セブン50周年はオーブさん任せます!(ガイさん風)
因みに、時系列的にはGuardianに入隊してしばらく経った後です。
その昔、遥か遠くM78星雲は光の国から地球へやってきた銀色の巨人、ウルトラマン。
宇宙の平和を守る為に数々の戦いを繰り広げ、いつしか怪獣退治の専門家とも呼ばれるようになった最初のウルトラ戦士。
僕達の世界ではテレビの特撮ドラマとして知られていて、彼を初めとして今までに幾つものシリーズが放送されている。
それが今では、ブレイブが現れたことでウルトラマンは実在するのだと人々は知った。
僕も子供の頃からウルトラマンが好きだったけど、まさかその一人として戦うことになるなんて、考えもしなかったなぁ……。
僕はカガヤ・ユウキ。ウルトラマンブレイブと一体化して、この地球を守るため一緒に戦っている。
今からする話は、僕とブレイブが体験した不思議な事。
それはまるで夢のようだったけれど、それは僕とブレイブにとって確かな思い出となっている戦い。
7月はウルトラマン50周年という事もあって、様々な場所でイベントが開催されている。
そんなある日、僕は幼馴染のスズ――イヌガミ・スズカ――と一緒に街へと来ていた。
「もうすぐウルフェスだねー。ユウキ君は今年も行くの?」
「うーん、どうだろ……今年は行けるかな……」
何気ない一言、これにスズが反応する。
「どうして?」
「あ、えっと……」
「最近ユウキ君は家にいないことが多いよね。おばさんに聞いても教えてくれないし!」
僕はスズに幾つかの秘密がある。
僕がブレイブであるのは勿論、ある防衛チームに所属している事も話していない。
ここでうっかりした事は言えない。
それらを言わずにどう説明するか……そう考えていると、目を逸らした先に、一人の男が路地裏に入っていくのが見えた。
その男は夏の暑い日だと言うのに、全身黒いスーツを身に纏い、同様に黒い傘と鞄を持っていた。その姿には見覚えがある。
「……あれは」
「ユウキ君?」
「スズ、ごめん。寄る所が出来たから、先に行ってて!後で行くから!」
「え!?ユウキ君どこ行くの!?ちょっとー!」
僕は彼を追って走る。
彼が入った場所を見ると、ちょうど何かをしている所のようだった。
しばらく見ていると鞄を開け、何かの装置を操作しているのが分かった。
『ユウキ、奴が何をしてるか分かるか?』
と、ブレイブが聞いてくる。
「うん、思い当る事なら一つあるよ」
『そうか……で、どうするんだ?』
「とりあえずミズキさんに連絡……って言いたいところだけど、そんな時間はないみたいだ」
ブレイブと話していると、黒いスーツの男は装置を作動させた。
それは僕の予想通りの物だった。
男はその装置の前に立ち、何かを呟いたかと思うと、渦が現れてその中へ消えてしまう。
『消えた!?』
「後を追うよ、ブレイブ!」
そう言って僕は、男が消えた場所へと走る。
『……大丈夫なのか?』
「大丈夫、行くよ」
『よ、よし……!』
こうして僕達は男を追って、彼が消えた渦へと飛び込んだ。
× × ×
しばらくして目を開くと、そこは一面砂に覆われていた。
周りを見るとすぐ近くに小さな町らしい集落がある。
「ここは……」
『どこかの砂漠の町のようだな』
「そうみたいだね。あの町の建物、どこかで見たような気がするなぁ……」
確かにこの建物には見覚えがあった。
だけど今はそれどころじゃない。早くさっきの男を探さないと。
僕達は砂漠の町へと足を踏み入れる。
『妙だな』
「ブレイブ?」
『この町に人の気配がない』
それを聞いた僕は、近くの家の扉を開ける。
確かに人がいない。それもこの家だけじゃない。
他の所も回ってみたけど、この町にはブレイブの言葉通り誰もいなかった。
だけど不思議なのは、ほんの少し前まで人がいた跡があるという事だ。
「確かに変だ、服とかもそのまま置いてあるのに、誰も人が居ないなんて……」
それもこの町の人だけじゃない。
ここに来た原因である、黒いスーツの男もまだ見つかっていない。
この砂漠の町であんな服装だ、目立たないはずがない。……まぁ、僕もだけど。
「一体どこに……」
『ユウキ、奴は何者なんだ?』
「あぁ、彼は多分――」
ブレイブに追っている男の正体を話そうとしたその時、突然町のすぐ近くで噴煙が上がる。
と同時に、怪獣のものと思われる鳴き声が響いた。
『何だ!?』
「この鳴き声……まさか!」
しばらく上がり続けた噴煙の勢いが弱まってくると、中から黒い巨体がその姿を現す。
体表――甲殻には少し青みがある。普通の怪獣とは違う体格は、宇宙怪獣ではないかと言われるのも頷ける。
そして何よりも特徴的なのは頭部だ。カブトムシのような頭に、クワガタムシのような巨大な大顎。
磁力怪獣アントラー。
磁力光線によって飛行機を墜落させたり、武器を奪うなどの知能もある。更にその体は頑丈で、ウルトラマンのスペシウム光線も通用しなかった。
アントラーが目の前に現れたことで、ここがどこなのかが分かった。
「アントラーがいるという事は……ここはバラージの町なのか」
「ご名答!」
答えたのは僕達が探していた男の声だった。
彼は現れたアントラーと共にいた。その振る舞いは、アントラーを従えているかのようにも見える。
「貴方は……」
「お初にお目に掛かります。ワタクシは怪獣バイヤーのカーノーと申します」
『怪獣バイヤーだと?』
「ええ。そちらの人間はご存じの様子。故にワタクシを追ってここまで来た、そうですね?」
――やっぱり。
カーノーと名乗った彼の問いに、僕は頷く。
怪獣バイヤー。それはティガの世界に現れた宇宙魔人チャリジャが生業としていたものだ。
街で彼を見たとき、チャリジャと似た雰囲気を感じた。だからここまで追って来たんだ。
「貴方はチャリジャの仲間なんですか?」
「チャリジャ……あぁ、そんな方もいましたね。あのウルトラマンに会った事があるとか……羨ましい」
彼はウルトラマンに会った事がないのか……。
『それで、その怪獣バイヤーとやらがここで何をしている?』
「フフフ、実はここにいるアントラーは特別な個体でしてね。通常のアントラーより幾分か強力なのですよ」
彼は自慢げに言う。だけど聞きたいのはそう言う事じゃない。
『そのアントラーをどうするつもりだ?』
「そうですね……。
どこか愉しげに答えるカーノー。
それを聞いて瞬時にブレイブブレスを顕現させる。
「そんな事は!」
『私達がさせない!』
変身。そして僕達は、カーノーとアントラーの前に立ち塞がる。
「シュアッ!」
「やはりウルトラマンの一人でしたか。しかし相手には丁度良いですね……さぁアントラー、力をお見せなさい!」
カーノーがそう言うと、アントラーがゆっくりと前に出てきた。大顎をギチギチと鳴らして威嚇してくる。
流石、本物の音は怖さが違うね……。
『気を付けろユウキ、こいつは手強いぞ』
「うん、分かってる」
ウルトラマンやマックスと互角に戦ったアントラー。
それよりも強力な個体となれば、僕とブレイブで倒せるか正直言って分からない。
それに、ウルトラマンとマックスがアントラーに勝てたのは、バラージの青い石があったからだ。だけど僕達にはそれがない。
青い石なしで、純粋な力と技だけでどこまで出来るか……。
「でも、今は僕達しかいないんだ……やるよ、ブレイブ!」
『ああ!』
そう交わし、走りだして距離を詰めてアントラーの懐へ蹴り込む。キックが胸へと決まるけど、アントラーは少し怯んだだけだ。
逆に自慢の大顎でブレイブを挟もうと、頭をわずかに下げ突進してくる。ここは下手に避ければ捕まる。
だから――
「『受け止めるッ!』」
迫りくる大顎の根元、その両方を掴んで止める。
それでもアントラーの突進力は凄まじく、大顎は受け止めた体勢のまま押されていく。
『ぐ、なんてパワーだ……!』
足元が砂地で踏ん張る事も難しい。
どうにかして止めないと……と考えている時だった。
「――ッ、しまった!」
力任せに押していたアントラーの足が一瞬止まったかと思うと、突進する時に下げていた頭を上へと一気に振り上げる。
大顎を掴んだままだった僕達は、その勢いで投げ飛ばされる格好となった。
町にある大きな神殿へと背中から落ちる。
「流石はエンシェルアントラーと呼ばれる個体。探すのに苦労しましたが、想像以上に楽しめそうです!!!」
カーノーが興奮しながら言う。
“エンシェルアントラー”それがコイツの名前らしい。強化個体というよりは亜種みたいなものなのか……。
恐らく、まだエンシェルアントラーは全力を出していないのだろう。なら、効くか分からないけど!
「今なら!」
倒すなら今しかないと思い、ネックスプリングで跳ね起きると同時にチャージなしでブレイブシュートを放つ。
不意打ちで撃ったブレイブシュートはエンシェルアントラーの両顎に当たり、片方は先端を、もう片方は半分ほどを吹き飛ばす。
それが効いたのか、エンシェルアントラーは硬直した後ゆっくりと倒れた。
『よし!』
「バカな……!?」
ブレイブは歓喜し、カーノーは驚愕の声を上げる。
だけど僕だけは素直に喜べない。いや、それどころか違和感を覚えていた。
確かにブレイブシュートを当ててエンシェルアントラーの大顎を破壊する事が出来た。でもそれだけで倒せるはずがない……。
――本当に倒したのか?
すぐに対応出来るよう、アグルみたいに右手を前へ構えてエンシェルアントラーへと近づく。
『ユウキ?』
「ブレイブ、油断しちゃダメだよ。まだ完全に倒したとは言えないんだから」
『確かにアントラーは強力な怪獣だが、流石に警戒し過ぎじゃないか?』
「念の為だよ」
ブレイブとそう話していると、あと少しの所でエンシェルアントラーが起き上がる。
「おぉ、素晴らしい!!!」
先程と打って変わって、今度はカーノーが歓喜に打ち震えている。
「やっぱり!」
咄嗟に距離を取って、構えた。
立ち上がったエンシェルアントラーは体を震わせたかと思うと、次第に変化が現れ始めた。
甲殻に僅かに青みがかっていた部分が赤くなっていき、白かった眼までも赤に染まっていく。特徴的な高い鳴き声も低くなったように感じられる。
『あれは……?』
「はは……怒らせて本気にさせちゃった、かな」
『笑ってられないぞ!?』
ブレイブの言う通りだね。
赤く染まったエンシェルアントラーが迫る。それを迎え撃つため、僕達も地を蹴る。
大顎をほとんど失ったエンシェルアントラーは攻撃方法を変えたようだ。鋭利な爪がブレイブを切り裂こうと襲ってくる。
しかし、そんな単調な動きは予想できた。これを軽々と躱して懐へ入り右ストレートを、続けて後ろ蹴りを繰り出す。
まともに受けたエンシェルアントラーは大きく吹き飛んで倒れた。だけどエンシェルアントラーは起き上がらず、そのまま穴を掘って地面へ潜り始める。
「まずい!」
このまま潜られると手を出せなくなる。
僕は逃がすまいと、ブレイブブレスに溜めたエネルギーを刃状の光弾――ブレイブスラッシュにして放つが、間に合わなかった。
『潜られたか……』
辺りを見渡すけど出てくる気配がない。
「ブレイブ、飛ぶよ」
『ああ』
僕達は不意打ちを避けるため、空へ飛んで様子を見る事にした。
今度は空から、地上の様子を探る。しかしエンシェルアントラーは出てこない。
――このまま出てこないと、時間制限がある僕達には不利だ……それなら見てるだけよりも、ブレイブスラッシュを幾つか撃っていぶり出す方が……。
そう考えていると、突然ブレイブの真下で砂が吹き出し、その中から赤黒い影が飛び出した。
『何!?』
それは僕達の後ろで止まった。空にいる僕達の後ろで、だ。
「そんなっ!?」
振り返ってそれを見た瞬間、僕は驚きを隠せなかった。
理由は明白、あのアントラーが空を飛んでいるのだ。その背中には甲虫の物に似た翅がある。
なるほど、これがエンシェルアントラー。怒らせたのはマズかったね……。
『来るぞ!』
「くっ!」
空を飛んだエンシェルアントラーは地上とは比べ物にならない速度で突っ込んできた。
僕達はこれを辛うじて躱すけど、完全に回避する事は出来ず、右肩にダメージを受けてしまう。正確には見えなかったけど、すれ違う瞬間に爪で引き裂いたのだろう。
即座に振り返り、エンシェルアントラーへ向けてブレイブスラッシュを連続して撃ち出す。しかし、そのほとんどが外れてしまう。
幾つかは何とか当てるが、それは頑丈な甲殻が阻んでダメージになっていない様子だった。
エンシェルアントラーはブレイブスラッシュに怯む事もなく、再びこちらに真っ直ぐ向かってくる。
『ユウキ!』
ブレイブの声にハッとした時には、エンシェルアントラーは既に目の前だった。
瞬時に腕を組んで防御の姿勢を取る。だけど体当たりの勢いを受けきれず、僕達は地面へと叩きつけられた。
「『ぐぁっ!』」
そしてタイミングが悪い事に、カラータイマーが点滅を始める。
「フフフ……フハハハハハッ!最高です、エンシェルアントラー!さぁ、そのままトドメを!!!」
カーノーが叫ぶと、エンシェルアントラーはその勢いを増して猛進してくる。
さっきのダメージが抜けきらない僕達は、立ち上がるのもやっとだ。いや、立ち上がった途端、片膝をついてしまう。
動く事が出来ず、避けられないと思った――その時だった。
僕達が投げ飛ばされた時に壊れた神殿から赤い玉が飛び上がり、トドメを刺さんと迫るエンシェルアントラーに正面からぶつかった。その衝撃で、今度はエンシェルアントラーが地面へ叩きつけられる。
まるでブレイブを庇うように現れた赤い玉は、ゆっくりと近くまで下りてきた。
『あれは……?』
「ええい、良い所で邪魔をするとは……一体何者ですか!」
「……もしかして」
その赤い玉は僕達の前で止まると、一際強い輝きを放つ。
次第に光が収まる。
そこには、ここにいるはずのない、よく知る人物が立っていた。
銀色の巨人――数々の伝説の原点とも言える存在。
「「『ウルトラマン!?』」」
× × ×
かつて見た光景。それを今、僕は体験している。
ブレイブと出会って一緒に戦っている事もそうだけど、それだけじゃない。目の前にウルトラマンがいる。まるでティガと共に戦ったあの話の様に。
チャリジャを追って過去の世界へ跳んだダイゴ。そこでヤナカーギーと戦いピンチに陥るも、突如現れたウルトラマンに助けられた。
ウルトラマンティガ第49話「ウルトラの星」……僕が好きな話の一つだ。
あの話はウルトラマンが30周年という事もあって作られたんだと思っていたけど、もしかしたら本当の事なのかもしれない。
何故そう思うのか?それは僕のいる世界で創作物だと思っていたウルトラマン、ウルトラ戦士が現れ実在すると分かった。カーノーもチャリジャの存在を知っている。そして今僕の目の前に、その歴史を最初に作ったウルトラマンが立っているからだ。
「どうして、ここにウルトラマンが……」
僕は無意識のうちにそう零していた。
『今はそんな事を言っている場合じゃないぞ?……気持ちは分かるが』
ブレイブの言葉に、まだエンシェルアントラーが倒されていない事を思い出す。しかし、まだダメージが抜けきっておらず、立ち上がれない。
そんな僕達の様子を見たウルトラマンが、ティガの劇中と同じくエネルギー付与をしてくれた。
「これって……」
『エネルギーが回復していくぞ!』
点滅していたカラータイマーも戻り、青く光り輝いている。
それを見たウルトラマンは頷いて、手を差し伸べた。僕達はそれを掴んで立ち上がり、頷き返す。
しかしこの状況を良く思わない者が一人。
「あと一息だったというのに……あのウルトラマンに会えたのは嬉しいですが、それは許せません!アントラー!!」
カーノーだ。奴の言葉でエンシェルアントラーが起き上った。
「今度こそ!」
『倒す!』
隣に立つウルトラマンと同時に構える。
先に動いたのはエンシェルアントラーだ。また翅を広げ空へ飛ぼうとする。
飛ばれる訳にはいかないと僕が言う前に、エンシェルアントラーの翅が切り裂かれた。瞬時にウルトラマンが八つ裂き光輪を放っていたからだ。
何という早業。
「流石は怪獣退治の専門家……実際に目の当たりにするとやっぱり凄いね」
『あぁ……』
「僕達も負けてられないよ?」
『ふっ、当然だ!』
ブレイブとそう交わして、エンシェルアントラーに向かって駆ける。
エンシェルアントラーは翅を失ってもう飛ぶ事は出来ない。ここで一気に畳み掛ける!
奴の折れた両顎、その残っている根元を掴んで横っ腹や脚を狙って蹴る。だけどそれで倒せるほど甘くはない。逆に両顎を掴んでいた腕を払われ、腹に頭突きを受けた。
更に攻撃しようとしていたエンシェルアントラーに、ウルトラマンの飛び蹴りが炸裂する。これには堪らず怯んだようだ。
標的をブレイブからウルトラマンへ変えて突進するエンシェルアントラー。しかしウルトラマンは軽く躱すと同時に、背中にチョップを叩き込む。
エンシェルアントラーは素早く身体を反転させ、今度は爪で引き裂こうと右腕を振り上げるが、ウルトラマンはそれを左手で受け止め、逆に腕を払って胸へチョップの連打、更に両顎の根元を掴んで投げ飛ばした。
「これ、僕達の出番ないかも」
『それは喜ぶべきか、悲しむべきか……む?』
余裕と言う訳ではないけれど、ウルトラマンの凄さにお互いそんな軽口を叩いてしまう。
そんな時、立ち上がったエンシェルアントラーに更なる変化が現れる。
額に一本だけあった短い角が真っ直ぐ、大顎が元々あった長さよりも少し短い程度のところまで伸びた。しかし今は両顎が折れていて、これが一番長い。更に二又だった先端は、獲物を簡単に貫けそうなほど鋭利に尖っている。
そして両方の脇から腕が生える。その姿は僕の知っているアントラーとは別物だった。奴が纏う、異様なまでの威圧感。
「これが、エンシェルアントラーの真の姿だっていうのか……」
この変化に僕はただただ驚くしかなかった。
「ククク、この姿になったエンシェルアントラーに勝てますかな?」
カーノーはこの姿を知っているらしい。いや、これがあるからエンシェルアントラーを探していたのか?
進化とも呼べるような変身を終えたエンシェルアントラーが行動を再開した。
ウルトラマンと共に走り出し、僕とブレイブはエンシェルアントラーの腕を掻い潜って後ろへ、それに気を取られ無防備になったエンシェルアントラーにウルトラマンのキックが決まる。
だが今度は怯む様子がない。
『姿だけではない、能力も上がっているのか!』
ブレイブが言うのと同時に、エンシェルアントラーがウルトラマンに二本になった右腕で襲い掛かる。
ウルトラマンは両腕で防ぐが、圧倒的なパワーによって吹き飛ばされた。
「ウルトラマン!」
倒れたウルトラマンに更なる攻撃をしようと迫るエンシェルアントラー。
僕達は奴の動きを止めようと、背後からその体を掴む。しかし簡単に止められず、振り払われると同時に飛ばされてしまう。
「ウェポナイザーじゃないんだから……!」
あまりの力に、ついついそんな事を口走る。
そんなエンシェルアントラーは僕達には目もくれず、膝をついているウルトラマンの正面に立つ。陰に気付いたウルトラマンが顔を上げると同時に、エンシェルアントラーは額から伸びた角で突き刺そうと勢いよく頭を振り下ろす。
ウルトラマンは自身に迫る角と大顎の根元を瞬時に掴み、胸を貫かれる寸前で受け止めた。
「流石はウルトラマン、そう簡単にトドメはさせませんか」
残念そうに言っているカーノーは余裕な様子だ。
実際、ウルトラマンは寸前の所でエンシェルアントラーの角を受け止めたけど、今のパワーに押されつつある。
それでも止まらないエンシェルアントラーは、四本の腕でウルトラマンを抑えて力任せに押し込もうとする。
「このままじゃウルトラマンが……!」
『ユウキ、ブレードだ!』
「っ!分かった!」
立ち上がり、右腕のブレイブブレスから光の剣――ブレイブブレードを出現させる。
ウルトラマンを抑えているエンシェルアントラー目掛けて走り、飛び越えるように跳躍。そのまま回転しながら、今にもウルトラマンの身体を貫かんとする角を斬った。
完全に角を斬る事は出来なかったが、ブレイブブレードによって亀裂が入った角。
抑えられていたウルトラマンはそれを見逃さない。角を掴んでいる手に力を
「なんと!?」
「『よしッ!』」
角を折られたエンシェルアントラーが堪らずもがいている隙に、ウルトラマンが離れる。
僕達は今がチャンスと、ウルトラマンと入れ替わる形でエンシェルアントラーの懐に入り、ブレイブブレードを振るっていく。
しかし何度か斬撃を命中させたところで、反撃を受けてしまう。
『くっ、私達も鍛えてブレードの切れ味も上がっているのに、まだ耐えるのか……!』
確かに僕達は特にブレードの特訓をして、最初の頃に比べれば技もキレも幾らか上がっている。それでもパワーアップした奴を倒せない。
距離が開いた所に、今度はウルトラマンが駆け抜ける。エンシェルアントラーとすれ違う瞬間、左手の手刀を一閃。
すれ違いざまに手刀を繰り出すその動作から霞切りかと思ったが、よく見るとその手には、八つ裂き光輪があった。
「あんな扱い方もあるんだ……」
これが昔から使い続けた技と経験が活かされたウルトラマンの戦い方……。
胴体を斬られたエンシェルアントラーは致命傷とはいかなくとも、かなりのダメージになったはずだ。
その証拠に奴はフラフラ、さっきまでの威圧感もない。決めるなら今だ。
「はあッ!」
ブレイブブレードと八つ裂き光輪に斬られた胴体へ、渾身の力を込めた蹴りを放つ。
エンシェルアントラーはまともにくらって倒れるが、それでも弱々しくもまだ立ち上がり、こちらにゆっくりと向かってきた。
『ユウキ、今度は仕留められるな?』
「うん、大丈夫!」
ブレイブの問いに返し、僕達は任せろと言わんばかりにウルトラマンの前に出る。
左腕を前に伸ばし、その上に重ねるようにして右腕を出す。ブレイブブレスに光が集まり始め、両腕を横に広げるとブレスに溜まったエネルギーの光が尾を引いた。
「シュアッ!」
腕を十字に組んでブレスのエネルギーを開放、エンシェルアントラーに向けて右手から一気に金色の破壊光線を撃つ。
奴の大顎を破壊した時とは違う、フルチャージのブレイブシュート。弱っている今なら倒せるはずだ。
――しかし。
『……なっ!?』
「そんな……」
果たして、ブレイブシュートは命中した。にも関わらず、エンシェルアントラーはこちらへ向かう足を止めない。いや、当たった瞬間は怯んだ。それでも光線に耐えながら進んでくる。
確かにアントラーは、スペシウム光線を耐える程の耐久力を持っている。それよりも強力なエンシェルアントラーだ。
(だからって、あの状態でブレイブシュートを受けながら向かってくるか!?)
思わず叫びそうになる。これで倒せなければもう打つ手はない。
そんな焦りがこみ上げてきたその時――
「ヘアッ!」
迫り来るエンシェルアントラーに、ブレイブシュートとは違う光線――スペシウム光線が発射された。
そんな事が出来るのは当然一人だけ。そう、ウルトラマンだ。
始めに僕達が前に出てブレイブシュートを撃ったから、ウルトラマンはただ見守っていた。だがエンシェルアントラーが想像以上に耐えた事に、このままでは危険と判断したのか、ブレイブの隣に来て加勢してくれた。
「このまま押し切る!」
『あぁ、だがエネルギーを使い果たさないでくれよ?』
「……尽きる前に倒せたら良いね」
『おい!?』
ふざけたやり取りをしてはいるが、ブレイブシュートを撃ち続ける手は休まない。それはウルトラマンも同様、スペシウム光線を撃ち続けている。
すると異常な耐久力を見せていたエンシェルアントラーも、二つの光線に耐えられなくなり、遂にその足が止まった。そして胸の甲殻から火花が散る。
僕達とウルトラマンはそれぞれの光線を止めると、エンシェルアントラーは力尽き、倒れて爆散した。
「バカな……エンシェルアントラーが敗れるなど……」
カーノーは信じられないと言った感じで、倒されたエンシェルアントラーを見ていた。
確かに僕とブレイブだけなら、エンシェルアントラーには絶対勝てなかった。もしあの時ウルトラマンが現れなければ、きっと負けていたのは僕達の方だ。
『カーノー、アントラーは倒した。お前はどうする?』
ブレイブがカーノーに問う。
光線を撃ち続けエネルギーを消費したせいで、ブレイブとウルトラマンのカラータイマーは点滅している。さっきみたいに回復も出来ない。
しかし、まだカーノーが残っていた。彼が戦うと言うのなら、僕達はこの状態で戦うしかない。
暫くカーノーはエンシェルアントラーを見詰めていたが、諦めたように首を振るとこちらを向いた。
「ワタクシの負けですね。幾らあなた方のエネルギーが少なくとも、ワタクシ一人では敵わないでしょう」
ですが、とカーノーは続ける。
「次はワタクシが勝ちます……またお会いしましょう!」
そう言って彼は消えた。
「……勝ったんだね」
『君と共に戦うようになってまだ短いが、かつてない強敵だったな』
ブレイブの言う通り、僕はブレイブと一緒にゲルゼの怪獣や地球の怪獣と戦ってるけど、これほど強い怪獣とはまだ戦った事がなかった。
これから先、ゲルゼがこれと同等――いや、これ以上の怪獣を送り込んでくる可能性だってある。そういう意味では、あのエンシェルアントラーと戦えたのは良かったのではないだろうか。
今よりももっと強くならないとね。
……隣に立つ“生ける伝説”みたいになるのは難しいと思うけど。
「ありがとう、ウルトラマン」
そのウルトラマンに礼を言いながら右手を差し出すと、彼はブレイブの――僕達の右手を掴んで握手を交わした。
互いに頷きあい、暫くして名残惜しさを感じながら握手を終える。
するとブレイブの周りを、幾つもの光が舞い始めた。
『この光は……』
この光は変身を解除する時のとは違う。
これはまるで――
「大丈夫だよブレイブ、僕達のここでの役目は終わったみたいだから」
『そうか……なら戻るのか?』
「うん、そう言う事」
× × ×
『――キ、ユウキ』
「んん……ここは……」
目を覚ますとそこは、カーノーを追って入った路地裏だった。だがその姿はなく、彼が使っていた装置と渦も消えていた。最初からそこに存在していなかったかのように。
光に包まれた時までしていた変身も、いつの間にか解除されていた。それに時間も巻き戻って――いや、渦に飛び込む前の時間だ。
『戻ってきた、と言う事でいいのか?』
「多分そうだと思う。でも、カーノーが使った
『奴が逃げたから、一緒に消えたんじゃないのか?』
やっぱり、そうなのかな。
ブレイブの言葉に納得しつつ、ミズキさんに連絡をしようとしたその時だった。
「あ、見つけた!ユウキ君!!」
「っ!?」
突然後ろから声を掛けられ、僕は弾かれるように振り向く。そこには走ってきたのか、肩で息をするスズがいた。
「す、スズ、何でここに……?」
「何でって、ユウキ君を追ってきたからに決まってるでしょ」
呼吸を整えた彼女は、さも当然であるかのように言い放った。
「それよりも」
僕を睨むように見るスズ。
――まさか、さっきのブレイブとの会話を聞かれた!?
「いきなり走って行かないでよ!ビックリしたじゃない!!」
「……え?」
「何?」
「あ、いや……」
良かった、聞かれてはなかったみたいだ。
しかし安心したのも束の間、近くまで来たスズが僕の手を掴む。
「ほら、早く行くよ!」
と、掴んだ手を引いて歩き出す。
「わ、分かったからそんなに引っ張らないで……!」
「ユウキ君が勝手に走っていくのが悪いんだから!!」
う、スズさん凄い怒ってる。
「……この前みたいに、勝手に一人で行かないでよ」
彼女が呟いた言葉は、小さかったけど確かに聞こえた。“この前”というのはゴメスが現れた時の事だろう。
「スズ……ごめん」
それはその時と今日の事、そして秘密にしている事に対して。
きっとこれは、スズにはずっと話せないかもしれない。例え彼女が悲しんだとしても、皆を守る為に必要な事だと思うから。
「っ……謝るなら、お昼ご飯はユウキ君の奢り!決定!」
「分かった、デザートも付けるよ」
「やった!」
良かった、少し機嫌はよくなったらしい。――その表情は見えないけど。
でも、今はこれでいい。
いつか話す時が来るかもしれないけど、それはずっと先だ。それまで、僕がブレイブである事は秘密にし続けないとね。
それにしても、あのウルトラマンは何だったんだろうか?
あの砂漠の町がバラージなのは、カーノーも言っていたことから明らかだ。
神殿から赤い玉が現れたという事は、あれはノアの神?でも、その姿も能力もウルトラマンノアじゃなかった。――いや、そもそもノアの神とノアが同じ存在とは断定されてなかったはず……。
やっぱりあれは、初代ウルトラマンと同一人物、という事で良いのかな。いずれにしても、あのウルトラマンと一緒に戦えたのは最高の経験だね。
あ、ミズキさんに連絡してないけど……まぁいっか。