ボクの旅路に幸あれ!……無理か。   作:隔離場

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再会

 キャベツ狩りの次の日。

 

 今日はカズマ君(リーダー的存在)が心身ともに疲労状態にあるから、という理由でパーティーでの行動はお休み。

 みんなも好きに行動してるみたいだから、ボクも街の散歩でもしようかな。

 

 

 

 そういえば。と、この世界の宗教について歩きながら考える。アクアと初めて会ったときに「ボクは特定の神を信仰しない」って言ったけど、神が実体を持って地上に降臨しているなら話は別だよ。

 

 ボクが日本で神を信仰しなかったのは、どれだけ神に祈っても反応するのは邪神だけだったからだよ。特に、うちの事務所はそういう事件が多かったなぁ……。

 

 じゃなかった。えっと、どうやらこの世界では三つの宗教が盛んみたいだね。確か『アクシズ教』、『エリス教』、『インテ教』だったかな?

 『エリス教』は女神 エリスを御神体として崇める宗教で、国教にも指定されているからこの世界では一番勢力が大きい宗教だね。

 『アクシズ教』はどの地域でも「見るな聞くな触るな近づくな関わるな」が徹底されているようで、魔王軍ですらドン引きするくらいの悪行を働いているそうな。

 『インテ教』は一番勢力が小さいけど、一番戦闘力が高いらしい。あと、インテってボクがあった女神さんと特徴が一致してたよ。

 

 この中でどこかの宗派に入れって脅されたら『インテ教』に入ろうかな。『アクシズ教』は論外だけど。

 

 

 それはそうと、前の一週間のお休みの時は円状の街の北側半分を。今は街の南側を散策しているんだけど、南側の方が面白そうなお店が多いんだね。

 

 武具店『ブァッフェ』は北側にあったけど、他のお店で面白そうなのは少なかったなぁ……。なんでだろ?

 

 それで、ボクが一番面白そうと思ったお店は、街の隅の方にポツンと立っている『ウィズ魔法店』、かな。特徴的なのは、男性冒険者さんたちがお店に入らずに遠巻きから見守ってること。

 

 魔法店って響きがボクは好きだね。ボクも一応魔法具(マジックアイテム)持ってるけど、早馬ちゃん時々いうこと聞いてくれないし。ある程度役に立てばいいから、何かないかなぁ……。

 

 

◇◆◇

 

 

 街中をぐるっと一周して、なんとなくボクが最初に来たところ。商店街の一角まで戻ってきたよ。この街、端から端まで行くのがかなり長い……。ボクが本気で走って、ステータスとかを活用しながら移動したら少ない時間で往復はできるだろうけど、普通の散歩だからね!街にクレーター作りながら進んだら、何言われるか……ん?

 

 商店街の路地の近く、人だかりができてるね。何かあったのかな?そこまで小走りで行って、野次馬の後ろの方にいたお兄さんに声をかけてみる。

 

「ねぇねぇ、どうしてここに人だかりができてるの?」

 

「ん?何だ嬢ちゃん、今来たのか?」

 

「うん。さっきまで散歩してたからよく知らない」

 

 お兄さんは何かを考えるように顎に手を当てつつ、言葉を続ける。

 

「うーん。俺も教えてやりたいんだけど、どんな状況かいまいちよくわかんないんだよなぁ……」

 

「というと?」

 

「なんか馬鹿でかい本を持った女の子がいつの間にかそこの路地に立ってたっつーのは聞いたんだけど、その女の子が急に泣き出してな?なんとか泣き止むまで慰めることはしたんだけどそこでこう……小動物みたいに震えだして、どうすればいいか分からないんだよな」

 

「なるほど……ボクちょっと手伝ってきますね」

 

 お兄さんにお礼を言いつつ人混みをかき分けて進むと、とても見覚えのある人物が涙目になってプルプル震えてるのが見えた。

 

 小学5~6年生くらいの身長。茶色い髪に黒い瞳。自分が好きな色である青色の服を着た一見少女にしか見えない人物。極度の人見知りで、初対面の人物とは面と向かって話せず積極的に声をかけていく人が一緒にいると失神してしまう子。

 

 彼女を何とか落ち着かせようとしている厳ついお爺さんを見て、さらに怖がっているみたい。

 

「……速水(はやみ)(いつき)ちゃん?」

 

 彼女……樹ちゃんはなんて言おうか……気弱で筋力、体力、精神力の面では気の毒になるほど脆い子で、昔ボクが持ってた10キロの鉄アレイを両手に持つことすらままならないほど貧弱だ。

 

 樹ちゃんは見てるこっちが痛々しい気分になるほど不安げな表情で顔を上げ……ボクを確認して花が咲いたような笑顔を向けてきた。

 

 とりあえず、樹ちゃんはスルーしてこの人だかりにこの子が自分の知り合いであること、この子が人見知りの究極体のような人物であること、後は自分が何とかするので任せてほしいことを伝えると、皆口々に「あーよかった」みたいなことを言いながらそれぞれの仕事に戻って行ってくれたみたい。ここの街の人はやさしいなぁ…。

 

 ボクが樹ちゃんの方に振り返りながら「久しぶり」を言いつつ手を差し出すと、同じく「お久しぶりです」と手を取って立ち上がった。

 

 それにしても、樹ちゃんもこの世界に来たんだね。……もしかして、事務所に何かあったのかな……?樹ちゃんは皆から可愛がられてたから、真っ先に守られると思ったんだけど。

 

「さて樹ちゃん。ボクとしても最近の事務所のみんなの様子とかどうしてこの世界に来ることになったのとか、いろいろ聞きたいことはあるんだけどまずは普通に座って話せるところに行こうか」

 

「は、はいっ」

 

 そういえばもうお昼時かぁ……。ご飯食べれて、座って話ができるところ……。

 

 

◇◆◇

 

 やっぱここだね。ギルド。

 

 えっ?何人見知りを人の多いところに連れてきてるんだって?……やべっ……。

 

「よし、ここなら落ち着け……はしないだろうけどご飯食べながらお話ができるよ!」

 

「はぁ……」

 

 

 

 

 

 食事を注文しながら、樹ちゃんと事務所の近況について話してみた。どうも、ボクが死んでから皆がピリピリし始めて事務所の最古参メンバーの目が怖くなったとか、ボクの死因は駅のホームから足を滑らせたことによる事故死になってるとか、いろいろ聞いた。

 

 ちなみに食事の内容はボクがカエルの竜田揚げ、樹ちゃんが野菜スティックだったんだけど、くねくね逃げ回る野菜を捕まえるのに悪戦苦闘してた。「一度驚かせるといいよ」と伝えると、「?」って疑問符を浮かべられたけどこの世界の常識であることを加えて伝えると、納得いかないといった顔をしながらネコだましをしてから食べて、目を見開いてた。分かる、おいしいよね。

 

 

 ここで、樹ちゃんが転移してきたってことは、特典みたいなのも貰ったの?って話になった。

 

「それで、この本が特典なの?」

 

「はい。おそらくですが」

 

 まだ本は開いてないから内容は分からないんだよね。この様子だと樹ちゃんも中身は見てないみたいだし。

 

「ちなみに、何を要求したの?」

 

「えっと、私は女神様?にランク3だから特典を3つ選択出来るって言われたので、『絵柄に対応した能力が使えるタロットカード』、『全てのSCP』、『SCPを隔離、収容、保護できる持ち運び可能なSCP』を要求しました」

「は?」

「え?」

「は?(食い気味)」

 

 ……どうやら、久しぶりに出会ったこの友人はとんでもないものを持ち込んできやがったようです。

 

「よし、樹ちゃん。ボクは何でSCPを特典に選んでしまったのとか、何考えてるんだとか言いたいことはあるけど、とりあえずSCPのうち、Keterを使用する時だけでいいから、必ずボクに相談すること。これさえ守ってくれたら一先ずいうことは無いから」

 

「え、でも……」

「いいかな?」

「あの、千尋ちゃん?顔が怖いんだけど……?」

「いいですか?」

「丁寧語!?え、どうしたの千尋ちゃん!?」

「いいですね?」

「…………はい」

 

「よろしい」

 

 さて、カズマ君達にこのことの報告と注意喚起をしないと。ある意味魔王よりも怖いものを大量に持ちこんで来やがったからね。




後悔はしていない!
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