翌日、七海ちゃんは治ったみたいで登校してきた。
もう風邪は大丈夫だと笑う七海ちゃんの顔はまだ少し赤かったので心配だったが熱はないようだ。
あの時のことは、俺だけの秘密として心の中にしまうことにした。
そして、さらに後日、月の約束通り、俺達は大鬼山キャンプ場に到着していた。
柚希ちゃんは、初めてくるキャンプ場に感嘆の声をあげていた。
「ここに来るの、結構久しぶりな気がするな。」
「俺たちでやる時はわざわざここにはこんからのー、中二の時以来か?」
「あー、青大が火傷して、半泣きになってた時だね。」
「ばっばか!泣いとらんし、変なこと思い出すな!」
「なになに?青大くん泣いてたの?」
「泣いとらん!」
わいわいしている、俺たちに月が喝を入れる。
「こらっ!律人はともかく、そこの2人はハメ外しすぎて、神咲先輩を困らせんといてよ!」
「お前の方こそ、神咲先輩に嫌われるような失敗せんようにな。」
「私の方は心配いらんから、テキトーに楽しんどきんさい!」
そうこうしているうちに、噂の成海さんがやって来た。
「うぃーす!待たせたみたいじゃな。」
「こんにちは、成海さん。」
ほかの3人も挨拶する。
「律に桐島たちまで呼んでしもぉて悪いのー!まぁ今日は楽しもうや!」
「俺は全然大丈夫ですよ。」
月はというと...成海さんが来た途端しおらしくなり、挙動不審になっている。
おいおい、大丈夫なのか?
「ほんじゃいこぉかの!」
俺達はキャンプ場へと歩き出す。
そして、火起こし班と、料理班に分かれることとなった。
青大が気を利かせて柚希ちゃんと俺と青人で料理班になろうとしたが、失敗に終わり、男3人で火起こしをすることになっていた。
...といっても、主に青大が火を起こしているんだけど。
青大の作戦は、青大が火を起こしている間に成海さんと月をくっつけるように色々と情報を俺が聞き出すということだった。
「なぁ律、お前、七海のことほんとはどうおもぉとるんじゃ?」
...先手を打たれてしまったがこれならなおさら聞き出しやすい。
「七海ちゃんはただの友達ですよ。成海さんこそ好きな相手はいないんですか?」
「ただの友達ねぇ...この間、律が七海のお見舞いに来た時、七海の手の甲にキスするのが...」
「ちょっ!...成海さん、少し向こうで話しましょう。青大!あと頼んで大丈夫?」
青大は火起こしに夢中でさっきの会話は全く聞こえていない様子だった。
「おぉ!こっちは大丈夫じゃ!」
俺と成海さんは少し離れたところに腰を下ろす。
「...見てたんですか?」
「あぁ、俺の部屋は七海の部屋の奥じゃからな、少しのぞいてみたら、たまたま見えてしもぉたんじゃ。」
これはもう言い逃れ出来ない。成海さんは鋭い人だから下手な言い訳すればバレてしまう。
「もう一度聞くぞ?律、七海のことどぉおもーとるんじゃ。」
最悪の手が浮かんだが方法はそれしかない。
青大のために...
俺は...うそつきだから...
「七海ちゃんのことは、正直迷惑してたんですよ。彼女でもないくせにいちいち看病なんかされても迷惑だ。知ってます?七海ちゃん、俺のこと好きみたいなんですよ。だから、ついでに遊んでみたんです。あの時、起きてるっぽかったから、キスしてやろうと思って。」
「...うそじゃろ?お前はそんなやつやない!」
「あんたは、何も知らないだけでしょ。俺のどこを見てきたのか知らないけど、勘違いにも程がありますよ。」
「...なぁ律、頼むからそんな顔してそんなこと言うなや...こっちまで辛くなるわ。」
「...」
「何か事情があるんか?七海には言わんから話してみぃや。」
やっぱり、この人には通用しないか...実際にキスしたのを見られてたら言い逃れなんか出来っこなかった。
「俺、七海ちゃんのこと...好きです。初めて女の子を愛おしいと思いました。でも、それは伝えたらいけないんです。青大が...七海ちゃんのことを好きだから...俺は、親友の好きな人を横から奪うような真似したくないんです...」
「そんな、事情があったんか...でも、俺からしたらそれがなんじゃ!と思うわ。」
成海さんはなんともないことのようにそう言った。
「無傷のままで人を愛そうとするなんて甘いんじゃ。それに、そんなことでお前らの友情は壊れるんか?その程度の仲だったんか?誰も傷つかん恋愛なんて存在せんわ!」
「...俺はそれでも、青大の恋愛を応援します。誰かが傷つくのが恋愛なら、俺が傷つきます。...お願いします、成海さん。このことは誰にも言わないで下さい。」
俺は頭を下げる。
成海さんはため息をつき、俺の頭を撫でる。
「...わかったわ。律がそう言うんじゃったら誰にも言わん。お前はほんまに、優しい通り越して馬鹿じゃな。...それでも、俺が願うのは七海の幸せと、お前の幸せじゃ。それだけは覚えとくんじゃな。」
「はい...」
俺達は、バーベキューをする場所に戻る。
そこに戻ると、柚希ちゃんと、青大がなにやら喧嘩をしていて、月が1人で材料を切っていた。
「なにしとんじゃ、あいつらは...」
「成海さん、月のところにいってください。俺は、あの2人の喧嘩をとめてきます。」
そして、俺は青大と柚希ちゃんをなだめ、成海さんは月と楽しそうに食材を切ったりしていた。
結果オーライってやつだな。
「はー楽しかったのー!そんじゃ火片して帰るかの!」
「あ、じゃあうちらはゴミ出してきます!」
柚希ちゃんと月のがゴミを出しに行き、俺達は3人で火の処理や後片付けをする。
月達が戻り、俺達はそれぞれ家へと帰る。
青大side
みんなが帰ったあと、俺は成海さんに呼び出された。
枝葉がついてこようとしたが、神咲先輩に呼ばれたと言うと大人しく家で待つようじゃった。
話の内容はだいたいわかっとる。
俺は、待ち合わせの場所までチャリで向かった。
「おう、きたな、桐島。」
「2人で会って話すのはあの時以来ですね。」
「そうじゃな。」
「今日、律人なんて言ってましたか?」
「やっぱり、律は七海のこと好きて言うとったわ。試すようなこと言って悪いと思ったんじゃけどな。さすがにキスしたの見た言うたら、話してくれたわ。」
今日のキャンプは月と神咲先輩をくっつける以外に律人の本心をちゃんと聞き出そうと、2人で計画していたのだ。
「そうですか...」
あの時...そう、神咲が...律人に想いを告げた日...
俺はあの日、律人に神咲のことを相談したあと、自分で解決しようとして、神咲を探した。
神咲は駐輪場で神妙な面持ちのまま、誰かを待っているようじゃった。
俺はとっさに近くに身を隠す。
誰を待っているかは考えんでも分かる。
あんな表情で待っているということは告白をするということなんじゃな...
律人は神咲のこと、ほんとはどうおもーとるんじゃろ...
律人はわかりづらいからな...。
そんなことを考えていると、律人が現れた。
案の定、神咲は律人に想いを告げた。
正直、ショックじゃったが、律人はすぐに断った。
神咲は精いっぱいの笑顔を見せて走り去っていく。
ほんとに、神咲の事はただの友達じゃったんじゃな。
そう思って帰ろうとした。
しかし、何か気になり、律人の方を振り向いた。
あの時、振り向かなければよかった。
律人は、今まで見せたことのないような表情をしていた。
言葉では言い表せんような、苦しい表情。
そうか...両想いだったんじゃな...
後ろから神咲先輩に声をかけられた。
「お前、確か、律の友達の桐島じゃったな。さっきの見とったじゃろ。」
「あんたは確か...神咲の兄貴...」
「そうじゃ、その顔を見ると、お前も七海のこと好きなんじゃな...」
俺は、さっきの出来事でいっぱいで、隠す気にもならなかった。
「はい。神咲のこと好きです。神咲が律人のこと好きなのも知っとりました...」
「そうか...じゃあ、さっき、律が断った意味も分かるか?」
「多分...俺の為ですよね?」
「分かっとるやないか、まぁ俺もお前を見て分かったんじゃけどな。それで?どうするつもりじゃ。」
俺は、律人のことを尊敬してる。誰にでも優しく、頼りになり、落ち着いていて大人びている。
神咲のようなやつにはお似合いの男じゃ...
それなら、俺がどうするかなんて決まっとるはずなのに...
そんな俺を見透かして、神咲先輩は言った。
「お前に、律の真似は出来んぞ。考えるのと実行するのじゃ全然違うからの。けど、律はそれをやる男なんじゃ。自分の幸せより、親友の幸せを心から願えるやつなんじゃ。」
さらに続ける。
「律のためにどうすればええかなんて、俺にも今は分からん。じゃけど、お前が今、身を引いて律が喜ぶと思うか?」
「...少し考えます。」
「それがええな。これ、俺の番号とアドレスじゃ。なんかあったらかけてこい。」
そして、俺達は家に帰った。
「それで...桐島は答えは出たんか?」
「...俺は、今の俺の気持ちに区切りをつけるために、神咲に告白します。」
「そうか...柚希ちゃんのことはどうおもーとるんじゃ?」
枝葉に告白されたことも、この人には一応話していた。
「枝葉に告白されてから、俺はあいつのことが気になっていっているんじゃと思います。...まだ確信は持てません。けど、日に日に枝葉の事を考える時間が増えているのは確かです。神咲のこと吹っ切れていないわけじゃないんですが、区切りをつけんと気持ち悪いんです。」
「それが、お前が出した答えなんじゃな...」
「はい。律人が俺のこと考えてくれているのと同じくらい俺もあいつの幸せを願っとるんです。けど、吹っ切れたて言うたら、律人は変に勘繰ると思うんです。じゃから、告白するのが一番ええと思いました。」
「そのために、今まで七海のこと好きじゃと律に思い込ませるように仕向けとったて訳か...律もお前もお互いええ友達もったな、羨ましいわ。」
「あいつは最高の親友です。神咲のこと話題にしても、平気な顔して相談に乗るような優しいやつですから」
「今日も、自分が悪者になってまで七海のことや、お前のこと秘密にしようとしとった程じゃからな...悪かったの。お前のことよく知りもせんで律の真似はできんとか言うてしまって」
「ええんです。あの時の俺は確かに、自分のことばっか考えとりましたから。」
「そうじゃな...律はすぐ親友をとったのにな。」
「お、俺も結果的には親友をとりました...」
そんな会話に神咲先輩は笑い出す。
そんなこんなで俺達は家へと帰ることになった。
律人、今度は俺が背中を押す番じゃ...
ここにいない親友につぶやく。
今回は色々と辻褄を合わせなければいけない部分があり、文章がおかしくなっているかもしれません( ̄▽ ̄;)
指摘やわかりづらいことなどは質問してください!
みなさん、たくさんのお気に入りや感想などありがとうございます。
これからも頑張ります!