今年にずれたことでサブタイや相手が決まりました。
それでもかなり遅くなりましたが……。
今年もこの季節がやってきた。
現実にウルトラマンや怪獣が現れて、初めてのウルトラマンフェスティバル――通称“ウルフェス”が開催される。今までならただのイベントだったのだが、今年は特に違う。
さっきも言ったけど、この世界で空想の物だった怪獣、そしてウルトラマンが実在するのだと分かった。こっちの方が大きな意味を持つだろうね。
そして何より、この世界で特撮としてのウルトラマンが、放送から50年の節目を迎えたんだ。今までの展示品やステージショーも凄かったけど、今年のは特にそれらの気合の入り様は違うだろう。
――現に、会場はかなりの数の人で賑わっているし。
「ユウキ君早くー、置いて行っちゃうよー!」
スズもいつも以上に、こうしてはしゃいでいた。
「待ってよ。人が多いし、はぐれたら探すの大変なんだから」
「それはぼーっとしてるユウキ君が悪いんじゃない?」
「何で僕が悪い事になるかな……」
彼女は意地悪な顔をして笑っている。
「都合が合わないからって、最終日の今日しか行けないって言ってたのは、どこの誰だったっけー?」
「うぐ……」
痛い所を突いてきたな……。
スズが言った通り、今日はウルフェス最終日だ。それにはもちろん理由がある。
僕の都合がつかない。簡単に言えば、Guardianの隊員になってから休みがほとんど出来なかったからだ。
出来たとしても、怪獣や以前スズと出かけた時のカーノーみたいな侵略者が現れる事があった。だから休日でも、基本的に基地で待機している。
しかしシミズ隊長曰く「流石にずっと缶詰状態というのもダメだ」という事で、最終日の今日にしてようやく来れた。それでも、念の為GuardマルチシーバーとGuardハイパーは持ってきている。
「それよりもユウキ君、そろそろ時間なんじゃない?」
そう言われて時間を確認すると、確かにもうすぐライブステージが始まる時間が迫っていた。
「そうだね。それじゃあ行って待ってようか」
「うんっ!」
× × ×
もうすぐライブステージが始まるという事もあって、客席はほとんど満員。流石は最終日と言うべきかその人の数は凄まじく、いつも以上の盛り上がりを見せるだろうというのは一目瞭然だ。
「ユウキ君、楽しみだね♪」
隣のスズも既に少し興奮している様子だった。
照明が落とされ、会場が暗くなる。どうやらライブステージが始まるようだ。
『君達は覚えているだろうか。50年前、人々に夢と希望を与えてくれたヒーローを――』
そんなナレーションが流れた直後、ステージの左側からベムラーが姿を見せる。続けて、ウルトラマンが右側から走り出てきた。
ベムラーの前に立ち止まったウルトラマンは、客席に向かってお馴染みの登場ポーズを構えると、ベムラーに向き直って今度はファイティングポーズをとる。
『ウルトラマン。彼ら光の戦士達は、我々人類が知らない場所で今も尚、宇宙の悪と戦い続けている』
チョップを三連打、更にベムラーをステージ際に投げ飛ばす。そしてスペシウム光線の構え。
もちろん実際にスペシウム光線が発射される事はなく、背景のスクリーンに光線を合成して演出する。放たれたスペシウム光線がベムラーに命中した。
撃破されたベムラーが舞台袖へと
再び舞台の照明が点くと、科特隊の隊員服に似た衣装を
「いやー、ウルトラマンが怪獣をやっつけてくれたおかげで、またこの街に平和が戻ってきましたねー!」
……何か、ニシハラさんみたいな人だなぁ。
「あ、皆さんこんにちは!私はヒカリ隊員です!今日は皆さんに、科学特捜隊――通称、科特隊の活動を一日体験して貰いたいと思います!それじゃあ今日は一日、よろしくお願いします!!」
彼女――ヒカリ隊員がそう言うと、客席から拍手が起こる。
「そう言えば聞きましたよぉ~?皆さんの世界にもウルトラマンが現れて、侵略者から地球を守っているみたいですね!そのウルトラマンの名前は――」
「ウルトラマンブレイブ、ですね」
ヒカリ隊員がブレイブの名前を言おうとした途端、彼女と同じく科特隊らしき衣装を着た男性が現れた。
「あーっ!ちょっとツバサ隊員、私のセリフ取らないでよーっ!」
「ヒカリ隊員はただでさえ喋り始めたら長いんですから、別に良いじゃないですか?セリフを取るぐらい」
「良くないですー!」
この二人のやり取りも、なんだかニシハラさんとコバヤシさんみたいだなぁ……。
今、この人達――と言うか、会場にいる人達もブレイブの名前を知っている。それはGuardianと特撮ドラマの制作会社で、ブレイブの名前を出したからだ。
これは僕が他の隊員がいる前で、ブレイブの名前を言ってしまった事が原因だった。だけど、シミズ隊長とミズキさんが機転を利かせてくれたおかげで、自然な形でブレイブと呼べるようになった。
そして制作会社の人達とも協力して、この世界に現れたウルトラマンはブレイブだというのを周知させていっている。
「……まぁとにかく、そのウルトラマンブレイブですが、まだまだ謎が多くあります!」
「彼はどこから来たのか?そして何故この地球に来たのか?……もしも彼、ブレイブがここに来ていたら、聞いてみたい事が沢山ありますね」
うっ、結構怖い事言うなぁ……。
「ですがウルトラマンが来るのは戦う時!その時は皆さん、全力でウルトラマンを応援してあげてくださいね!!」
「――ならば、そのウルトラマンが来る状況を作ってやろう」
突然聞こえてきた声に、客席どころかステージ上の二人まで驚いた表情をしている。
(今のタイミングなら演出って事も考えられるけど、あの二人の反応はそんな感じじゃない……?)
するとステージの上段に、黒いマントのようなものを羽織った人影が姿を見せた。
「え、グレゴール人!?そんなの予定にないはずだけど……!?」
どうやらトラブルらしい。それも厄介な。
観客達も状況が掴めていないのか、少しざわついている。
「悪いが、暫くこの場所を貸して頂く」
グレゴール人はそう言いながら右手をかざすと、ステージ上にいたヒカリ隊員とツバサ隊員の二人を宙に浮かせた。
「わわっ!?」
「うおっ!?」
僕はステージに注目が集まっている隙に、音を立てないように静かに席を離れる。
スタッフにGuardマルチシーバーを見せて、ステージに繋がる通路へと入る。
「ブレイブ」
『ああ、まさかこんな所にまで宇宙人が現れるとはな……』
「こんな所だから、だと思うよ」
『何?』
他の宇宙人もそうだけど、変身能力がある者なら簡単に入り込める。恐らく、あのグレゴール人は僕――いや、ブレイブの正体が分かってるんだろう。
凶悪な侵略者じゃない、というのは正直なところ助かった。
「理由は何にしても、今は止めないと」
『そうだな』
ステージ裏にいた人達にもマルチシーバーを見せ、騒がないように避難させる。大きな騒ぎになって会場中がパニックになるのを避ける為だ。
誰も居なくなったのを確認して、ブレイブブレスを両腕に出現させる。
「行くよ、ブレイブ」
『よし』
それにしても、人間の大きさのままブレイブになるのは初めてだから、少し変な感じがするね……。
変身を終えた僕達は、グレゴール人が待つステージへと向かう。
出た瞬間、客席から大歓声が上がった。
「……来たか」
『グレゴール人だったな。何が目的だ?』
「フン、目的か……オレと貴様、どちらが強いのかを知りたい。オレと戦ってもらおう」
『その為だけに、ここに来たのか?』
「ああ、そうだ」
やっぱりグレゴール人はこういう人が多いのかな……?
とにかく、侵略が目的じゃないのは分かった。しかしこうして彼が挑んでくる以上、その望み通りに戦うのが良いだろう。
「始める前に、少し準備をしよう」
『準備……?』
グレゴール人はそう言うと、客席に向けて手をかざした。
するとステージの端にダイナの時に使った物に似た様な、剣状の柱が幾つか並んで立てられる。
「これらの間には電磁バリアが張られている。これで我々がこの舞台の上から落ちる事も、光線があの人間達に当たる心配もない」
ダイナの時と同じリングを作った訳か……。だけど、光線も通さないっていうのはありがたい。
「折角の舞台だ、ここにいる者だけに見せるのも勿体無い」
そう言って次に現れたのは、こちらも同じくダイナで使った中継用のカメラが付いた飛行物体。その小型版だ。
どうやら、このステージでの戦いをあの時と同じように、他の場所にも流すつもりらしい。……基地の皆も見るだろうなぁ。
「まずはウォームアップ、小手調べだ。来い」
準備を終えたグレゴール人はその姿のまま構えた。僕達もそれに応えるように構える。
「『ハァッ!』」
距離を詰めて右ストレートを放つが、これは軽々と
僅かに距離が開いた所に右足で蹴りを放っても簡単に防がれ、続けて撃ったブレイブスラッシュでさえ、右手であっさりと弾かれる。
『く、流石に通用しないか』
「宇宙格闘士って呼ばれてるだけあって、やっぱり手強いね……!」
まぁこんな単調な攻撃は楽に見切られるよね。まだまだ僕が戦いの素人っていうのも理由として大きいだろうし。
「確かにウォームアップとは言ったが、その程度か?今度はこちらから行くぞ」
彼はそう言った瞬間に飛び上がり、僕達の目の前に着地すると同時に縦のチョップ。両手を使って防ぐがグレゴール人はこれを読んでいたのか、続けて繰り出された膝蹴りをまともに受けてしまう。
距離が開いた所を、更に後ろ回し蹴りの追撃。これを頭に受けて僕達は倒れてしまった。
『ユウキ、大丈夫か?』
「何とか……ブレイブは?」
『私も大丈夫だ。だが、こうも実力差を見せつけられると辛いな……』
ブレイブまでそんな事を言うなんて……。でも、確かにこれだと単なる格闘だけじゃ勝てないかもね。
「そろそろ良いか……ウルトラマンブレイブ、貴様に面白いものを見せてやろう」
僕達が立ち上がると、彼はそう言って力を溜めるような仕草を見せる。
「はああぁぁぁ――――ハアァッ!!!」
『何!?』
「まさか……!」
グレゴール人の全身が光り輝いたかと思った次の瞬間、僕達の前にはもう一人のウルトラマンブレイブ――身体に黒いラインが入っていたり目つきやつま先が鋭くなってるけど――が立っていた。
『あれは私か!?ユウキ、一体どういう事だ!?』
ブレイブが目の前に現れたもう一人のブレイブに混乱している。
そう言えば、ブレイブにグレゴール人が偽物に変身した事があるって言ってなかったね……。
「グレゴール人にはザラブ星人みたいな変身能力があるんだ。過去にもその能力を使って、ニセウルトラマンダイナとして本物のダイナに挑戦してる」
『つまりあれは……』
「うん、グレゴール人が変身したニセウルトラマンブレイブ。ただしザラブ星人と違って、ブレイブと同じ力を使えるはずだよ」
ブレイブに説明をしながらも、グレゴール人――ニセブレイブと睨み合いを続ける。
両者の指先がほんの僅かに動いたその刹那――
「シュアッ!」
「ジュアッ!」
ブレイブとニセブレイブ、二人が同時にブレイブスラッシュを放つ。しかし互いの光弾はぶつかり合い、弾けて消えた。
そして、そこからほとんど間を置かずに今度はブレイブシュートを、チャージを短縮して撃ち合う。
『くっ……!』
「……フン」
二つの光線もさっきと同じようにぶつかり合う。
そしてこれも力が
「ブレイブ!」
『平気だ。しかし自分で言うのもなんだが、私と同じ力を相手にするのは確かに厄介だな……』
「しかも単純な格闘戦なら、向こうの方が上だしね……」
『わ、私は長い間眠っていたからそれは仕方ないだろっ!?』
遂にブレイブはそんな事まで言い始めた。気持ちは分かるけど。
「だったらブレードも使うしかないね」
『それも通用しなければ、完全に自信を無くすな……』
「弱気になったからってそんな事言わないっ!」
右腕にブレイブブレードを発現させながら、弱音を吐くブレイブを
「ブレードも使った戦いなら、ブレイブの方が経験あるんだから!」
『……そうだな、行くぞ!』
ブレイブも気合を入れ直す。
跳ぶようにニセブレイブへ距離を詰めて斬りかかる。
一撃目は躱されるけど、流れるような動きで二撃、三撃とブレードを振るっていき、鍔迫り合いの形へと持ち込んだ。
「なるほど、これが貴様の得意技か」
冷静に受け止めるニセブレイブ。
『まだまだ!』
しかしブレイブは力を込めて押していく。
ニセブレイブのブレードを飛ばすようにして弾き、隙が出来た所を回転斬りで一閃、ここで始めてダメージを与える事に成功する。
「やるな……!」
斬撃を受けた箇所を押さえるニセブレイブ。だけどすぐに、ブレードによる反撃にと飛び上がり、斬りかかって来た。
ブレイブはこれをブレードで受け止める体勢を取る。
――のだが、二つの光の剣がぶつかろうかというその瞬間、ニセブレイブのブレードが消えた。わざと消したんだ。
それによって、腕を上げていた僕達は無防備な腹をニセブレイブに晒している状態になる。
『何!?』
「しまった!」
ニセブレイブは着地するとブレイブが腕を下げるよりも早く、その無防備な体に強烈なストレートパンチを放つ。
当然その威力は凄まじく、僕達は飛ばされる様に後ろへ数歩下がり、片膝をついてしまう。そして同時に、いよいよカラータイマーも鳴り始めた。
これに、今まで静かに見ていた観客達からどよめきが起こる。
「これは流石に――」
『――効くな』
「さて、そろそろ決着にしよう」
そう言いながら、ニセブレイブが近付いて来た。再び右腕にブレイブブレードを発現させて。
このままじゃやられる――そう思った瞬間、ブレイブとニセブレイブに、突如として第三者から銃撃を受ける。
『何だ!?』
何とか当たることはなく、またこれによってニセブレイブもその足を止めた。
「く、何者だ!」
ニセブレイブが叫ぶスクリーン側の方に目をやる。すると、影から複数の
「人……?」
『いや……あれは人間ではないな』
ブレイブはそう言うけど、僕には普通の人達にしか見えない。
そんな中、攻撃してきた人の一人が口を開く。
「貴様らのどちらが勝とうが我らは知らん。だが邪魔をされても困る……。我らの目的の為に、貴様らには消えてもらう」
その言葉と共に、再び彼らは手にしている銃を向けてくる。
『勝手な事を……!』
「邪魔をするなァッ!」
僕達が動くよりも先に、彼らに攻撃したのはなんとニセブレイブだ。
彼は近くにいた者に向けてブレイブスラッシュを放つ。しかしその狙いは、手に持った武器ではなく相手の体だった。
「ッ……!」
僕が止めようとするもそれは叶わず、ニセブレイブの放った光弾が命中し、それを見た観客からも悲鳴が聞こえてくる。
だがブレイブスラッシュを受けた者はその場に倒れず、体が発光した次の瞬間、彼は跡形もなく蒸発して消えた。
ブレイブスラッシュには、攻撃を受けた相手をこんな風にして倒すまでの威力はない。仮にニセブレイブのであっても、そこまで強化されているとは思えない。
「ブレイブ、あれって……」
『あれは宇宙警備隊の記録で見た事がある。奴らはキル星人だな』
キル星人?それって確か、セブンに出てきた宇宙人だったような……?
「あれはもしかして、キル星人じゃないのか!?」
「って言う事は人間じゃないの?」
「そうだ、セブンで恐竜戦車を操っていた宇宙人だ!」
客席にも気付いた人達がいるようだ。
相手が宇宙人だと分かったのは良いけど、それでも人の姿だと戦いにくいなぁ。例え武器だけを潰しても諦めてくれなさそうだし、何よりニセブレイブ――いや、グレゴール人が許さないだろう。
そんな事を考えていると、キル星人の一人がブレイブに銃を向けて発砲してきた。しかし扱っている銃はそれほど威力はないのか、ブレイブバリアで難無く防ぐ。
その後ろで撃ってきた者とは別のキル星人がまた一人、ニセブレイブによって倒される。
この状況を良くないと思ったのか、キル星人のリーダーらしき人物が部下に叫ぶ。
「ええい、チブロイドを出せ!」
「はっ!」
命令を受けた部下が、懐から球体を取り出してそれを展開させると、複数の戦闘員が新たに出現した。
『奴らは一体……ユウキ、知っているか?』
「いや、これは僕も初めて見るよ」
「フン、チブルの機械人形か。ソイツらの相手は貴様に任せるとしよう」
ニセブレイブは現れた戦闘員――チブロイドを
機械人形……それってアンドロイドって事だよね。それにチブルのって事は、作ったのはチブル星人なのかな?
『なるほど、それなら倒しても問題ないな』
「そうみたいだね。それじゃあ僕達は、心置きなく戦うとしようか」
何体ものチブロイドを前にして、僕達は構える。
その内の一体が飛びかかってきた。これを前転で避けると、別のチブロイドも攻撃を仕掛けてくる。
二体目の攻撃を防いで、ブレイブの後ろにいる最初に攻撃してきたチブロイドへ向けて、そのまま後ろ蹴りを放つ。続けて正面の二体目に右ストレート。だけど二体のチブロイドはまだ動けるようだ。
「流石にこれだけじゃ、倒れてはくれないね」
『ならばブレードで一気に蹴散らす!』
「よぉし!」
ブレイブブレードを発現させて、更に向かってきた三体目のチブロイドの攻撃を躱すと同時に、回転斬りで切り伏せる。
それを見ていた他の二体も仕掛けてくるが、これらもすれ違いざまに一閃していく。
これで残りは……五体。
一方ニセブレイブの方は、あらかたキル星人を倒して残りはリーダーを含めて二人のみとなっていた。
「我らの邪魔をして……貴様、許さんぞ!」
「それはオレのセリフだ。折角の勝負をこの様な形で潰した事、貴様達の命で償ってもらう」
そう言ったニセブレイブは、ブレードの切っ先をキル星人のリーダーに向ける。
「このぉ!」
それに対して、残っていた最後の部下が銃を構えた。だが――
「ハッ!」
「ぐあぁ!?」
一瞬にして距離を詰めたニセブレイブの斬撃で、その部下も切り裂かれた。
そして、
「き、きさ、ま……あぁぁぁ!!!」
彼は目にも止まらぬ速さで、同じようにリーダーをも切り裂いていた。
「その程度の強さで、オレの邪魔をするからだ」
消えていくキル星人に、ニセブレイブは目を向ける事もなくそう吐き捨てる。
『どうやら、あっちは終わったらしい』
「そうみたいだね。それじゃあ僕達も、やるよ!」
『あぁ!!』
目の前には五体のチブロイド。
これを一気に片付けるには、“とっておきのアレ”を使うのが良いだろうね。
「シュア!」
左腕を胸の前で斜めに立て、振り下ろすと同時に左腕のブレイブブレスから、右腕と同じくブレードを発現させる。
正面から一体のチブロイドが向かってくるが、今のブレイブに一体で近付くのは自滅行為だ。
「セェィヤァッ!!」
両腕をクロスさせて上から下に、左右のブレードでX字に切り裂く。
この技は一対一よりも一対多数での戦いで使う技だ。当然相手が一体だけなら、その二振りのブレードによる斬撃が容赦なく襲いかかる。
その威力を目の当たりにした、残りのチブロイド達も動いてブレイブを取り囲もうとする。しかし、今ならこの程度じゃ苦戦はしない。
「セァッ!」
迎え撃つ様に右側にいる一体には右腕を横に一閃、そして左側のもう一体を左腕で
『ユウキ』
ブレイブが注意を促す。残っていた二体に目を向けると、光線銃を取り出して撃ってきた。
放たれた弾丸はバリアで防がず、その全てを左右のブレードで弾いていく。
「ハァッ!!」
最後の一発を左腕のブレードで弾き、空いた右腕のブレードでヒカリと同じような光弾――ブレードショットを一体に放つ。狙い通り命中し、撃たれたチブロイドは機能を停止する。
それを見て動きに隙が出来た残り一体には、懐に飛び込んで両腕のブレードによる二連撃の逆袈裟斬り。フィニッシュで止まったブレイブの周りで、倒されたチブロイド達は消滅した。
キル星人とチブロイドが全て居なくなったのを確認し、両腕のブレードを消してからニセブレイブに向き直って構える。
彼はブレイブに対して背を向けていたけど、こちらに振り向きながら僕達を止める様に、右手を前に突き出す。そして同時に、ニセブレイブの身体が光り、グレゴール人の姿に戻った。
「貴様がまだやる気だというのは、オレとしても嬉しい。だが、もうそんな時間はないのだろう?」
『……ああ、残念だが、このまま決着をつけられそうにない』
グレゴール人の言う通り、ブレイブにはもうエネルギーが残り少ない。
キル星人が現れた時に、既にカラータイマーは点滅していた。
そして、さっき使ったブレイブブレードの二刀流。あれは普通のブレードよりもエネルギーの消費が激しい、言わば諸刃の剣だ。
「オレも邪魔が入ったせいで興が削がれた。今回は勝負を預けるが、この決着はいつか必ずつけよう」
彼はそう言い、今度は客席の方に向いた。
「人間達にも迷惑をかけたな」
グレゴール人がそう口にすると、客席から一人の男性が立ち上がる。
「本物のウルトラマンとグレゴール人の戦いをこんな間近で、それもウルフェスの舞台で見せてもらって、俺すっげぇ嬉しかったです!」
その男性の言葉に、周りの観客から拍手が起こる。そして他にも色んな声援が聞こえてきた。
「良い戦いだったぞー!」
「グレゴール人さん凄く格好良い!結婚して!」
「最高の思い出になりました!今日ここに来れて良かった!」
何かおかしな事も聞こえた気がするけど、きっと気のせいだよね?
「……ありがとう」
彼が小さな声でそう言ったのは、僕達にしか聞こえなかったようだ。
× × ×
グレゴール人はブレイブに再戦を誓うと、会場に設置していた柱や飛行物体と共に帰っていった。
「ブレイブさん、質問したいんですけど良いですか!?」
僕達もステージを後にしようとすると、ヒカリ隊員に声をかけられる。それも凄いハイテンションで。
『おいおい、そんな時間はないぞ?』
「そうだよね……」
そのキラキラとした表情で迫られると答えてあげたくなるんだけど、残念ながらブレイブの言う通り今はそんな時間はない。
喋るわけにもいかないから、ここはカラータイマーを指差してから「ごめんなさい」と両手を合わせたジェスチャーで示してから、急いでステージの袖へと走って消える。
その時、後ろから「待ってくださーいっ!」と彼女の声が聞こえていたけれど……。
ステージ裏で変身を解除すると、丁度Guardマルチシーバーに通信が入った。
「はい、ユウキです」
マルチシーバーの画面にミズキさんが映る。
「さっきの戦い、見てたわ。基地の皆でね」
まぁそうですよね……。
しかし今のミズキさんは、基地の司令室から通信をしていない。それも外にいるようだ。
「それ言う為に通信してる訳じゃないわよ。相手は帰ったみたいだし、危険はないと思うけど、安全確認も兼ねて私がそっちで調査する事になったわ」
「了解しました、合流して手伝います」
「何言ってるの?貴方は今日非番なんだから、そのまま一般客として会場にいなさい」
「え、良いんですか……?」
僕の問いに笑みを浮かべるミズキさん。
「隊長からもその様に言われてるわよ。今日は休めって。それに一人でそこにいる訳じゃないでしょ?」
「……そうですね、そうします」
ここまで言われるなら、と僕はミズキさんの言葉に甘える事にする。
「それじゃあ今からそっちに行くけど、特に気にしないで楽しんでらっしゃい。隊長も会場の安全が確認できたら、再開してもいいと言ってたから」
「分かりました」
そうして互いに敬礼をして通信を終えた。
ミズキさんとの通信を終えた後、何とか客席――スズの隣の席に戻って来た訳だけど……。
「あっ!ユウキ君、どこに行ってたの!?」
僕が隣にいない事に気付いたスズが怒って待っていた。当然だけど。
「えっと、その……トイレに行って戻ったら何故か会場に入れなくなってて……な、何かあったの?」
「……ステージが始まった時、隣にいなかった?」
スズがジト目で僕を見る。
「さ、最初だけはね!でもウルトラマンがベムラーを倒した時に行ったんだよ!」
「ふーん、じゃあ本当に知らないんだね?」
「ほ、ホントだって!」
「なーんか怪しいんだけどなぁー……。でもユウキ君がウルトラマン、なんてのも考えられないもんねぇ」
ちょっとスズさん、何気に酷い事言ってません?いや確かに考えられないかも知れないけどね?
しかしこれで、スズの疑いから逃れる事が出来た……はずだ。
『只今より、安全確認のためライブステージを中断させて頂きます。お客様の皆様はスタッフの誘導に従って、一度会場の外への移動をお願い致します』
スズとそんなやりとりをしていると会場にアナウンスが流れ、誘導を始めたスタッフに従って観客が順番に移動していく。
「じゃ、じゃあ僕達も行こっか」
「そうだね。あーあ、私もブレイブとお話したかったなぁ……」
と、彼女はステージを見ながら、心の底から残念そうに呟くのだった。
『……話ならいつでも』
「ダメ」
「ん?」
「な、何でもない」