どうしよう…。
寝起きで知らない人間に会ってしまい、気付けば運ばれ部屋の中。
このままだと私、ワインじゃないからって怒られてしまうかも。
私能力者じゃないし、液体にはなれないよ…。
そもそも悪魔の実で液体ってあるのかな?
そんなことをつらつらと考えていると、私を呼ぶ兄の声が聞こえた。
そして衝撃が私を襲い、視界が一気に明るくなる。どうやら樽ごと吹っ飛ばされたみたいだ。衝撃に耐えられなかったらしく、樽は半壊している。
この樽(部屋)結構気に入ってたんだけどなぁ…。
無くなったものがないか確認する為、一番大きな布に散らばった私物を包んでいく。
一番大事な丸い小さな絨毯を回収し、胸を撫で下ろす。
「あの…大丈夫ですか?ケガは?」
「わっ、人間!!」
私ったら絨毯に気を取られ過ぎていたみたい。
私は隠れる場所もないので慌てて距離をとった。
「だだだ大丈夫ですので近付かないで下さい。」
「わ、わかりました。…それより僕なんかに敬語使わないで下さい。」
…どうしよう、これは"お前なんかに敬語使われたって逆に不愉快なんだよ"という意味なのか、"お前の敬語が下手過ぎてムカつくので普通に話せ"と言っているのか…。
この人間が私に精神的な害をなすタイプの人間か知る必要がある。
「ここは何処?」
「この海岸は海賊"金棒のアルビダ"様の休息地です。僕はその海賊船の雑用係、コビーといいます。」
あ、大丈夫そう。相槌だけ打っておく。
…って金棒?もしかしてさっき私の部屋壊したの、その人間の武器じゃ?
よし、倒そう。部屋作り直すの地味に面倒なんだからな!!
あと兄もそちらにいる気がするし。
私は荷物を纏めた布を背負うと、さっきの場所を目指して歩き出した。
「そっちはアルビダ様の船ですよ!!」
だから何だと言うのだろう。私は首を傾げた。
「…。僕と同じっぽかったからもう少し話せるかと思ったのに…。」
彼は私が突然態度を変えた事を悲しく思っているようだ。
でも、私達には絶対的な強さの差がある。
「コピーさんだって相手が強いか弱いかで態度を変えるでしょう?。お兄ちゃんみたいにはいかないよ。」
「コビーです。」
人間は名前を訂正すると、暫く考え込んでいた。
「…レネーさんはどうして樽の中にいたんですか?」
「私、あなたに名乗った?」
私はこの人間への警戒心を高めた。というか話題変えてまで私なんかと話して、何が楽しいんだろう。
「え、名乗ってませんけどルフィさんが言ってたので。」
「…そう。」
「ルフィさんは海賊王になるって言ってましたけど、あれって本気なんですか?」
「勿論。」
即答した私に、人間はポカーンと口を開けて大袈裟にリアクションをとった。
「…海賊王っていうのはこの世の全てを手に入れた者の称号ですよ!?つまり富と名声と力の"ひとつなぎの大秘宝"…あの『ワンピース』を目指すって事ですよ!!?」
一人でエキサイトしないで欲しい、煩いし。
「レネーさんだってルフィさんについて行ったら危ないじゃないですか。死にますよ!!ムリです絶対無理!」
流石にムッときた。隣を歩いていた人間を軽く殴り飛ばす。流石に本気で殴ったら死んじゃうから、軽くだ。
「何するんですか!!?………まぁいいですけど…慣れてるから…」
返答しない私に、人間は一人で納得した。
へらへらした笑い方が気持ち悪い。同族嫌悪かもしれない。
とりあえず、これだけは言いたい。
「死んでも自分のやりたいことやったんだから、本望だよ。」
「し…死んでも、良い…!!?」
人間が足を止めたので、私も止まる。
正直そろそろ知らない人間とサシでいるのも辛くなってきたので早く兄の元へ行きたい。
「文句は受け付けない。兄の夢を叶えるのが私の夢だから。」
人間はポロポロと泣き出した。そんなに強く殴ってはいないと思うけど…。私と同じで慣れるまで殴られていたなら、全然問題ない範囲の筈。
「僕も…僕も死ぬ気なら…海軍に入れるでしょうか?」
「かかかかかかいぐぐぐぐ!!?」
私は全力で木の影に隠れた。たそがれモードの人間は私の行動に気付いていないようだ。
「そうですよね、僕なんかが海軍に入るなんて…でも小さい頃からの夢なんです!!!」
「い、いや別にそれを否定してる訳ではなくてですね。」
「海軍に入ったらレネーさん達とは敵対することになりますけど…。」
「あああ、お願いだから、か、その名前を二度と言わないで下さいお願いします。」
「船だってここから逃げ出す為に二年間かけて作ったんですよ!!!今まで勇気が無くてできなかったけど海ぐ「お願いだからその言葉を口にしないで!!!」」
数年ぶりに大声を出した。喉が痛い。
「え、レネーさん海g…睨まないで下さいごめんなさい。レネーさん政府嫌いなんですか?やっぱり、海賊だから?」
「そういう訳じゃないけど…。」
説明すると疲れるのでそういうことにしておこう。
その時、向かう先から破壊音が聞こえた。
人の叫び声もだ。
「!!?…い、今の音なんでしょう?」
「ついてくる?アヒルって人間がいるんでしょ?あれ?アヒルって人間じゃないじゃん。」
「アルビダです!!」
そういえばお兄ちゃん、ご飯獲ってくるって言ってたけどどうなったんだろ?
「アルビダさ…いや、アルビダに言ってやりたいことがあるんです。僕も行きます!!!」
向かった先には完全にのびた猿山のボスっぽい人間が転がっていた。
一緒に来た人間は立ちすくんだまま動かない。
ごめんね人間、君の一世一代の覚悟が無駄になったよ。兄は悪くないので私が(心の中で)謝っておこう。
「おぅレネー、遅かったな。船貰ったぞ。」
あらお兄ちゃんたら素敵。