IS-インフィニット・ストラトス LAST RAVEN 作:レイキャシール
夕方。授業を終えた俺は、一夏にISの基礎をレクチャーしていた。
「いいか? ISの絶対防御は正式名称を
「悪い、レイブン。もうすこしわかりやすく頼む・・・・・・」
「・・・・・・基礎中の基礎だぞ、これは。山田先生の授業でもやってただろ?」
「先生には悪いけど、端から端まで全く解らなかっ・・・・・・」
「そうですよね・・・・・・どうせ私なんて、胸と眼鏡だけのダメ教師ですよね・・・・・・」
「「のわぁあっ!?」」
噂をすれば何とやら、不意に声がしたので振り返ると、いつの間にか山田先生がすぐ後ろに立っていた。涙目で。
「いや、そんなこと無いですよ!」
「そうそう! 親しみやすい、良い教師ですし!」
「・・・・・・本当ですか?」
「『本気』と書かせて『マジ』と読むくらいに!」
「我が名に賭けて! それで、こんな時間にどうしたんですか?」
「実は、二人に渡したいものがありまして・・・・・・これです」
一夏が今にも泣きそうな彼女を必死でなだめ、俺は用事を聞き出そうとする。
すると、ポケットをガサゴソさせるや否や、彼女はそこからどこかのカードキーを取り出した。
番号が書かれている所を見るに、学生寮の部屋の鍵か?
「明日以降この部屋から通ってくださいね」
「でも先生、俺はしばらくは自宅通いって言われていた気が・・・・・・」
「本来はそうなんですけど、コードウェル君がいるのと、マスコミ対策で無理矢理こうなっちゃったんです・・・・・・」
そう言ってがっくりと肩を落とす山田先生。どうやら、上の方はこの処置に相当モメたらしいな。
「けど今からじゃ荷物も・・・・・・」
「その心配は無いぞ、織斑」
そう言って、織斑先生が教室に入ってきた。いつものように、出席簿片手に。
「そんなこともあろうかと、あらかじめ手配しておいた。と言っても、着替えと携帯端末の充電器、それに最低限の私物だけだから、後は自分でやっとけよ」
「・・・・・・わかったよ、千冬姉」
「『織斑先生』だ。まあ、今は放課後だ。今回は大目に見よう」
「寮内の食堂は午前七時から午後八時まで。大浴場は授業の終わる午後四時半から消灯時間前の午後九時半まで開いていますが、こっちはまだ使えませんので、注意してくださいね」
「ええっ!? 風呂には入れないんですか!?」
おいこいつ、さらりと誤解されるような発言しやがったぞ・・・・・・。
「おい一夏。お前、警察のお世話になりたいのか・・・・・・?」
「あ、そっか・・・・・・。女子寮だからな、本来は」
「そんなわけですので、しばらくは部屋のシャワーで我慢してください。寄り道せずに、帰るんですよ?」
寄り道って・・・・・・校舎から寮まで大した距離は無いような・・・・・・。
―――――――
そして俺は本校舎の近くにある学生寮にて寛ぐにいたる。
寮と聞いていたからに、最初はいわゆる『ヨジョウハーフ』かと思っていたのだが・・・・・・・・・・・・
「下手なホテルよりも良い部屋じゃないか」
セミダブルベッドが二つに勉強机、お茶やコーヒーを入れる為の簡易IHコンロ、さらにはシャワートイレに洗面所とクローゼットも完備。『イタレリツクセリ』とはこのことか。
「しかしまあ、しばらくは同居人付きか・・・・・・」
その同居人、一夏はと言うと、幼馴染みだという女子生徒に引っ張られていったまま戻ってこない。
その内戻るだろうと思ってシャワーを浴びようとしたその時だった。
《聞こえるか・・・・・・?こちらにメールが来ている・・・・・・》
携帯端末から、メールが来たことを知らせるボイスが発せられる。
差出人は・・・・・・『レイン・マイヤーズ』? 何でまたレインさんが・・・・・・?
to:レイブン・コードウェル
from:レイン・マイヤーズ
sub:おめでとうございます。
―レイブンへ。
まずは、IS学園への入学おめでとうございます。
最初、コーテックスからあなたがISを動かしたと聞いた時は、驚きのあまり飲んでいたカプチーノを吹き出してしまいました。
本題に入りますが、今回連絡した理由は二つ。
一つは、ここに通っている二年生のエマ・シアーズを貴方の担当補佐に付けることが、コーテックスで決定されました。
各種連絡事項などはメール、もしくは彼女を通して行いますので、そのつもりで。
二つ目は、貴方の専用機の件です。
既にご存じかと思いますが、貴方は通常のISを操縦することが出来ないと聞いています。
そこでコーテックスが基礎理論を開発し、現在一部の代表候補及び企業が運用しているAIS、アセンブリング・インフィニット・ストラトスの内の一機を、あなたの専用機とすることが決定しました。
ミラージュ、クレスト、如月のパーツを何セットか一緒に送りますので、現場で組み上げてください―
「『アセンブリング』・・・・・・? 要するに、『組み替え』ってことか・・・・・・」
ああ、なるほど。ACの機能と特性をそのままISに移植したって訳か。
道理であの時、懐かしい感じがした訳だぜ。
しかし、かつての三大企業がそのまま存在しているとは・・・・・・これも、あのご老体の善意なのかね?
とここで、部屋の戸をノックする音がしたので、俺は玄関に出て戸を開ける。
外に立っていたのは、青色のリボンを付けた二年生の女子生徒だった。
茶色の髪をボブカットにしており、頬にはそばかす。両の瞳は緑色と、良くも悪くも『どこにでもいる十代女子』、そんな感じの印象を受ける。
「えっと、貴方が・・・・・・」
「エマ・シアーズです。マイヤーズ室長から、レイブンさんの担当補佐に就くよう指令を受けました。今後、よろしくお願いします」
「いえいえ、ご丁寧にどうも。こちらこそ、よろしくお願いします。それと・・・・・・明日からさっそくミーティングをしたいんですけど、良いですか?えっと・・・・・・」
「呼び捨てにして構いませんよ。あくまで私は補佐ですし、堅苦しいのはあまり好きではないので」
「・・・・・・じゃあ、『エマ』と呼ばせてもらっても?」
「ええ、構いません。で、ミーティングですが、時間は明日の放課後で良いですか?」
「了解だ。それと、機体の方はいつ頃?」
「稼動時間のことも考慮して、明日の昼頃には到着すると思います。では、私はこれで。お休みなさい、レイブン」
「ああ、お休み」
専用機か・・・・・・。あの時スパルタンさんが言ったように、俺が思っている以上の大事になってきたな・・・・・・・・・・・・。
――――――――
それは、次の日の授業でのことだった。
「さて、今日はISの持つ武装特性についてだが・・・・・・その前に織斑、レイブン。お前達の使用するISだが、予備機がないので織斑は日本政府から、レイブンにはグローバルコーテックスから専用機が送られることとなった」
織斑先生のこの一言に、ざわめく教室。
確かに、専用機が持てる者は限られている。ただでさえISの数が限定されている上に、自分にしか使えないものとなると余計にだ。
「専用機ってことは、政府や企業からの支援が出るって事でしょ?」
「コードウェル君はともかく、織斑君は先生の弟だからなのかな?」
「良いなぁ・・・・・・変わって欲しいなぁ・・・・・・」
「静かに! 主な理由はデータ収集のためだ。特にレイブンは、通常のISはからっきしだが、最近話題の特殊ISは適正ランクA相当と言われている。喉から手が出るほど、貴重な例だからな」
俺の専用機の件は既に通達済みだったのか。なら、安心して戦えるな。
「さて、授業の続きをするぞ。鏡、教科書の46ページを読んでくれ」
「はい」
こうして、授業は過ぎていく。
俺自身も必死に食らいついてはいるが・・・・・・一夏はほとんど駄目らしく、この時間だけで五回叩かれ、七回注意されていたことを、明記しておく。
――――――――
さて放課後。
俺はエマとシーラと共に、学園の端っこにあるガレージに来ていた。
なぜ、シーラが居るのかというと、コーテックスから俺の戦術オペレーターをやるよう言われたとのことだ。
「しかし、まあ。凄い規模だな・・・・・・」
「ここだけで、IS十機分の整備と修理、換装作業が行えます。また、学園に届く追加装備の保管庫も兼ねているので、必然的にこれだけの規模になるんですよ」
そう、このガレージは訓練機だけでなく、一部専用機の整備も行われており、設備も非常に充実しているのだ。
まあ、これもクラスメートの一人、確か『のほほんさん』だっけか? の情報だが。
「で、これがか・・・・・・」
「はい。レイブンさんが使用する専用機です。まだ名前もない機体ですが」
俺の目の前のハンガーに置かれていたのは、ISコアが収められているであろう箱形の部品、『だけ』だった。
「コアだけじゃん」
「これに今から、必要なパーツを取り付けていきます。私がやるので・・・・・・」
「いや、俺がやる。操作を教えてくれないか?」
「レイブン貴方、PCの操作苦手じゃなかった?」
「・・・・・・言ってみただけだ。じゃあ、シーラにやらせるからレクチャーを頼む」
それから十数分間のレクチャーが行われたのだが、シーラの飲み込みの早さはエマも舌を巻いていたとだけ言っておこう。
「もう大丈夫だわ。レイブン、オーダーを聞かせて頂戴」
「了解だ。普通ならオルコットのブルー・ティアーズだけを気にしておけば良いんだが・・・・・・一夏の機体が未知である以上、汎用性重視で行こうと思う」
そう、問題は一夏に与えられるであろう専用機だ。
これで相手が遠距離戦主体のオルコットだけならマシンガンと小型ミサイル、ショットガンで事足りると思うが、そちらだけではない以上、あらゆる事態を想定する必要がある。
「まず、頭部はバランスの取れたクレストの傑作モデルを。次に、コアは防御と攻撃の両立が成されているミラージュのEOコアで。腕は機体にかかる負担を考慮して、クレストの省エネタイプをチョイス。それから、脚部は防御の高いミラージュの中量二脚で頼む」
「中量二脚ですか・・・・・・なるほど、良いセンスですね」
「そりゃドーモ。シーラ、次はソフトウェアだ。ブースターは瞬発力とエネルギー効率に優れたミラージュの高性能モデルを。FCSは、模擬戦で一番良い成績を出せた如月製の横長サイトを頼む」
「OKよ。何だか、見覚えのある構成ね」
俺の指示を受けてシーラがリストから必要なパーツをチョイスし、それらを組み上げていく。
量子転送された機体パーツが次々とISコアに取り付けられ、段々と形を成していく。
現れたのは、ミラージュ製パーツを主体とした曲線主体の機体。
その中で、クレストの頭と両腕がほどよいアクセントになっていた。
「次は武器だな。右腕には瞬間火力重視のミラージュ製アサルトライフルをチョイス。肩にはミラージュの六連小型ミサイルと如月の九連マイクロミサイルに、クレストの連動ミサイルをエクステで頼む」
「左腕は?」
「これは俺がやるよ」
両肩と右腕に武器が取り付けられると、俺はシーラから端末を受け取って操作する。
転送されたのは、平たいフォルムが特徴のレーザーブレード。
六角形のコンデンサパーツが、どことなく盾を思わせるデザインだった。
「ミラージュ製のWL-14LB“エルフⅡ”。空中戦なら、リーチの長いこっちの方が良いだろうからな。機体名も今、決まったぞ」
そして完成したのは俺が、俺自身が、前世で最も慣れ親しんだ機体構成・・・・・・
「その名も・・・・・・『アルケミスト』」
「英語で『錬金術師』、ですか。なるほど、良い名前ですね」
「そうかしら?私はセンスを疑うけど」
「良いじゃないか、俺の機体なんだから」
できあがった機体データをライブラリ―AISが持つ特殊機能の一つ。通常のISと比べて複雑になりがちな作業の効率化のために、開発された。コアに構成を予め記憶させておき、それを呼び出すことで瞬時に換装できる機能―に保存すると、彼女らと共にガレージを出る。
その時、一人の少女がアルケミストを羨ましげに見つめていたのに、気付かぬまま・・・・・・・・・・・・。
―――――――――
それから数日ほど経ち、遂にクラス代表決定戦の当日がやってきた。
予定では、一夏とオルコットの試合が先に行われる筈なのだが・・・・・・・・・・・・
「遅いな、一夏の専用機」
「ああ・・・・・・」
肝心要の、一夏の専用機がまだ届いていなかった。
何でも、山田先生の話によれば、開発と製造を担当していた倉持技研の方でトラブルが起きたらしく、発送が遅れているとのこと。
「やむを得ん。前倒しになるが、先にレイブンとオルコットの試合を始めよう。レイブン、準備しろ」
「わかりました」
そのため、俺とオルコットが先に戦う事になり、念のため一夏は最後に行う形になった。
俺は昨日組み上げた構成を呼び出し、運び込まれていたコアパーツを起動させる。
戦うために動かすのは実質、十回目位だろうか?適正があるとわかった後は運送からテストパイロットに仕事が変わって、それから入学までほとんど動かしてばかりの日々を送っていたからな・・・・・・。
「そんじゃあ一夏、お先に」
「ああ、頑張って来いよ!」
「まあ、勉強にすると良いさ。レイブン・コードウェルだ、アルケミスト、出すぞ!!」
レイヴン時代には経験する事のなかった、カタパルトでの発進。
一瞬、体に強烈なGが襲いかかるが、搭乗者保護機能で即座に相殺される。
飛び立った先で待ち構えていたのは、鮮やかな『蒼』。オルコットの専用機で間違いない。
「あら、まずは貴方ですの?」
「ちょいとばかし先方でトラブルがあってな。一夏は後回しになった」
「そうでしたの・・・・・・。コホン、悪い事は言いませんわ。貴方の実力がどれほどのものでも、代表候補生に勝ち目があるとは到底思えません。悪い事は言いませんわ、降伏しなさいな」
接触しての第一声は、要約すれば『ホールド・アップ』。なるほど、よほど自分の腕に自信があると見える。
「言うに事欠いてそれか・・・・・・。降伏するつもりなどもとより無い」
あいつには悪いが、そう言う奴に限って大して強く無い。
俺はかつて対峙した事のあるレイヴン、グリーンホーンを思い出していた。
戦闘中も挑発してくる饒舌な男だったが、乗っていたのがタンク型のホットスパーだったせいもあって、楽勝の一言だった。
もっとも、あの時は俺の賞金目当ての武装集団が乱入してきたので、決着は着かず仕舞いだったが・・・・・・・・・・・・。
「お前はここで倒す。その鼻っ柱をへし折って、少しでも一夏に繋げるためにもな!!」
「交渉決裂、ですわね。ならば、倒させて頂きます!」
「言っとけ、お嬢様!!」
〔メインシステム、戦闘モード起動します〕
搭載されているAIが起動した事を告げ、全身に力がみなぎるような感覚を覚える。
視界に、正確には頭のバイザーに搭載されたHMDに俺の機体情報が表示される。
レーダーに、選択している武器の名前。自身のAP、いやISにはシールドエネルギーだからSEか。それに加え、機体と周囲の温度。そして模擬戦だからか、敵ISのSEが表示された。
〔敵ISを確認、“ブルー・ティアーズ”です。敵はスナイパーライフルを装備。距離を離すと危険です。遠距離戦主体の戦闘スタイルが予測されます〕
流石は、クレストの新鋭コンピューター。女声のAIボイスは流暢で、聞いていて心地良い。
それとほぼ同時に、試合開始のブザーが鳴り響く。
それを聞いたオルコットがすかさず手に持ったスナイパーライフルを発砲してきた。
放たれたのは、実弾ではなく長く尾を引く光の軌跡。レーザーライフル装備か・・・・・・被弾時の熱量には注意が必要だな。
相手の銃撃を回避しつつ、俺は似たような戦術を取ったレイヴン達との戦闘の記憶を探り出していく。
〈スナイパーライフルを装備していたのはプリンシバルとズベン.L.ゲヌビ、それからレーザーライフル装備のゴールディ・ゴードンも入るか。VOLA-VOLANTは・・・・・・状況が状況だったから除外〉
共通しているのは、遠距離型の武器を使用している事。そして、その時のAIのアドバイスも、大なり小なり同じ。
となれば、取るべき戦術は一つ・・・・・・!
〈機動力主体の、近接戦闘しかないな・・・・・・!〉
先手必勝。俺はアサルトライフルを連射しながら一気に距離を詰める。そして、即座に小型ミサイルの照準を合わせて発砲した。
「くっ・・・・・・舐めてもらっては困りますわ! 行きなさい、ティアーズ!!」
セシリアはそれを何発か喰らうものの、怯むことなく両肩の端末を切り離す。それらはまるで自らの意思があるかのように動き回り、俺めがけてレーザーを撃って来たのだ。
「オービットカノンか!?」
「さあ、踊りなさい! 私とブルー・ティアーズの奏でるワルツを!!」
「っ!?」
〔脚部損傷〕
そうこうしているうちにレーザーの何発かが脚をかすめ、CPUが損傷報告をしてくる。
驟雨の様に降り注ぐレーザーを必死に回避するが、SEは徐々に削られていく一方だ。
何とかして突破口を開かないと・・・・・・。オルコットの奴もその場から動かず、余裕の笑みを浮かべてやがる・・・・・・。
〈・・・・・・動いてない・・・・・・? まさか・・・・・・?〉
俺は、アイザールダムでウォータン・バスカーと戦った時のことを思い出していた。
確かあいつは、垂直ミサイルに加えてオービットカノンも搭載していた。
射出された端末はその場に滞空し、一定間隔で攻撃してくる。それに対し、ブルー・ティアーズは四方八方に動いている。
本体の方だが、彼は移動を繰り返していたのとは違い、彼女は動いていない。
試してみる価値はありそうだ・・・・・・!
「弱点は・・・・・・そこだっ!」
「どこを狙ってますの?」
「知りたいなら教えてやるよ。それは・・・・・・」
俺はエクステンションを起動させ、マイクロミサイルと同時に発射する。
目標は飛び回るビット・・・・・・ではなく・・・・・・
「ボケッと突っ立っているお前だ!!」
「んなっ!?」
さすがにもらうのはまずいと判断したのか、回避行動をとるオルコット。それによってオービットの動きが止まったのを、俺は見逃さなかった。
すかさずEO―イクシードオービット。本体に追従して自動的に攻撃を行う自立支援攻撃端末。エネルギー型と実弾型の二種類が存在する―を起動、アサルトライフルとの偏差射撃でオービットの一つを破壊する。
〈やはりな。あのオービットカノン、四方八方から攻撃ができる代わりに、本人は無防備になるのか・・・・・・・・・・・・〉
そうと判れば話は簡単だ。
俺はEOとアサルトライフルを連射し、オービットを撃ち落としていく。最後の一つは・・・・・・勿体ないが、ブレードで切り裂いた。
「何なんですの・・・・・・貴方のISは・・・・・・! 本体に追従可能なBT兵器に、レーザーを用いた近接ブレード・・・・・・どれもこれも、各国で未だ実用化の目処が立たないものばかり!それをなぜ!?」
「なぜかって・・・・・・?」
切り札を破壊され、狼狽するオルコットに俺は言い放つ。
「機体にばっかりに注力していないからさ。部品単位なら、俺のISは誰にも負けない自信がある。それじゃあ・・・・・・
そしてブースターを噴かして接近し、すれ違いざまに左腕を振り抜いた。
ブレードから迸る紅色の刃が、ブルー・ティアーズのSEを食い破って絶対防御を発動させる・・・・・・はずだった。
「詰めが甘いですわね!」
「!?」
不意にブルーティアーズのサイドスカートが跳ね上がったと思うと、そこからミサイルが放たれたのだ。
完全に失念していた。クレストの実弾EOの例もあるんだ。レーザーが撃てるなら、ミサイルを撃てない理由はない。
〔チェスト損傷。SE50%、機体ダメージが増加しています〕
「くそっ・・・・・・!!」
俺は一度距離を取るが、それを許してくれるほど相手も甘くはなかった。
すかさず、着地際の隙をポイントして撃ってくるオルコット。
俺は咄嗟に左腕でガードするが、レーザーライフルの破壊力は予想以上だった。
〔左腕部損傷。左腕部破損。左アームユニット使用不能です〕
損傷の限界を迎えた左腕装甲が消滅し、自動的にブレードもパージされる。
《拙いわね・・・・・・レイブン、大丈夫?》
「大丈夫なわけあるかよ。SEは半分切ったし、EOは今は命中に期待出来ず。おまけにブレードは使えないと来たもんだ。接近戦をするにしても、アサルトライフルとミサイルだけじゃ火力不足・・・・・・・・・・・・」
《どうしたの?》
「いや、まだ手はあった・・・・・・!」
そう、まだ逆転の手は残されている!
俺はブースターを最大出力で噴射させて突撃する。
OB―オーバードブースト。エネルギーを一気に放出する事で、一時的に音速に近い機動が可能になる―程では無いが、それでもかなりの速度に達し、一瞬ではあるがオルコットを怯ませた。
しかし、その一瞬の後に彼女は即座に立て直し、迎え撃ってくる。
〔SE10%、危険です〕
「さすがに、無事では済まないか・・・・・・だが・・・・・・!」
レーザーとミサイルの弾幕を強引に潜り抜けたため、機体が甚大なダメージを受けるが知った事じゃない。AC戦にしろIS戦にしろ、『怯んだ奴が負ける』。
そして俺は・・・・・・
「・・・・・・勝ちは貰うぞ。全弾持ってけぇっ!!」
賭けに勝った。
9連マイクロミサイルに加え、エクステンションの連動ミサイルも有りっ丈叩き込む。
次々と、ブルー・ティアーズのシールドへ突き刺さる誘導弾。
俺の視界が煙と炎に包まれ、それが収まった後には・・・・・・
〔敵IS撃破〕
《そこまで! 勝者、レイブン・コードウェル!!》
オルコットは地面に墜落して膝を突き、俺は空中に何とか留まっていた。
その直後、鳴り響く試合終了の合図。それと同時に歓声に包まれるアリーナ。
そういえば戦いに集中していて気づかなかったが、観客が思いの外多かったことには、少なからず驚いた。
《まさか初めてのIS戦で勝つだなんて、思ってもいなかったわ》
「嘘こけ。本当は心配だったんだろ?」
《何のことかしら? とにかく帰還して。次の試合に備えるわよ》
「了解だ。しかしまぁ、我ながら信じられんな・・・・・・」
〔作戦目標クリア。システム、通常モードに移行します〕
機体が戦闘システムを解除したことを確認すると、俺は真っ直ぐにアリーナピットへと戻っていった。
~Side over~
レイキャシール「初の対IS戦を白星で飾ったレイブン。次に控えるは一夏の試合。果たして、彼らを待つ運命やいかに!?」
シーラ「それはそうと、話の中で出てきた『AIS』って何なのかしら? ビール好きな国で使われてそうな名前だけど・・・・・・」
レイキャシール「ISTD!! それ以上はネタバレになるぞ!!」
シーラ「二次創作な時点でネタバレも何も無いと思うけど・・・・・・。
次回、『IS-インフィニット・ストラトス LAST RAVEN』、『白式』。誰もが、生きるために戦っている・・・・・・」
レイキャシール「あ、AISについては、近いうちに解説回を設けるので、詳しくはその時にでも」