君のいる町 if   作:中矢

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お久しぶりです! 中矢です!
長らくお待たせしました!
続話の投稿です!

なかなか時間が空いてしまったのもあり、ストーリーが曖昧になっている部分もありますが、久しぶりの投稿を楽しんで頂けると幸いです!


優しさの棘

「「お疲れ様ー!」」

 

文化祭当日、予想以上の盛り上がりを見せて幕を下ろし、これから後夜祭が行われる。

 

「お疲れ様、律くん!」

 

「お疲れ様、七海。」

 

「大盛況じゃったなぁ!」

 

「ほんと良かったね!」

 

七海と青大と柚希ちゃんがジュースを持って話しかけてくる。

 

俺たち一年生の出し物である、「執事&メイド喫茶」は、予想を遥かに上回る大盛況を見せた。

 

「まぁ、ほとんどは律人目当てじゃったけどな!」

 

「女の子たっくさん来てたね!」

 

そう、今日店に来てた客のほとんどが市内の女子高生や女子大生だった。

みんな、例の写真をどこかで見て、集まってきたという訳らしい。

 

まさか、そこまで広まってるなんて······

 

そんな中、黒いオーラを目一杯出している女の子が約一名。

 

「ほんと、色んな女の子が来とったねぇ······」

 

据わった目で俺をじっと見てくる。

 

「ばか、青大達のせいで七海の機嫌がまた悪くなっちゃったじゃんか!」

 

青大は頭をかきながら申し訳なさそうに謝る。

 

「わっ悪い······」

 

「ごめん······」

 

店に出ている時も、七海のオーラがヒシヒシと伝わってきて、なかなか集中して接客させてもらえなかった。

 

「じゃ、じゃあ俺らあっち行くから! 行くぞ、枝葉! またな、律人!」

 

二人は面倒事を避けるようにそさくさと退散していった。

 

「あいつら······」

 

残された俺達の間にはなんとも気まずい空気が流れる。

 

「と、とりあえずあそこに座ろうよ。」

 

俺は近くのベンチを指差し、七海を誘導する。

 

ベンチに座ると、七海は、はぁ、と溜息をつき

 

「律くんがモテるのは分かっとるもん······」

 

今度は一転、しおらしくなり、俯く。

 

「ごめん······不安にさせて。」

 

「律くんが謝る必要が無いことも分かっとるんよ······」

 

辺りはすっかり暗くなり、キャンプファイヤーに火が灯される。

 

「律くんは誰にでも優しいから······それは律くんのいい所だし······」

 

「七海······」

 

「私は律くんの彼女やから、小さいことで不安になる必要なんかないんやけどね······」

 

「けどやっぱり······」

 

────その優しさを私にだけ向けてほしいと思うのはワガママかな······?

 

その言葉に胸の奥が痛む。

 

「律くんの事が好きで好きでたまらないのに······律くんが望むなら、他の男の子と話さないことも出来るくらい好きなのに······」

 

────こんなに好きなのは私だけ?

 

七海はさっと立ち上がり、走り出す。

 

「ごめんね! 教室に忘れ物しちゃった!」

 

「あ、待って!」

 

七海は振り返らず行った。

 

残された俺は、ただ俯くしかなかった。

あそこまで、追い詰められてたなんて······

 

当たり前か······

 

そんな時、視界が真っ暗になる。

誰かが俺の視界を掌で遮っているのだ。

 

「だ〜れだ?」

 

「月か······」

 

視界を遮った者の正体は月だったのだ。

 

「こんな所でなにしよるんよ。 フォークダンス始まっとるよ?」

 

今はそんな気分じゃないし、そもそも相手である七海を悲しませてしまった。

 

「······どうしたん?」

 

「······七海を追い詰めてた。」

 

月は隣に座り、溜息をつく。

 

「遅かれ早かれ、こうなると思っとったんよね······」

 

「え?」

 

月はキャンプファイヤーの火を見ながら問い掛ける。

 

「七海ちゃん、我慢の限界が来たんじゃろ? あんた、誰にでも優しくしよるから。」

 

「どうして、分かったの?」

 

月はまた一つ溜息をついた。

 

「七海ちゃんの性格考えたら分かるよ。 あの子はほんとは凄く独占欲も強いから······ただ、律人に嫌われたくないから我慢しとっただけ。」

 

と言っても態度に出とったけどね、と言って月は苦笑する。

 

「今までは、態度には出すけど最終的には我慢しとったんよ。 それが積もり積もって······」

 

そっか······そうだよな。

 

懍にキスされた事を伝えた時も七海は怒りはしたけど、最終的に笑いかけてくれた。

 

いつも我慢してたんだ······

 

「律人。」

 

ばちっ!

 

瞬間俺は月に平手打ちをくらった。

目を丸くしている俺に月は問い掛ける。

 

「あんたは今なにしよるん? 七海ちゃんほったらかして一人で感傷にひたって、どうしたいん? なにより先に追いかけんさいよ!」

 

「月······」

 

「あんたが誰にでも優しいのは臆病なだけ! 何も失いたくないから誰にでも優しく振舞って······そんなんで本当に大切なもん失ってもええの!?」

 

月に叩かれた頬がヒリヒリと痛む。

 

「誰にでも優しくするのを悪いこととは言わんよ。 でも、七海ちゃんには······大切な人を不安にさせる優しさなんて無意味でしょ! 一度くらい何もかも無視して彼女だけを見てやりんさいよ!」

 

俺は立ち上がる。

 

ほんとは分かってた、俺の八方美人が七海を傷つけていることに。

 

ほんとは分かってた、七海が我慢してることに。

 

気付かないふりしてたんだ。

 

「月、ありがとう。」

 

「分かったならいいんよ、はよいきんさい!」

 

俺は頷き、七海が走っていった方に向かって全力で走る。

 

 

 

 

 

────律人が走り去ったあと、月はベンチに座り、空を仰いでいた。

 

「······あーあ、チャンスやったんかもしれんのに。」

 

結局ウチはお人好しやったってことやね。

 

「なーに黄昏とるんじゃ。」

 

「······変な奴が来た。」

 

尊はつかつかと歩いてきて、月の隣に座る。

 

「失礼なやつじゃのォ······慰めに来てやったんじゃぞ。」

 

「······さっきの見とったん?」

 

まぁな、と言って尊も同じように空を見上げる。

 

二人の間に沈黙が流れる。

 

しかし、それは不快なものでなく、信頼がもたらす心地よさがあった。

 

「なぁ、月。」

 

「なに?」

 

「俺、お前のこと好きじゃ。」

 

「知っとった。」

 

「······は!?」

 

月はイタズラな笑みを浮かべ、尊の方を向く。

 

「ウチ、他人からの好意には鋭いんよ。」

 

「まじかよ······」

 

そして、再び沈黙が流れる。

 

二度目の沈黙は片方は平然としており、片方は落ち着かない様子のものだった。

 

沈黙を破ったのは月の方からだった。

 

「尊。」

 

「な、なんじゃ?」

 

「ウチ、多分律人の事は忘れられんよ。」

 

「関係ないわ、律人との差は弁えとる。」

 

────それでもお前がええんじゃ。

 

「それに、一番は無理でも二番にはなれる!」

 

月は驚きの表情を一瞬だけ浮かべ、笑い出す。

 

「そこ笑うとこじゃないわ!」

 

「あんたなんか律人の足元にも及ばんよ!」

 

一通り笑い終えた月は小さく呟く。

 

「やっぱり変な奴。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




閲覧ありがとうございました!

本当に久しぶりの執筆で文書も拙いかも知れませんがそこは多目にみて下さい······

これからも投稿日はまちまちになってしまいますが、少しずつペースを戻そうと思っていますので、応援よろしくお願いします!
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