引きこもりたい。   作: ラズ

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本を読むのは好きだ。

「さっきより寒ぃから多分今ここだ!!!」

「そうなの?針路ずれてるじゃん!!じゃあ、えっと、右を強く漕げば良いんだよね…。」

 

指南書と地図と、睨めっこする兄と私。

ゾロさんはやる気がないらしく、私は樽から出て船を操作せざるをえなくなった。すごく居心地が悪いのだがまぁ慣れるしかあるまい。

 

この本はぶっつけ本番でやって数日前にあらぬ場所に行ってしまったばかりなので、これは不味いと思い兄に買ってきてもらったものだ。

そういえばシェルズタウンまでは迷わなかった。案外コ…あーえっと彼は役に立つ奴だったらしい。

 

「お前ら、それでどうやって海賊やってたんだよ。」

「だって俺達漂流してたし。」

「政府にはまだ海賊と認知すらされていないと思います。」

 

旗も掲げてないし、民間人から略奪行為した訳でもないし…多分。

 

「マジで!!!?」

 

兄は驚き方が大袈裟なので、顎が外れないか妹は心配です。

そういえば町で何してたのかまだ聞いてないや。

 

「お兄ちゃん、ちゃんと町では自分は海賊だって言わなかったんだよね?」

 

兄は思いっ切り視線を逸らした。

ゾロさんも驚いてこちらを見ている。これは堂々と宣言したな?

 

「言っちゃったんだね…。」

 

無用の混乱を避ける為に言わないで欲しいとあれ程説明したのに…。

まぁ、どっちにしろ海賊旗あげるまでの話だけどさ。

 

 

 

 

 

 

レネーは指南書をパタリと閉じると、ルフィに向き直った。

 

「海賊って言うとピースメインとモーガニアがあるって話は前したよね?」

「あぁ、良い奴と悪い奴だろ?」

 

ゾロにとってあまり馴染みのない言葉だったが、そういうものかと思って話に耳を傾ける。

短い付き合いだがここで変に口を挟むと、このルフィの妹は途端に黙ってしまうと分かっていた。

 

「お兄ちゃんがなりたい海賊ってのは、ピースメインなんだよね?」

 

ルフィは勿論、という様に大きく頷いた。

 

「でも海賊って自称するってことは、どっちととられてもおかしくないんだよ?エースにぃやシャンクスさんみたいな人は一部なんだし、寧ろ悪い奴って自称しているようなものなの、分かる?」

「海賊は悪い奴じゃねぇ!!!」

「だーかーらー、人間にだって良いのと悪いのがいるんでしょ?私はあんまり良い人間ってのに会ったことないけど…とにかく!!海賊っていうものの一般的な認識は悪い人間なの!!」

「お、おぅ、そうか」

 

ゾロでも分かる、ルフィは絶対分かっていない。妹に押され気味なだけだ。

 

「仲良くなれば分かってもらえるのは同じだけど、余計な面倒ごとが起きるの面倒くさいでしょ、何で分かんないかなぁ…。例えば貴族は嫌な奴多かったけど、サボにぃは…あ、ごめん。」

 

どうやら彼らにとってサボという名前は鬼門らしい。ルフィの妹は顔を俯かせた。

 

「分かった、ピースメインって言う。」

「う、うん…。…っあ!!ゾロさんごめんなさい。」

「いや、別に構わねェけどよ。」

 

そこで、ふと疑問に思ったのかルフィが問い掛けた。

 

「なぁレネー、ゾロは男だぞ、さんはおかしくねェか?」

「おかしくねェと「そ、そうなの!!?でも本に"偉そうな人間には様、そうでない人間にはさんを付けましょう"って書いてあったよ!!!」

「何の本だよ!!?」

 

レネーはビクッと身をすくませた。ただの突っ込みでもびっくりしてしまうことがあるようだ。

 

「哺乳類と交流しよう!の中級編です。どうしよう、さんじゃなかったら何を付ければ良いの!?あっちにいた頃は全員階級で呼んでたからなぁ…えぇと、何か役職持ってませんか?」

「特にねェよ。別にただゾロって呼べば良いだろ?」

「わ、分かった、頑張ります…。…宣言した以上、今度は呼び捨てにしないとコイツなんのつもりだよって思われて……ブツブツ」

 

こうなると、暫くどうしようもないのである。

 

 

 

 

 

 

「…肉食いてェ。」

 

ぽつりと兄が言った。

 

「えっお兄ちゃんお肉ならまだあるよ?」

 

私が干し肉の入った樽を指差すと、兄は眉尻を下げた。

 

「干し肉飽きた。」

「そっかぁ…鳥でも飛んでればなぁ…。」

 

空を見上げれば、ちょうど船の上を飛んでいる鳥がいた。噂をすればなんとやらだ。

 

「おっ、デカい鳥。」

「ホントだ〜。」

「あの鳥食おう!!俺が捕まえて来る!」

 

兄がマストに手を掛ける。

 

「どうやって…ってまさか!!?止めて!!私が撃ち落とすからちょっと待って海に落ちたらどうす「ゴムゴムの…ロケット!!!」ってお兄ちゃぁああああぁああん!!!!!!」

 

兄は鳥にくわえられてしまった。あ、ヤバい咳が止まらない。久々の大声は堪える。

 

「ぎゃーーーーーーーっ!!!」

「あほーーーっ!!!何やってんだてめェは!!ってレネー大丈夫か!?」

 

うぅ、喉が痛い。

 

「だいじょゔぶだがら追おゔ。」

 

 

ゾロに左側を担当してもらって、兄を追う。

上空の兄ばかり見ていたので、私たちは気付かなかった。

 

「おーーーい!!助けてくれーーー!!」

「止まってくれーーー!!」

 

声が聞こえた瞬間、私は漕ぐのを止めて樽に飛び込もうとして…ゾロに抑えられた。

 

「お前副船長だろ!!?助けるかお前が決めろ。」

 

ふくせんちょう?副船長…

 

「…マジで!!!?」

「そーゆーとこ兄妹なのな。で、どうする?」

 

私は彼らをよーく見た。視力には少し自信がある。あれは…。

 

「迂回してたら追いつきませんよね……ゾロ、船を漕ぐ人欲しいですか?」

「お前、平気なのか?人苦手なんだろ?」

「ご配慮感謝します。友好関係を築く気が無いなら、あーゆう分かり易いのは平気です。」

「分かり易い???」

「そうだ、一応言ってもらいたいことがあるんですけど…。」

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