IS-インフィニット・ストラトス LAST RAVEN   作:レイキャシール

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レイキャシール「来るぞ・・・ついに・・・!」

セシリア「何が来るのですの?」

レイキャシール「興と干と、『青いアイツ』だ・・・!」


第Ⅵ話:龍と狐と対抗戦

~Side Ichika~

 

「よし、一夏。準備は良いな?」

「お、おう!!」

 

クラス対抗戦まで、残り数日と迫ったある日。

俺とレイブンはアリーナで、一回戦の相手を見据えた特訓をしていた。

その対戦相手と言うのが・・・・・・

 

「それにしても、初戦でいきなり鳳の奴と当たるとはな。やけに険悪だったが、何かあったのか?」

 

・・・・・・昨日の夜、派手に殴り合った鈴とだった。

 

「いや、それが・・・・・・解らないんだ」

「解らない? どっちが原因かもか?」

「ああ。一応、小学生の時にした約束は覚えていたんだけど・・・・・・」

「おおかた、どっちかが誤解していたんだろ。それより今は、あいつの専用機の対策をしないとな」

 

確か、鈴の専用機である『甲龍』はレイブンによると、『パワー重視の中量二脚型』らしい。

確かにカタログスペックは瞬発力と防御力を重視した仕様になっており、接近戦が想定されていることが解る。

問題は、俺と同じなようで違うと言うことだ。

白式とは違い、間違いなく飛び道具もある。それをいかにかいくぐるかが、今回の特訓の趣旨だ。

 

「準備はできているな? では始めるぞ」

「ああ、やってくれ!」

 

そう言って両手のレーザーライフルを向け、撃ってくるレイブン。

それを俺は、左右に動いて回避する。それも、ただ動いているのでは駄目だ。

 

「そう、その調子だ! 右へ動きつつ左に、左へ動きつつ右に動くことを意識するんだ!」

「っ・・・・・・解っているんだけど感覚が・・・・・・!!」

 

左右にゆらゆらと、まるで風に踊る木の葉のように動かねばならないため、PIC制御にかなり気を遣わなければならない。

この動き方、レイブンの言うところの『ダンシング・マニューバ』を、俺は教わっていたのだ。

 

「ほら右方向、サイクルが狭まってるぞ!!」

「しまったっ・・・・・・!」

 

この動き、只でさえ難しい上に少しの油断が命取りになる。

現に、俺は早速集中砲火を浴びてしまった。

 

「・・・・・・・しかたがない、少し休憩するか」

「なあ、レイブン」

「何だ?」

「この動きって、意味あるのか?」

 

一息入れるとあって、良い機会なので俺はレイブンに聞いてみることにした。

先ほどからレイブンの攻撃をダンシング・マニューバで避ける練習ばかり。肝心要の、鈴との対戦を見据えた特訓とは思えない。

 

「意味か・・・・・・ん、無い」

「はぁっ!?」

「正確には、左右『だけ』では意味が無い。左右だけで無く、前進と後退。上昇と下降。これら全てが合わさって、初めて完成するからな」

 

何だか某三大奥義みたいなことを言い出したレイブン。

あれか? 水面に映った俺の技と千冬姉の技が合体することで本当の技が見えてくるみたいなものなのか?

 

「どういうことだ・・・・・・?」

「一夏、未来位置予測って知ってるか?」

「ああ。相手の動く位置を予測して攻撃する、射撃の基本技能だっけか・・・・・・でもそれが何か関係あるのか?」

「ISに搭載されているFCSも、ある程度は未来位置を予測してくれるが、結局頼りになるのは搭乗者の目と腕だ。人の動きって奴は、上下と左右のどちらかだけだとある程度は素早く合わせられるが、斜めの動きも加わると途端に鈍くなる。この特性を利用して、微妙に未来位置予測を狂わせるのが、ダンシング・マニューバの正体だ。FCSや銃に異常は無し、なのに当たらない。素晴らしい戦闘機動だ」

 

そう言いつつ、訓練用の射撃ドローンを起動させるレイブン。

 

「まあ見とけよ。こいつが、ダンシング・マニューバのお手本だ」

 

そして、ドローンから放たれる銃弾を次々と避け始めた。

先ほどまで俺に教えていた通り、左右への切り返しや微妙な高度の調整、さらには遠近を巧みに切り替えて回避していく。

その動きは、決して派手では無い。どちらかと言えば地味だ。

昨今のISの試合では、競技用として使われていることもあって、堅実さよりも見た目を重視される傾向にあると聞いたことがある。

単純明快なこの攻撃だって、他のIS操縦者。例えば、セシリアだったら戦闘レンジのこともあってもう少し大きく動いて躱している。

そう言った意味だと、レイブンの動き方は単調でつまらない。

だが、それが実際の戦場だったら・・・・・・。

 

「戦場では、一挙手一投足が生死に関わってくる。本当にギリギリで躱していてはいずれ当たってしまうが、余裕を持ちすぎると今度は予測されやすくなる。それを見極めるのが、戦いに勝つコツだ。専用機を持っている以上、いつ実戦に引っ張り出されるかわからないからな」

「なるほど・・・・・・って、ほとんど当たってねぇ!?」

 

ガチリ、と言う金属音がしたと思うと、ドローンからの射撃が止まる。

レイブンには、それこそ片手で数える程度。それも、脚や非固定部位といった損傷をある程度無視出来る部位だけにしか当たっていなかった。

 

「もっとも、SEの削り合いになる競技試合じゃ、効果はあまり見込めないがな」

「それでも凄ぇよ・・・・・・。ISでこんな戦い方が出来るなんて!」

「これも、ISの持つ一つの可能性さ。さて、続きを始めるぞ!」

「・・・・・・おう!!」

 

ペットボトルの水を飲み干して、気合を入れ直す。

鈴の実力がどの程度でも、俺に出来ることはただ一つ。寄って斬る、それだけなのだから・・・・・・!

 

~Side over~

 

―――――――――

 

~Side Lingyin~

 

夕方。校舎の屋上で、あたしは黄昏れていた。

昨日の夜一夏と派手に喧嘩して、それ以来すれ違ってばかり。妥協してこっちから清算しようと思ったのも一度や二度じゃないけど、向こうはその気は全然無くて全面衝突は必至・・・・・・

 

「だったら、口より体で語ればいいじゃろう?」

「ふぁっ!?」

 

いきなり後ろから声を掛けられたと思うと、そこに立っていたのは、あたしの『先輩』だった。

お団子みたいな形にした黒髪に、浅黒い肌と水色の瞳。あたしよりも頭一つ分高い背丈に・・・・・・これだけは認めたく無いけど、歴然とした差のあるプロポーション。

 

「お久しぶりです、大姐(タージェ)!」

 

あたしと同じ、中国の代表候補。『大姐』こと(ウー) 明華(メイファ)その人だった。

 

「ん、息災そうで何よりじゃな、鈴音」

「それで、どういったお話でしょうか?」

「うむ。話というのは他でも無い。主に頼みたい事があっての・・・・・・まあ、本人に話して貰った方が良かろう」

「本人?」

 

そう言って大姐が手招きすると、屋上の入り口のから、もう一人の女子生徒が現れた。

一言で言うなら、「神秘的」って奴? とにかくそんな感じだった。

銀色のスプレーで塗装したかのような、文字通りの銀髪。額をやや出したミドルヘアーは知的な印象を感じさせる。金色の瞳に、切れ長の眉は少し冷たそうな雰囲気だけど、大姐が心から信頼している人であることは、間違いなさそうね。

 

「初見となる、ミス・鳳。私はジャクリーヌ・オーキッド。人からは、親しみを込めて“ジャック・O”と呼ばれている。君も、そう呼んでくれて構わない」

「え"っ・・・・・・!? で、でも・・・・・・」

「確かに、私と大姐はここの三年生だ。だが、私と大姐は所属も立場も違う。それに、我々の同士となるかもしれない者に対して、壁を作るべきではないからな」

「・・・・・・わかりまし「ああ、それと敬語も無しで頼む」・・・・・・わかったわよ、ジャック」

「それで良い。では、本題に入るとしよう、ミス・鈴音」

 

って、そう言っていた割に呼び名の前に『ミス』付けてるじゃん・・・・・・。

 

「性分なのでな。気にしないでくれ」

 

心を読まれた!? 千冬さんにしか読まれないと思っていたのに・・・・・・!

 

「話というのは他でも無い。ミス・鈴音、君は・・・・・・強いのか? 大姐から聞いた話では、一年で専用機を持つに足るほどのものらしいが」

「まあ、それなりには自信があるつもりよ。少なくとも、素人よりは」

「ならば話は早い。第一アリーナへ来てくれ」

「い、今から!?」

「そうだ。遅れるなよ?」

 

そう言って、大姐と一緒に屋上から去って行く先輩、もといジャック。

神秘的通り過ぎて、頭のネジがひん曲がってるんじゃないかしら・・・・・・?

 

―――――――

 

それから小一時間後。あたしは、自分の愛機―甲龍を装着してアリーナで待っていた。

隣には、同じく専用機のエイミングホークを纏った大姐もいる。

 

「そう言えば大姐。ジャック・Oってどこかの代表候補だったりするんですか?」

 

彼女のことでどうも引っかかることがある。

『実力を試す』みたいな事を言っていた以上、それなりの腕があるのは間違いないと思う。

けど、代表候補として本国にいた頃は、彼女の情報は一切入ってこなかった気がする。

 

「ああ、そのことか・・・・・・。鈴音、『アーク』は知っておるか?」

「確か・・・・・・国籍や年齢を問わず、一流のIS操縦者を育成していた教育機関、ですよね? でも四年前に壊滅したそこと、何の関係が・・・・・・?」

 

『アーク』。

かつて、IS学園と並び称されたIS操縦者の育成機関。学園の方は学校としての側面が強いのに対し、向こうは文字通りの養成所。厳しい訓練を耐え抜き、卒業できるのはほんの一握り。誰が言い出したかは知らないけど、『虎の穴』なんて呼ばれていた。

四年前に、突如として壊滅的な打撃を受け、そのまま空中分解してしまった曰く付きの組織だ。

 

「ジャックはその、『アーク』の最後のメンバーだった女じゃ。実力は折り紙付きじゃて」

「・・・・・・」

「まあ、実際にぶつかってみれば解るじゃろ。噂をすれば、じゃ」

 

すると、アリーナの反対側のピットから、一機のISが飛んできた。

角張った非固定部位(アンロックユニット)に、流線型の胸部アーマー。そして、釣り鐘のような太い両脚。何より、一番特徴的なのは頭。

まるでシルクハットの様な形をした円筒型のパーツを被っている。それも、所謂ゴスロリ服のアクセサリーなんかに使われるような小さなものではなく、昔の欧米映画に出てきそうな、本格的なものをだ。

持っている武器も、強そうなのばかり。背中の連装ミサイルに、左手には大砲。そして右手には・・・・・・あたしの身長くらいはありそうな、馬鹿でかい銃が握られていた。

 

「待たせてすまないな、二人とも。ミス・鈴音に見せるのは初めてだったか。これが私の専用機、『フォックス・アイ』だ」

 

『狐の瞳』、か・・・・・・。なかなか小洒落た名前ね。でも・・・・・・!

 

「実力が伴わなければ、意味は無いわよ?」

「ふむ・・・・・・それもそうだな。君という人間が、少しだけ解ったような気がする」

「そりゃどうも。じゃあ、さっさと始めましょうか?」

「良いだろう。私の描く『絵』に相応しい実力か否か、試させて貰うぞ!」

 

相手は三年生。胸を借りるつもりで行こうじゃないの!!

 

~Side over~

 

~Side Third Parsons~

 

時は流れ、五月も半ばまで過ぎたこの頃。

待ちに待った、クラス対抗戦の日がやってきたのだ。

喧嘩の原因を探し求める者。相手に謝罪させるべく意気込む者。そして、優勝賞品に目が眩んだ者・・・・・・・・・・・・。

それぞれの思惑を乗せて、少女達は鋼の甲冑を身に纏う。その裏で、ひたひたと近づく『何か』に気付くこと無く・・・・・・。

 

――――――――

 

一回戦第一試合。一夏と鈴音は、それぞれ白式と甲龍を身に纏い、アリーナの中空で互いに睨み合っていた。

『竜虎相打つ』と言う諺があるが、二人の心境を表すなら、その一言に尽きるだろう。

 

「逃げずによく来たわね。それだけは褒めてあげるわ」

「そんなことより、この前のアレ。まさか忘れたわけじゃないよな?」

「当然。生まれてこの方、嘘と背後霊はついたことが無いのが自慢だもの。あたしが勝ったら、焼けた鉄板の上で土下座して貰うわよ。その代わり、アンタが勝ったら何でも言うこと聞いたげる」

「二言は、無いな?」

「言ったはずよ? 嘘はついたことが無いって」

「上等だ・・・・・・!」

〔メインシステム、戦闘モード起動します〕

「それじゃあ、遠慮無く・・・・・・!」

〔戦闘システム 起動〕

 

そう言って、雪片弐型を正眼に構える一夏。対する鈴音も、背中に担いでいた青竜刀を抜き放った。

もはや言葉は不要。そのことは、二人が一番よく分かっている。

 

「「ぶっ潰す!!」」

 

試合開始のブザーが鳴り響き、突貫する両者。

白と臙脂、二つの影が中間地点で交錯し、その度に火花が散る。

 

「・・・・・・この動き、乗って二日足らずとは思えないわね・・・・・・!」

「超が付くほどのスパルタコーチが、二人もいるからな。密度だけなら、お前にも負けないぜ!!」

「言ってくれるじゃないの! それじゃあ奥の手!!」

「っ・・・・・・!?」

 

不意に、スパイク状の非固定部位が開いたと思うと、そこから見えない『何か』が放たれた。

しかし、直感的に平行移動したため、一夏は事なきを得る。

 

「い、今のは!?」

「言っておくけど、今のはジャブだからね!!」

 

―――――――

 

「拙いな・・・・・・!」

 

一方の管制室で試合を観戦しているレイブン達。

先ほどの鈴音の攻撃を見たレイブンは、表情を曇らせていた。

 

「何が拙いんだ、レイブン?」

「ああ・・・・・・。二人は、俺が一夏に回避技術を教え込んだのは知ってるよな?」

「ええ、確か・・・・・・“ダンシング・マニューバ”、ですわよね? それが何か?」

「そうだ。少なくとも、撃つ瞬間を見ていれば大抵避けられるようにな。だが、問題は鳳が使った武器・・・・・・『衝撃砲』だ」

「衝撃砲・・・・・・!?」

「確かに、レイブン君の言うとおり拙いですね」

 

そう言って、レイブン達に真耶から手渡されたのは、紙媒体に書かれた鈴音の専用機、“甲龍”の図面だった。

 

「衝撃砲というのは、空間を圧縮して砲身を形成し、その際に生じる余剰出力を弾丸の様にして発射する第三世代兵器です。もともと存在しないものを作り出すんですから、射角は実質無限ですし、砲弾も砲身も視認できません。つまり、相手の武器の照準を狂わせて回避するダンシング・マニューバとは、特に相性が悪いんです」

「だが、対策が無いわけでも無いぞ」

 

そう言って、モニターを見つつ人差し指を立てる千冬。

同じ特性の機体に乗っていたが故の、自信だろう。

 

「いくら射角が無限と言っても、咄嗟に撃てるのは操縦者の視界の範囲内に限られる。それに、発射には僅かだが、インターバルがある。そこを瞬間加速(イグニッションブースト)で突けば、代表候補クラスが相手でも勝機はある。・・・・・・二度目は無いがな」

 

―――――――

 

一方で試合の方は、徐々に均衡が崩れそうになっていた。

最初は一方的に撃たれるだけだった一夏だが、徐々に衝撃砲の発射サイクルを読み始めたからだ。

初見ではまず回避できないであろう、衝撃砲を何度も躱されている鈴音の表情に、次第に焦りが見え始める。

 

「このっ、チョロチョロと・・・・・・!」

「良し。解ってきたぜ、このロジック!」

「だーっ!! もう鬱陶しいっ!!」

 

遂に痺れを切らしたのか、高出力弾のチャージを始める鈴音。それによって、弾幕が途切れた瞬間を、一夏は見逃さなかった。

瞬間加速を発動して一気に懐へと潜り込み、彼女に体当たりする。

そして、相手が怯んだと同時に手に握られた太刀―雪片弐型の刃を展開して振り下ろした。

 

「っ!?」

「これで・・・・・・終わりだぁっ!!!」

 

光の刃が叩き付けられんとする、まさにその時だった。

アリーナの上空を覆っていたシールドバリアが青い光によって突き破られ、そこから『何か』が侵入したのは。

 

 

〔高エネルギー反応を確認。識別不能、該当データ無し〕

 

 

~Side Over~

 




レイブン「おい」

レイキャシール「何だ?」

レイブン「侵入してきた不明機は、『アレ』か?」

レイキャシール「さぁて、ねぇ? それは今は言えないな。
次回、『IS-インフィニット・ストラトス LAST RAVEN』。第七話、『粉砕する者、現る。』。誰もが、生きるために戦っている・・・」

???「それよりボク達の出番はまだ?」

???「もうMANGAは読み飽きたぞ・・・」

レイキャシール「はいはい、もう少しだけ待つのじゃ」
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