引きこもりたい。   作: ラズ

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レネーの強さについてですが、あの環境にいて強くならない方がおかしい、という考えの元ある程度強いイメージで動かしていたので、批評多いようなら小説自体をちょっと考え直します。


Episode 1

ことはナミがルフィに突然声を掛けられたことから始まる。

 

「あ、ナミ。」

「何よ、私は忙しいの…ってアンタ何その絵。」

 

ナミはルフィが片手で抱えていた絵に目を向けた。

 

「これ、売ったら金になるか?」

 

ルフィにしては珍しく丁重に渡された絵は、海が鮮明に描写された美しい絵だった。ナミの目がキラリと光る。明らかに値打ちものだ。

 

「…そりゃ、まぁ。」

「んじゃ食費に使ってくれ。」

 

そう言うとルフィはさっさとナミの元から離れて行った。

 

「まさかアンタが食費気にしてるとは思わなかったわ…ってちょっとルフィ!!これどっから盗ってきたのよ?…待ちなさい!!」

 

 

 

 

 

「で?どっから盗って来たの?」

 

ゾロは甲板でうたた寝をしていたところ、ナミの声で目を覚ました。

視線を上げると、ナミがルフィを詰問している。またつまみ食いでもしたのだろうか?

 

「そりゃレ…知らねえ、気付いたら手元にあった。」

 

宙に視線を泳がせるルフィ。

レ…?ゾロの目はナミの持つ絵をとらえた。

…そういうことか。

 

「何・処・か・ら!?」

「知らねぇ!」

 

しかしルフィはガンとして譲る気はない様だ。彼女は手元にあった手頃な絵でルフィを叩こうとし…すんでで踏み止まった。

 

「…まぁ良いわ。私、他にも用があるし。後できっちり聞かせて貰うからね。」

 

 

 

 

 

「あれ、レネーのか?」

 

去って行くナミの背中を見送ってから、ゾロが声を掛けた。

 

「おぅ。レネーに"食費の足しにするか燃やすか海に捨てろ"って渡された。」

 

ゾロはレネーが、ルフィの食費によって胃を痛めていたことを思い出した。

 

「捨てるとか勿体なさだ過ぎだろ…。」

 

素人目でもあの絵は価値があると分かる。

 

「なー、あいつ少しは自信持てば良いのに。」

だよなぁ、と同調する。

 

「俺より頭良いし。」

 

付け加えられた一言に、ゾロは言葉を詰まらせた。

 

「…つーかレネーは、やっぱナミが怖いのか?」

 

ルフィが途中まで名前を言いかけたのに止めた理由。

ゾロにはそれ以外考えられなかった。

 

「あぁ。海軍にいた時に虐めて来たくれーまー?って奴らと口調が一緒らしいぞ。」

「ほー…ってちょっと待て、レネーが海軍にいたなんて聞いてねぇぞ。」

 

ゾロは、レネーの戦闘を思い出そうとしたが、殆ど戦っていないことに思い至る。確か足で海賊を踏みつけていて、意外と荒事もできるのかなと思ったのだったか。

 

「じぃちゃんが昔なー、レネーが人怖いって知って、連れてっちまったんだ。帰って来たらあーなってた。」

「悪化してんじゃねぇか!!」

「でもその後みんなで頑張って治したんだぞ?」

「あれでか?」

 

思わず不躾な言い方になってしまった。

 

「おぅ。前は俺達以外の人間が近付くと、もんどーむよーで殺しにかかってた。俺ら兄弟以外全部敵って感じでよー。で、時々返り討ちにあってた。」

「その節はご迷惑をおかけしました。」

 

ぬっと、音もなくレネーが現れる。

 

「うぉっ!?何時から居たんだ。」

「今来た。ゴミ捨て。ちょっと創作意欲が湧いて色々やってたの。」

 

レネーはおが屑の入ったバケツを掲げた。

 

「それこそ燃やせば良いんじゃねぇの?」

「私がゴミと思うものは、人様にとって燃やす価値すらないもの。」

 

いや、そのりくつはおかしい。

レネーは淡い笑みを浮かべていた。

 

「レネー、お前暫くメシ食ってねェだろ。」

「は?」

「コイツ食ってねェとこんな感じでいつもより更に変になるんだ。」

「あ、お兄ちゃん。ちゃんとナミさんに"食費の足しになるかすら分からないお目汚しなものですが、燃やすなりなんなりして活用していただけたら幸いです"って言ってくれた?」

「おぅ!渡したぞ。」

 

満面の笑みのルフィに、レネーはつられて微笑んだ。

 

「そっか。」

 

ゾロは何かいいたげにルフィに視線を送った。知らぬが花である。

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜のことだ。

 

「なー、なんで俺達だけ呼び出したんだ?ルフィは?」

 

集められたのはルフィを除くクルー達。

ナミは困ったような顔で切り出した。

 

「…ルフィって実は、物凄く器用なのかしら?」

 

三人はそれぞれの理由で固まった。

二人は突拍子もない発言に驚き。

一人は腹筋を鍛えていた。

 

「ナミさん…それはいくらなんでも…。」

「でもねサンジ君、この絵…ルフィが持ってきたんだけど…入手経路が謎なのよ。しかも本人にいくら聞いても目を逸らしたり口笛吹いたりして知らないって。」

 

テーブルの真ん中に置かれた絵に視線が集中する。

今は海の真ん中。渡されたのは今日。

ルフィの性格からして、取っておいたものを今更渡したりはしないはず。

 

「でもアイツ、バラティエで散々皿割ってたぞ?」

「絵の方面には器用かもしれないじゃない?だいたいアイツ、前に自分で麦わら帽子繕ってたし。」

「マジかよ。アイツが?…ナミさんの言葉を疑う訳じゃありませんが…」

「前に戦闘で穴開いたことがあって…結構大事にしてるみたいだから、繕ってあげようかと思ったら…。」

「既に直ってた?」

「えぇ。」

「ゾロは見てないのかよ、直すとこ。」

「確か怪我して寝てたわよね?」

「あ、あぁ。」

 

ゾロは視線を虚空にやった。

恐らく、"寝れば治る"という発言を繰り返していたのがナミの印象に残っていたのだろう。

勘違いだが今はありがたい。

 

「裁縫は…信じたくないがまぁ、得意だったとして。絵を描くのとは違うだろ。」

「それもそうね。アイツ野性児っぽいから、服とかも自分で直してたのかも。だってアイツが服屋にいるとこ想像つく?」

 

満場一致で首を横に振った。

 

「だいたいじゃあ、海賊旗はどうなるんだよ。」

「でも芸術家って謎のオブジェとか作るよな?」

「あの旗に実は芸術的な意味があったと…!?」

「でもあのルフィが?筆持って?」

「ないな、うん。」

 

この話は、保留となった。


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