ボクの旅路に幸あれ!……無理か。   作:隔離場

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アクアが出てきます。

前回、前々回の内容がほんの少しだけ変わっていますが、おそらく問題はないと思います


『情けは人の為ならず』

 今日も朝一で冒険者ギルドに行ってみたんだけど、例のクエスト『新種のモンスターの調査、もしくは情報提供』が訂正されてて、『ムーンビーストの討伐』になってた。

 

 一昨日ボクが提供した情報を加えて、五千万エリスの賞金がかけられている。

 

「ねぇ、これどうしたの?」

 

 最近、カエルの唐揚げの味についての議論で仲良くなった受付担当のハルちゃんに話を聞いてみると、

 

「最近冒険者がこのモンスターに挑むようになったんですが、返り討ちにされてるのか、帰ってこない人の方が多いんですよ。帰ってこれても、どこかしらの部位が欠損してるとか。

 で、昨日王都にこのモンスターの危険度を決定してもらうためってことで資料を送ったら、こんなになっちゃいました」とのこと。

 

 ……ふーん?ムーンビースト肉弾戦で倒しちゃう人がいるから、この世界の人なら大丈夫だと思ってたんだけど……。

 

 依頼書を取って内容を確認してみる

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

   『ムーンビーストの討伐』

[種別]

討伐

 

[依頼者]

冒険者ギルド

 

[概要]

近年、アクセルの街周辺に出現したモンスター、ムーンビーストの討伐。

 

[報酬]

五千万エリス

 

[依頼内容]

近年現れた新種の生物。それの被害が日に日に増加しています。このモンスターは現在では一匹しか確認されていませんが、量が増えるとなると無視できない被害が巻き起こされることが危惧されます。出来る限り迅速な対処を願います。

 

[寄せられた情報]

・名称『ムーンビースト』

・爪を生やした両手、眼がなく口が広く鼻の先が桃色の青白い触手になっている顔を持つ、カエルのような外見。黒斑模様の皮膚を持つ。

・他種族を拷問し、その悲鳴を聞くことを楽しむ傾向にある。

・どこからともなく素材不明の槍を生成。突き刺したり、投げつけたりしてくる。

・魔法攻撃が聞き効きづらいかも。

 

 チズル様、ヤルカ様、情報提供感謝します。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 ……そろそろ、受けないとなぁ。

 

 とりあえず依頼書は持ったまま、食事を摂るためにテーブルに座ってウェイトレスちゃんに……カエルの竜田揚げを注文しておく。

 

 料理が来るまでの間、メモに『こいつ』を倒すのに必要な物を書いてたんだけど、

 

「そこの貴女、宗派を言いなさい!」

 

 ボクのすぐ近くで女性の大きな声が響いた。

 なんだろう。宗派を聞くってことは宗教勧誘かな?

 

 ボクが視線を上げると上から下まで青色に包まれた女の子がボクの方を見ていた。

 

「私はアクア。そう、アクシズ教団の崇めるご神体、女神アクアよ!汝、もし私の信者ならば……!……お金を貸してくれると助かります」

 

「え……っ……と……」

 

 いきなり何だろう、この子は。自分のこと神って言うのが許されるのはシンセカイノカミさんと本物の神だと思うんだけど……。

 

 ……ん?この子アクアって言った?確か、あの空間にいた女神さんの愚痴の中にアクアって名前があったよね。なんだっけ?死者の魂をからかって遊んで、仕事の進行速度があまりにも酷いから補佐役が就いたっていう駄女神さん?

 

 なんで地上にいるんだろ……。まぁ、いいか。

 

「ボクは特定の神を信仰することはしないよ。99.9%酷い目に遭うから」

 

「あ……そうでしたか……すいません」

 

「……でも、神を信仰するかしないかと困ってる人を助けるのは別物だからね。いいよ、いくら必要なの?」

 

 幸い、お金には余裕があるからね。この後買う予定の物もそこまで高くないし。

 

「えっと、二千エリスあれば……」

 

 そう言ってアクアさんは後ろを気にするような仕草をする。視線の先は……この世界では異質ともいえる服、”ジャージ”に身を包んだ少年。いや、青年かな?

 

「なるほど、あの子と一緒に来たんだね」

 

「はい……」

 

「分かった。それじゃ、はいこれ」

 

 アクアさんに五万エリスを渡して、ボクはそのまま受付に向かう。ま、二人で使うとしても予算は二万五千。何日分かの宿代にはなるでしょ。

 後ろから困惑の声が聞こえてもボクは何も知らないよ。

 

「リヤンさんっ!受付よろしく~」

 

「了解しました。……『ムーンビースト』ですか。既知の事柄かと思いますが、このモンスターは大変危険です。どうかお気をつけて」

 

「は~い。 あ、そうだリヤンさん。お願いがあるんだけど」

 

「なんでしょう?ギルドの仕事に差し支えない程度でお願いします」

 

 うっぐ……。ボクはリヤンさんにいったいどういう風に認識されてるんだい……?

 

「だ、大丈夫。むしろギルドの仕事だから」

 

「了解しました。ではご用件をどうぞ」

 

「ボクがさっきまで話してた男女二人って言って伝わるかな?青い髪と茶髪の」

 

「はい。アクシズ教徒はこの街……いえ、この国では危険視されている団体ですので、その元締めを名乗ったことで冒険者の皆様にはある程度警戒されたでしょうね」

 

「うん。その二人が冒険者登録に来ると思うんだけど、その分の料金を先に払っときたいんだ」

 

「……申し訳ありません。私にはなぜチズルさんがその様な行動に至ったか理解が出来ません」

 

 やっばい。リヤンさんの眼が「何言ってんだこいつ……」って感じになってる!

 

「ははは、一応理由はあるから聞いてね」

 

「別に構いませんが、手短にお願いします」

 

「釣れないなぁ。いや、ほらあれだよ。今恩売っとけば、後々ボクに利益来るかもしれないじゃない?なんていうんだっけこういうの……そう!『情けは人の為ならず』!」

 

「……冒険者という職に就いている人はいつ死んでも可笑しくないというのが世間の常識ですが、貴女にはその常識は当てはまりそうにありませんね」

 

 あっ、ため息吐かれた。

 

「つまり、なんだかんだで帰ってくるってことだよね。リヤンさんが言うことは現実に起こりそうだし、これでボクの生存率はグンと上がったね。……そうだ、ついでに伝言頼みたいんだけど、いいかな?」

 

「それは構いませんが、どういった内容で?」

 

「それはね――――」

 

 おっと、これ以上話してたら買い物の時間が無くなるね。

 カウンターに二千エリスを置いてボクは冒険者ギルドを出た。

 

 さて、行こうか。




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