがあんなこと出来るはずがない。なんだか温かくて、少し懐かしい気がしたな……。
でも、ザックがやったことは変わらない
いや、
あれはザックなんかじゃなかった
『アッシュは
俺のものだ!!』
(アイツがあんなこと、言うわけないもんな……)
わかってるんだ。
アイツの胸には、私じゃない、忘れられない人が生きている。
ザックみたいに過酷な世界を生きてきた人に、私みたいな温室育ちが、釣り合うわけない。
ずっと気づいてた筈なのに、家出までして……
やっぱりなにも変わらなかった。
「馬鹿だな、あたし……」
トントントン
ガチャ
「……アシュラ様」
「アーサー、おはよう。傷は治ったのか?」
「はい、おかげさまで大分……」
「そうか、そりゃよかった」
「マスクをお持ちしました」
「ああ、そうだったな。お前にいらなくなったから、忘れてたよ」
私は忌々しいマスクをつけた。すでに制服に着替えている。手続き上入学してるから、なんか登校しなきゃいけない。面白くもない。
「アシュラ様」
「ん?」
玄関に立った私を、忠臣が真っ直ぐ見つめる。
「私がこのようにあなたを見ることが出来たのも、全てザク郎殿のおかげです」
「……そうか」
「私は、私は諦めません。ザク郎殿は、必ず……アシュラ様の」
「もういいよ、アーサー」
私は制服姿のアーサーに言った。今は彼も、私の「先輩」だ。学校では会わないようにしてる。こいつに敬語で喋ってたら吹き出しそうになるから。そうでなくても敬語なんてわからないのに。
「お前は剣なんか捨てて、自分の好きなことやれよ」
「アシュラ様……」
「あ、でも、
次、私と智子ネタにしたエロ漫画描いたら殺すから」
「うえーーん、同人s」
ドガアァッ
ドアに挟まった変態の顔を無視して、私は学校へ向かった。朝飯にダークマター入れてやったこと、後悔しなくてよさそうだ。
ただ描くだけならともかく、あいつコミックマーケットで売ってたからな。信じられねぇ。
あんな本が売れるなんて、この国の法はどうなってんだよ、まったく。
(……どうせ描くなら、私とザックにしろよな)
「おはよう!アッシュ」
馬鹿なことを考えてる間に、友人たちに囲まれていた。
「おお……相変わらずお美しい!」
「皆の衆に見せられないのが、もったいないすなぁ〜」
「いいから離れろよ、うっとうしい」
妻村と指野。こいつらだけじゃなく、季虎や龍ともちょっと仲良くなれた。みんな、素顔を見せられる希少な男子だ。皮肉なことだけど、ザックの一件以来、私はこの惑星に馴染んできている。
「きいたかアッシュ、また転校生が来るってよ」
「ふーん」
「なんだよ、全然興味なさそうだな」
「すっげぇイケメンらしいよ」
「……そんなもん、ザックに比べたら大したことねぇだろ」
「熱いっすねぇ!」
「俺らも応援してるぜ!」
「ていうか、あいつもさっさと脱獄してこいよ。あいつなら余裕だろ」
妻村が明るく言う。
「はは……」
だが指野は、空虚な笑いを漏らしただけだった。
さすが情報屋。知ってるんだ。
危険星人種隔離獄連。
抜け出せた者は、過去にはいない。
そして、囚人はみんな…………
「……先、行ってて。
ちょっと忘れ物したから」
「あ、ああ。
んじゃ、後でな」
私は2人と別れて、河川敷に下りた。
ー河川敷ー
いい場所だ
ここでは、いろんなことがあったらしい。
ママが、パパにプロポーズしたのも、このあたりじゃなかったかな
…………
そんなことしなきゃよかったのに。
「ガッコ、行くか」
道に戻った時だった。
「ごめんね、ちょっといいかな?」
甘ったるい男の声に振り返る。
「僕、こういう者なんだけど……」
男はそう言って、名刺(っていうの?)を出してきた。
『キラキラ芸能』
(……知ってる)
「君、アイドルとか興味ない?」
マスクをしている私に、男はそんなことを言ってきた。
「……なに考えてんだよ、あんた。私顔隠してんじゃねぇか」
「いやいや、分かるよ〜、溢れ出るオーラ!超売れっ子で顔隠してる子もいるし、君なら絶対人気出るよ。どうかな」
うさんくさい。
「興味ねぇよ。帰ってくれ」
「残念だなぁ、気が変わったらいつでも来てね」
「そん時はもっと気を付けろよ。地球人の瞳孔は1つだけだ。
この異星人め」
「ッ……」
「弟たちによろしく」
微かな殺気を背に受けながら、私は足早に学校へ向かった。
ー教室ー
「ラしゃん……アシュラしゃん」
ん?
「大丈夫でしゅかぁ……」
あぁ、もう朝礼か。
いや、あんたの方こそ大丈夫かと問いたくなるような骨川先生の声で、私は目を覚ました。
「えーー今日も転校生を紹介します」
そういえばそんなこと言ってましたね。
「ホーレン君、入りなさい」
ん、ホーレン?
どっかで聞いたような……。
ガラガラッ
ホーレン君
そんな名前に反して教室に入ってきたのは、
エメラルドグリーンの髪をした美少女だった。
「どうもーーっ!みんな大好き、ホリー・エルシ・ジュエリアこと、☆Holly☆でーすっ!」
髪を揺らして、そいつは大げさにお辞儀した。
「ホリーちゃん!!」
そう叫んで、クラスの男子がいっせいに立ち上がる。
「あ、あれぇ、ホーレン君?だ、男子だったはずてわ」
「骨川先生、やっぱりもう退職されたほうが……」
「うっそだろ!おい実、ガセ流してんじゃねぇよー」
「おかしいな、俺の情報に間違いなど」
「どうして彩南に来たの?ホリーちゃん!」
「お仕事大変!?」
「後で写メとらせてよ」
「やめろ!ホリーさんが困ってるだろ!」
「朝礼中に騒ぐんじゃねえ、ぶっ殺すぞ!!」
なんなんだこいつら笑
でも、盛り上がるのはわかる。
彼女は地球でいう大人気アイドルだ。
そして、こいつの正体はメモルゼ星人。
それだけならいいけど……
「で、でわホリーしゃん、あそこの席に」
「あ、私、ザッくんの隣がいいなーー」
ピキーーーンン…………
「ってゆーか、そこじゃなきゃダメ、って感じ?えへへ」
ホリーの発言に、教室の空気が凍りつく。
あーあ。
「え、えーーと、結城君なら」
「パクられたよ」
私は骨川先生の代わりに、この顔見知りに言ってやった。
「ぶってねぇで、さっさと奥の席に座んな」
「はぁ?なにあんたその言い方!ホリーちゃんに失礼でしょ」
「そーだよてめぇ、マスクで顔隠してるくせに、嫉妬してんじゃねぇよ。どうせブスなんだろ!」
「うぅ、ホリーちゃん、ザックなんかのこと……」
「おいお前ら、アシュラさんに言い過ぎだよ!」
「……ボソッ(今アッシュのこと貶した奴、許さねぇっ)
……」
「やめなよ」
智子の一声で、教室が静まった。
「アッシュ、ホリーちゃんと友達なの?」
智子が私に、冷静に問いかける。
私は黙ったまま、ホリーを睨んだ。
「うん!大 親 友 なの! 猿山さんもよろしくね」
ホリーが満面の笑みで答える。
「じゃあホリーしゃんはとりあえず、アシュラしゃんの隣……結城君の席に。
では、授業を始めましゅ。えー黄金の精神とは……」
クラスメートの視線が集まる中、ホリーが私の隣に座った。
「……可愛いマスクだね」
にたつきながら、ホリーはそう言った。
一言も頭に入らないまま、授業が終わる。
ホリーの人だかりを確認して、私はそっと立ち上がった。
だが、奴は見逃さなかった。
「あ、みんなごめんね!ちょっとアシュラちゃんと話してくる」
皆んなの前で、ホリーが腕を絡めてくる。
「トイレ行こっ」
「便所ぐらい1人で行きやがれ」
「いいじゃん」
廊下に出る。人通りがなくなるやいなや、ホリーはスカートから、手榴弾の様なモノを取り出し、私に見せつけてきた。
「着衣消滅ガス。銀河通販で買っちゃった。
ねぇアシュラちゃん、今から私の言うことに答えなかったら、コイツを使っちゃうよ。
私は逃げれるけど……マスクが消えたアシュラちゃんは、どうなるかなぁ?」
「やってみろ。女子更衣室のど真ん中でコショウぶっかけてやる」
こいつは、くしゃみをすると「男」になる。二重人格とかじゃない、独立した全くの別人にだ。
こいつはそのことを隠して、地球でアイドル活動をしてるはず。こんなとこでそれがバレたら、こいつのアイドル生命の危機だ。
だから、私の「チャームの能力」に見合う脅しだと思ってた。
だがホリーは、誇らしげに笑って言った。
「残念でしたーー!
もう分離してまーーすっ」
えっ
「昨日入学手続き終わった直後に、第三次成長が来たの!てへっ」
私は、焦りを抑えきれなかった。
こいつが、もう男にならない……
こいつの弱みは、もう無くなったの……?
「アシュラちゃん、焦ってるでしょ?」
鬼の首を取ったような顔で、アイドルが覗き込んで来る。
「性格悪過ぎー。私のハンデに安心して、ザッくんにアピールするなんて。
でも、もう終わりだよ。私はもう、男子と入れ替わったりはしない。
ねぇ、ザッくんはどこにいるの?答えなさいよ、
アシュラ」
声を低め、ホリーが本題に入る。
「あいつならもういない」
私は動揺しながら、本当のことを答えた。
「え?」
「……私を護って、地球の警察に捕まった」
嫌味をいったつもりじゃない。こいつがどう思うかは勝手だけど。
「……あんた、ほんとにサイテー」
ホリーが私を突き放し、睨みつける。少しだけ低い目線から、威圧をこめて。
「いいこと教えてあげる。「かわいすぎる」お姫さま。
あなたは一生、王子さまを幸せには出来ないわ」
……ッ!
私はただ、拳を握ることしか出来なかった。
「「普通にかわいい」私なら、いくらでもザッくんを幸せにできる。アイドルとして、ザッくんの好きな地球でお仕事も出来る。
でもあんたは?顔を隠して、しかも危険な婚約者候補たちを抱えたまま、何が出来るの?害しかないじゃん。何か言ってみなさいよ」
…………
「アシュラちゃん昔からそうだったもん。迷惑しかかけてこなかった。地球でも一緒だよ」
…………
「ザッくんのことが本当に好きなら、さっさとデビルークに帰って。
これ以上、私たちに迷惑かけないで」
黄緑の髪を揺らし、ホリーが踵を返す。
上履きの音が遠ざかるまで、私は俯いていた。
初めて、マスクと、長い髪に感謝した。
だって今の私は
「泣いてるの?」
背後の声に振り返る。
「智子……」
「ご飯たべよ?私も泣きたいから」
弁当箱を上げた智子が、優しく笑った。
ー屋上ー
「……でね、私あの時、変な宇宙人に脅されて、言いなりになってたの」
「放送室で?」
「うん……だから、あんな嘘言わされて、アッシュやザックたちを危ない目に合わせちゃった……」
「智子は大丈夫だったのか?」
「うん、多分。でも、凄く怖かった。心の底まで、あの冷たい、銀色の手で、鷲掴みにされたみたいに……
ごめんね、私。弱くて」
「何言ってんだよ……」
猿山 智子
私たちの、もう一人のクラス委員だ。
いつも明るく振舞っているが、本当は凄く繊細で、人の本当の人格とか、隠した気持ちを見抜く力がある。面倒見もいい。(ちょっと私に似てるかな? なんてな)
そんなクラス一の人気者が、私を「親友」だと言ってくれる。これははぐれ者の私にとって、大きな救いだ。
そして……
「こんなんじゃ、まだまだ季虎に振り向いてもらえないかなぁーっ!」
1番好きな人には振り向かれないところも、似てる。
チラッと、私をみる。
「アッシュは、
まだ、ザックのこと好き?」
「え!?
あ、うん」
「よかったぁー」
智子が両手を上げて、屋上の床に寝そべる。手に持った空の弁当箱に、太陽が反射する。
「じゃあ、まだ負けらんないね」
西連寺 季虎。
あいつが、私のことを……
あんなにでかい騒動が起こったんだ。流石に私も、あいつの気持ちに気づいている。
そんな、恋敵とも言える私を、智子は慰めてくれるんだ。
「みんな、強いな……」
「みんな?」
「智子も、ホリーも、西連寺も。私の周りは、諦めない奴ばっかりだ」
「ホリー?
さっき、喧嘩してたみたいだけど」
「大したことじゃねぇよ。あいつはああやって、いっつもつっかかってくんだ。ザックのことで」
「強がり!アッシュ泣かされてたじゃん」
「あっ、智子のいじわるっ!誰にも言うんじゃねぇぞ」
転げて笑いあう。ドアが開き、清掃のおばさんが通りすぎる。私たちは声を潜めた。
「あいつ……ホリーとは腐れ縁でさ。
確かに嫌な奴だけど、むちゃくちゃ根性あるんだ」
「根性?」
「あいつも、私の腹違いの妹で、別の星の王女やってんだけど、
ちょっと前まで、別人と入れ替わる体質で」
「ええ!」
「しかも男」
「えええ!?」
「びっくりだろ? 」
「う、宇宙って……」
「今はもう「分離した」らしいけどな」
ハンパない。智子は両手で口を覆い、仰け反った。
「それで、あいつ、ちょっとうちのデビルーク星で暮らしてた時期があったんだけど、そんな身体だし、男の方も女っぽい性格だったから、けっこうからかわれてたんだ。うちの星、けっこう体育会系だしさ。友達は……私くらいだったかな。
だから私が、いっつも泣きついてくるホリーとか、ホーレン、男の方ね、王宮に連れ込んで、いっしょに遊んでた。
でも……」
「でも?」
「ホリーが、その……
ザックに、一目惚れしちゃって」
「お、おーー」
展開を楽しむように、智子が目を見開く。
「あの人は誰!?って私に聞いてきて、私は、
『え?私の王子さま!』
って答えたんだけど、それが許せなかったみたいで……
もう、それっきり」
私は両手を上げた。
「それからはもう、事あるごとに、私とザックの邪魔してきて、大変だった。私がザックにかけた迷惑も、半分くらいはあいつのせい、うん。
私が我慢してなかったら、デビルーク対メモルゼで戦争になってたよ!多分」
「ち、地球ではやめてね」
智子が、冗談ともつかない口調で懇願してくる。私は話を続けた。
「それで、ザックがいなくなってから、どこで知ったのか、あいつ、私より先に、ザックが地球にいるって突き止めたんだ。
『私、地球でアイドルになってやる!そしてザックを振り向かせてみせる!』って言ってきたから、『勝手にしろよ』って言ってやったんだけど、そのときは私もけっこうホリーに酷いことされてたし、他にも色々病んでたから、内心、そんな身体のくせに、アイドルなんて出来っかよ、って、思ってた。
このざまだ。今やあいつは売れっ子。私は……ザックにも、みんなにも、迷惑かけてばっかり。
負け犬だ」
「負け犬って……」
智子が、不思議そうに首を傾げる。
「ザックは、ホリーちゃんが好きなの?」
「いや、それはない、
はず」
私は首を振った。
「じゃあ、まだ負けてないじゃん」
「でも、私でもなくて……」
智子が立ち上がり、どもる私の肩に手をのせる。
「アッシュも、負けらんないねっ」
それだけ言って、智子は屋上の階段を下りていった。
そうだ。
智子だって、辛いんだよな。
中学生の時から、ずっと季虎が好きで、やっと同じクラスになれたと思ったら、急に私が来て、季虎は私のことを……
でも智子は、私の前でも胸を張ってる。
ホリーの前で、黙り込んじゃった私とは違うんだ。
(ありがとう。智子)
ちょっと勇気が湧いてきた。
ザックが処分を受けるまで、まだ時間がある。
デビルークの権力は大きい。ザックを殺せと命じられれば、地球の代表は逆らえない。
当然、王女の私の頼みなんて聞かれないだろう。
なら、
出来ることは一つ。
私の持つ「武器」を、奴らにちらつかせるだけだ。
立ち上がる。
遠くに見える、温泉の煙突。その上で、
かすかに、
金色の髪がなびいた。
(え!?)
目をこすり、もう一度見る。だがそこには、ただ青い空が広がるだけだ。
(……まさかね)
屋上の柵に近づき、一気によじ登る。
「よし」
ダンッ
青空に、身体を投げ出す。
「ぺケ!」
バッ
半重量ウィングが背中から飛び出し、私の身体は、地平線と並行になった。
ホリーの言う通りだ。
私は、迷惑ばかりかけてきた。
きっと、これからも。
だって、存在事態が迷惑なんだから 笑。
だから、
出来るだけ大人しく生きていきます。
でも、
好きな人だけは、
どんな手使ってでも、助け出してみせる。
みんな、覚悟しとけよ。
地球も、デビルークも、
ザック一人に、責任押しつけやがって。
全員巻き込んで、暴れてやる!!
ーキラキラ芸能 事務所ー
「失礼しまーす」
ドアを叩く。
「どうぞ」
通された部屋には、ホスト風の男と、いかつい男が2人。それと、怪訝な顔で私を見る、朝会った異性人のスカウトマン。
「えー、お嬢さんは?」
いかつい男が私に質問する。
「彩南高校から来ました」
「ああ、あの可愛い娘がいっぱいいる」
「でも、マスクされてちゃわかんないなぁ〜 笑」
何しに来た? そう言いたげに、スカウトマンが私を睨む。
「で、どうしたの?」
ホスト風の男が尋ねる。
私はマスクの裏で、とびっきりの笑顔を作って言った。
「アイドルになりたいんですけど」
to be continued