一本道の他は岩と木々のみで、開拓されていない印象を受ける風景が広がっている。
この大陸にある村でまともな船を調達することになった。ナミさんの提案である。
"偉大なる航路"を越えるのにこの船じゃあんまりだとか。そりゃそうだ。
でもこんな発展してなさそうな村で手に入るのか疑問なんだけど…。
奥の方にこっちを見ている人々がいるので、まだ樽からは出ない。
「ところで、さっきから気になってたんだが…あいつら何だ?」
「「「見付かったーーーーーっ!!!」」」
ゾロの声で、三人の子供が蜘蛛の子を散らすように逃げて行った。
取り残された鼻の長い人間が怒っている。随分お粗末な舎弟だ。
そしてたらりと冷や汗を流した。
「……俺はこの村に君臨する大海賊団を率いるウソップ!!8000万の部下は俺を称えキャプテンウソップと呼ぶ!!」
「ウソでしょ。」
「ゲッばれた!!?」
自分は偵察で見習いの面倒を見ている…とかならまだ分かるけどさぁ、それはないよ。
「ほらバレたって言った。」
「バレたって言っちまった!?おのれ策士め!!」
のたうちまわる鼻の人を見て、兄が爆笑している。
「お前、面白ェなぁ!!」
ヤバい、仲間になるフラグが立った。
でも船調達すれば隠れるスペース増えるから問題なくなるよね!!よし、いける!!
「俺をバカにするな!!その誇りの高さ故に、人は俺を"ホコリのウソップ"と呼ぶ!!!」
埃?可哀想に…。
兄たちは鼻の人に案内されて村へ向かうようだ。
見る限り一本道だし、後から私も行こうかな。
夕方にさしかかる頃、民家が見えてきた。
兄はまだ帰って来ないので、恐らく何かに巻き込まれたんだろうと思う。
こんな村にただ長居する訳はないだろうし…。暇なので私も動くことにしたのだ。
話しかけられても困るので、私はフードを被って怪しい人ですアピールをしている。怪しい人アピールしてると基本村人は話しかけて来ないので安心だ。
フードの内側にはナイフや小さい敷物なんかも入れているので、そこそこ重い。
そのまま道を進んで行くと三人の子供がたむろしていた。あの舎弟たちだ。
うわ、こっち向いた。走ってくる。
逃げても良いけれど子供の声って響くから、叫ばれたらマズいよなぁ…。
「おいお前!!!」
「怪しい奴だな!!!」
「何者だ!!?」
平和ボケしてるなぁ…私がこのくらいの年齢の時って、今思えばかなり殺伐としていたからちょっと憎い。
完全な逆恨みだけれど、見ていてイライラする。
「あなたたちのボスは一緒ではないのですか?」
「キャプテン?」
「ホラ吹きの?」
あ、判断基準そこなんだ。
「キャプテンは今日もうそをつきに行ったんだけど…。」
「でも今日のは正直なかったよなぁ…。」
「うん、ケイベツした。」
「でも、ちょっとキャプテン変だったよね?」
「おれもそう思った。」
彼らは口々に内心を吐露した。あの鼻の人は何かやらかしたらしい。
「嘘をつきに行く、とは??」
「キャプテンはね、毎日屋敷に行って、外に出られない女の子のためにうそをついてるんだよ。」
「え、何も知らない子に嘘吹き込んで遊んでる…」
「「「違うよ!!!!!!」」」
怒られた。
彼らは言いたいだけ言うと自宅に帰って行った。
鼻の人は屋敷にいるお嬢様…カヤさんというらしい。その人にセラピー紛いのことをやっているそうだ。
普段から嘘をつきまくっているが、今日は初めて人を傷つける嘘を言ったとか…。
嘘って普通、多少の罪悪感を伴うと思うんだけどなぁ。
彼が自分の嘘で傷つかないとしても、むしろ今まで誰も傷つかなかったのが奇跡だったんじゃ…?
まぁ私の持論はさておき、セラピーやってるなら仲間にもならないだろうし、船もこんなとこにあるとは思えない。
少し散策をしてから帰ろう。
そう思って歩いていたら、後ろ向きに歩く人間が前方に現れた。二度見した。
…面倒そうだからスルーしようとして、そのまますれ違う。
「オイお前。」
声掛けてきたよちくしょー。
振り返ってやっと顔の全貌を知る。
サングラスが真っ赤なハート型だった。顎から縞模様の何かが突き出てた。
ないわー。てかカッコいいと思ってやってるのかなコレ。
というかそれもしかして顎の一部?
「怪しい奴だな、何者だ?」
「え、あなたに言われたくないんですけれど。」
ヤバッ、思わず本音が。
「バカを言え。俺はただの通りすがりの催眠術師だ。ちっとも怪しくねぇ。と、さっきも言ったんだが。」
いや十分怪しいから。後さっきっていつだ。
「とりあえず普通の人は後ろ向きに歩かないと思いますよ、それじゃ。」
「待て。」
さっさと別れようとしたのに引き止められた。
「こっちにも色々と計画があるんだ、支障がでちゃあマズいからな。お前は何しにこの村に来た?」
「…特に何も。」
「妙な船が泊まってるって情報が入ってる、関係は?」
「知りません。」
あーあ、こりゃ私達の船見つかったなぁ。
兄達が彼らを見つける前にこの村から出て行く可能性も否めない。
まぁ、特に大事な物は全部持ってるから、荒らされてても船さえあればどうにでもなるか。
すぐに換金できるものも一応持っているし…。
あ、でもナミさんは大金を船に置きっぱなしだったな…。
「本当かぁ!?」
「知りませんってば!!!私はこの村の親戚に会いに来ただけなので、そちらの事情なんか知りませんよ。」
「さっき用はないって言っただろうが!!!」
「あなたは怪しい人に話しかけられたら会話を長引かせるなって習わなかったんですか!!!?」
「習った!!!」
「習ったんかいっ!?…じゃあそういうことです、それじゃ!!!」
親戚を訪ねて来たと言った手前海の方へは行けないので、民家のある方へ走り出す。
「って待て!!俺は怪しくねぇ!!!!!」
「…船長が言ってたのはアイツか?」
「間違いないな。」
「あぁ、あのフードだ。」
…あるぇ、なんか聞こえるんだけど。
「めっちゃ素早いらしいぞ。船長追いつけなかったって。」
「馬鹿、戦略的撤退と言え!!船長に聞かれたらどうする!!」
「え、船長はもうあっちで出航準備をしているんだよな?」
「万が一の話だよ!!!アイツ倒したら朝の上陸にあわせて合流するぞ。」
「おう。」
彼らは明らかに私を狙っている。
全力で逃げたのが仇となったようだ。足が早いだけのモブとは思わなかったらしい。
暗くなってきたのでさっさと倒したい。
…あの三人だけだし、良いよね。
私は地面を蹴った。
月歩、私が兄の前では使う事の無い技の一つ。
「ってあれ、アイツは!!?」
「消えたぞ!!!!」
「どこだ!!?」
標的から目を離すなって習わなかったのかしら。
私は一人に蹴りを入れそのまま踏み台にした。
近い方の男の胸を強打し、昏倒させる。
敵はすぐ一人になった。
一般の船員がこの程度なら、船長も兄たちが倒せるな、多分。
しかし不確定要素に三人か…
敵はずいぶん慎重な奴らしい。
私は報告されることを避けるため、持っていた紐で三人を縛った。