君のいる町 if   作:中矢

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6回目の投稿です!
お気に入りが少しずつ増えていきうれしい限りです。



あの頃の約束を

「こんにちわー!東京から来た枝葉柚希です!」

 

「こんにちは!律人です!」

 

俺達は今、2人で桐島家にやってきている。

 

あのあと、柚希には「このことは秘密だよ!たまたま近くで会ったことにしてね!」と言われた。

もちろんそのつもりだったがそんな言い方をされるとイケナイ事をしていた朝帰りの2人みたいに聞こえて少し笑えた。

 

奥から、「はーい」という声が聞こえて青大のお母さんが出てくる。

 

「あら、あなたが枝葉柚希ちゃんね!可愛らしい子じゃない!あれ?律人くんも一緒やったん?」

 

「はい、青大に呼ばれてきたら柚希に会ったので一緒にきました。」

 

「あら、そうなん!ということは、律人くんは柚希ちゃんのこと覚えとったんじゃね。」

 

「名前だけ聞いた時は忘れていたんですけど、実際に会ったら思い出しました。」

 

柚希から聞いた話によるとおばさんとおじさんには俺達3人のことを前もって話していたらしいのだ。

なので、思い出した俺には隠す必要はないという事と、引き続き青大には思い出すまで隠すということを提案した。

 

「柚希ちゃん、わざわざ遠い所までご苦労さま!さ、あがってあがって!」

 

「はい!これからお世話になります!」

 

柚希はしっかりとした礼儀を身につけており丁寧に挨拶を済まし家に入った。

 

「律人くんもあがって!あ、青大のこと呼んできてくれる?あの子、同居なんか認めん!律人が来るまでは降りんゆーて聞かんのよ。」

 

「そうなんですか。わかりました。呼んできます。」

俺は階段をあがり、青人を呼びに行った。

 

「青大。律人だけど...」

 

すると、ドアが開かれた。

 

「律人ォ、遅いわ!」

 

「ごめんごめん、くる途中で柚希ちゃんに会ったから一緒に来てたんだよ。ほらっ、一緒に行くから下降りよう。」

 

青大は半ば諦め気味にのそのそと下に降りていく。

 

1階からは柚希とおばさんの楽しそうな会話が聞こえている。

 

あのときは人見知りっぽかったけど今は誰とでも仲良くなれるようになったんだな。

 

そんなことを思いながら、青大と一緒に居間にむかった。

 

「あ、ほら青大!挨拶ぐらいしんさい!」

 

「ほら、青大。」

 

青大はそっぽを向きながらしぶしぶ挨拶をした。

 

「どぉも。桐島青大です...。」

 

柚希と俺は一瞬目を合わせ少し苦笑いしてから

 

「初めまして、枝葉柚希です!今日からよろしくお願いします!」

 

「ほんとにごめんねぇ柚希ちゃん、この子人見知りするんよ...青大も少しは律人くん見習ってシャキッとしんさい!」

 

「うるさいのぉ、律人と比べられたらたまらんわ...」

 

そんな青大に俺は昔と同じ言葉を笑いながら言った。

 

「青大はほんとにいつまでたっても子供だな。」

 

「うっ!やかましいわ!律人が大人びてるんじゃ!」

 

「あっ」

 

柚希は昔とおなじやりとりに気づいたようでクスクスと笑っていた。

 

「なにわろぉとるんじゃ...ほんまに災難じゃ。」

 

青大は小声でそう漏らしていて、どうやら結局気づかなかったらしい。

 

「あっそうじゃ!青大!春からは柚希ちゃんと同じ高校に通うんじゃけ、柚希ちゃんを学校まで案内してあげんさい」

 

「なっ!なんで俺が!」

 

「わぁー学校!見てみたい!」

 

青大が嫌がるのをよそに、柚希は見てみたくて仕方ないという感じだった。

「青大、いいじゃん、案内してあげなよ。俺もついていくからさ。いいかな?柚希ちゃん?」

 

「はぁー...律人も行くなら仕方ないのぉ。」

 

「はいっ!やったー!ありがと、律人くん!」

 

「どういたしまして!さ、いこっか!」

 

青大がしぶしぶ了解し、3人で桐島家を出る。

 

「というか、どうやっていくんじゃ?チャリは俺のしかないし、律人のがあっても、1人あまるど?」

 

「簡単じゃん。青大が柚希ちゃんと二人乗りして連れていけばいいんだよ。」

 

「お願いします。青大くん!どうせ私自転車には乗れないし...」

 

「な、なんで俺がそこまでせないけんのじゃ!いやじゃ!律人がニケツすればええじゃろ!」

 

「いや、柚希ちゃんは青大の家にこれから住むんだし、仲良くなるいい機会でしょ。それに自転車に乗れないなら青人が毎朝送っていくことになるんだから慣れておいたほうがいいよ。」

 

「そーゆうこと!ねっ!青大くん!」

 

俺がもっともなことを言って柚希がそれにのっかりお願いする。

 

「っ!あーも!わかったわ!なら、律人は、はよチャリとりいくぞ!ニケツで行ったが早いからの!」

 

「うん。ありがと。柚希ちゃんは少し待っててね!」

 

「はーい!」

 

律人と青大は二人乗りをして柚希と二人で歩いてきた道を走っていった。

 

あの頃の小さな三人で交わされた約束はすこしだけ、果たされようとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柚希side

 

ふぅ、行っちゃった。

青大くんには結局気付いてもらえなかったな。

 

でも、律人くんには気付いてもらえたからいっか...。

 

2人ともすごく大人になってたなぁ。

律人くんはあの頃から大きかったけど、さらに大きくなってた。それにすごくかっこよくなっていたなぁ。

あの頃から、かっこよかったけど...あ、優しいのもあの頃から変わってない。

夏祭りの数時間だけだったけど、律人くんは常に私をフォローしながら話してくれた。

 

青大くんも律人くんとほとんど同じくらいに大きくなってた。でも、まだ少し律人くんの方が大きい。

それに、青大くんもかっこいいと思った。

あのころは、普通の男の子だったのに。

青大くんは、あのころは人見知りなんてせずにどんどん私に話しかけてくれた。

律人くんとは違った優しさ。

 

二人にまた会えてほんとうに良かったよ。

私の大好きなふたり。

でもほんとに好きなのは...

 

あの頃を思い出していると、2人が自転車で戻ってきた。

 

私は大きく手を振る。今度は2人に再会の手を振る。

この気持ちはいつか...きっと...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は、青大が柚希を乗せたのを確認して走り出す。

田んぼ道を抜けて桜並木を抜けていく。

 

「わぁー!きれーい!」

 

「ここの桜はほんとに綺麗だよね。俺も毎年思うよ。」

 

「ここは山と田んぼしかないけぇのー。」

 

「自然がいっぱいでいい所じゃない。はー、空気おいしー」

 

柚希は見るもの全てに感嘆の声を漏らし、この町の空気を胸いっぱいに吸い込んでいた。

 

ほんとに...無邪気で明るい子になったな。

出会った最初は泣いてて、親のところに帰りたくないと駄々をこねる子供だった。

 

今では、その正反対の彼女をみている。

なにかあったのだろうか。

そう気になりはしたものの、それに気付いて助けてやるのはきっと青人の役目だ。そう思う。

 

学校に着いて、高校を外から少し見たあと、俺達は来た道を戻っていた。

 

「高校、けっこー遠いんだね。歩いていくと、時間掛かりそう...」

「大丈夫、青大が送ってくれるよ。」

 

「はぁー...もうほんまに入学前から災難続きじゃ...」

 

青大はそういうが、困っている人をそのままにしておけるようなやつじゃないのは俺がよく分かってる。

 

「ありがとう!青大くん!」

 

キキッ!

 

話していると、青大が急にブレーキを踏んだ。

 

「ん?どした?青大。」

 

「どうしたの?」

 

「いやぁ、なんかパンクっぽくて。」

 

明らかなにおかしな行動をとる青大の視線の先にはコンビニの前で伸びをしている七海ちゃんがいた。

 

あー、そういうことか。

 

柚希も七海ちゃんに気づいたようで、

 

「あっ可愛い子がいる!私、挨拶してくる!」

 

「あっ、おいっ!枝葉っ!」

 

その後を急いで追う青人に俺もついていく。

 

「こんにちは!」

 

「え?...こ、こんにちは...」

 

「私、今日から青大くんと一緒に住むことになった枝葉柚希です!」

 

「えっ?一緒に?」

 

「ばっ、変な言い方すんな!ただの居候じゃろ!」

 

青大が急いで弁解をしていたが柚希は変かなー?と首をかしげている。

 

「あぁ、そういうことなんやね!私は神咲七海っていいます!よろしくね。枝葉さん。」

 

どうやら誤解はとけたみたいだが青大はため息をついている。

 

「あれ?律く...律人くんも一緒なんじゃ?」

 

「うん。青大のお母さんに柚希ちゃんの案内を一緒に頼まれたからね。七海ちゃんは買い物?」

 

「うん。お母さんにおつかいを頼まれたんよ。天気もええし、散歩がてら。」

 

青大のためにも俺がちゃんと誤解を解いておくか、柚希と二人にするのにもいいチャンスだし。

 

「そっか、じゃあ送ってくよ。柚希ちゃんと青大は2人で帰りな。」

 

「えっ、ええよ悪いし、それに案内してたんやないの?」

 

「大丈夫だよ。学校も見てきたし。」

 

「それなら...お願い...します。」

 

「なっ!いきなり2人にするんか!」

 

青大は2人に聞こえない声でそう言ってくる。

 

「俺が、七海ちゃんの誤解はちゃんと解いておくから。それに、いつまでも俺がついてるわけにはいかないだろ?」

 

青大は少し考えて、口を開く

 

「わかったわ、神咲の誤解、ちゃんと解いとってな、頼むで。」

 

「うん。じゃあ柚希ちゃん!また学校でね!」

 

「あ、うん!またね!律人くん!」

 

2人は手を振りながら家へと帰っていく。

 

「じゃ、送ってくよ。後ろ乗りな。」

 

「あ、じゃあ、お邪魔します///」

 

俺は七海ちゃんを乗せて神咲家へ向かう。

 

「あ、あのふたりの事だけどさ、ほんとにただの居候だから。2人の父親が知り合いみたいでさ、それで柚希ちゃんの希望で春からこっちの高校に通うために青大ん家に住むらしいんだ。」

 

俺はしっかりと誤解を解くため、事の経緯を説明した。

誤解といとかないと、青大が不機嫌になっちゃうからな。それに、七海ちゃんも少しは変に思うだろうし。

 

「そうなんや...」

 

(また、青大くんのために誤解とこうとしとる...)

 

浮かない顔をしてる七海ちゃんに俺は、やっぱり青大と柚希が二人で住むのは流石に嫌なのかな?あれ?それなら脈アリじゃ...と思いさらに畳み掛ける。

 

「たしかに、いきなり一緒に住むのは変だけど、あの2人はまだそんなに仲良くないし大丈夫だよ!」

 

「...なにが大丈夫なんよ...律くんのばか...」

 

自転車をこぐ音と風の音でその声はかき消される。

 

「ん?なに?」

 

「なんでもないよ!大丈夫!わかったから!」

 

なんとか誤解はちゃんと解いたみたいだ。

感謝しなよ、青大。

 

こうして七海ちゃんを送り届け、俺は家に帰った。

夕焼けが空をオレンジ色に染めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




やっと原作が始まりましたね!
前置きが少し長かったかな...
これからはなるべく原作沿いでやっていきますが、少しずつオリジナル要素を加えていくのでそれでもいいという方は応援お願いします!
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