なんでも兄はロロロロとかいう海賊狩りに間違えられたらしい。
私の苗字のモンキーだってちょっと酷いかなぁって思ったことあるけれど、ロロロロは無いと思う。舌噛みそう。
コピー氏を海軍基地があるシェルズタウンに送り届けるついでに、その人間のことも見に行くのだそうだ。
鬼だ魔獣だとか言われているらしいけれど、魔獣なら別に平気だから心配はしていない。
船は狭いので、シェルズタウンに着くまで私は乗らずに泳いで着いていこうとすら思っていたのだけれど兄が真ん中に入ってコピーと会話をしていてくれたので私は黙って樽を改造していられた。
お兄ちゃん万歳。
後、なんか男の子同士の友情っぽいものが築かれていたけど私は興味ない。
さて、船は私の希望で余り目立たない位置に着岸させた。
海軍とか制服みただけで殴りそうだし本当に無理。
彼らの一部には本当に罪がないことも、ちゃんと分かってるんだけどね…。
「お兄ちゃん、沢山食べたいだろうから、明日までなら私一人で大丈夫だよ。その間に食料調達しとくけれど、牛とか豚は食べたかったら自分で買ってね。後、航海術の指南書も余裕があったら買ってきてね。」
兄にお金の詰まった袋を差し出し…少し考えてから腰に結び付ける。
「無くさないでね?」
「おう。コビー、メシ行くぞ!!!」
兄がコピーを連行して町へ向かったのを見て、私は深くため息を付いた。
「大分、慣れて来たつもりだったんだけどなぁ…。」
思わず口からこぼれる一言。
私は物心付いた頃には既に、人間とまともに話す事ができなくなっていた。
他人と関わる機会の増える海賊になろうと思ったのも、数少ないまともに話せる人間である兄と離れるのが怖かった事と海兵にさせられるのが嫌だったというのが主な原因である。
つまるところ、私は兄に寄生しているのだ。
…いけない、こんなことばかり考えていると更に鬱になってしまう。
私は船をしっかり固定できているか確認した後、早速狩りをすることにした。
樽から出て準備運動を終えると、銛と網を持って海辺を歩く。
兄が能力者になったのはかなり昔なので、私はずっと魚介類担当だ。魚人と比べれば見劣りもするが、泳ぎにはそこそこ自信がある。
…魚人って魚介類食べるのかな?
それはそうと、銛を持ってきたけれどこの辺は貝の方が捕れそうだ。
浅瀬…というか磯?
まぁ、港からは少し離れているからね。私達の船ならともかく、大きな船は侵入の方向が絞られる地形だ。
だから海軍基地があるのかなぁ。
そんなことをうだうだと考えつつ樽が一つ埋まった頃、兄の気配を感じた。
私は昔から何と無く兄の居場所が分かるのだ。双子だからなのかもしれないが聞いたことがないので真相は分からない。
「…?もう帰って来たんだ。」
私は立ち上がり、縄を解く。
近付いて行くと兄の近くに誰かいるのが見えた。
兄が連れて来る以上悪い人ではないのだろうが、取り敢えず様子を窺おうと樽の中に入る。
コビーに別れを告げ(私は告げてないけどね)、何故か海兵に見送られ(何したのお兄ちゃん!?)、港から少し離れると、兄は私に話し掛けてきた。
「レネー、ちゃんと肉買ってきたぞ。」
嬉しそうな笑みを浮かべる兄に、私の表情も緩んだ。
「誰に話し掛けてんだお前。」
怪訝そうな緑の人に、兄は端的に妹と告げた。
しかし、マリモみたいな頭だなぁ。なんでただでさえ緑髪なのにその髪型をチョイスしてしまったんだろう…。
「妹ぉ?何処に居んだよ。」
此処は勇気を出して自己紹介しないと!!
いつやるの?今でしょ!!
「えと、妹のレネーです。」
「樽が喋った!!!」
皆さんそういう反応なさるんですね…。
私は久しぶりに長く話そうと、深呼吸した。
「私は残念ながら人間です。樽からの挨拶をお許し下さい。怖いものベスト3は祖父、風船、人間です。得に風船は見たら気絶します。面倒な人間だと自負しておりますが、今後どうしても会話の必要性がうまれた時など「レネー、大丈夫だから。」…お兄、ちゃん。…よろしくお願いします。」
私は樽の中で更に小さくなった。
「…取り敢えず風船があったら壊せば良いんだな?」
なんて良い人なのだろう。さっきマリモって思ってごめんなさい。
私は樽の窓から彼を見る。この樽の改造項目の一つだ。まぁ小さな小さな隙間にガラスをはめただけだけれど。
…不思議と、目があった気がした。
「風船の始末は是非私の視界に入る前によろしくお願いします。お名前をうかがってもよろしいですか?」
「ゾロだ。」
「ゾロさんですか。」
分かりやすい名前で良かった。名前を間違えて殴られたくない。
「レネー、ゾロは呼び捨てでも怒らねぇぞ?なぁゾロ。」
「あぁ。」
「え…あ…う…ゾロ。」
「あ?なンだよ。」
機嫌…悪い?今のどう考えても怒っていた様な…私ったらお兄ちゃんに言われたからとはいえ人様のこと呼び捨てにしてしまった上に機嫌を損ねさせてしまったのではしかも"あぁ"って生返事だったんじゃってことは許可なく呼び捨てにいやまさかそんな恐ろしいことがががが。
沈黙してしまった樽。
会ってまだ少ししか経っていなかったが、ゾロなりにルフィの性格を分かったつもりだったので、樽の中の妹に対する態度が意外だった。
案外この男は面倒見が良いらしい。
「…ま、よろしくな。」
「は、はいごめんなさい。」
先は長そうである。