家に帰り、夕食をすませ、風呂に入って部屋に戻ると、青大から着信が入っていた。
多分、七海ちゃんのことだろうな...
成功したのかな...最近、七海ちゃんと青大が話してるのをよく見かけるようになったから、脈はありそうだもんな...
俺のことなんて...もう...
そう考えて、思考をとめる。
だめだな、応援するって決めたのにウジウジ気にして。
頭を切り替え、青大に折り返しの電話を入れる。
3コールほど鳴ったところで青大の声が聞こえる。
「もしもし、律人、今大丈夫か?」
「うん。どした?」
何についてか分かっていながら、気にしていないふりを装いそう聞いた。
「神咲にちゃんと告白した。」
「そっか...よく頑張ったな。どうだった?」
「だめじゃった。」
言葉とは裏腹に、青大は満足気にそう言った。
「そっか...大丈夫か?」
「あぁ!振られたらスッキリしたわ!きっぱり諦めることにした!」
青大は本心からそう言っているようだった。
ほんとは、青大のことだから振られた直後はすごいショックだったんだろうな...
「そっか!青大がそういうなら、良かったてことでいいな!」
「おう!...じゃからな...」
青大はすこし間を置き、次の言葉を話し出す。
「次は律人の番じゃ。」
「...え?」
「もう、俺には遠慮はいらん!律人の好きなようにしたらええんじゃ!」
なにいってるんだ...?
もしかして、青大...
「なんのことだよ...」
「悪いな、律人。俺、ほんとはお前の気持ち知っとったんじゃ。それでも、気持ちを抑えられんかった...。じゃから、一か八かで告ったんじゃ。」
「いつから...いつから気づいてたの?」
「...俺はあのとき...律人が神咲に告白されるのをたまたま見てしまったんじゃ。律人の気持ちに気づいたのは断った後の表情とかで分かった。」
見られてたのか。
ほんとつくづくついてないな...
「青大、もしかして、それが原因で諦めようとして、告白したの?」
「それは...正直に言ったらそれもある。けどな...本当の理由は自分の気持ちをはっきりさせておきたかったんじゃ。自分の中の揺れる気持ちに...神咲のことは本気で好きじゃと思っとったけど、枝葉のことも、ほっとけん自分がおったんじゃ。」
やっぱり、柚希ちゃんと七海ちゃんで揺れてたのか...
「けど、それに気付くのが多分、嫌じゃったんじゃ。枝葉のこと、煩わしいとか思いながら、気になっていく自分が嫌じゃった。だから、神咲が好きなんじゃて自分に言い聞かせて、律人にもそう言いよった。神咲が律人に告白したとき、もちろん辛かったけど、それが枝葉じゃったらと考えたら、それ以上に苦しくなったんじゃ。それではじめてわかったんじゃ...」
「俺は、神咲のこと以上に枝葉のことをいつの間にか好きになっとった。」
そっか...あの2人は昔から、何か見えない何かで結ばれてたんだな。
だから、ずっと好きだった神咲への想いすらも上回る程、柚希ちゃんに引き寄せられていってたんだ。
「じゃからな...律人、俺はもう神咲のことはなんとも思っとらんのじゃ。それにな、親友の幸せを願っとるのはお前だけじゃないんや!俺だって同じ気持ちなんじゃぞ!もう、素直になってもええんじゃ。」
青大の言葉が心の奥に押し殺した俺の想いを、ゆっくり溶かしていく。
「...ありがとう、青大。お前は最高の親友だよ...」
「次は俺が律人を応援する番じゃ!頑張れよ!一ノ瀬律人!」
「ばか、青大もこれからまた柚希ちゃんに向けて頑張るんでしょ。俺にも応援させなよ。」
「そうじゃな!お互い、幸せになろうや!」
「おう!」
そう言って俺達は電話を切る。
様々な想いが駆け巡った俺は、ここ最近で一番穏やかで、温かい気持ちのまま眠りについた。
翌日、学校では、新入生の親睦を深めるため、遠足の計画がたてられていた。
クラスのあちこちか
親睦を深めるといっても、ほとんどが中学からの持ち上がりのため、大体のグループは決まっている。
「律人!もちろん俺たち一緒の班になるじゃろ?」
尊と青大が誘ってくる。
「まぁいつものメンバーになるよね。」
班は6人編成となる。俺、青大、尊、月はいつも通り同じ班だ。
「枝葉も入れてええか?」
「もちろんじゃ!」
それに、柚希ちゃんが加わり、あと1人。
青大が横目でこちらを見てくる。
月と、尊からも七海ちゃんを誘えというのが視線で伝わってくる。
「七海ちゃん。」
「あ、はい!」
「良かったら、一緒にまわらない?」
今まで、七海ちゃんを避けていたのがなんとなく分かっていたのか、ほんとにええの?という顔をしている。
「だめかな?」
「だめやないよ!...でも、ええの?」
「もちろんだよ、一緒に楽しもうよ!」
そう言うと七海ちゃんはとびきりの笑顔を見せる。
「うん!よろしくね!みんな!」
クラス全員の班が決まり、担任から遠足の説明が行われる。
遠足の場所は、宮島だ。クラスのあちこちからは「またかー」「ほかのとこが良かったねー」という声がちらほら聞こえてくる。
宮島は中学の時にも行ったので、少し面白みに欠ける気もするけど、柚希ちゃんはテンションが上がっていた。
「宮島だー!鹿さんたくさんいるかな?」
「宮島にはその辺に鹿がいるからね。初めて行った時は驚いたよ。」
「律人、あの時は珍しくテンション上がっとったもんな!」
「そーやったね。目輝かせとったよ。」
「尊も、月もすごいはしゃいでたじゃん。」
俺が初めて宮島に行ったのは小学5年の時だった。
青大達は小さい頃に行ったことがあると言って得意気になっていたが、改めて鹿を見ると、はしゃいでいたのでお互い様だ。
「律くんにもそんな時があったんやね!」
「あー七海ちゃんにも見せたかったわ。「みてよ!鹿が道歩いてるぞ!パンとかやっていいかな!?」とか言いよったな。」
「あんなはしゃいどる律人は初めて見たから、俺らまでテンション上がったわ。」
尊と青大が、しつこくからかってくる。
「うるさいな!仕方ないだろ!鹿なんて動物園でしか見たことなかったんだから!」
東京では、鹿なんてそこらにいるはずもないから、動物園で見るより余計に新鮮さがあったのだ。
「私も楽しみだな〜!みんなで楽しい遠足にしようね!」
「そうじゃな!今回は柚希ちゃんのはしゃいどる姿を見て楽しむか!」
「こいつは、何に対してもはしゃいどるじゃろーが。」
確かに。柚希ちゃんは喜怒哀楽の表現が激しいからな。
「そんな言い方しなくてもいいじゃんか〜!」
柚希ちゃんと、青大の言い合いが始まる。
なんだかんだほんとに仲いいな。
こうやって見るとほんとにお似合いだし、カップルに見える。
この2人ならきっとうまくいくと思う。
そして、遠足の計画をたて、午後の授業を終えて放課後となった。
今日は明日が遠足のため、部活は休みとなっている。
手早く帰り支度をすませ教室をでた。
下駄箱の所に七海ちゃんがいる。いまから帰るようだった。
「七海ちゃん。今帰り?」
「あ!律くん!そうだよ!」
「じゃあ...一緒に帰ろうよ。」
すると、七海ちゃんは少し驚いたような表情で俺を見る。
「え、いいの?」
今までことある事にふたりきりを避けていたからな。
七海ちゃんも何となく気づいてたんだろうな...
「もちろんだよ。それとも、俺とはもう一緒に帰りたくなくなっちゃった?」
気持ちが軽くなった俺は少し七海ちゃんをいじめてみた。
すると、ものすごい勢いで否定してくる。
「ちっちがう!ちがうんよ!...最近、律くん私を避けとるような気がしたから...」
やっぱり気づかれてた、思えば、俺が具合悪いのに一番最初に気づいたのも七海ちゃんだもんな。
成海さんの妹なだけあってカンがいい。
それとも...
少し自意識過剰だけど、まだ俺のこと好きだからそういうことに気づくのかな?
...そんなわけないか、振られて避けられてる相手に気持ちなんて残るわけないよな。
「きっと、七海ちゃんの気のせいだよ。帰ろうよ。」
「...うん!そうやね!」
俺達は並んで駐輪場に向かって歩き出す。
駐輪場で自転車に乗り、俺達は学校をあとにした。
しかし、その数分後、七海ちゃんの自転車に異変がおきた。
後輪のタイヤの空気が完全に抜けていて、こぎづらそうだ。
俺達は自転車から降りて、七海ちゃんの自転車をみてみる。
タイヤに釘が刺さっていた。
「パンクみたいだね。」
「えー!...どうしよう。」
「今日は歩いて帰ろうよ。自転車も持って帰らなきゃだし。」
「律くんはいいよ!!悪いから、先に帰ってて!」
「いいから、話しながら帰ったほうがただ歩いて帰るより早く着く気がするじゃん。付き合うよ。」
七海ちゃんは申し訳なさそうにうなづく。
「ごめんね...迷惑かけてしもーて...」
「大丈夫だって。ほら、帰ろう。」
「...うん。ありがとうね!」
俺達は自転車を押しながら家へと向かう。
「明日は、宮島に遠足やね!楽しみ!」
「七海ちゃんでも楽しみなんだね。中学の時にも行ったじゃん。」
「...今回は、律くんと一緒やから...」
七海ちゃんが小声で何かをつぶやく。
「なに?」
「なっなんでもない!ほら!今年は枝葉さんもおるやろ?だから、楽しそうやなーと思って!」
「確かに、楽しそうだね。柚希ちゃん見てると飽きないし。」
何に対しても、素直に喜びや驚きを表現する柚希ちゃんは見てて面白い。
「そうやね...私も枝葉さんみたいになりたいな...」
「どうして?」
「枝葉さんみたいやったら、すぐ人の輪に入れるやろ?...私、みんなと距離を感じるんよね。」
みんなと、距離を感じる...か。
確かに、俺、青大、尊、月は幼なじみだし、柚希ちゃんは昔からその輪の中にいたように、自然と入っている。
みんなと中学の終わりから仲良くなった七海ちゃんからすると、極端に言えば自分は場違いなんじゃないか?みんなに気を遣わせているのではないか?という不安があるのだろう。
「だから、柚希ちゃんみたいに、明るくて人見知りせずに輪の中に入っていきたいってこと?」
「うん...私、人見知りやから...」
七海ちゃんは俯き、そうもらしている。
それを俺は即答で否定する。
「七海ちゃんと距離をとっているやつなんていないよ。みんな、七海ちゃんのこと、大事な友達だと思ってるよ。」
七海ちゃんと距離をおいているやつはいない。
この前までは例外的に俺がそうしてしまっていたのだけど。
俺に関しては、七海ちゃんのこと、大事な友達というより、大切な人になりつつある...というか、もうなってるな。
距離をとってみても、七海ちゃんのことを目で追っている自分がいるし、おれにとってはもうかけがえのない存在になっているのだろう。
まぁそのことは本人にはまだ言えないが...
「大事な友達...かぁ。ほんとにみんなそう思ってくれとるんかな?」
不安気に問いかけてくる。
「もちろんだよ。少し言い方悪くなっちゃうけど、みんなと距離を感じている時点で七海ちゃん自身がみんなと距離をとっちゃってるんじゃないかな?それに...もし...例えばの話だけど、みんなが仮に距離をおいてたとしても、少なくとも俺は、七海ちゃんのこと大切だと思ってるよ。」
大事な友達とは言わず、大切だと言ったのは俺自身が友達という表現じゃ納得したくなかったからだ。
そう言うと、七海ちゃんは最後の言葉に顔をあげる。
「律くんにとって私は...大切?」
「うん。当たり前でしょ。みんなと距離を感じてるんなら、七海ちゃん自身、みんなにもう1歩踏み込んでみたらいいんだよ。」
七海ちゃんは笑顔を見せて答えた。
「1歩踏み出す勇気...かぁ。ありがとう!律くん!私、頑張るね!」
俺も同じく笑顔を見せて答える。
「頑張れ!神咲七海!一ノ瀬律人が応援してるよ!」
すると、七海ちゃんは敬礼のポーズをとり、
「了解です!律くん!」
と言った。
可愛い...
「えっ///?」
「え?」
七海ちゃんは赤くなり、驚いた顔をしている。
「今...可愛いって///」
嘘だろ。声にでてたのか...
これは言い逃れできない。
「はい...可愛かったです...ごめんなさい...」
まさか、声に出ていたとは...
というかこんなベタなシチュエーション現実でもあるんだな、と他人事のように考えてみたが、恥ずかしさは紛らわすことが出来なかった。
「可愛い...///」
七海ちゃん、戻ってきて〜
俺達は、お互いに顔を赤くし、無言のまま家に帰っていった。
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