『完結』黒歴史の輝き   作:万歳!

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ザイトルクワエ「プレイヤーなんかこわくねぇ!!!」

ちょっとだけ描写を増やす実験中。


第5話 強襲

 現在、法国の神官長会議では全員が笑顔だった。理由は分かる。人間に好意的なぷれいやー様が降臨されたからだ。しかも問題であった王国の膿も掃除してくれたのだ。後は法国に来てくれればいうことはないはずだ。

 

 とはいえ、ぷれいやー様がゆぐどらしるに帰ることを望んでいる以上それは難しいかもしれないが。後一つ難点があるとすればエルフの扱いを変えることだろうか。番外席次がどう思うか。それだけが心配だと思う。

 

 部屋を退出すると、番外席次が自分に近づいてきた。そして以前にも話した会話を繰り返す。

 

「ぷれいやー様は私より強いかな? もし強いなら敗北を知れるかな?」

 

「陽光聖典のニグンの報告では元々は難度300の者を、五人まで相手にして勝利できると報告が上がってます。今は誓いを破ったことにより、難度280とのことですが……」

 

「うーん。誓いを破る前の力を発揮されたら、私も敗北を知れたかもしれない。そうだったらぷれいやー様の子どもを産みたかったな」

 

 嬉しそうに番外席次が笑う。本当に敗北を知りたいのか、自分より強い存在が現れたことに喜びを感じているのか、いつもの真意を隠す笑顔のため分からないが。

 

「……それにしても困っている人を助ける、か。本当に素晴らしい人格者のぷれいやー様だね」

 

「そうですね……。エルフの扱いを変えることに、思うところはありますか?」

 

「そうだねー。」と言いながら番外席次は肩をすくめて笑った。瞳は氷のように冷たい。

 

「全くないとは言わないけど、しょうがない。ぷれいやー様に敵対されたら……うーん。それも楽しそうだな」

 

 そう言って番外席次は笑う。番外席次は笑えるかもしれないが、自分は笑えない。自分たちより遥かに劣るニグンの報告なので、確実とは言えないが、六大神様並みの装備を身に着けたぷれいやー様が敵に回るなど考えたくない。

 

「ところで、破滅の竜王(カタストロフ・ドラゴンロード)を支配下に置くために出撃してたはずだけど、何かあったんでしょう?」

 

「恐らくと注釈が尽きますが、カイレ様が神器を使用して鎧を纏った男を支配下に置こうとしましたが、無効化されました。そのため撤退しました」

 

 その言葉に番外席次が目を開く。

 

「へぇ。となると、竜王(ドラゴンロード)じゃない? 鎧の竜王(ドラゴンロード)か。聞いたことないな」

 

「そうですね。今はそのことを神官長様たちは話し合っているかと」

 

破滅の竜王(カタストロフ・ドラゴンロード)に鎧の竜王(ドラゴンロード)か。それに悪徳貴族たち。王国は本当に地獄だね」

 

☆ ☆ ☆

 

 王都を染めていた腐敗は、ほとんど一掃された。王派閥も貴族派閥も、八割は血で贖った。私兵、側近、八本指と結託していた兵士。利権の蜜をすすっていた者たちは、皆まとめて地に伏した。街路には安堵と恐怖の入り混じった空気が漂っている。

 

「ガゼフ、無理はするな」王よりそう言われているが、今は無理をする時なのだ。

 

 あれから一か月たつが自分は王国中を飛び回っていた。比喩ではなく本当に飛び回っていた。たっち殿に頂いたフライの魔法がかかった首飾りを貸してもらって。さらに転移のアイテムを使って、王国中を飛び回っていた。休む暇はない。というより疲労を無効にしている以上飛び回るのが最適解だ。副長たちには残念ながら与えられてないので私一人で飛ぶことになっているが……。正直たっち殿に甘えすぎてると思うので仕方ない。

 

 貴族たちの領土を接収するときに抵抗はほとんどなかった。農民たちは涙を流し、不正役人が持っていた税帳を破り捨てて歓声を上げた。王直轄の領土になることで税率が下がることもある。

 

 民たちが味方に付いたことで、何とか現地にいる不正役人等も捕まえたり、あまりにひどいものは現場の判断で斬り捨てていた。

 

 本来であれば王を護衛して事務仕事にも協力すべきであるが、自分には事務仕事は無理だ。であれば少しでも外回りで活躍しなければ。王の護衛はハンゾウ殿に任せている。自分よりも強い以上適任だろう。

 

 クライムも自分と同じように飛び回っている。ラナー王女の功績とするためとラナー王女と婚姻するためにクライム自身実績が必要だ。

 

 また緊急で全ての冒険者組合にも冒険者を派遣するように要請している。モンスター退治は当然として不正役人の発見、税の運搬や税の取り立てなど、本来であれば冒険者には任せられないことではあるし、人類同士の争いには関わらないと言っている冒険者組合も文句があっただろう。

 

 だが蒼の薔薇が率先して依頼を受けてくれたことと、たっち殿が六位階の魔法が込められたワンドやスクロールを融通してくれたおかげで、組合が反対できる状況ではなくなった。冒険者たちは熱狂している。もちろんすべての依頼にそれだけ高価なものは回せないが、第三位階でも十分な報酬であるし、それは法国が出してくれている。

 

 法国にはその代価として早く国を安定させて自分に竜王国やトブの大森林にいるモンスター退治を行えとの常識の範囲内での圧力が加えられている。拒絶は不可能だろうし、王国の安全を思えばやるべきだ。

 

 ニグンは王都で陽光聖典の者たちを使って事務仕事だ。本来戦力である彼らを事務仕事に使うのは難しい判断があっただろう。だが正直彼らは働きすぎていた。そのため休暇として一時的に王国の事務作業を手伝ってくれている。

 

 たっち殿は一人で王都を歩いては困っている人を助けているらしい。もう街で彼を知らない人はいないぐらいには人気者になっているようだ。そして近々評議国へ赴くことが決まっている。彼の願いが叶うこと願うばかりだ。

 

 後、ラナー王女の発案でたっち殿の活躍は吟遊詩人たちを通して広く伝える予定らしい。

 

 それはいいことだと自分も賛成である。彼は自分を友と言ってくれている。だからこそ決して言えないが、彼は間違いなく英雄だ。自分は彼の強さや生き方に、影も踏めないだろう。

 

 真の英雄がいることを多くの者たちに知ってもらいたい。

 

☆ ☆ ☆

 

 

 現在自分たちは、以前と同じように暮らしていた。変わったことと言えば、帝国兵に襲われた経験から、人を警戒することが増えたことか。

 

 だが排斥まではいかない。それは白銀の聖騎士(パラディン)たっち・みー様に救われたからだろう。何より魔法で父や母も救われたのだ。

 

 そしてそのため同じことがまたあってもいいように、子どもたちを鍛えさせる親が増えた。大人は蘇生できたが子どもの体力では蘇生できなかったからだ。

 

 同じことがあったとしても、たっち・みー様に会えれば救われる。そう思っているから、みんな希望のある瞳をしている。

 

「ところでンフィーレア。たっち・みー様が、エ・ランテルでも活躍したのは本当なの?」

 

「うん。本当だよ。エンリ。僕も一回死んだらしいけど、たっち・みー様に蘇生されたんだって」

 

「凄いなーたっち・みー様ってどうやってあそこまで強くなったんだろう」

 

「そうだね……そう言えば、吟遊詩人たちがたっち・みー様のお仲間の人たちと、どのような活躍をしたか今、語ってるよ。エ・ランテルでもそのことが、話題になっているし」

 

 そうなのか。一度聞いてみたいと思った。もしかしたら、自分たちが救われた話もたっち・みー様の英雄譚に入るかもしれない。

 

 何か事情があってカルネ村に引っ越してきた人たちがいた。元冒険者の漆黒の剣のメンバーのセリーシア・ベイロンさんとツアレニーニャ・ベイロンさんが歩いてきた。

 

「こんにちはセリーシアさん。ツアレニーニャさん」

 

「こんにちはエンリさん。ンフィーレアさん」

 

「……こ、こんにちは」

 

 ツアレニーニャさんは王国の貴族にひどいことをされ続けていたところを、たっち・みー様に救われたらしい。まだ笑顔がぎこちないが、きっと時間が彼女を癒してくれる。そうして笑顔をエンリは見せた。

 

 そうしていると、ンフィーレアが何もしゃべらずに、こちらを見ていることに気づいた。

 

「どうしたのンフィーレア?」

 

「な、何でもない」

 

 それにセリーシアさんがあちゃーというような表情を見せている。何かあったのだろうか。

 

 そうして少し四人でおしゃべりをしていると、最近オリハルコン級冒険者に昇進したというクラルグラのメンバーが歩いてきた。

 

「さすがにこの付近には貴族たちの残り香はなかったか……」

 

「いや、さすがにこの辺りにはないでしょうって来る前にも言ったでしょう、リーダー」

 

「意表をついて、有るかもしれないと思ったんだよ。っち。そろそろ、悪徳貴族の残り香探しは止めて、別の依頼を受けるべきか……」

 

「あー確かに、今、王国からいろんな依頼が出ているもんな。貴族たちの討伐で色々混乱しているから、もしかしたらそっちで功績上げたら貴族にもなれるかもしれないな」

 

 そんなことを話しながら、自分たちのそばに近づいてきている。一応挨拶をしておくべきだろう。オリハルコン級冒険者と親しくしておくことはいい結果を生むはずだ。

 

「こんにちはクラルグラの皆さん」

 

「おう。それにしてもスペルキャスターが女だったとはな」

 

「その二つ名恥ずかしいからやめてください! それにもう私は冒険者じゃありませんよ。というよりなんで私たちの事を知ってるんですか!」

 

「これでもエ・ランテルで最高位の冒険者だからな。情報集めを怠ったりはしないさ。それにたっちさんが一応関わっている人物だからな」

 

 そうしてクラルグラの魔法詠唱者の方を見る。そこにはワンドを大事そうに撫でている魔法詠唱者がいた。

 

「蘇生のワンドに、第六位階魔法が込められたワンド。正直これを売ればいくらになるか……」

 

「おいおい、リーダーそんなもったいないことするなよ! そんなことしたら仲間たちと一緒にリーダーの座から降ろすぞ!」

 

「分かってる! 言ってみただけだ! 本気にするな……なんだ?」

 

「おいおいどうしたリーダー!」

 

「静かにしろ!! ……これは森で何か起きているのか?」

 

 その言葉に冒険者たちの顔が一変した。全員が険しい顔をしている。そうして森の中から鳥たちが大勢飛び出し始めた。何かが起こったようだ。

 

「……森から、何か近づいてきているのか? お前ら戦闘の準備だ! おい、スペルキャスター! 村人たちを避難させる準備をしろ!!」

 

 その言葉に弾かれたようにセリーシアたちが動き出す。ンフィーレアも自分を引っ張って動き出した。何が起きているのか。

 

 そして村人が村の中央に集まるぐらいになると、森の異変はより悪化していた。恐らく森の賢王かそれに匹敵する個体が走ってきている。

 

「てめえら、気合入れろ! 森の賢王を倒せば俺たちはアダマンタイト級だ!」

 

「分かってるよリーダー! 出し惜しみは無しで良いな!?」

 

「当たり前だ!! 村人はそこから動くな! 危険だからな!!」

 

 あの時、たっち・みー様に救われたときと重なる。妹が自分に抱き着いてきている。両親もナイフを持ちながら険しい表情をしている。いや村人全員が険しい表情だ。

 

「リーダー!! どうする!? 先制攻撃するか!?」

 

「……いや、確か森の賢王は話せたはずだ。まずは平和的に対話を求めるぞ! 何が起きているか確かめないといけないからな!!」

 

「了解だ!」

 

 冒険者たちが武器を手にとりながら警戒をしている。そして、森の賢王が姿を現した。その姿は威光があふれていた。恐ろしかった。

 

「森の賢王とお見受けする! 何故縄張りから出てきている!?」

 

「逃げているでござるよ! 某では手に負えない魔物が現れたので逃げているでござる! では拙者は逃げさせてもらうでござる!!」

 

 森の賢王はそう言いながら、自分たちを無視して逃げ出した。冒険者たちは険しい表情をしている。

 

「おい、イグヴァルジ! これは昔アダマンタイト級冒険者とミスリル級冒険者が共同で薬草を入手するために戦ったモンスターでも現れた可能性があるぞ!!」

 

 その言葉に村人全員が、恐怖を覚える。アダマンタイト級冒険者は英雄だ。その英雄しか倒せない敵が近くにいる。

 

「お前ら! この中で一番素早いのは俺だ! 急いでエ・ランテルに戻って状況を組合長たちに報告してくる。お前らも村人たちを連れて今すぐ避難しろ!!戦うのは最後だ! あと蘇生のワンドはたっちさんの話ならだれでも使えるはずだ! 最悪に備えて俺が持っていく! 異論は!?」

 

「無い!!」

 

 そうしてワンドを投げ渡すようにしながら、イグヴァルジは全力で駆け出していた。

 

「村人の皆さん! 森の賢王が縄張りを放棄して逃げ出す異常が起きている以上この場に留まるのは危険だ。全員着の身着のままで悪いが、今すぐ我々と一緒にエ・ランテルに向かってほしい! 依頼料はいらない!」

 

「依頼料なら僕が払います! だから早く避難しましょう!」

 

☆ ☆ ☆

 

 イグヴァルジは全力で走り、冒険者組合につくと、組合長に面談を求めた。現在他の地域からも冒険者が集まっている。だが、急いでアダマンタイト級冒険者を集めなければ、エ・ランテルは壊滅的被害を受けるかもしれない。

 

 それに内心で笑う。英雄願望がイグヴァルジにはあった。だがそれもたっち・みーという本当の英雄に出会ったことで価値観が変わったのかもしれない。とにかく組合長に会わなければ。

 

 そして組合長に急いで面談して事情を説明する。森の賢王が縄張りを放棄して逃げ出していると。危険なモンスターが発生した可能性があると。それもアダマンタイト級冒険者ではなければ対処できない可能性があると報告する。

 

「……アダマンタイト級冒険者か……分かった急いで連絡を取る。イグヴァルジ、お前たちはこの都市で唯一のオリハルコン級冒険者だ。……悪いがアダマンタイト級冒険者が到着するまでお前たちに時間を稼いでもらうことになるかもしれない」

 

「分かった。ならこの蘇生のワンドは組合長に渡しておく。俺たちが死んだら、それで蘇生してくれ」

 

「もちろんだ。無理な頼みかもしれないが、死ぬなよ?」

 

☆ ☆ ☆

 

 地平線の向こうから――森そのものが歩いてくるようだった。巨大な幹が大地を踏み砕き、枝葉は雲を裂く。百メートルを超える「動く木」。ただのモンスターではない。大地が震え、空気が軋む。イグヴァルジの調査では攻撃的らしい。これは災厄だ。

 

 いやもうエ・ランテルから見える位置に来ている。そしてアダマンタイト級冒険者たちに連絡を取ったが、朱の雫は評議国にいて間に合わない可能性が高い、蒼の薔薇は少し時間をくれれば来てくれるということだ。となると冒険者たちを使って時間を稼ぐしかないと、組合長は考えていた。

 

「たっち・みー様がいてくれれば」

 

 誰かが泣き言を呟いた。正直気持ちは分かる。だがメッセージの魔法では伝えたとしても真実か判断できない可能性もある。

 

 そんなときだった。転移門を使って百人近くの増援が現れた。確か、法国のニグンという男だったか。

 

 樹木のモンスターを見て呟いた。

 

「あれは!! 破滅の竜王(カタストロフ・ドラゴンロード)!! くそ、漆黒聖典は失敗したか!!」

 

「ニグンだったか!! あのモンスターを知っているのか!! 情報の共有を頼む!」

 

「あれは破滅の竜王(カタストロフ・ドラゴンロード)! 世界を亡ぼす力を持った存在だ!! 推定難度は200以上だ!」

 

「……なんだと、難度200以上だと!!」

 

 一瞬敗北を確信しかけたが。ニグンと名乗った男は懐から何らかの水晶を取り出していた。

 

「陽光聖典の者に告ぐ! 我々は今から出陣し、たっち・みー様が到着されるまで時間を稼ぐ! あの敵はたっち・みー様以外では討伐不可能だ!! 天使たちを召喚しろ!! 私は最高位天使を召喚する!!」

 

 その言葉に弾かれたようにニグンの配下は召喚魔法でモンスター、天使を召喚した。そして天使を巨大な樹木に突撃させた。

 

 ニグンと名乗った男は水晶を使ったようだ。すると光が輝いた。それは樹木のモンスターが太陽を覆いつくそうとするのなら、太陽が地上に出現したようだ。そう組合長はそう判断した。エ・ランテルは爆発的に、白く染められた。

 

 その神々しい姿に何も知らない一般人たちは祈りをささげる。私自身無意識に膝を折りそうになった。それほどの威光だった。

 

「見よ、最高位天使の威光を! 威光の主天使(ドミニオン・オーソリティ)善なる極撃(ホーリースマイト)を放て!!」

 

 光の柱が、落ちてきた。




威光の主天使(ドミニオン・オーソリティ)「輝いている! 私、輝いてる!」

そろそろタイトル2文字縛りが苦しい('ω')

明日は07時21分に投稿予定
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