『完結』黒歴史の輝き   作:万歳!

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ラナー「たっち・みー様。クライムに首輪をつけてくれて心から感謝します!!」


第3話 貴族

 レエブン侯は聖騎士(パラディン)、たっち・みー殿に対する罵詈雑言を聞いていた。思わず顔をしかめた。だが、それは言葉に出なかった。

 

「クゥ、クズがぁあああああああ!!」

 

 聖騎士(パラディン)として自分の神を非難されたことが許せなかったのだろう。あの異常な殺気を周囲にぶちまけている。

 

 たっち・みー殿たちを侮辱していた貴族たちが尻もちをついていた。いや周りにいる貴族もあまりの殺気におびえていた。自分だって一度同じような殺気を受けていなかったら、冷静に考えることもできなかっただろう。

 

「私の、ことはいい。私の事は、どれだけ、侮辱されても、いいのです。実際、私は仕える主を、救えなかった、無能なのですから、だが貴様らは、我が神と仲間たちを侮辱した。それだけは、ぞれだけは許さん!!」

 

 あれだけ温厚にふるまっていた、たっち・みー殿が激怒していた。正直あいつらはこのまま斬り捨ててもらっても一向に構わない者たちだ。だが、今斬られては困る。できれば一度で大掃除をしたいのだ。このままたっち・みー殿が怒りのままふるまえば、貴族たちが怯えて、逃げてしまい、大掃除ができなくなってしまう可能性がある。

 

 そのため自分は剣に手をかけているたっち・みー殿に近づき話しかけた。

 

「申し訳ありません。たっち・みー殿。この者たちには私があとで強く言っておきましょう。なので怒りを抑えて頂けませんか? ただ単に殺すだけで満足ですか? 折角ケンカを売ってきたのですから高く買い取って叩き潰しましょう

 

 自分の言葉にたっち・みー殿は何かを考えた後一度深呼吸して、何かを呟いた後、頭を下げた。

 

「……失礼しました、貴族の方々」

 

 その言葉に弾かれたように避難しながら距離を作っている。怖いのだろう。だがそれでいい。もうすぐだ。もうすぐでクズ共の顔を見ずに済む。

 

 あと少しだけの我慢なのだから。この後、王を含めて話し合うことになっている。王は甘い。もしかしたらバルブロ王子を許そうとするかもしれない。だがそれでは駄目なのだ。何とか説得しなければならない。

 

「王の入場です!」

 

 先触れの声が聞こえる。杖を突きながらゆっくりと歩いている。戦士長殿も伴っているが助ける様子はない。貴族に文句を言わせないためだろう。

 

 やはりもう王の務めをできないほどに老いているのだろう。それでもなお王座を譲らないのは、息子たちが殺し合うことになることを察知しているからか。

 

聖騎士(パラディン)、たっち・みー殿。よくぞ多くの民を救ってくれた。王として感謝する」

 

 僅かにだが王は頭を下げた。それに対して貴族たちが口うるさく言おうとしているときだった。

 

 たっち・みー殿が騎士とはかくあれかしと言われるほどの動作で膝をついた。その優雅な動作に何かを言おうとしていた貴族たちも見惚れたのだろう。

 

 たっち・みー殿は間違いなく誰かに仕えていたのだろう。一時的とはいえ自分が捧げた主以外にその動作をしてくれている。そこまで譲歩してくれているのだ。あの貴族たちは間違いなく苦しめてから殺さなければならない。だがあれほどの騎士が拷問をできるだろうかと、首をかしげる。

 

 拷問は親衛隊にさせるかと考えていると、王が勲章をたっち・みー殿に授与していた。

 

 ラナー王女から聞いた話では、たっち・みー殿は時間を止めることもできるらしい。そして時間を止めた中で行動することができるようにするアイテムも所有しているようだ。

 

 現在、王国でそれを持っているのはたっち・みー殿と戦士長殿だけ。

 

 そしてこの後、王たちとの会議で私ももらう手はずになっている。それは会議が長引くことを示唆している。だが時間を気にせずに、敵対派閥の者たちにばれずに会議ができるのは大きい。

 

 その会議で全てが決まると考えながら王が戦士長殿を伴い退出していった。

 

 そういえば、ラナー王女はやはり恐ろしかった。ザナック王子と二人きりで会い、真実を聞いたらすぐに明かしてくれた。だがもうクライム君と結婚できる以上、彼女が我々に力を貸してくれるのは間違いない……。一つだけ問題があるとすれば。本当にクライム君に首輪をつけ始めたところか……。一応アダマンタイト級冒険者のイビルアイ殿に聞いたら間違いなく国宝級のアイテムであると聞いた。効果は強くなるスピードを少し弱体化させる代わりに与える……。たっち・みー殿もまさか王女がまさかそんなプレイをするとは思っていなかったのだろう……。もしかしたらラナー王女は本当に首輪に縄を付けて犬扱いをするのかもしれないが……。

 

 変なことを考えてしまったと首を振る。まずはこの後の会議を乗り切らなければ。

 

☆ ☆ ☆

 

 あの勲章式の後、会議室には王と自分、ザナック王子とラナー王女、レエブン侯が集まっていた。そしてたっち・みー殿が時間停止を無効にする指輪を全員に渡して、装備させた。

 

「装備して頂けたようですね。では会議を始めましょう」

 

 その瞬間、時間が止まった。本当に時間が止まったのか周りを確認しながら、レエブン侯が確認していた。

 

「本当に時間が止まっている。まさか、これほどの力を有しているとは」

 

 レエブン侯とザナック王子がうなり声をあげていた。それはこれほどの力を持つたっち殿が時間を止められることか……それとも時間停止を解除するアイテムを持っていることに対してか。いや両方か。

 

「これで長くこの場に留まれない、レエブン侯も留まれるはずです。私が次にどう動けばいいか、この場で決めて頂けると幸いです」

 

 その言葉に王がため息を吐いた。そう決めることが多いのだ。ため息を吐きたくなる気持ちもわかる。だが王がため息を吐いたのはそのためではなかった。

 

「まずは、たっち・みー殿。私の側近であるガゼフを救ってくれて感謝する。そして君の神と仲間たちを非難した貴族たちがいると聞いた、王として謝罪させていただく」

 

 そして王は軽くではなく深々と頭を下げた。もしこんな姿を貴族たちに見せたら、大変なことになるだろう。王派閥、貴族派閥問わずに。

 

「……謝罪は受け取りましょう。ですがあの者たちは斬ります。今斬らないのが最大限の譲歩とお考え下さい」

 

「王よ。あの者たちは八本指に繋がっていた者たちです。どちらにせよ死刑以外ありえません。あの者の生き死にはたっち・みー殿に一任しましょう」

 

 ……レエブン侯はつまり拷問にかけてもいいと言っているのだろうか? 確かにたっち殿の怒りを考えればそれぐらいしてもおかしくない。問題はたっち殿にそんなことをさせていいのだろうか……困っている人を救うと定めているたっち殿に、拷問などさせていいのだろうか。自分がたっち殿の代わりに、拷問をかけてもいいが、拷問は得意ではない。となるとニグンにこの情報を伝えて、拷問はニグンたちにさせた方がいいかもしれない。

 

 ニグンも汚れ仕事だが、たっち殿が関わっていれば進んでやるだろう。そして王が自分たちが今まで集めた情報やゼロたちの証言をもとにした書類、集めた物や証拠に目を通し厳しい目をしている。

 

 ここまで腐敗していれば、目を覆いたくなるだろう。自分もまさかここまでの害悪だとは思っていなかった。だが王は逃げないはずだ。

 

「まさか、ここまで非道なことをしていたとは……」

 

「父上、もう段階は許すか許さないかではなく、死刑一択です。どうかご英断を」

 

「王よ、時間停止を行える、転移のアイテムを持っている、死者蘇生を行える、たっち・みー殿がいる今だからこそ、改革を断行できます。どうか、ご英断を」

 

「お父様。ここまでの害悪をなした者たちを許してはいけません。王国にこれ以上、貴族たちに好き勝手にさせてはいけません」

 

 ザナック王子とレエブン侯、ラナー王女が声をそろえて王の判断を仰いでいる。そして王は苦悩の表情を表している。いや民のための改革ならできる王だ。問題は一つだけ。

 

「……貴族たちやそれに付き従う者たちは処刑にしなければならないだろうな……。だが私は甘いと言われても、可愛い息子であるバルブロを殺したくない」

 

 私は甘いな。と呟いて。ため息を吐いていた。王は優しい。だからこそ自分は王に仕えられた。自分に騎士の称号を授けるのを嫌う貴族たちから守るために新たに戦士長という称号も作ってくれた。だが今はそれが裏目に出ている。

 

 王にたっち殿が進言した。

 

「……確かに自分の息子を殺すことを決断するのは辛いでしょう。ですがあなたにとって、民は子どもではないのですか? 八本指の麻薬部門から金銭を得ていた。本来であれば私が独断で斬って王国を出奔すればいいと思っていました。ですがガゼフ殿は王は最善な判断を決断できるとおっしゃっていた。ガゼフ殿の言葉に泥を塗るのですが?」

 

「たっち殿! それは!」

 

 王が手で自分を制する。自分は確かにそう言った。だが自分の顔はいくら泥を塗られてもいい……。だが王は決断した。

 

「その通りだ。私にとって民も子どもだ。決断しなければならないだろうな……ならばせめて、私の手でバルブロは討ち取ろう。それが王子として必要な教育をしてあげられなかった、親の最後の務めだ」

 

「お父様、ご英断まことに辛いと思います。私もバルブロお兄様を殺さなければならないのは口惜しい思いがあります。ですが決断した以上、どのタイミングで貴族たちを処刑すべきか決めなければなりません」

 

 そのラナー王女の言葉に全員が頷いた。とはいえ、どうすれば被害を最小限に抑えることができるだろうか? 自分ではさっぱり分からなかった。

 

 やはり知恵働きは、レエブン侯かザナック王子、ラナー王女に任せるべき出だろう。そして発案者のラナー王女が発言した。どうやら腹案があるようだ。

 

「重大な発表を行うとしてすべての貴族に参加を促すのはどうでしょう?」

 

「重大な発表、か。ちなみに妹よそれは何を考えている? 俺には一つしか思い当たるものはないが」

 

「おそらくお兄様の考える内容と同じですよ。お父様には王位を譲っていただきます」

 

 その言葉に思わず自分が口をはさんでしまった。それでは無理やり隠居させるようなものではないかと。

 

「戦士長殿、ラナー王女は実際に王位を譲らなくてもいいとお考えのはずです」

 

「ええ、ただ重大な発表があるとしてすべての貴族に参加を求めるだけでは六大貴族の幾らかは参加を断るでしょう。ですがメイドたちの噂で王がバルブロお兄様に王位を譲る予定だと耳に入れば、八本指と繋がっていた貴族たちはバルブロお兄様の庇護を求めて、自分たちで後押ししてでも王位につけようとするはずです」

 

「いい策ですね。その策であれば、六大貴族たちも参加するでしょうし、一緒に悪事を働いていた側近たちも貴族たちについてくるでしょう……問題があるとすれば殺した後ですね」

 

 その言葉にレエブン侯が大きくため息を吐いた。

 

「八割以上の貴族が王派閥、貴族派閥問わず八本指と繋がっていた。もう少し精査すれば殺さない程度の者もいるかもしれませんが。それでも、国家を運営するものの過半数以上が消えることになります……私は領地に引きこもってよろしいですかな?」

 

「ダメに決まってるだろう。レエブン侯には俺が王座に座ったら宰相の地位を与える。一緒に地獄の国家運営をしてもらうぞ」

 

「ふぅ。右肩の荷物は下せますが、左の荷物は下せませんか……王子とは一蓮托生です。付いていきましょう」

 

「ふむ。そこまで決まっているなら、罪深き者たちを処罰したあと、バルブロを私が殺した後に本当に王位を譲るか?」

 

 王の言葉に対して、ザナック王子とレエブン侯が目を合わせた後にゆっくりと首を横に振った。

 

「それは簒奪者の汚名を着ることになりそうなので、父上にはもう少し頑張って頂きたいのですが」

 

「……そうか。なら今年の帝国との戦争の後に王位を譲ることにしよう。ザナック、私のような甘すぎる王にはならないでくれ。そして民を思える王になってくれ」

 

 その言葉にザナック王子が立ち上がり膝をついた。

 

「このザナック、承知しました!」

 

 ザナック王子が王に宣誓を行なった。自分はどうするべきだろうか。王が隠居すれば、王の身辺を守って生きていこうと思っていたが……。

 

「それと戦士長、俺が王になっても引き続き王国への忠誠を期待しているぞ」

 

「その通りだ。ガゼフ、お前なら私の老後を守って一緒に隠居しようと考えているかもしれないが、ザナックを助けてあげてくれないか?」

 

「――承知しました。ザナック殿下に剣を捧げます」

 

 そして自分は王に対して膝をつくように、ザナック王子に膝をついた。王の命令だけではない。ザナック王子ならきっと王国をよみがえらせてくれると信じて。

 

「では重大な決定を通知するのはこの会議が終わったらすぐに伝達するとして、実行は一か月後でいかがでしょうか? 一か月あれば王国の膿の原因も集まっているでしょうし」

 

 ラナー王女の言葉にこの場にいる全員頷く。

 

「では、最後の議題ですが、たっち・みー様はゆぐどらしるという別の世界出身ということです。そして今回の貴族たちの討伐等の報酬としてゆぐどらしるへの帰還への情報が得たいとのことですが、そもそもこの中でゆぐどらしるについて知っている方はいらっしゃいますか?」

 

「ラナー王女、ニグンの言葉に従えばたっち殿たちゆぐどらしる出身の者たちはぷれいやーというとのことです」

 

「そうですか……戦士長様の言葉も含めてこの中で知っている方はいらっしゃいますか?」

 

 その言葉に少し考えた後、全員が首を横に振った。

 

「そうですか、そうなるとやはり私たちは王国の貴族たちを討伐した後、書庫の本をひっくり返さないといけませんね。蒼の薔薇のイビルアイ殿はどうやらたっち様たちの事を知っているようですし、後は評議国ですか……父上から親書を評議国に出して頂けませんか?」

 

「そうだな、私たちがたっち・みー殿に与えられる報酬はそれぐらいだな。後はいつでも王国の貴族になれるようにとり図ろう」

 

「恥ずかしい限りです。誓いに従っているだけなのに、報酬をもらうとは……ですが私は何があってもユグドラシルへ帰還し我が主の墓標を守らなければならないのです。どうかよろしくお願いします。あと、これは法国に頼まれたことなのですが、王国の動乱が片付いたら、ガゼフ殿を貸してほしいとのことです」

 

「ふむ、それはなぜかな?」

 

「それは私が話すよりも、ザナック王子やガゼフ殿が話す方がいいでしょうね」

 

 そして、たっち殿に自分が視線で促されていた。何を話せばいいかはわかる。

 

 そして自分が知る情報をすべて語った。なぜ法国が自分を殺そうとしたのか。どれだけ人類が苦境に立たされているか。本来、王国には自分のような英雄をたくさん輩出してほしかったとの思いがあったことを。

 

 実際自分に匹敵するものが裏社会には六人もいたのだ。

 

 王国が腐敗しなければどれだけの人命が救えていただろうか。ところどころザナック王子が補足しながら、現在の人間がどれだけ困難に置かれているかを報告した。

 

「何と、まさかそんなことになっているとは……となると帝国との戦争もしている場合ではないな」

 

 王がうめくようにつぶやいた。その通りだ。人類に同士討ちをしているだけの余力はない。たっち殿が国家を作るのであれば亜人種、異形種とも共存できるかもしれないが、たっち殿がそれを望んでいない以上、人類同士で団結するしかない。

 

「帝国に関しては王国の貴族たちを討伐した後、ガゼフ殿と共に帝国へ行き私の帰還への協力を求めるとともに、一致団結できるようにしましょう」

 

「何か、策があるのかね?」

 

 そう言うとたっち殿は四冊の本を取り出した。それは全て、空間にあるだけで力を持っているようであった。

 

「これらの本は第七位階から第十位階の魔導書です。これを見返りにすれば、帝国の最強戦力をこちらの味方にできるでしょう」

 

「なるほど……確かにあの逸脱者が味方に付けば、戦争は回避できるな」

 

 そしてこまごまとしたことを話し合った後、時間停止が解除されレエブン侯とザナック王子がすぐに出て行った。

 

 王国の夜明けはもうすぐだ。




???「靴を舐めてでも奪い取る」

王国貴族、たっち・みー様ロールプレイに救われるの巻。なおたっち・みーは必死に自己暗示をしています。(死ぬ時が伸びただけともいう)

モモンガ様ロールプレイだったら、どうなっていただろうか(震え声)

次回、粛清の時。お待ちください!!
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