街から離れたところにある小高い丘の上。
あの後結局クエスト、『共同墓地に沸く、アンデットモンスターの討伐』を受けることになったんだけど、クエストを受けるときにリヤンさんに「くれぐれも墓石を破壊しないように」って言われたよ。……樹ちゃんの変なものを見るような目線に冷や汗が流れたのは秘密。
今回のクエストのメインはカズマ君に役立たず呼ばわりされたアクア。汚名返上を狙って自分が得意なアンデットモンスターの浄化を自分から申し出てきたんだけど、なんだかんだで採用してあげるカズマ君はやっぱり優しいんだなぁって。
「ちょっとカズマ、その肉は私が目をつけてたヤツよ!ほら、こっちの野菜が焼けてるんだから、こっち食べなさいよこっち!」
「俺、キャベツ狩り以降そうも野菜が苦手なんだよ、焼いてる途中に飛んだり跳ねたりしないか心配になるから」
今は大体午後18時くらい。モンスターが現れるっていう時間帯は夜だから、晩御飯を食べながら現れるのを待つことにした。食事の内容は肉多めのバーベキューだよ。
ちなみに、アクアとカズマ君はお肉の取り合い。めぐみんちゃんはもう一枚の鉄板のところでお肉多めに食べて、ダクネスさんはお肉と野菜を交互に食べてる。樹ちゃんはお肉の油が苦手だから野菜を中心に食べてる。ボクは肉焼き奉行になりつつあるけど、少しずつ食べてるよ。
皆がお腹一杯になったらそこら辺に腰を落として今回のクエストについて話し合う。一馬君の【初級魔法】スキルで作ったコーヒーを飲みながら。あ、樹ちゃんはミルク有りの方がいいかな?……いらない?そう?
「今回の依頼の討伐対象はゾンビメーカーだったな。……確かゾンビを操る悪霊の一種だったか?」
カズマ君の質問に、ダクネスさんとめぐみんちゃんが頷くことで答える。……ゾンビ……感染症……SCP-008……うっ、頭が。
「ん?どうしたチズル。体調でも悪いのか?」
「あぁ、ダクネスさん。……ちょっと嫌なもの思い出しただけだよ。大丈夫」
「……SCPじゃないよな」
「よく分かったねカズマ君!その通りだよ!」
あ、頭抱えた。別にSCPってだけでそんな落ち込まなくていいのに……。確かに感染したら確実に死ぬけどさ。……あ、SCP-500飲めばワンチャンあるかな。
「カズマ、いろいろと辛そうなところ申し訳ないのですが、私にもお水ください。…どうも。っていうかカズマは、何気に私より魔法を使いこなしてますね。【初級魔法】なんてほとんど誰も使わないのですが、カズマを見てるとなんか便利そうです」
ボクめぐみんちゃんが【爆裂魔法】以外の魔法使ってるの見たことないんだけど……?
「いや、元々そういった使い方するもんじゃないのか?【初級魔法】って。あ、そうそう。【クリエイト・アース】!……なぁ、これって何に使う魔法なんだ?」
カズマ君は粉状の砂の山を掌に作って見せてくるけど……。うーん。わかんないなぁ…。
「……えっと、その魔法で創った土は、畑などに使用すると良い作物などが獲れるそうです。……それだけです」
めぐみんちゃんの【クリエイト・アース】の説明を聞いていたアクアは、急に笑い出して、カズマ君を小ばかにした口調で話し始める。
「何々、カズマさん畑作るんですか!農家に転向ですか!土も作れるし【クリエイト・ウォーター】で水も撒ける!カズマさん、天職じゃないですかやだー!プークスクス!」
アクアのやっすい挑発に対して、カズマ君は土の乗った手をアクアに向けて、
「【ウィンドブレス】!」
左手から風を放つ魔法を使用。右手の土を吹き飛ばし、正面にいたアクアにのみ降りかかって。……今の挑発はボクも少しイラっと来たから、ザマァとしか言えない。
見た感じ、ただサラサラの土を作るだけの魔法みたいだし、石とかの顔に当たったら危ない物もないでしょ。
「ぶあああああ!ぎゃー!目、目がぁああ!」
「……なるほど、こうやって使う魔法か」
「「いえ、違うと思いますよ!?」」
めぐみんちゃんと樹ちゃんの突っ込みがカズマ君に向かうけど、身長差的な意味で兄妹にしか見えない。
「ちなみに、育てた野菜とかがとっても美味しくなるSCP、[肥沃な土]なんてものがあったり」
「……それいいな。自由に弄れる土地が手に入ったら農業でもしてみるか」
「もしかしたら一儲けできるかもよ?」
「ちょっと本気で考えとくわ」
◇◆◇
月が昇りきり、時刻も深夜ごろになったころ。気温が少し下がり、明かりがないと足元の確認もできないほど暗くなると、アクアがポツンとこんなことを呟いた。
「……冷えてきたわね。ねぇカズマ、引き受けた依頼ってゾンビメーカー討伐でしょ?私、そんな小物じゃなくて大物のアンデットが出そうな予感がするんですけど。」
「……おい、そういった事言うなよ、それがフラグになったらどうすんだ。今日はゾンビメーカーを一体討伐。そんで取り巻きのゾンビもちゃんと土に還してやる。そしてとっとと帰って馬小屋で寝る。計画以外のイレギュラーが起こったら即刻帰る。いいな?」
」
皆が頷き、やばくなったら即座に帰ることを決意してるようだけど……今の発言ってセーフ?収容違反とか……ないよね?…アイテム番号忘れたけど、フラグを言ったらダメなのあったよね?
ボクの心配を他所に、カズマ君の「そろそろ行くか。」の言葉で全員が行動を開始した。クリスちゃんに教わったスキル、【敵感知】を持つカズマ君を先頭にして墓地に向かって前進……あ、樹ちゃんの顔が蒼白。ゾンビが嫌なのか、ボクと同じことを考えているのか……。
「何だろう、ピリピリ感じる。【敵感知】に引っかかったな。いるぞ、一体、二体…三体、四体…?」
おー、どんどん見つかるね。……ボクが全部倒してもいいけど、それだとみんなが成長できないね。
突然、墓場の中心で青白い光が走る。
墓場全体を囲むように書かれた円形の魔法陣が青く光っているのがボク達のところからも確認できた。……魔法陣の中心あたりに黒ローブの人も見つけた。
「……あれ?ゾンビメーカー……ではない……気が……するのですが……」
めぐみんちゃんの自信なさげな声が聞こえる。え?あれがゾンビメーカーなんじゃないの?
「突っ込むか?ゾンビメーカーじゃなかったとしても、こんな時間に墓場にいる以上、アンデッドに違いないだろう。なら、【アークプリースト】のアクアがいれば問題ない」
ダクネスさんが大剣を構えてソワソワしてる。大剣構えたままだと走るの遅くなるよ?
「あーーーー!!!?」
ッ!敵襲ッ!?
じゃなかった。ここには敵はいなかったね。ダメだなー。前の世界のクセがなかなか離れない……。
「ちょっ!おい待て!…千尋はその両手の剣しまえ!」
「は~い」
さっきのアクアの叫び声で咄嗟に取り出した『クリンゲ』と
ローブの人物の方に走って行く。皆がいるから小走りだけどね。
アクアはローブの人物のところにたどり着くと、ビシッと指差した。
「リッチーがノコノコこんなところに現れるとは不届きなっ!成敗してやるっ!」
リッチー?
って言うと、ゲームとかでもよく出てくる超メジャーモンスター。アンデットの最高峰のRPG最強モンスターの一角になってるあのリッチー?
「や、やめやめ、やめてぇぇぇ!!誰!?誰なの!いきなり現れて、なぜ私の魔方陣を壊そうとするの!?やめて!やめてください!」
「うっさい、黙りなさいアンデッド!どうせこの妖しげな魔方陣でロクでもないこと企んでるんでしょ!なによ、こんな物!こんな物!!」
ボクからしてみれば、今アクアの腰にしがみついて魔法陣を消そうとするこの人がそんな、個人的に訳わからない種別のモンスターには見えないんだけど……。いや、正直に言おう。これどっちが女神でどっちがリッチー?
「やめてー!やめてー!!この魔法陣は、いまだ成仏できない迷える魂たちを、天に還してあげるための物です!ほら、たくさんの魂たちが魔法陣から空に昇って行くでしょう!?」
このリッチー(仮)さんの言う通り、墓地にいた人たちの魂っぽい青白い光が魔法陣に入ると、魔法陣に沿って天に吸い込まれていくのが見える。この人(?)かなり善良なんじゃないかな?
「リッチーのくせに生意気よ!そんな善行はアークプリーストのこの私がやるから、あんたは引っ込んでなさい!見てなさい、そんなちんたらやってないで、この共同墓地ごとまとめて浄化してやるわ!」
「えぇ!?ちょっ、やめっ!?」
リッチー(仮)さんの静止を聞かず、アクアは魔法を発動させた。
「【ターンアンデット】ー!」
さすがに自称女神というだけあって、宣言通り共同墓地全体にいかにも浄化魔法でございと言わんばかりの光が立ち上る。
リッチー(仮)の取り巻きのように存在していたゾンビたちの浄化の光が触れると、その姿が掻き消える等に消えていった。……あれどうなってるんだろ?
【浄化魔法】を発動させたアクア。その近くにいたリッチー(仮)にもその光はもちろん届くわけで……
「きゃー!か、身体が消えるっ!?止めて止めて、私の身体が無くなっちゃう!!成仏しちゃうっ!」
ゾンビが一瞬で浄化された聖なる光の立ち上るエリア内で、身体がどんどん薄くなっていくリッチーさん。
「おい、やめてやれ」
そこでこの自称女神をどうにかしようと、カズマ君が薄くなっていくリッチーさんを指さして高笑いしているアクアの後ろまで行き、後頭部をナイフの柄でごすっと小突いた。……痛そっ。
「い、痛いじゃないの!あんた何してくれんのよいきなり!」
後頭部を強打したカズマ君に不満を言おうと掴みかかろうとしているアクアを【鎖術】を使って簀巻きにして転がしておく。……これで集中して魔力を練ることも難しいでしょ。
……さて、リッチーさんは無事かなっと。
出してほしいSCPがあったらアンケートのほうへお願いします。