『完結』黒歴史の輝き   作:万歳!

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ツアー「頑張れラキュース!! 君の恋心に世界の命運は掛かってる(エルフの三人娘でも可)!!」

お待たせしました!


第7話 恋心

 帝国の首都を歩き、宿に戻る道すがら、ロバ―テイクは胸の内を整理していた。

 

 酒場などで入手した情報はどれも信じられないものだった。吟遊詩人が歌ってもいたがさすがに嘘ではないかと思ったが、天武とのやり取りを思い出せば嘘とも思えない。

 

「……たっちさんよ。何が伝手があるだ。貴族の粛清と八本指の壊滅、そして難度二百以上の怪物の退治。どれもこれも、全部あんたが中心人物じゃねぇか」

 

 宿に入るなり、ヘッケランが苦笑混じりにそう漏らした。だがその声音には半分呆れ、半分は本気の畏怖が混じっている。

 

「難度二百って……そんなの、さすがに嘘でしょ?」

 

 イミーナが肩をすくめる。だがその目もまた、信じたい気持ちと、信じざるを得ない気持ちの狭間で揺れていた。

 

「いえ、嘘ではありません」

 

 私は静かに言葉を継ぐ。

 

「私は見ました。天武が刀で斬りかかったとき、たっちさんは二本の指でその刃を受け止めたんです。白刃取り……それも完全に。あれは常軌を逸しています。最低でも逸脱者級、それ以上の存在でしょう」

 

 思い返すだけで背筋が粟立つ。私は信仰系魔法詠唱者として数多の冒険者や戦士を見てきたが、あれほどの怪物じみた実力は見たことがない。

 

 横でアルシェがうつむく。

 

「……みんな、ごめんなさい。私の事情に巻き込んでしまって」

 

 その声は細く震えていた。彼女の事情――家族、両親の借財。たっちさんが差し伸べた手は、確かに救いのはずだ。だが同時に、あまりに大きな転機でもあった。

 

 ヘッケランがすぐに首を振った。

 

「アルシェ。俺たちは仲間だ。だから言うべきは謝罪じゃねぇ、感謝だろ」

 

「うん……ありがとう、みんな」

 

 彼女はようやく顔を上げ、微笑んだ。儚げだが、確かな光を宿して。

 

「それで、問題は……俺たちが王国の貴族になるかどうかだな」

 

 ヘッケランが真顔に戻る。

 

「仕事を今まで通り続けられるなら確かに魅力的だ。たっちさんが推薦してくれりゃ、ミスリル級の俺たちなら貴族入りは現実的だろう」

 

「でも、アルシェ。両親には話したの?」

 

 イミーナが念を押すように問う。

 

 アルシェは頷いた。

 

「うん。話したら……王国に行くのに乗り気だった。今は貴族の粛清で人手が不足してるって言ってたでしょ? 儀礼や事務作業を任される人材は歓迎されるんじゃないかってて。だから、自分たちを高く売り込めるんじゃないか、自分たちから爵位を奪った鮮血帝を見返せるんじゃないかって思っているみたい」

 

 彼女の声には、わずかな期待と不安が入り混じっていた。

 

 確かに、アルシェの才覚なら貴族としての立場を活かすこともできるだろう。とはいえ、アルシェの両親は鮮血帝に無能とみなされた存在だが王国でどれほどの地位を占められるか……。少し不安だ。

 

「確かに。アルシェが貴族になれば領土も手に入るだろうし、運営の雑務はおやじさんに丸投げだって構わねぇ……もちろんたっちさんが粛清したような貴族と同じことをされたら困るが……」

 

 ヘッケランが笑う。

 

 私も静かに言葉を添えた。

 

「……私も民を苦しめない範囲での徴収であれば、委任しても構いません。何より……自分の領土なら、傷ついた人を無償で治療できる。それが私には、一番の喜びです」

 

 その言葉に皆がうなずいた。仲間として、同じ夢を共有できる瞬間だった。

 

「私も覚悟を決める。父には最後の機会を与える。爵位を貰うのは父ではなく私。だから、父が不正をしたりしたら、私の手で家から叩き出す」

 

 そのアルシェの言葉に自分たちは頷く。しかし、心の奥底では、なお拭えぬ疑念が燻っていた。たっちさんにではなく、王国に対して。

 

「問題は……裏があるかどうかだな」

 

 そう。そこが問題が。しかし。

 

「たっちさんの言動を見る限り、裏は無さそうだ。少なくとも利己的に人を操るような気配はなかった」

 

 ヘッケランが腕を組みながら考える。どうやら思考に一定の結論が出たようだ。問題があるとすれば王国側だ。

 

「一先ず、カッツェ平野でアンデッドを狩って、その後エ・ランテルで情報を集めるか。実際に稼ぎながら様子を見りゃいい」

 

「それはいい案ね」

 

 イミーナが頷く。

 

「でも……みんな、本当に許してくれるの?」

 

 アルシェの声は震えていた。自分のせいで仲間が危険に晒されるかもしれないと恐れているのだ。

 

「許すも何も――当たり前だろ!」

 

 ヘッケランが大声で笑った。

 

「むしろ貴族になれるなんて、願ってもねぇ話だ。なぁ、二人とも!」

 

「ええ。もちろん」

 

「仲間でしょ」

 

 私も笑みを浮かべ、言葉を重ねた。

 

「アルシェ、あなたが前を向けるように……私たちも共に歩む。それだけのことです」

 

 部屋の空気が温かくなるのを感じた。仲間たちの絆が、今一度確かに結び直された瞬間だった。

 

 ――だが、胸の奥に潜むざわめきは、消えることはなかった。

 たっちさんという存在。彼の背後にある力。人間の常識を超えた強大さ。それは、恩恵を受ける者にとっては救いであり、同時に、抗いようのない支配の影でもある。

 

 私たちはどこへ向かうのか。王国の新たな秩序に組み込まれ、安寧を得るのか。それとも……。

 

 答えはまだ、闇の中にあった。

 

☆ ☆ ☆

 

「あー……つまんねぇ」

 

 重苦しい吐息を、わざとらしく宿屋の広い廊下に響かせる。ガガーランは肩をぐるぐると回しながら、石造りの壁に背を預けた。帝国との会議は、確かに大事な仕事だ。貴族の粛清、八本指の壊滅、破滅の竜王(カタストロフ・ドラゴンロード)の出現――これらを証言し、和平と同盟の細部を詰める作業に関われるのは名誉かもしれない。

 

 だが、戦士の血がうずく。机にかじりつくより、武器を振るう方がよほど性に合っていた。

 

 しかも最近は妙なことも多い。ラキュースとたっちさんを二人きりにしようとすれば、なぜかニグンが援護に回る。あの法国の亜人殲滅者と共闘する羽目になるとは、人生わからんもんだと思う。

 

 ガガーランの役割は、イビルアイから頼まれた「任務」も含んでいた。リーダー――ラキュースと、たっちさんをどうにか結び付けること。だが状況は思った以上に難航している。

 

 まず、帝国の四騎士が呪いの治療をしてほしいとたっちさんに対してお願いに来た。エルフの耳の欠損部位を治療したのが耳に入ったのだろう。藁にも縋る気持ちで治療をお願いしていた。たっちさんはそれを承諾し、顔の呪いを解除した。

 

 そこからが大変だった。その女、レイナースは体を使って報酬を払おうとして、リーダーが不機嫌になった。

 

 その後自分には妻子がいると言われ、断ってたのを複雑そうに見ていた。そしてたっちさんは帝国で力を蓄えて人類の生存に貢献することが私への報酬ですと言い彼女を帰らせていた。そんなラキュースは今、たっちさんから一歩引いた位置にいる。

 

 たっちさんに救われたエルフの娘たち。彼女らは英雄にすがり付くように彼のそばを離れず、常に視界のどこかにいた。

 

 ラキュースはその姿をちらりと見やっては、不機嫌そうに眉を寄せている。だが当人は自覚していない。

 

「恋愛に疎い箱入り娘ってのは、手間がかかるねぇ……」

 

 ガガーランは口の端を歪めた。

 

 帝国滞在も終わりが見えている。このまま何も進展がなければ、帰国したときにイビルアイにどやされるのは目に見えている。――そろそろ強引にでも押さねばならん。

 

 そう考えて廊下を歩いていると、ちょうどたっちさんが視界に入った。

 

 常に凛とした気配をまとい、背筋の通った立ち姿。彼が歩くだけで空気が清浄になるように感じるのは気のせいか。

 

「よぉ、たっちさん。体がなまりそうでな、少し胸を貸してくれねぇか?」

 

 軽口を叩くと、彼はすぐに頷いた。

 

「良いですよ。三人は危ないので、部屋で待っていてください」

 

 背後に控えていたエルフの娘たちが、恭しく頭を下げた。

 

「はい、たっち・みー様」

 

 ガガーランはにやりと笑う。

 

「慕われてるねぇ、たっちさんよ?」

 

「地獄から救われた直後ですから。一時的な感情でしょう。いずれ彼女たちにも本当の春が訪れるはずです」

 

 静かに告げる声音に、揺るぎない誠実さがあった。――だからこそ、ラキュースが惚れちまうんだ、とガガーランは心の中で舌打ちした。

 

「――まぁいいや。中庭に行こうぜ」

 

「わかりました」

 

 二人は夜風の吹き抜ける中庭に出た。石畳は昼間の熱を失い、月明かりが薄く差し込んでいる。訓練のために整えられた場所で、武器を振るうには最適だったが、今は別の目的だ。

 

「で、悪いな。訓練じゃなくて、ちょっと話したいことがあるんだ」

 

「ふむ、何でしょうか? 私に答えられることですか?」

 

 真剣な眼差しを向けられ、一瞬言葉が詰まりそうになる。だがここで怯んではいけない。

 

「実はよ、リーダーが持ってる魔剣キリネイラムな。全力で解放すると一国を飲み込むほどのエネルギーを放つって話があるんだが……たっちさん、抑えきれるか?」

 

 たっちさんの瞳が僅かに揺れた気がした。

 

「……あの魔剣に、そこまでの力が? 私が見た限り、確かに相応の格はありますが……」

 

「ちなみになんだが、たっちさんは実際に国を滅ぼせるような武器を見たことあるか?」

 

「あります。というより、所持しています」

 

「持ってるのかよ!」

 

 思わず素で叫んでしまい、夜風が笑うように頬を撫でた。確かに難度二百以上の化け物を倒せるんだ。それぐらい持っていてもおかしくないか。

 

「ええ。全盛期の力を発揮できれば、かの魔樹を触手を一つずつ攻略するのではなく、触手と本体を同時に斬り伏せることも可能だったでしょう」

 

「はぁ……化け物じみてるぜ。見てみたかったな、あんたの全盛期ってやつを……」

 

 ガガーランは頭をかきむしった。だが本題はここからだ。

 

「まぁそれは置いといてだ。ラキュースのことを少し見てやってくれ。たぶんないとは思うが、万一暴走すりゃ国が吹き飛ぶ。それにだ、ラキュースが前に言ってたんだ。右手を押さえながらパワーを全力で抑えるのは、私のような神に仕える女性でないとか、かんとか言ってたんだ」

 

「……ほう」

 

「さらに言えばだ、お前が油断したら、暗黒の根源たる闇の私が肉体を支配し、魔剣の力を解放してやるってな。だからラキュースの事をしっかり見てやってくれ」

 

「……そうですね。剣に封印が施されている可能性もある。注意は必要でしょう。承知しました、ガガーラン」

 

 たっちさんは冷静に答える。だが、ガガーランは一歩踏み込んだ。

 

「それと、もう一つ付随して頼みがある」

 

「なんでしょう」

 

 深呼吸してから、拳を握る。目の前の存在に言うべきではないことを言わなければならない。これは貸しだ。いつかイビルアイに払ってもらおう。

 

「ラキュースの恋心と、向き合ってやってくれ」

 

 たっちさんは即座に顔を曇らせたのが兜越しだが伝わってきた。

 

「……ガガーラン。私は妻子ある身です。不誠実な真似はできません」

 

「わかってる。だがよ、ラキュースは本気だ。本気であんたに惚れてる。自分で気づいていないだけで……だからこそ魔剣の封印が緩む可能性もある。神に仕える神官が抑えているって言ってたんだ。いつかはその恋心が、魔剣の力を解放することになりかねない」

 

 沈黙。夜の空気が、ひどく重くなる。ああ。あんたの倫理観は素晴らしいと思う。こっちが無理を言っているのも分かっている。だけどよ。

 

「この世界じゃ、女は強い男を求める。あんた以上の男はいねぇ。ラキュースは強い女だったから、今まで男に縁がなかった。だが英雄に出会っちまった。冒険譚に憧れて家を飛び出した女が、新しい神話を作った男に惚れるのは……自然な流れだろ」

 

「……」

 

 たっちさんは目を伏せた。言葉は返らない。

 

「だからよ、ラキュースが自分の恋心に気づいて告白したときは……頼む。受け入れてくれとは言わねぇ。受け入れてくれたら最高だがな……振るにしても、真正面から向き合ってやってくれ。あんたの妻子には悪いが、ラキュースは側室でも構わねぇはずだ。何より、あんたの力だけじゃなく、倫理観に惚れてんだ」

 

 言い終えて、頭を九十度に下げた。石畳に自分の影が濃く落ちる。

 

 しばしの沈黙の後。

 

「私は……」

 

 たっちさんの声が、月明かりの中に溶けていった。

 

☆ ☆ ☆

 

 帝国での和平交渉と同盟締結はようやく終わった。

 

 机上に並んだ文書はすべて署名され、細部の取り決めもひとまず合意に達した。長時間にわたる駆け引きの末に残ったのは、現状では最善の成果だった。勝利と呼んでいいだろう。

 

 重苦しい空気が張り詰めていた会議場を出ると、外の夜風が頬を撫でた。月光の下で吸い込む空気は涼しいのに、ラキュースの胸の奥には熱のようなものが残っていた。

 

 帰路につく馬車の中。仲間たちはそれぞれ思い思いに談笑している。クライムとストロノーフ様そして意外な人物であるニグンが酒を飲みながら何かを話している。ガガーランもお酒を飲んでいるようだ。そしてたっち・みー様はいつものように三人のエルフがそばにいて立っていた。

 

 窓から覗く帝国の街並みが遠ざかっていく。灯りが点々と連なり、闇に溶けていく様を見つめながら、ラキュースは胸の奥の疼きを抑えきれずにいた。

 

 ――どうして。

 

 理由は分からない。ただ、帝国で見た光景が胸を刺すのだ。

 

 たっち・みー様の傍らに寄り添う三人のエルフの娘たち。彼女たちは救われ、守られ、穏やかな眼差しを向けていた。

 

 その姿を見るたびに、胸がぎゅっと締め付けられた。

 

 救われた彼女たちを祝福する気持ちと同時に、言いようのない痛みが押し寄せる。

 

 まるで胸の奥に棘が刺さったように。

 

 ――私はどうして、こんなにも苦しいのだろう。

 

 心臓の鼓動が早まる。体調が悪いわけではない。むしろ健康そのものだ。だが心だけが落ち着かない。

 

 ガタゴトと馬車が揺れるたび、思考も揺らぐ。

 

 思えば、たっち・みー様の言葉や仕草に心を奪われることがあった。

 

 あの神話を作った戦いでので見せる剣の冴え。困難に立ち向かう揺るがぬ背中。時折のぞかせる柔らかな微笑み。

 

 その全てが、まぶしく映る。

 

 だがそれは敬愛の念に過ぎない――そう自分に言い聞かせる。

 

 至高の御方に対する尊敬。それ以上でも以下でもない。

 

 そう、思っていた。

 

「おい、リーダー。ちょっと来い」

 

 宿に着いた夜。部屋に荷物を置いた直後、ガガーランが声をかけてきた。

 

 表情はいつも通り豪放だが、その目は妙に真剣だった。

 

「分かったわ」

 

 案内されたのは宿の奥の小部屋だった。粗末な木の机と椅子、壁にかけられた古びたランプがかすかな明かりを投げている。扉が閉まると、外の喧噪は遠のき、二人だけの世界となった。

 

「さて……本当は自分で気づくまで待ってやろうと思ってたんだが……まず聞くがよ、ラキュース。あのエルフの三人娘のこと、どう思ってる?」

 

 唐突な問いに、ラキュースは瞬きをした。もっと政治や戦略の話かと思っていたのに。

 

「どうって……たっち・みー様が救われた娘たちよ」

 

 自分の口から出た言葉を聞いた瞬間、胸がまたチクリと疼いた。

 

 ガガーランは片眉を吊り上げて大きくため息をついた。

 

「……やっぱりな。リーダー、お前はまだ気づいてねぇ。箱入り娘の弊害かね」

 

「ちょっとガガーラン。これでも私はアダマンタイト級冒険者よ」

 

「いいや箱入り娘さ。自分の気持ちに気づいていない」

 

「気づいていない?」

 

「そうさ。ラキュース、お前はエルフの三人娘に嫉妬してるんだ」

 

「……えっ?」

 

 思わず声が裏返る。意味が分からない。

 

「嫉妬……私が?」

 

「そうだ。お前があの娘たちを見る時の目、あれはただの同情じゃねぇ。気づけよ。自分でも」

 

 ラキュースは言葉を失った。胸の痛みが、強く主張する。

 

「そんなことは……」

 

「あるんだよ」

 

 ガガーランの声はいつになく真剣だった。そして彼女は、決定的な言葉を放った。

 

「お前、たっち・みー様に惚れてる」

 

 刹那、空気が凍ったように感じた。ラキュースは息を呑み、何も言えなかった。

 

「――ちょっと、何を言うのよ。確かに素晴らしい御方だと思うわ。でも……奥様やお子さんがいらっしゃる」

 

 必死に否定の言葉を紡ぐ。だがその瞬間、胸がまたズキリと痛んだ。ガガーランはにやりと笑う。

 

「じゃあ聞くがよ。もし、たっちさんに奥さんや娘さんがいなかったら――お前、どうしてた?」

 

「……それは……」

 

 考えたくなかった問いだった。だが、思考は勝手に想像を描く。もし、たっち・みー様が結婚していなかったら。もし、誰にも縛られていなかったなら。

 

 その時、自分は――。

 

 胸が熱くなる。息が詰まる。言葉にできない願望が浮かび上がり、喉を震わせる。

 

「どう……してたかって……そんなの、私は……」

 

 答えは出せない。だが沈黙が、雄弁に物語っていた。

 

 ガガーランは満足げに肩をすくめる。

 

「やっぱりな。ラキュース、お前は恋してるんだ」

 

 恋。

 

 その言葉が、胸に深く突き刺さる。

 

 痛みだと思っていた感情は、実は名前のあるものだった。甘く、苦しく、抗いようのないもの。

 

 ラキュースはぎゅっと胸元を押さえた。初めて気づいた。自分は恋をしていたのだと。

 

 たっち・みー様に。

 

 その事実に気づいた瞬間、世界は静かに揺らぎ、これまで見てきた全ての景色が新しい色を帯び始めた。

 

 ――この想いを、どうすればいいのだろう。

 

 答えはまだ出ない。ただ、胸に宿った恋心だけが、確かな熱を放っていた。




たっち・みー(真)「次元断切(ワールドブレイク)」魔樹「」

感想お待ちしております!

今週の土曜日07時21分にちょっとしたおまけを投稿して第3章は終了です!
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