黒歴史の輝き、読んでいただけると幸いです!
第1話 聖騎士
エンリ・エモットはカルネ村での日常がずっと続くと信じていた。変わることがないと。だがその日、悪夢は訪れた。帝国の騎士たちだ。私たちを殺していく。
妹を連れて必死に逃げた。父や母から妹を託された。何があっても助けなければ。だがその抵抗もここまでだった。
急ぎすぎて妹がついていけず、背中を斬られた。痛い。
(私はどうなってもいい、だから誰か助けて!)
もちろんその願いにこたえてくれる人はいない。だから自分がやるしかない。そう思っていた。自分が帝国兵を睨みつけていると、追手の二人の首がいきなり落ちた。そして声が聞こえた。
「お嬢さん、無事ですか?」
「……えっ」
気が付けば目の前に白い鎧を着た騎士がいた。帝国兵とは違う銀色に輝く白い鎧。そして顔は白い兜に隠されてみることができない。だがこちらを気遣っているのは分かる。
「背中を斬られたみたいですね。このポーションを使ってください。それとポーションを使ったら森に隠れていてください。ここはまだ危ないですからね」
そしてその騎士はポーションを地面において、村に向かった。何のために? 決まっている。自分たちを助けるためだ。
そう思うと急に両親の姿が浮かんだ。
「き、騎士様!お願いです両親を助けてください! 何でもしますから!」
涙を浮かびながら叫んでいた。気づけば妹も同じように泣きながら叫んでいた。両親を助けてくださいと。そして騎士は振り返った。
「自分を犠牲にしてはいけません。ですが、生きているのなら我が神に誓って必ず助けましょう」
「あ、ありがとうございます! 騎士様!」
そして白銀の騎士はこちらを振り返らず、村に向かっていた。妹が自分を引っ張っているのに気づく。
「お姉ちゃん。背中、ポーション使わないと」
「そうね、ネム」
そして地面に置かれたビンを手に取ってみる。友人が作るポーションと色が違うと思いながらエンリはポーションを飲み干した。
「うそ」
効果は劇的だった。斬られたはずの背中から痛みが消えていた。妹の声によれば斬り傷も無くなっているようだ。
「お姉ちゃん。お父さんとお母さん、きっと助かるよね? 騎士様が助けてくれるよね?」
「うん、大丈夫。きっと騎士様が助けてくれる。じゃあここは危ないから森に行こう」
「うん」
きっと大丈夫だ。騎士様なら両親を助けてくれる、そう信じてる。
☆ ☆ ☆
ロンデス・ディ・グランプは焦っていた。途中までは順調に村人を殺せていた。だがそこに白銀の鎧を身にまとった騎士が現れた。
村人を襲っていたものも全員で騎士に対峙していた。一人で襲い掛かったものは一瞬で殺されていた。
「無辜の民を傷つけるとは、貴様らそれでも騎士か!?」
白銀の鎧を纏った騎士が自分たちを糾弾する。確かに自分たちは村人を殺している。だがそれも上層部の命令があったからだ。きっと私の信仰する神も許してくれるはずだ。
何か突破法はないかと視線を村の中央に向けるそこには先ほどまで自分たちに狩られるはずだった村人たちがこちらを見ていた。いや違う。村人を救う騎士を見ていた。まるでおとぎ話に出てくるような聖なる騎士を。
「武器を捨てなさい。あなた達では私にはかなわない。武器を捨てればこの国の法で処罰するだけに留めましょう。ですが、武器を捨てなければあなた達は今日この場で全員死にます」
その言葉に応じて一人の騎士が武器を捨てた。
ベリュース隊長だった。下種な欲望の持ち主、なぜこんなやつが自分たちの上司なのかと思った。私たちは神に対する信仰で村人を殺している中、自分の欲望で人を殺してる存在。できれば自分の手で切り捨てたかった。
だがそれはかなわない。逃げることもできない。ならどうするか。
信仰を全うするのみだ!
「全員傾聴!! 自分が信仰する神に祈りを! 異端者を、あの騎士を殺せ!!」
そうだ、何があっても信仰は全うしなければならない。ならばあの騎士は殺す。そして村人も殺す。
「全員で一斉に掛かれ! いくら凄腕でも、全方位から掛かれば勝てる!」
そして生き残っている兵士たちが、騎士を囲んだ。腕は2本武器は1つ。王国戦士長並みでなければこの状況はひっくり返せないだろう。
「最後にもう一度だけ、警告します。今すぐ武器を捨てなさい」
「掛か――」
自分が合図をしようとしたとき、その時すでに自分の首は落ちていた。
☆ ☆ ☆
村長は今日が人生最良の日か悪夢の日か悩んでいた。確かに村人を殺された。だが自分たちは救われた。
あの後村ではなく森に潜んでいた兵士も殺された。誰に? もちろん自分たちの救世主に。そして一人だけ武器を捨てた兵士はロープで逃げられないようにして縛っている。尋問の前に聖騎士様と話さなければならない。
話の前に妻が白湯を作ろうとしている。それを見た騎士様は言った。
「申し訳ない。私の兜は神から祝福されたもので外すことができないのです……そう何も知らない人が聞けば呪いと思うかもしれませんが…」
「そ、そうなのですか? しかしそれでは飲食は?」
「この指輪で飲食は不要にしていますので……」
となると騎士様をお待たせするわけにはいかない。妻を見て一緒に騎士様の向かい側に座る。
「助けていただき、本当にありがとうございました!!」
妻と一緒に頭を下げる。それだけ強い感情があった。それと同時にもう少しだけ早く来てくれれば村人全員助かったとの諦観……慌ててその感情を追い出す。助けてくれた騎士様に向ける感情ではない。
「それでその騎士様、何とお呼びすればよろしいでしょうか?」
「そう言えば、名乗っていませんでしたね。私はたっち・みーと言います、気軽にたっちさんとお呼びください」
「村を救ってくれた方に、さん付けなんて出来ません! たっち・みー様とお呼びさせていただきます」
それを少しだけ残念そうにこちらを見ながらそうですかとつぶやいて、話を進めてきた。
「私はユグドラシルという大陸のアインズ・ウール・ゴウンという国の騎士の末席、プレイヤーと言います。今回は私の国の魔法使いの転移魔法の実験の失敗でこの国に飛ばされました……何か知っている言葉はありますか?」
「……申し訳ありません。私たちはユグドラシルも、アインズ・ウール・ゴウンもぷれいやーも聞いたことがありません、ですが村ではなく街、エ・ランテルに行けば知っているものがいるかもしれません」
「左様ですか」
たっち・みー様は寂しそうにつぶやいた。表情は読み取れないが何らかの感情が強くあるのだろう。耳に残った。
「では村長、恐らく常識は異なっていないと思いますが、こちらの常識を教えてもらっていいでしょうか? 大陸も違うので私は迷子のようなもので」
「畏まりました。私の知っていることは全て話します」
そしてしばらく話した後、村人がドアをノックした。そして葬儀の準備が整ったと言ってきた。
「葬儀ですか……村長、もしよろしければ私の実験に使わせていただけませんか?」
「実験、といいますと?」
「私は聖騎士です、ゆえに私の信仰する神の様式に従って葬儀を行ってもいいのですが……私は蘇生魔法を使えます」
「い、今、何とおっしゃいましたか?」
聞き間違いかと思った。そう思い周りを見てみると自分を呼びに来た村人も、妻も同じように目を見開いていた。
「私は蘇生魔法を使えます。ですが、私の使用できる蘇生魔法では……なんと説明すればいいか……そうですね先ほど聞いた難度でしたか? それが最低でも3なければ失敗し灰になってしまいます。もしそれでよろしければ蘇生魔法を行使しますが?」
「で、ですが、蘇生魔法は大金が必要だと」
「――困っている人がいたら助けるのは当たり前です。我が神々もそう言っています、それに失敗する可能性もあるのです、遠慮はしないでください」
気が付けば涙が流れていた。自分だけではない、妻も村人も聖騎士様の優しさに触れて、涙があふれていた。この人こそ本当の騎士だろう。
「お願いします。私にとって村人は家族同然なんですどうか救いをお願いします!」
そして聖騎士様は蘇生魔法を行使して小さい子供以外は救ってくれた。大人は難度が3あったのだ。
☆ ☆ ☆
「お父さん、お母さん」
ネムが涙を流しながら二人の手を握っている。エンリも涙を流していた。分かってる。仕方がなかったって。聖騎士様が最善を尽くしてくれたとは分かってる。それでも恨んでしまう。もう少し早く来てくれていればと……。
そこに村長と聖騎士様が歩いてきた。葬儀を行うようだ。村長が大声を上げた。
「聖騎士……たっち・みー様は死者蘇生の魔法を使えるそうだ!難度3未満の蘇生は灰になって失敗するらしいが、試してもらいたいものはいるか?」
村人全員が呆然とした。死者蘇生? おとぎ話のようだ。自分も村人たちも絶句したまま動けなかった。だがそれにひるまずに動いた存在がいた。妹だ。
「お父さんとお母さんが蘇るんですか!! 聖騎……たっち・みー様! お願いですお父さんとお母さんを助けてください!」
「あなた達は……そうですか、私は救えなかったのですね……いえこれからですか。村長が言ったように難度が3未満であれば蘇生は失敗して灰に変わります。それでも君は蘇生を望みますか?」
姉として一緒に言わないといけない。その思いで言葉を発した。
「お願いです! 両親を救ってください!」
「承知しました……さて」
そして聖騎士様が何らかの言葉を紡いだ。すると父に光が纏わりつき……。
「……ここ、は」
「お父さん!」
「お父さん!」
二人して駆け寄った。二人ともうれし涙を流している。しかし父には通じなかった。
「そんな、二人も死んでしまうなんて」
父は自分たちも死んでしまったと勘違いしているようだ。だがそれは間違いだ。
「違うのお父さん。そこにいる聖騎士様……たっち・みー様が蘇生魔法でお父さんを蘇生してくれたの」
「蘇生、魔法?」
「そう、蘇生魔法。たっち・みー様はどこかの国の神殿に仕える騎士様なんだと思う。私たちを助けてくれたの」
そう言いながら、周りを見ると母も蘇生されていた。妹が嬉しそうに母に抱き着いていた。問題は母も同じような勘違いをしたことだ。
次々とたっち・みー様は亡くなった人たちを蘇生してくれた。気が付けば蘇生されたことを理解した人たちとそれを見ていた私たちも土下座していた。
(たっち・みー様は信仰する神がいるって言ってたけど、私たちも信仰しちゃダメかな?)
頭の中でそういうことを思いながら、たっち・みー様は死者を蘇生していった。そして大人は全員蘇生に成功した。後、蘇生していないのは子どもだけだ。
「――大人の方々は難度が3以上あったようですね……問題は子どもたちです。難度が3あるか……もう一度皆さんに尋ねます。失敗すれば遺体は残らず灰になります。それでも子どもたちの蘇生を望みますか?」
「――大人たちの蘇生を見させていただきました。確かに彼らは極度の疲労状態にあることが分かります……恐らく子どもたちが蘇生に耐えられないのもわかります。ですが、それでも死者蘇生を行っていただきたいです。決して、我々はたっち・みー様を恨みません。そうだろう、皆?」
全員が首を縦に振った。特に子どもの両親たちは必死に祈るように手を合わせていた。
「分かりました。蘇生魔法を行使しましょう」
その後子どもたちは難度3を超えておらず灰になってしまった。その時たっち・みー様は神官として葬儀を行ってくれた。子どもたちの両親も恨んでいない。恨めるわけがない。蘇生魔法は本来、特権階級のものでも利用できるものではない。それをただの村人のために使用してくれる。
エンリはたっち・みー様が信仰する神を信仰すると決めた。
そして救えなかった者たちには聖騎士様の信仰する神々のやり方で葬儀を行ってくれる。
「Asche zu Asche, Staub zu Staub, Erde zur Erde. Doch die Seele kehrt zurück zu dem Herrn」
全員が亡くなった人たちに頭を下げる。私たちもいつか死ぬ時が来るだろう。その時、このお祈りができるようになっていればいいな、とエンリは思った。
☆ ☆ ☆
(必ず救う)
王国戦士長、ガゼフ・ストローノフは誓いを立てていた。自分は王国のはずれの村で生まれた。盗賊や魔物に襲われたとき、嵐が遠ざかるのを祈るしかなかった。だが今の自分には力がある。王が私を信頼して村を救えと命令した。自分は王の剣だ。なら村人たちを必ず救う義務があるはずだ。そして、近くの村に近づいたとき……違和感を覚えた。
村が焼け落ちるような匂いがしないのだ。
そして村にたどり着くと、一人の騎士の後ろに村人が集まっていた。その騎士を見て直感がささやく。勝てないと。戦いは避けるべきだ。まずは自分の立場を名乗ろう。
「私はリ・エスティーゼ王国、王国戦士長、ガゼフ・ストロノーフ。王のご命令で近隣の村々を襲っている帝国の騎士たちを討伐するために村々を回っている」
「王国戦士長……村長殿、捕虜から聞いた話を総合すると本当でしょう」
「――左様でございますね、たっち・みー様」
聖騎士はこちらを油断なく見ている。そして村長と思わしき人物は自分を複雑そうに見ている。
「この村の村長だな。隣にいる人物は誰か教えてもらいたい」
「初めまして、王国戦士長殿、私はたっち・みー。襲われていた村人たちを救ったものです」
ガゼフはその言葉に馬から飛び降りた。そして感謝の言葉を述べた。
「村人を救っていただき、心から感謝する!」
「――ほう、あなたは中々できた人物のようですね。こんな見ず知らずの私に対して頭を下げるとは。しかしそうなると余計、分からなくなります」
「何が分からないと?」
「この村を襲ったものを一人捕虜にしました。そしてそのもの曰く帝国兵に偽装して王国戦士長を誘き寄せろと命令されていたようです。そして裏にいるのは帝国ではなく法国です」
「――法国、だと?」
訳が分からなかった帝国兵を殺すために村を守りに来たら実際は法国が自分を殺そうとしている。恨みを買っている自覚はあるが、何故このタイミングで自分を殺そうとするのかが分からない。
「ええ、法国です。捕虜の言葉によれば六色聖典の一つ陽光聖典だそうです。人間を守ろうとする彼らがなぜあなたを殺そうとするかは謎ですが……」
「確かに」
法国は人類至上主義を掲げている。なら何故自分を殺そうとするのか。あまり言いたくはないが私は強い。法国からすれば殺す理由はないと思うが……そして思い当たった。
「政治、か」
「何か思い当たることでも?」
「ああ、非常に恥ずかしいことだが、今王国は民を守ろうとする王を頂点とする王派閥と、貴族の権利を拡大しようとしている貴族派閥に分かれて政争に明け暮れている」
そこまで話して一度ため息をつく。自分でも情けないことを言わなければならないからだ。
「そして私は今回多くの武器を貴族派閥に奪われている。恐らくだが、貴族派閥が王の影響力を削るために私を法国に暗殺させたいのだろう」
それでも何故法国がその提案に乗ったか疑問ではあるが……だが思いつくことはそれぐらいしかない。
「なるほど、つまり王派閥はあなた個人の武力で、貴族派閥を抑えていると考えてよろしいか?」
「私にそこまでの力はない……そう言えたら良かったのだが、な」
本当に自分にそこまでの価値があるかはわからない。だが自分が倒れれば貴族派閥たちが増長するのは目に見えている。
「あなたの立場は理解しました。とはいえ、あなたと国王と貴族には文句を言わせていただきましょう……無辜の民を傷つけるな!!」
誓いを立て無辜の民を守る聖騎士らしい怒りだった。そしてその言葉に自分も納得する。だからただ謝罪を悪いのは自分だけであると明言する。
「すまない……本当にすまない。悪いのは私だ。王は民のためになるように必死に努力されている。力ない私を笑ってくれ、たっち・みー殿」
そうしてたっち・みー殿と会話していると後ろから小さな子供がたっち・みー殿に隠れるように石を投げてきた。それをよけずに受ける。痛い。体ではなく、心が。そして少年は叫んだ。
「友達を返してよ!! たっち・みー様が両親を蘇生させてくれたけど、友達は灰になっちゃった。あなたのせいだ!!」
「少年。恨むべきは法国の兵士であり、友達を蘇生できなかった私です、最低でもガゼフ殿はノブレス・オブリージュを実行しようとしている。その意思は尊いものです。否定してはいけません」
「……はい、たっち・みー様」
たっち・みー殿が自分をかばってくれる。それが少しだけうれしかったが。だが、そうも言えない事情ができた。副官も戦士たちも驚いたようにたっち・みー殿を見ている。
「たっち・みー殿、今、少年は蘇生魔法を行使したといったが、真ですか?」
「ええ、私は難度3以上の力があれば死者を蘇生できます」
「……報酬はどうしました? 蘇生魔法を使うのには非常に多額の金銭がかかると聞いている。村人たちでは払えないと思うが……」
「報酬はいりませんよ。私は我が神に誓いを立てています。困っている人を助けるのに理由はいらない、と」
……素晴らしい人格者だ。もちろんそれが冒険者ギルド等に所属していれば、大問題になるだろう。それだけ蘇生魔法の行使には影響力が伴う。
ガゼフは思う。この人物を逃がしてはいけない。自分の王国戦士長の地位を無くすことになったとしても、彼を王国に仕えさせる。それが王のためになる。
王派閥に蘇生魔法を使えるものが仕えてくれれば貴族派閥を切り崩して、民のためになる政治を王はきっと行える。
「たっち・みー殿、頼みがある。王国に、王に仕えてくれないか。たっち・みー殿が仕えてくれれば貴族派閥を切り崩して民のためになる政治を行える。どうか頼む!!」
頭を下げる。そして自分の考えを読み取ったのだろう副長も頭を下げる。それは次第に大きくなり王国戦士団全員が頭を下げていた。
「困ります。私には仕える神がいるのです。この国の国王に仕えるのは難しいです……非常に困りますが……私は生まれ故郷であるユグドラシルに帰る算段が今はつかないのです。ユグドラシル大陸を探してくれる条件と引き換えであれば力を貸すのもやぶさかではないですが……あと長いでしょうし、たっちで結構ですよ?」
「力を貸してくれるだけでありがたい! 上手くいけば王国は王の下、蘇る!」
聖騎士であれば当然仕える神がいるだろう。だが譲歩してくれた。王派閥に力を貸してくれる。上手くいけば貴族派閥を蘇生魔法で押さえつけることができる!
「やれやれ……今回の冒険は仲間がいなく一人だけと思っていましたが……頼りになる友人ができそうです。ところでガゼフ殿あなたはプレイヤー、アインズ・ウール・ゴウン、若しくはリアルという言葉を知っていますか?」
「友人か……感謝する。たっち殿。そしてプレイヤーとアインズ・ウール・ゴウンにリアルか……残念ながら私は知らないな。だがたっち殿が必要としている情報なのだから、私が持つ権限全てを使って探そう」
「ありがとうございます……さてこのまま会話を続けるのもいいですが……どうやら六色聖典の者たちがガゼフ殿を殺しに来たようです」
その言葉に周りを警戒する。確かに殺気を感じる。
「六色聖典か……良ければたっち殿、一緒に戦ってくれないか」
「乗り掛かった舟です。いいでしょう。ですが村人を守るためにあなたの配下には護衛に回ってもらって、二人で倒しに行くとしましょう」
たっち殿は自分より強い。であれば二人掛であれば、六色聖典を倒すことも可能だろう。それに……自慢の部下たちではあるが、自分たちの戦いについてくるのには足手まといだ。犠牲になるだけだ。それは避けたい。
「……そうだな、それが一番犠牲が少ないだろうな。副長! 村人の護衛を任せる」
その言葉に納得できないのか部下たちが声を上げる。特に副長は絶対に妥協できないかのようにすごんでくる。
「いけません!!王国には戦士長の代わりもたっち・みー様の代わりもいません。たっち・みー様は死者の蘇生ができるのですから我々だけで向かいます!!」
確かに、それも一つの手だ。部下たちだけで戦って負けても蘇生できる。だが犠牲は少なくしたい。
「副長……これは命令だ。村人たちを守れ」
副長が顔をゆがめてうなずいた。
「どうかご無事で」
☆ ☆ ☆
ニグンは王国戦士長が檻に入ったのを見届けながら配下に命令を下す。
「総員、信仰を捧げよ!!」
部下たちが散開する。この絶好の機会を逃すわけにはいかない。
そして一人の戦士と、一人の聖騎士が歩いてきた。
一人はガゼフ・ストロノーフ。だがもう一人は誰だ。情報との食い違いに歯噛みする。風花は裏切り者を探すのに力を注いでいる。自分たちだけではやはり情報収集は無理かと思う。適性が違うのだから仕方ないと思いながら切札に目を向ける。
何故二人できたかはわからないが、負けることはない。必ず勝つ。そして聖騎士が言葉を発した。
「私は、たっち・みーと申します。戦いが始まる前に聞きたいことがあります。あなた達はユグドラシル、プレイヤー、あるいはリアルについて何か知っていますか?」
次話は11月19日07時21分に投稿予定です!
本当は19月19日07時21分に投稿したかったのですが、残念ながらその日時はないので妥協しました。
ちなみに蘇生は本当に魔法を使っているかあるいは魔法を使っているように見せかけて真なる蘇生のワンドを使っている可能性があるとします('ω')
感想が多いと投稿頻度が上がるかも('ω')