目の前に広がった光が薄れると、ボクが死ぬ前に立っていた駅のホームでも、気さくな女神さんと話した白い空間でもない、中世ヨーロッパを連想させる街並みが広がっていた。
うん。とりあえず異世界には来れたみたいだね。『目を開けたら所長の顔が近くにある』とかじゃなくてよかった……いろんな意味で。
さて、とりあえずここの探索は後回しにして、現状の確認でもしようかな。
通行人の邪魔にならないよう、ちょっとした路地裏に移動して持ち物の確認っと。
【持ち物】
リュックサック(黒)
├スマートフォン(電源が付かない)
├メモ帳&筆記用具(余白が結構あいてる……調査でメモ取ったことあるかな?)
├ワイヤー(所長の真似して持ち歩いてる)
├財布(お金が別の物になってる。あと少ない)
├カメラ(証拠写真なんか取るため)
├十徳ナイフ(なんで持ってるんだったかな?)
├地図(どこのだろ)
├手紙(女神さんからのもの)
├ハンカチ&ティッシュ
├鎖(多分特典。結構軽い)
└事務所のメンバーの集合写真
(これ入れてたっけ?)
一応、あの部屋に行く前の物は大体あるみたいだね。いくつか身に覚えのない物が入ってるけど。
じゃぁ、手紙でも見ようかな。ちなみに、なんで女神さんの物か分かったかっていうと、普通に裏に『女神より』って書いているからだよ!
【どうも。この手紙を呼んでいるのが貴女なら奴らの妨害なく、ついでに頭がパァにならずに済んだみたいね。】
おい待て。奴らの妨害の件はまだ分かるけど、頭がパァになる可能性があるのは聞いてなかったよ!?しかもついでって……相当低確率なことだったのかな。そんなに心配してなさそうだし。
【ひとまず、貴女が言語の習得に成功したこと前提で書かせてもらうわね。この手紙を見てるってことは貴女が持ち物を確認したってことなんだろうけど、リュックサックの中に入ってるのは貴女が電車に轢かれる直前の持ち物を送らせてもらったわ。
ただ、すまーとふぉん? とか言うのはその世界では技術が進歩しすぎてるから使用不可にさせてもらったわ。ごめんなさいね。何か思いついたら魔法具として使えるようにするわ】
結構小さいメモに書いてあるから何枚かにいろんなことを書いてるみたい。次はこの紙の裏だね。
【貴女の所持金について説明……したいけど、貴女のことだからどうせ自分が持っていた金額なんて覚えてないでしょうね。とりあえずこっちで用意したお金をここに書いとくから、すぐに覚えて頂戴。
金貨5枚 小計 2500エリス
紙幣1枚 小計10000エリス
合計12500エリス】
大丈夫。記憶力には自信あるから。
ほい、次の紙。
【あと貴女の特典についてなんだけど…………まぁこれは自分で確かめてね。
地図のちょうど中心辺りに冒険者ギルドがあるから、そこに行くのをおススメするわ。
PS1.写真は貴女へのプレゼントよ。
PS2.この紙に目を通し終わった時点でこの紙は焼失します。
貴女が転移者って言うのをそこに住んでる人に知られたくないからね。】
ちょうどこの紙の最後の文を読み終わったところで、この紙がもう一枚の紙と一緒に自然発火して無くなった。意外と火が熱くなかった。
特典は自分で確かめろ……かぁ。まぁ、そういうのも得意だからいいんだけどね。
地図には……ボクが最初に立ってた場所に印があるから分かりやすいね、冒険者ギルドに行くには北に進めばいいみたいだ……で、北ってどっち?
◇◆◇
結局道行くお姉さんに教えて貰っちゃった。
冒険者ギルドは外見をパッと見た感じだと酒場に見えるんだよね。でも、異世界物の小説とかだと依頼を受ける受付?の近くに食堂とかがあるのって定番だよね。某モンスターをハントするゲームでも集会所でお酒飲めるしね。
西部劇とかでよく見る扉――スイングドアだったかな?――を手で押して開けると、すぐにその中の活気が分かる。一応外から見ても人の出入りが激しいから賑わってるんだろうなぁとは思ってたけど、中にこんなに人がいるとは思わなかったなぁ。
「いらっしゃいませ!お食事でしたらお席に、お仕事案内などございましたらこちらのカウンターへどうぞ!」
短髪赤毛のウェイトレス姿の女性に声をかけられちゃった。
軽くお礼を言って指示に従って奥のカウンターに向かうんだけど、……女性のいる窓口だけやけに混んでるね。並んでるのは皆男の人だし。多分そういうことなんだろうなっと、もちろんボクは一番人が少ない受付に並んだよ。早く受付を終わらせたいからね。
「お客様、本日のご用件をお伝えください」
「あ、すいません。少しボーとしてました。……冒険者登録をしたいんですが……」
「了解しました。少々お待ちください」
そういって受付のお兄さんは自分の席の引き出しから一枚の紙を、手製のように見えるペン立てから万年筆を取り出して差し出してきた。
あれ、この人表情筋が固いんだね。全く顔に出ない。
「では、こちらの書類に名前、身長、体重、年齢、身体的特徴の記入をお願いします。……名前と年齢は必須事項なので必ず記入をしていただきます」
お、この人暗に体重は書かなくてもいいって言ったね。女性だからこういうのいうのかな?こういう人結構モテるんだろうなー。
ボクはまだ惹かれないけどね!
えーっと、サカキ・チズル、身長約164センチ、体重は[削除済み]ぐらい、年齢は19歳、……身体的特徴?空白でいいや。
ていしゅつ~。
「はい、結構です。ではこちらの書類はギルドが責任をもってお預かりいたします。
それではこちらのカードに触れてください。それで貴女のステータスが分かりますので、そのステータスの数値に応じた職業をお選びください。選んだ職業によっては専用のスキルが入手できますのでそのあたりを踏まえてお選びください。また、どの職業になればよいか分からない場合はこちらにご相談ください」
さて、どうなるかなっ。
「っ……はい、ありがとうございました。……サカキチズルさん、筋力、生命力、知力、器用度、敏捷性が平均を大きく上回っていますね。逆に魔力、幸運が平均よりも低いですね。」
…?なんでこの人言葉を詰まらせたんだろ?表情読めなすぎ~!分かんない!
「う~ん?すいません。ちょっとイメージ湧いてこないんで、ボクがなれそうな職業とか教えてもらえませんか?」
「そうですね……。チズルさんは魔力以外の戦闘に役立つ能力値が高いので、遠~近距離全てに対応が可能です。確認されている職業で言うならば【アーチャー】【ソードマスター】【ナイト】【クルセイダー】【盗賊】などの職に就くを推奨いたします。ただ、こちらの機器には今まで確認されていなかった【
フィレット――探索者?
なんか聞きなれた職業だなぁ……初めて聞くはずなのに。
「じゃ、その【探索者】にします」
「……こちらの職業はギルドが把握できていない職業なので、習得できるスキルなどを教えることが出来ませんが、よろしいですか?」
「ま、調査の一環てことで。資料を集めるのに協力しますよ?」
「それは助かります。資料があって困ることはないので」
そう言い終わった時に、カードを見てみるとちゃんと【探索者】の文字を確認できた。
「…わかりました。それではチズルさん、ようこそ冒険者ギルドへ。スタッフ一同、今後の活躍を期待しています」
「あ、そうだ、名前教えてくれない?」
「……私は『リヤン』と申します」
「そっか~、ありがと」
彼、リヤンさんから離れて少し考える。
―――
伏線ではないと思うのでご安心を。
活動報告に<裏設定:特典が増えた理由>を載せました。
次回は何かしらのクエストかな。
追記:活動報告に<冒険者カード>を追加しました。