バーベキューを終え、俺は部活にでていた。
風邪も治り、部活にも復帰したので、後は夏の大会に向けてひたすら練習だ。
うちの高校はサッカー部がなく、野球部はそこそこ人数が多いので、まだ一年生の俺は出番はないと思っていたのだが、主将の成海さんの指示(強制ともいう...)でレギュラーとして、ベンチ入りすることになっていた。
「おらー!声出せ!俺ら3年の最後の夏なんじゃぞ!」
成海さん達三年生は圧倒される程気合が入っていた。
地獄のノックを乗り越え、部活は終了となった。
俺はベンチに座って、空を見上げていた。
尊は地べたにのびている。
他の部員達も、その場から動けないようで、各々、座り込んだり、仰向けに倒れたりして、肩で息をしていた。
「お疲れ様!律くん!はい!ドリンク!」
七海ちゃんが動けない部員ひとりひとりに、ドリンクを渡していて、俺にもまわってきた。
「ありがと。」
「どういたしまして!お兄ちゃん達、気合い入っとるね...」
「最後の夏だからね。必死にもなるよ。」
「律くんはすごいね。一年生でレギュラーだもん!練習みとったら当然だとおもっちゃうけど。」
「そんなでもないよ。それにすごい重圧かかるから、いっぱいいっぱいなんだ...」
「律くんなら、きっと大丈夫だよ!」
「うん。頑張るよ!」
「応援しとるよ!あ、律くん、今日一緒に帰ろうよ!」
一緒に...か
正直、この前から色々と七海ちゃん絡みのことで色々ありすぎて、少し、距離をおこうと考えていたのだ。
告白されたり、七海ちゃんにキスしてしまったり、それを成海さんに見られたり...
距離を置くといっても、あからさまに避けるわけではなく、不自然に見えない程度に行動しようと思っているのだ。
つまりは、完全なふたりきりを避けるということ。
青大にも罪悪感をかんじてしまうし、俺自身も気持ちを諦めるためということが理由だ。
「ごめん、今日だめだ...。」
「あ...そうなんや。分かった!じゃあまた明日ね!」
少し悲しそうにして、七海ちゃんは去っていく。
俺は、七海ちゃんのこと傷つけたり、迷惑かけてばっかりだな...
俺も着替えるために部室に向かい。少し時間をおいてから、家に帰った。
後日、午前中の授業が終わり、いつものメンバーでご飯を食べ終えたあとに、青大が声をかけてきた。
「なぁ律人。ちょっとええか?」
「ん?いいよ。どしたの?」
「ここじゃ、あれやから屋上いかんか?」
「分かった。」
俺達はそのまま屋上に向かった。
青大はいつになく神妙な面持ちで話し出す。
「あのな、俺、神咲に告白しようとおもーとるんじゃ。」
「まじ!?」
「まじじゃ!そろそろ、気持ちを伝えたいとおもぉたんじゃ。いつまでもこのままじゃだめなんじゃって、月をみてわかったわ。」
「そっか...青大も成長したんだな...」
「なぁ、律人。」
「なに?」
「俺が告白に失敗したら、神咲、俺たちの輪の中に入りづらくなると思うんじゃ、じゃから、もし失敗したら神咲をフォローしてやってくれんか?」
「ん...多分大丈夫だとおもうけど、分かったよ。」
「ありがとう。そんじゃ、そろそろ教室に戻るか!」
俺達は屋上をあとにした。
青大side
今日の3時間目の授業中に神咲から、メールが入った。
『放課後、話したいことがあるので、音楽室に来てください。』
前までの俺やったら、勘違いしてめっちゃ喜んどったんじゃろうな...
多分、話とは律人のことだろうと思う。
俺は休み時間に、神咲先輩にメールを送る。
『今日、告白してきます。』
神咲先輩からはすぐに返信がきた。
『そうか...なんといったらいいかわからんけど、しっかりやってこい!』
そして、昼休みには律人にこのことを伝える。
律人は喜んでくれとるようじゃった。
まぁ、奥手な俺が告白するなんて言ったらえらい進歩じゃからな。
改めて考えても律人はすごいやつじゃ。
俺だったら、自分の好きな相手が告白されるされるなんて聞いたら気になっていてもたってもおれんやろうな...
というか...ほんとに告白するんじゃな...
俺は午後の授業も頭に入らないまま放課後を迎えた。
帰る支度をして、音楽室に向かう。
「すこし、はやかったかの...」
窓から外を覗くと、生徒達がそれぞれ学校をあとにするのがみえる。
太陽は夕焼けに変わり、音楽室をオレンジ色に染めていた。
枝葉はもう帰ったんじゃろうか...もしかしたら、俺のこと待っとるかもしれんな...
音楽室の扉が開く音がした。
「あっ、桐島くん。ごめんね!遅れて。」
神咲が姿を現す。急いで来たのか、少し息を切らしていた。
「ええよ、どうせ暇じゃから。それより、話ってなんなんじゃ?」
「うん...その...律くんのことなんやけど...最近、私のこと避けとるような気がするんよね...桐島くんならなんか知っとるかもとおもーて...」
案の定、律人のことじゃったな。避けとるっていうのは初耳やったけど、大体なんでかというのはわかる。
多分、俺に気ぃつこーとるんじゃな...
でも、それは俺が神咲に伝えることやない。
「律人にも、きっとなんか事情があるんじゃろ。気にせんでもすぐ元通りになる!」
「そうかな...」
神咲はすこし悲しそうにうつむく。
神咲は律人のことになると、ほんとにいろんな表情を見せるんじゃな。
これが恋ってやつなんじゃな...
思えば、はじめて会った時から、神咲は律人しかみとらんかったな...
俺が好きになった神咲七海ゆう女の子は、一ノ瀬律人を好きな神咲七海じゃった。
気づいとったけど、気づかんふりをしとった。
好きな相手が律人なら、勝ち目はないておもーたし、ただ見とくだけでも幸せじゃと思っとった。
人間て欲張りなんじゃな...
好きになったすぐは、見てるだけで満足する。仲良ぉなってきたら、それだけじゃ足りなくて、触れたい、そばにいたいといろんな欲求がとめどなくでてくるんじゃ。
それを、律は全部押し殺しとったんじゃな...
「なぁ神咲...」
「ん?なに?」
「俺、初めて神咲と会った時から、神咲と仲良くなりたいとずっとおもぉとったんじゃ」
「...うん。」
「中学の最後から、少しずつ話すようになっていって、礼儀正しくて、まわりに気つかえるええ子なんじゃと思った。」
「...」
「俺、神咲のことが好きやったんじゃ。」
「...うん、なんとなく気付いとった...」
「返事聞かせてもらえるか?」
「...ごめんなさい。私、好きな人がいます。」
「...そっか、ありがとうな。」
「なんでお礼言うの?」
「ちゃんとはっきり断ってくれたからじゃ...好きな人て律人のことじゃろ?」
「...うん。」
「頑張れよ。応援しとるから。それからフったからって変な気ぃ遣うのはナシやからな!」
「これからも友達として仲良ぉ出来るん...?」
「当たり前じゃ!これでちゃんと吹っ切れたわ!じゃあ、俺、そろそろ帰るな!また明日!」
「うん!また明日!」
音楽室をでた俺は駐輪場へと歩く。
これで終わったんじゃ...
ずっと、好きじゃった。いざ吹っ切るためと言っても辛いものは辛い。
目の前で、好きな人から直接振られるんはこんなにつらいんじゃな...
「青大くん。」
俺の自転車のそばに枝葉が立っとった。
「枝葉...」
「よく頑張ったね。」
枝葉は俺を優しく抱きしめる。
「こんなとこで...誰かに見られたらどうするんじゃ...」
「青大君の泣き顔を隠してあげてるんだよ。」
「ないとらんわ...」
そういったものの涙が溢れてくる。
俺は声を殺して枝葉の胸で泣いた。
いつまでそうしていたじゃろうか、涙がかれた俺の手を枝葉が優しく握る。
「さ、帰ろう?青大くん!」
枝葉の笑顔が夕焼けと重なり、とても眩しく、とても綺麗じゃと思った。
「そうじゃな...」
俺はきっと、大丈夫じゃ。
枝葉を見ていると自然とそう思った。
夕焼けを背に俺達は家へと帰った。
ここ最近冷え込みますね:(´◦ω◦`):
皆さんも風邪などにはお気をつけ下さい!