「海軍が来たけどやられたってヨ。」
村に戻るとそんな噂が聞こえて来て、私は身をすくませた。
「聞いたよ…魚人に即やられたんだろ?」
「ああ、船に穴開けられてな。」
「それよりゲンさん大丈夫かねぇ?」
よかった…というのはいささか不謹慎であるが、鉢合わせないですんだことにホッとする。
てか瞬殺とかダサ過ぎ。
「無事らしいが…あのギリギリ魚人じゃない奴が逃げてったの、アーロンパークの方だよな?」
「あっ確かに!!あれ死ぬんじゃね?」
「死んだな。」
村人たちは静かに黙祷した。
ギリギリ魚人じゃない奴?…人間離れした顔の人間…ウソップか!!!
分かってしまった自分にショックを受けたけれど、分かられちゃったウソップはもっと可哀想だと思いました、まる。
…まぁ、生きているだろう、多分。
どうしよっかなぁ、私もあっちに向かった方が良いかしら。
「お前、この先の村の住人か?」
詰問するような口調に振り返ると、複数の海兵がいて…。
気付いたのは相手を地面に引き倒した後だった。
「ご、ごめんなさい。」
ことを大きくしてしまう前にさっさと逃げようと思ったが、少しの殺気と共に引き止められる。
「その強さ、村人ではないな?何者だ!!」
「えーっと、あの、お互いの為に良くないので私は去りたいのですが。」
そう声をかけるが聞き入れる様子はなく。
殺気に全く怯まなかったからだと気付いたが後の祭りだ。
武器を取り、私から距離をとった海兵らを掻き分けるようにして、一人の男が現れた。
「チチチチチ…私は海軍第16支部大佐、ネズミだ。」
大佐、殺れる範囲。私は手が出そうなのを抑えるので必死だった。
「お前ナミという女が何処にいるか知らないか??」
「…その人がどうしたんですか?」
「盗品を大量に所持しているという情報が入ってな。オレンジの髪らしいが…。」
ニヤニヤと私を下から上まで見て来る。
多分、このタイミングで村人じゃない女が現れたから疑っているのだろう。
顔面蹴りたい、キモい。
「オイ。コイツを剥げ。」
今、コイツは何と言った?
剥ぐって、私を??
苦い記憶がフラッシュバックした。
*
*
*
じわりじわりと海兵たちは包囲網を狭めて行った。
レネーは無表情で海兵の奥にいるネズミを見つめている。
「随分余裕そうじゃないか?」
「…。」
瞬間、ネズミの体が吹き飛んだ。
レネーは彼らを無視して剃でネズミの懐に入り、殴ったのだ。
そのことを理解した海兵らに動揺が走る。
「ネズミって名前なだけありますね、とても軽い。」
木に叩き付けられて動かなくなった彼を見て一言。
挑発の言葉が届いたかは定かでないが、うめき声が漏れる。
あっさりと上司がやられたのを見て、海兵の一人がやぶれかぶれに殴り掛かった。
レネーは海兵の手を取り、攻撃を流す。
バランスを崩した彼に背中から一撃。
彼女の足元に転がる人間は二人になった。
「て、抵抗を止めろ!!!」
銃を構える海兵をレネーは鼻で笑う。
「あなたが撃つのと、私がこれを壊すのと、どっちが早いと思います?」
背中に乗せた足を、抉るように動かす。
「撃たないんですか?」
首をこてんと傾げる仕草が、酷く恐ろしかった。
海兵たちは弾かれたように走り出した。
*
*
*
ヤバい。
何がヤバいって記憶が飛んでいるのだ。
私はいつの間にか船にいた。
そして目の前には我が兄、ルフィ。
兄は持って来た紙の束から一枚取り出し、私に掲げてみせた。
「レネー!!!到頭、俺"お尋ね者"になったぞ!!!」
「そ、そう。おめでとう。」
満面の笑みの下に3千万ベリーと書かれた、兄の手配書。
いかなる手段をもってしてもこの悪名高い海賊を捕らえよ、かぁ。
この文章は定型文なんだろうけど、ちっとも悪名高そうに見えない写真なのが兄らしくて良い。
「あと、多分これお前!」
ド下手な手描きの手配書を差し出された。
性別すら…ってあ、体型的に女性か。
麦わらの一味の可能性アリ、だって。
「え、お兄ちゃんの中の私ってこんな感じなの?」
少しショックを受けて問い掛けると、兄はかぶりを振ってから答えた。
「勘!!」
「…そう。」
まぁ、可能性は高いだろう。
私がプッツンしてたってことは、恐らく口封じとか生死とか、全く気にせず放置しただろうし。
このタイミングで私が手配されてもおかしくはない。
「他の人はここ見てなんて言ってた?」
「ん?」
但し書きに目を通した兄は、私に無言で手配書を渡した。
「誰も読んでねェ……………と思う。」
「ありがと。…頑張るね。」
「おぅ。」