『完結』黒歴史の輝き   作:万歳!

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安心と信頼の王国貴族でお届けします



第2話 襲撃

 クライムは緊張していた。それはラナー様のために功績をあげなければならないという点であったし、たっち・みー様という神話に出てくるような英雄と共に行動するからであった。

 

 ストロノーフ様と蒼の薔薇の皆さんを含めて相手にしてもらったが、何もできなかった。それほどの差があるのだ。どうやって強くなったのだろうか。自分も同じ強さに立てないだろうかと、疑問ばかり募る。

 

 首を横に振る。今考えるべきは、八本指をどうやって討伐するかだ。

 

 だが、それ以上にザナック王子が自分とラナー様との結婚を認めてくれる……。心から嬉しかった。そのためにも王女様にふさわしい男にならなければ。

 

 そう思い。たっち・みー様に声をかけていた。

 

「たっち・みー様、よろしくお願いいたします!」

 

「こちらこそよろしくクライム君。そんなに緊張しないでください。私は麻薬部門を潰したらすぐに違法娼館を潰しに行きますから、ここの班長はあなたです」

 

「はい、承知しました! たっち・みー様の代理が務められるように頑張ります! それとこの戦いが終わったら、鍛えて頂けないでしょうか? ラナー様にふさわしい男になりたいんです」

 

「……恋ですか。いいでしょう。私の訓練は実戦です。先ほどの訓練を耐えたあなたなら大丈夫でしょうが、心を強く持ちなさい。それこそが必要なことです」

 

「はい!」

 

 そして、麻薬部門がある場所にたどり着いた。そしてたっち様は扉を手に持つ剣で切り裂いた。そして一番先頭に立ち突入していった。

 

 遅れないように班員と共に行動する。しかし。自分たちは本当に必要なかったかもしれない。たっち様の前に立っていられる人物はいなくて、麻薬部門の制圧はすぐにすんだ。

 

「では、私は違法娼館に向かいます。あなた達はこの場所を守ってください」

 

「承知しました」

 

☆ ☆ ☆

 

 現在サキュロントは王国に最後に残った違法娼館で、主のゼロから折檻を受けていた。それはごみとして捨てられた少女を処分できなかったからだ。コッコドールも顔をしかめながら自分が処罰されるのを見ている。

 

「それでお前は、恐れをなして逃げ出したというのか、サキュロント?」

 

「待ってくれボス、本当にあの聖騎士(パラディン)は本当にまずい。王国戦士長よりもまずい!」

 

「ふん、それはお前が弱いからだ。こんなことならお前を六腕に指名すべきではなかったな」

 

「それで、ゼロ。この始末はどうやってつけてくれるのかしら? あの女に逃げられたのはちょっとまずいってレベルじゃないわよ。しかもあなたは財産を保証してくれるって言ったわよね?」

 

「安心しろ、俺たち六腕の五人で挑む。サキュロントは六腕の中で最弱だ。だが俺たちは違う。真実アダマンタイト級冒険者に匹敵する」

 

 その言葉に自分を他の六腕たち4人が笑う。なにも理解しちゃいない。本当にあいつと関わるのは危険なんだ。だが、それが分かってもらえない。

 

 自分の命もここまでかと思っていた時だった。

 

 扉が破壊される音がした。

 

「ちょっと、今度は何なのよ!」

 

「恐らく、誰かがこの娼館を潰しに来たんだろう。ちょうどいい。コッコドール、俺たちの本当の力を見せてやる。安心しろ」

 

 そしてコッコドールの部下たちがこちらまで逃げてきたようだ。恐らく、そうすれば助かると思ったのだろう。だが、サキュロントは安心できなかった。自分の感覚が正しければ、あいつはあの聖騎士(パラディン)は次元が違う。ボスでも勝てないだろう。自分が生き延びる方法はないか?

 

 そう考えていると、あの聖騎士(パラディン)が現れた。そしてボスが話し出した。

 

「お前がサキュロントの言う、聖騎士(パラディン)か……なるほど、確かに違和感を覚えるな。貴様はここまでの道のりを簡単に突破した。なのに俺が力を測ることができない、だと?」

 

「なるほど、あなた達が六腕ですか。まさか全員この場にいてくれるとは助かりました。これなら他の拠点は簡単に落ちるでしょう」

 

「何を言ってるの!?」

 

 コッコドールが叫ぶ。確かに自分も疑問に思った。

 

「他の拠点は私の仲間たちが、制圧に向かいました。そう蒼の薔薇とそれに匹敵できる者たちがね? 六腕のあなた達がここにいる以上制圧は簡単でしょう。ではあなた達は私が、倒させていただきます。そうですね、最後に一応聞いておきます。降伏するものはいますか?」

 

 その言葉を最後に、あの聖騎士(パラディン)はあの想像を絶する殺気を発した。その殺気を受けて、六腕のボス以外が膝をついた。

 

 いやボス自身も腰が引けている。だがそれでも逃げない。それだけでボスの心の強さは分かる。だか、あの聖騎士(パラディン)は降伏すれば命を助けてくれるといった。なら。

 

「俺は降伏する!! だから命を保証してくれ!」

 

「サキュロント貴様!!」

 

 ボスが大声で叫ぶ。だが、腰が引けている。ようやく自分の言葉を理解したようだ。この聖騎士(パラディン)に触れるのは間違いだったと。コッコドールはとっくに気絶している。そしてここまで逃げてきたコッコドールの部下たちは殺気で死んでしまったようだ。

 

「なるほど、あなたは降伏と。他の者たちは降伏しないようですね。ではさらばです!」

 

 殺気がさらに膨れ上がった。ボス以外の誰もが失神していた。アンデッドのデイバーノックですら恐怖を覚えているようだ。

 

 そして目に見えぬ速さで動き、ボス以外の誰もが斬られた。

 

「さて生き延びているのはゼロとサキュロントだけですね。ゼロ。貴方に最後に問います。降伏する意思はありますか? あなたは警備部門のトップで貴族とのコネも持っているはずです。それを証言するのであれば命は助けましょう。いえ、それだけではありません。貴方は強くなりたくありませんか?」

 

「……おまえはどうやって強くなった? ……俺もその領域にたどり着けるのか?」

 

「さて、私は神に誓った誓いを守りながら仲間と共に冒険を繰り広げただけです。もちろん何度も危険な目にあいました。仲間がいなければ死んでいたでしょう。最高の仲間たちでした」

 

 その言葉には感慨が籠っているように感じた。だがそれだけではない。楽しかった思い出が伝わるようであった。

 

「未知を発見する……あれ以上の楽しみはなかったでしょう。それであなたが強くなれるかですが、私にはわかりません。ですがあなたが本気で強くなりたいと願うなら、支援しても構いません。ただしあなたが知っている八本指の悪事をすべて語ってもらいますが……。それさえしてくれるのであればあなたが強くなれるように支援してあげましょう」

 

「……いいだろう。俺の知っている情報はすべて吐く。その代わり俺を強くしろ!!」

 

「いいでしょう。ではこの首輪を装備しなさい。少し弱体化する代わりに、強くなる速度を上げてくれます」

 

「ほう、そんなアイテムがあるのか……いいだろう、装備しよう」

 

 そしてボスが首輪をつけた。そして試しにジャブをいくつか打っている。

 

「なるほど、確かに少し動きにくいな。で、俺は何を話せばいい?」

 

「残念ながら私はそこまで頭がよくないのです。知恵働きは仲間に任せていたので。なので、ラナー王女にあなたが知っていることを全て話してもらいましょう。その結果次第ですがあなたには竜王国に赴いてもらいます。経験値が沢山ありますよ?」

 

「ふっそれはいい。それでサキュロントはどうする? 俺がいるのであれば生かしておく必要はないと思うが?」

 

「約束は守るものです。彼にもあなたと一緒に証言してもらって、竜王国に行ってもらいましょう」

 

 助かった。聖騎士(パラディン)が約束を守ってくれることでどうにか生存できた。

 

「では被害者たちの下へ案内してください」

 

☆ ☆ ☆

 

 襲撃は簡単に終わった。少し拍子抜けしてしまう。だがそれはアダマンタイト級冒険者に匹敵すると言われた六腕がすべて同じ場所に集まっていたからだ。そして現在、ストロノーフ様と蒼の薔薇の皆さんがラナー様を護衛しながら、ゼロとサキュロントの尋問を行なっている。

 

 二人はたっち・みー様が降伏したので証言する代わりに命を生かしたらしい。尤もそれだけではなく、法国への配慮らしいが。ザナック王子と一緒に聞いた話では竜王国では人間が餌になっているらしい。それを防ぐべく二人は証言が終わったら竜王国に援軍として赴くらしい。

 

 クライムは少しだけたっち・みー様に訓練を付けてもらった。ラナー様の役に立つために。もちろん何もできなかったが、これほどの頂があるとは知らなかった。しかもストロノーフ様以上の。そんな人物が自分のために時間を取ってくれる。感謝しかなかった。

 

 現在はたっち・みー様は王女付きの騎士としてこの場にいる。他の兵士たちは何か言いたいようだが、さすがに六腕を壊滅させた張本人と知っているためか何もしてこない。

 

 現在は食堂でクライムは食事を頂いている。たっち・みー様は食事を不要にしているらしいが……自分もそんな指輪を身につければその時間もラナー様を護衛できる。探してみるべきだろうか?

 

「それでクライム君。ゼロにつけた首輪があるのですが、あれは強くなる速度を速めてくれるものです。貴方にも渡しておきますので、ラナー王女の許可を得られたら身に着けるといい」

 

「……感謝いたします、たっち・みー様!」

 

「たっちでいいですよ、クライム君」

 

「いえ、あなた様のような方に敬称を付けないなんてできません!!」

 

 そして一つだけ気になったことがある。以前ラナー王女が聞こうとしていたたっち・みー様の冒険譚。それを聞かせてもらいたいと思った。

 

「たっち・みー様。お願いがあります。あなたの冒険譚を話していただけないでしょうか?」

 

「……良いでしょう。私としても友人たちの自慢はしたいところですから」

 

 そう言いながらたっち・みー様は苦笑をなさった。それだけ仲間の方たちが大事なのだろう。

 

「まだ私が駆け出しの聖騎士(パラディン)だったころ5人の仲間と出会いました。魔法詠唱者、刀使い、神官、盗賊、二刀忍、二刀盗賊、妖術師、料理人、鍛冶師、幾多の冒険を繰り返しましたが、あれ以上の仲間たちはおらず、忘れることはできないでしょう」

 

 そう言って、苦しみから喜びを見出したように笑った。

 

「最初は私がリーダーだったのですが、私のせいで一人仲間が抜けてしまいましてね……それからアンデッドの召喚に長けた魔法詠唱者(マジック・キャスター)にリーダーの座を譲ったんです。そして私を含めた9人が始まりの9人と言われていました。これでも私の世界では有名だったんですよ?」

 

 そうだろう。ゆぐどらしる世界出身と聞いている。世界が違うということは中々理解ができないが、そういうものと納得している。

 

魔法詠唱者(マジック・キャスター)は良きギルド長でした。私たちが冒険しやすいように調整をしてくれて。そうですね……語るならこの話ですか。ユグドラシルで誰も発見したことがないナザリックというダンジョンを我々で攻略することになったんです」

 

 未探索のダンジョンを探索。まるで冒険者のようだが、冒険者だったのだろうか。

 

「そうですね。クライム君に分かりやすいように言えば、我々アインズ・ウール・ゴウンというギルド名なのですが……全員が難度にして300です。」

 

 その言葉を聞いたクライムは納得してしまう。仲間同士で高め合って難度300に到達したのだろう。近くで聞き耳を立てている、兵士たちは息をのんでいるようだ。否定したいが功績が大きすぎて否定できないのだろう。

 

「その中でも、私は一番腕が立つ自信がありました。尤も、誓いを破り、弱体化した私では……仲間たちに勝てるかはわかりませんがね」

 

 たっち・みー様が苦笑されている。聖騎士(パラディン)が誓いを破る。一体何があったのだろう。たっち・みー様の誓いは、困っている人を助ける。誰かを助けなかったのだろうか?

 

 だがこれは深く聞いてはいけないと思い、クライムは引いた。

 

 だがたっち・みー様から語られる冒険譚はまるで夢のようであった。いつしか自分だけでなく、周りにいる兵士や騎士たちも引き込まれていった。

 

「――とこんなところですか。私たちの物語は」

 

「聞かせて頂き感謝します、たっち・みー様!」

 

「後はそうですね、クライム君への助言ですが、デス・ナイトと言われるアンデッドがいます。そのアンデッドは難度にして90。おそらく王国で戦えるのは、ガゼフ殿とガガーラン殿だけでしょう」

 

「……それは恐ろしいアンデッドですね」

 

「ええ。ですがデス・ナイトは防御に特化しており、私が全身全霊の力を込めて全盛期の力で奥義を使ったとしても必ず一撃は耐えます」

 

「それは!」

 

 非常に厄介な能力だ。一撃だけでもどんな攻撃も耐えられるなら盾として非常に有用だ。

 

「だからクライム君。君にも役割があります。仲間もいるのです。頼ることを覚えなさい。それこそが、王女の騎士として必要なことと思いますよ?」

 

 クライムはまっすぐたっち・みー様を見た後、深く頭を下げた。自分のために思ってくれて話してくれる人がいる。心が温かいもので満たされるようだ。

 

「ご助言感謝します。たっち・みー様」

 

「何、一時的とはいえ同僚になるのです、これぐらいはしませんとね……できるならガゼフ殿も含めて未知を探検しに行きたいですが、あなた達は王国に仕えている以上、難しいでしょうね。ニグン殿も現在は法国に連絡に帰っている。できれば仲間を作って冒険したいものですね」

 

 その言葉にクライムは少しだけ違和感を覚えた。率直に聞いてしまった。

 

「その、他のお仲間の方々はどうなされたのですか?」

 

「皆、寿命で天に召されました。私も早くみんなの所に行きたいという気持ちはあるのですが……せっかく私はまだ生きているのです。最高の冒険譚をもって皆に会いに行きたいのです。私が考えていることは、ただそれだけなんです」

 

☆ ☆ ☆

 

 今から王はたっち・みーとかいう一時的に王女付きになった聖騎士(パラディン)に勲章を授ける。

 

 思わず伯爵は歯噛みしてしまう。それは八本指が壊滅させられたからだ。最初は嘘だと思った。アダマンタイト級冒険者に匹敵するものが六人もいて敗北するはずがないと。

 

 だが知らせは本当だった。何より、六腕のゼロが投降したこと、八本指が壊滅させられたこと、そこから利益を得ていた伯爵や貴族たちからすれば、考えられないダメージだった。

 

 全員がひそひそと話している。王国に正式に仕えていないものに勲章を与える必要はない。王国の神を信じぬ不信心者らである。

 

 そして聖騎士(パラディン)が入ってきた。王はまだ来ていない。何か一矢報いることはできないだろうか。そう考えてひらめくものがあった。自分の配下の兵士たちから聞いた話で打撃を与えよう。

 

「それにしても聖騎士(パラディン)と名乗っているのに、仕える神はどんなものなんだろうな。世界が違うとか言っているが、自分を高めたいだけだろう。何より難度300。嘘をつくにも限度がありますな、皆さんはそう思いませんか?」

 

「伯爵の言う通りです。恐らく冒険譚も誰かから盗んだのでしょう、下等な冒険者らしいですな」

 

「その通りですな。仕える神も下等でしょう」




次話、たっち・みー(偽)キレた!!
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