『完結』黒歴史の輝き   作:万歳!

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貴族たち「バルブロ王子が王位につけば安泰だ!!」


第4話 粛清

 自分は王国に戻り、現在はたっち・みー様と共に竜王国にいた。ガゼフによれば王国の貴族はたっち・みー様の信仰する神とお仲間の方を侮辱したらしい。

 

 さすが王国の貴族というべきか。だが、たっち・みー様が聖騎士(パラディン)であることを忘れそうになるほど怒らせたのだ。その報いは受けさせなければならない。

 

 たっち・みー様が自身で殺すことに固執していなければ……我々の手で拷問にかけてお怒りを晴らさなければ……時間はある。法国から専門の部隊を呼び寄せよう。

 

 現在竜王国にいるのは、たっち・みー様と自分たち陽光聖典だけだ。従属神様を含めた王国戦士団は粛清の準備のために王国に帰還している。だが、彼らがいた意味はあった。竜王国の死者の数が激減したのだ。

 

 ビーストマンの大半を撃退できた。そして今はたっち・みー様を先頭に陽光聖典の中からさらに選りすぐった精鋭たちで逆侵攻を行なっている。恐らくという注釈が付くが王国で粛清劇を行う前に、ビーストマンの大半を殲滅できるかもしれない。出会ったビーストマンは今のところすべて殲滅できている。

 

 ビーストマンのなかでも強い個体もいた。難度も100以上の者が複数。陽光聖典だけでは対処できなかっただろう。普通なら漆黒聖典が必要だ。だがたっち・みー様がいるおかげでそういった個体も一瞬で撃破できている。

 

 さらに言えば……。ニグンは指輪をなでる。そう、たっち・みー様に頂いた、疲労を無効にする指輪だ。これを自分だけではなく逆侵攻を行なっている精鋭の陽光聖典にも下賜頂いた。

 

 陽光聖典の精鋭たちの士気も非常に高い。当然だ。神からアイテムを下賜頂いた。こんな幸運、普通では得られない。陽光聖典の精鋭から外れた者たちはこちらを羨ましそうに見ていた。

 

「ふぅ。今日のビーストマンの侵攻はこの辺で終わりにしましょうか。いくら疲労を無効にしているとはいえ、人間である以上、精神は疲れているでしょうし」

 

「ご配慮いただきありがとうございます! 全員、休憩だ!」

 

 自分は大声で陽光聖典の精鋭たちに命令をする。それに疑問を挟むことなく、部下の者たちも休憩する。なお、六腕の生き残りである二人もこの戦いに参加している。サキュロントは嫌そうにしているが、ゼロの方は非常に楽しそうにしている……なぜ最初から人類のために戦ってくれなかったのか。それが残念だ。

 

 そして陽光聖典の者たちは良い部下だ。特にビーストマンを狩っていた者たちは難度も上昇している。さすがに漆黒聖典に入れるほどではないが、それでもかなりの強さだ。訓練を付けてもらう前の自分ほどはあるかもしれない。

 

 まさに今こそ人類の夜明けだ……。一つだけ上層部に命令されたことを、たっち・みー様に頼むなら今だろう。

 

「たっち・みー様。今、少しお時間を頂いてもよろしいでしょうか?」

 

「構いませんよ。ニグン殿」

 

「ありがとうございます! 我々はこれまでエルフを奴隷として扱ってきました。しかし、今後は共に戦う味方として扱う予定です。ただ一つ問題があります」

 

「……それは?」

 

「エルフの王が問題なのです。エルフの王はぷれいやーの子孫で我々では太刀打ちができません。エルフの王は女や子どもを率先して戦場に送り込み、正直何がしたいのか我々にもわからないのです」

 

 そう。あのエルフの王が何をしたいのか我々にはわからない。一つだけ確かなのはあのエルフの王がいれば我々とエルフが協力するのは至難だということだ。

 

「また以前にも言いましたが、我々法国の切り札を辱めておりまして……そしてエルフの王と法国の当時の切り札の間に生まれた子どもこそが今の法国の切り札なのです。彼女にも復讐の機会を与えたいというのが我々法国の意思なのです」

 

「……つまり私がエルフの領土に、あなた達の切り札と攻めかかり、エルフの王を殺せばいいと?」

 

「可能であれば、そういうことになります」

 

 尤も彼女が動くことは竜王が許すかはわからない。上層部がどうやって譲歩させるか……いやゆぐどらしるへの帰還を考えているたっち・みー様の事を考えれば、竜王を説得しなければならないだろう。

 

 法国でもゆぐどらしるへの帰還を考えるたっち・みー様のためにどうすればできるかを考えた。可能性はいくつかある。例えばタレントだ。もしかしたら世界を渡るタレントというものもあるかもしれない。

 

 だがそれは希望的観測に過ぎないのも確かだ。タレントは様々あるがそれほど強力なものがすぐに見つかるとは思えない。確実に帰還させるのであれば、竜帝の子どもである白金の竜王が使う始原の魔法が確実だろう。

 

 どこかで評議国の竜王と交渉しなければならないのは確かだ。そのことをたっち・みー様に話す。

 

「……なるほど、ひとまず法国は私がユグドラシルへ帰還するための道筋を見つけてくれたのですね。感謝いたします」

 

「いえ、こちらも不確かなものにたっち・みー様の願いをかけることしかできなく、非常に申し訳なく思っております。ですが、評議国の竜王と交渉して協力が得られれば、おそらくたっち・みー様の願いはかなうかと。ただ我々と竜王は仲が良いとは言えません。たっち・みー様が直接交渉した方が良いかもしれません」

 

「王国でも評議国に親書を竜王に出してくれることになっています。そうですね。全てが片付いたら私が評議国に赴きましょう。そこで交渉してみましょう」

 

「それがよろしいかと。我々もできる限り交渉の手助けができるように努力いたします!」

 

☆ ☆ ☆

 

 ついにこの日が来たと思う。そう、粛清を行う日だ。ラナー王女の考え通り、バルブロ王子に王位を譲ると噂を流したところ、王派閥と貴族派閥問わずすべての貴族が集まった。

 

 つまり王が自らバルブロ王子を手にかける日が来たということでもある。王の顔を見る。その顔は憂いていた。やはり王は内心ではバルブロ王子を殺したくないのかもしれない。だが、たとえ王が殺したくないと言ってもザナック王子やレエブン侯がそれを許すだろうか? いやそもそも麻薬売買に手を貸していた王子にたっち殿が情けをかけてくれるだろうか?

 

 そう、すでにバルブロ王子は詰んでいるのだ。王もそれが分かっているからこそ、殺すことを決断したのかもしれない。

 

 そして王に付き従い、王座の間に歩みを進めていく。貴族たちはすでに集まっている。ラナー王女もザナック王子もすでに席についている。そして出入り口にはクライムと副長が立っている。さらに貴族たちを囲むように戦士たちと、こちらを裏切らない騎士たちが貴族たちの周囲に立っている。誰を殺して誰を生かすかは戦士団や騎士団を含めて全員が頭に叩き込んでいる。間違えることはない。ようやくだ。ようやく王国の害悪を殲滅できる。これが上手くいけば王は名君として称えられる……いや鮮血帝のような扱いになるのかもしれない。

 

 だとしても王は決断したのだ。ならば王の剣として悪逆の限りを尽くしていた者たちを斬らなければならない。

 

 レエブン侯と視線が合う。たっち殿は王国の膿を切り取るのにさらにアイテムを授けてくれた。転移門を好きな所に開くことができるアイテムだ。それをいくつも。このアイテムがあれば貴族たちを斬った後に貴族の領土に攻めかかることができる。王国には専業の兵士はほぼいない。いるのは貴族の私兵だけだ。そして貴族の私兵のほとんどが王都に集まっている。その者たちも含めて殺害すれば、この国は蘇る。そして貴族の私兵や側近たちはたっち殿と陽光聖典、そして法国からの更なる援軍として、暗殺やカウンターテロにたけた部隊である火滅聖典が訪れている。法国の部隊は全員、士気が非常に高い。玉座の間に入れない下級の貴族や、上級貴族の私兵や側近たちは彼らに任せておけば問題ないだろう。

 

 王が玉座の前に立ち。威厳のある声で宣戦布告した。

 

「……では、これより貴族及び王族の罪の代価を支払ってもらう」

 

☆ ☆ ☆

 

 王の言葉に貴族とバルブロ王子が混乱している。そう彼らからすればバルブロ王子に王位を譲るはずだと思っていたのだ。それがいきなり罪を問う場になった以上驚いているだろう。

 

 今回の事を知っているものは非常に少ない。というより王派閥も事前に貴族派閥に漏らす可能性があったため、今日の事を知っている貴族は私の派閥の者と、王に絶対の忠誠を誓っている騎士程度だ。

 

 そして王の言葉に従うように、戦士長が剣を抜いた。

 

「戦士たち、騎士たちは私の声を聴け! これより王国の膿を退治する、かかれ!!」

 

「おお!!」

 

 その言葉に従い、殺戮が始まった。貴族たちの周囲をかこっていた騎士や戦士たちが、剣を抜き貴族たちに襲い掛かったのだ。

 

 この中でそれを冷静に見ることができているのは私と私の配下の貴族、ラナー王女にザナック王子ぐらいだろうか。

 

 王は静かに目を閉じている。

 

「戦士長!! これはどういうつもりだ!!」

 

 貴族派閥の首魁であるボウロロープ侯が剣を取りながら戦士長に怒声を挙げている。ボウロロープ侯はさすがに気を取り直しているようだ。軍事面は優れており、最低限の公私を分け、意外にもガゼフの武力を評価しており、精鋭部隊を持ちその者たちから忠誠を誓われているものだ。

 

 自分の民には最低限ではあるが優しい。これで権力闘争に明け暮れていなければこの男もザナック王子の代で重用できたかもしれないと思うと暗澹たる思いがある。

 

 だが今は斬るべき対象だ。

 

 戦士長は応えずにボウロロープに近づく。

 

 戦士長の間合いを恐れてか、ボウロロープ侯は距離を取ろうとするが、壁に追い込まれて下がれなくなった。そして戦士や貴族たちの合間をすり抜けて上手く逃げようとしたものは、姿形もない何者かに殺されていた。

 

 恐らく、戦士長がたっち・みー殿に下賜頂いたという従属神の働きだろうか。難度は戦士長を大幅に超える240。恐らくその者だけで、貴族たちの討伐はできたはずだ。だがあえて戦士長は手を汚したのだろう。

 

 戦士長の生き方は不器用ながら尊敬できる。

 

 そしてボウロロープ侯は戦士長に一刀両断された。

 

 今回、殺さない手はずとなっている貴族たちは何が起きているのかわからないと混乱しながら恐怖しているようだ……。そして殺されるはずなのに生きている者が三人いる。たっち・みー殿たちを侮辱した者たちだ。

 

 この者たちは生き延びられるとの思いからやはり殺されるという落差をもって、罰とするとたっち・みー殿が決められたためだ。いやそれだけではない、市中を引きずり回し、国民から石を投げられる役割もある。貴族としての名誉を剥奪され、石を投げられた後、処刑までの間に、法国のニグン殿が勝手にやることになっているが、たっち・みー殿を怒らせた罰として、拷問にかけるらしい。

 

 たっち・みー殿に怒られれば自分が責任を取ると言って。

 

 ……八割だ。今回殺した貴族の数は。そして戦士長が納剣した。ここで殺すべき、貴族たちの粛清は終わった。後は、外にいる者たちの粛清だ。

 

 戦士たちと騎士たちが玉座の間を出て加勢に向かっている。

 

 それが自分には必要とは思えないが。時間を止めることができるたっち・みー殿がいる以上、外にいる貴族たちや不正に加担していた者たちはここにいた貴族よりも死ぬ可能性が高いだろう。

 

 そして生き延びている貴族の中で自分を除いて最高位の者である、ウロヴァ―ナ辺境伯が怯えの感情を出しながら王に問いかけていた。

 

「王よ。これは、一体、いかなる、仕儀で?」

 

「そこで死んでいる者たちは八本指と強く癒着し王国に仇為していた者たちだ。私の治世はこれで終わったも同然だ。後は、信頼できるザナックや今回罪を犯していないと思われる貴族たちと共に再生の道筋を付けたら、ザナックに王位を譲る。それが私が王として最後にできる仕事だ」

 

 それに対し今まで怯えており舅を殺されたバルブロ王子が怒りを露にした。

 

「父上どういうつもりですか!! 私に忠実な貴族たちを殺し、ザナックに王位を譲るなど!! 乱心なされましたか!!」

 

 そして誰ぞある父上が乱心したと叫んだが。その言葉にこたえる兵士や騎士たち、戦士たちはいなかった。貴族派閥の兵士たちはすでに殺されているからだ。

 

 そして戦士長が王によって帯剣を許されている剃刀の刃(レイザーエッジ)を王に手渡した。そして王はバルブロ王子にレイザーエッジを突き付けた。

 

「父上! 何のつもりですか!!」

 

「バルブロよ。私の可愛い息子よ。すまなかった。私がきちんと王としての務めを教えられなかったばっかりに、お前は民をいくら虐げてもいいと思う貴族たちと意気投合してしまった」

 

「……何を言っているのです! 民ごときは我々王族や貴族に使い捨てられることこそ、役目でしょう!!」

 

「すまない、本当に済まない。バルブロ。お前を愛している」

 

 そう言いながら王はバルブロ王子に剣を近づけた。そしてバルブロ王子は逃げるように動いていたがついに壁に追い詰められた。

 

「……父上、何かの間違いです! 私は罪を犯しておりません。息子を!! 次期国王を!!! 殺そうというのですか!!!!」

 

「そうだ! 私がお前をきちんと育ててあげられなかったから、せめて私の手でお前を殺すのだ。地獄がもしあるならそこで恨み言を聞こう」

 

「父上!!」

 

 バルブロ王子が剣を抜いた。しかしそれは疾風のごとき影が剣を取り落とさせた。そしてこれ以上抵抗できないように取り押さえたようだ。

 

「ガゼフ様。これでよろしいでしょうか?」

 

「ああ、ハンゾウ殿。ありがとう。それでいい、王がバルブロ王子を斬るまで拘束してくれ」

 

 頷きながら。四肢を拘束している。あれが、たっち・みー殿からガゼフ殿に下賜された難度二百四十の従属神なのだろう。

 

 これからは法国や帝国と協力して亜人や異形種たちと戦わなければならないだろう。そうでなければいつか人類が滅びる。それだけは許せない。息子に可愛い息子に領地を渡すまでに王国をたてなおす。

 

 それが私が生きる意味だ。

 

「バルブロ。私を許さないでくれ」

 

 そして王が杖を捨てレイザーエッジをバルブロ王子に振り落とした。首を斬られたようだ。もう助かるまい。

 

「ちち、うえ」

 

 最後にバルブロ王子は王を呼び手を伸ばしながら息絶えた。王が反動で倒れそうになるのを戦士長が支える。

 

 これで終わりではない。始まりなのだ。王国の再生への道の。だが現状は今までに比べたら非常にいい愚かな貴族たちすべてを殺害できた。後はたっち・みー殿に頂いた転移門を使い、貴族たちの領土に迅速で攻め入り接収すればいいだけだ。

 

 帝国もまさか、王国がここから蘇るとは思っていなかっただろう。すべては戦士長がたっち・みー殿という規格外を王派閥の味方に引き入れてくれたことから始まった。

 

 報酬は用意しなければならない。そのために評議国へ誰かが親書をもっていかなければ。私が行けるのであれば一番成果をあげられる自信があるが、さすがに粛清を行なったこの段階で私が王都から離れることはできない。

 

 宰相を任される以上、行政官が減ったことへの対策を何か考えなければ、国が立ち行かなくなる。さてどうするべきか。

 

 生き残った貴族たちの中から、有益なものも一気に引き上げなければならない。私の派閥の者から評議国に行かせるか……。

 

 そう考えているとザナック王子が宣言した。

 

「生き延びた貴族たちはきけ! 斬り殺された者たちはすべて八本指と繋がり、私腹を肥やしていた者たちだ! 生き延びた者たちは、王と私に力を貸してほしい!!」

 

 ザナック王子が叫んでいる。王国の夜明けだ。




ザナック「デスマーチの始まりだ!!」

なお、愚かにも至高の御方を侮辱した者たちは(ナザリックほどではありませんが)地獄を見ました。

次話「強襲のザイトルクワエ」
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