『完結』黒歴史の輝き   作:万歳!

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11月に投下するといったなあれは嘘だ。暫くは投下しますよ! そう07時21分か19時19分にね! ついでに短編から連載に変更しました! そこまで長くはならないと思うけどね!!


第2話 弾劾

 ニグン・グリッド・ルーインは己が耳を疑った。

 

 今、目の前にいる聖騎士(パラディン)は何と言った? ぷれいやー()を知っているかと聞いてきた。

 

 まさかまさかまさかまさか100年の揺り返しなのか? だとすれば目の前にいる人物は……。

 

「か、確認したいことがあります。あ、あなた様は、ぷれいやー様なのでしょうか?」

 

 目標がこちらを睨んでいるが、それはどうでもいい。もしかしたならばもしかしたならば……優先順位が変わる。ガゼフ・ストロノーフを殺すことではなく、目の前にいるぷれいやー様を法国に連れ帰る。上層部に連絡も入れいない自分勝手な命令の変更だが、事実を知れば全員が私と同じ判断をすると確信する。

 

 

「……ふむ、あなた達はプレイヤーを知っているようですね……質問の答えですが、私はプレイヤーの末席です」

 

 その言葉にニグンは歓喜に震えた。神が降臨された。もはやガゼフなどどうでもいい。何が何でも神を法国に連れ帰り人類を救ってもらわなければ!!

 

「各員傾聴!! 目の前にいる方は六大神様と同じぷれいやー様だ! 総員最敬礼!!」

 

 その言葉に陽光聖典の者たちが泣きながら最敬礼を行う。自分たちは今神話の目の前にいる。泣くのは当然だ。自分たちの努力が報われる日が来たのだから!!

 

「まさか、プレイヤーと名乗るだけでここまで敬意を表されるとは思っていませんでした。ガゼフ殿? あなたはプレイヤーを知らないと言いましたね? では六大神は知っていますか?」

 

 こちらを呆然と見ながらガゼフはぷれいやー様の言葉に困惑しながら答えていた。

 

「……六大神は法国が信仰する神々のはずだ」

 

 ぷれいやー様は何も知らない。つまり、ぷれいやー様はまだ人類がどれほどの危機に立っているかも知らない。伝えなければ。それが私の使命だ!

 

「ぷれいやー様! どうかお願いです! 我々人類をお救いください!」

 

「……人類を救う? あなたは一体何を言っているのです? いえ、まずは何故王国を襲ったのです? 人類を救うならここにいる人たちも人類です。あなた達の行いは矛盾しています」

 

「それには深いわけがあります!! ぷれいやー様を納得させることも可能です!! 話を聞いてください!!」

 

「……では、今からあなたは私たちについてきてください。そして村で村人たちの前で何故虐殺が必要だったのか、私と村人たちを納得させることができますか?」

 

「もちろんです! 我々とて村人を殺したくて殺しているわけではないのです。ですがそこにいるガゼフ・ストロノーフを殺すためには必要なことだったのです。それと私はニグン・グリッド・ルーインと申します。ニグンとお呼びください!」

 

 ガゼフがこちらを強くにらんでいる。睨めばいい。貴様に睨まれても何も怖くはない。

 

「ガゼフ殿。抑えてください。私は聖騎士(パラディン)です。彼の言うことに理はないと思いますが、対話をあきらめてはいけません」

 

「……すまないたっち殿。分かった話を聞こう。ついてこい」

 

☆ ☆ ☆

 

 ガゼフは怒りで頭がどうにかなりそうだった。ニグンと名乗った陽光聖典の隊長は、たっち殿しか目に入っていない。

 

 何よりも自分を殺すことを……いや自分を殺すのはいい。だが何の罪もない村人たちを殺すことを正当化できるといったニグンに怒りがあふれていた。殺気を叩きつけている。だが、何の動揺もない。それはニグンだけではなくニグンの護衛としてついてきた神官たちも同じだ。興奮するかのようにたっち殿を見ている。

 

 もちろん村人たちも怒りの表情を見せているがそれに対しても何でもないかのようにふるまっている。すぐに決裂するだろう。それまでの我慢だと自分に言い聞かせた。

 

「さて、それでは何故ガゼフ殿を殺そうとするのですか? 王国の貴族たちに頼まれましたか?」

 

「いいえ、私たちが貴族たちに依頼して、武装を剝ぎ取るように仕向けました」

 

 ……衝撃だった。貴族たちが首謀者と考えていたが、首謀者は法国だったのか。なぜだ、なぜ私を殺そうとする?

 

「ふむ、それは政治ですか?」

 

「いいえ、人類が生き延びるためです」

 

「人類が、生き延びる? 論が飛躍してませんか? それに人類が生き延びるためには強い人物であるガゼフ殿は不可欠だと思うのですが?」

 

「いいえ、そこにいるガゼフは人類の毒です。何故なら、王国は貿易品として麻薬を取り扱っているからです。そして、その麻薬が貿易品になるように王国を守っているのがそこの男です」

 

「……なんですと? 麻薬を貿易品にしている? ガゼフ殿、それは事実ですか?」

 

 虚を突かれた。確かに王国は麻薬売買で利益を出している存在はいる。村人たちも怒りの表情から驚きの表情に変わっている。

 

「……貴族派閥の者たちが麻薬を売っているのは確かだ……それを裏取引で売りさばいているのも。だが信じてほしい。王は必死にそれをやめさせようとしている!!」

 

「愚かだぞ、ガゼフ! だからこそお前を殺すしかなくなったのだ!! お前が王国に仕えていなければ、王国はとっくに帝国に滅ぼされていた! 帝国は貴族を粛清して、税率も下げている。ここにいる村人たちも王国の支配下にいるよりも、帝国の支配下になった方が幸せなはずだ! 税率が下がるのだからな! お前さえいなければとっくの昔に王国は帝国に併合され、王国の民たちは助かった! 知っているか? 帝国では兵士たちが村を巡回して魔物や盗賊から守っている。お前たち王国はどうだ!!」

 

 ……反論ができなかった。確かに王国よりも帝国の方が民にとって良い政治を行っているのは確かだ。だが、それでも!

 

「確かに貴様の言うことは一理あるかもしれない。だがそれなら帝国の毎年の出兵は何だ!! それさえなければ王はもっと貴族たちの手綱を握れていた!! そうすれば民が死ぬこともなかった!」

 

「では聞くがな、ガゼフ。帝国との戦争で民兵たちにどれくらいの死者が出ている? 槍衾で帝国兵を踏みいられないようにして撤退しているだけだろう? 戦争の影響で王国が先細りしているのは確かだ。だが、直接の死人はほぼ出ていないはずだ。違うか?」

 

「……それ、は」

 

「帝国が民の犠牲を最小限にしたうえで貴族という名の汚物を皆殺しにしようとしているから、我々は帝国に王国を占領させるために貴様を殺そうとしているのだ! すべては腐りきった王国を最後の一線で支えている貴様を殺すためにな!! 貴様さえ死ねば王国は帝国に併合されるのだから!」

 

 ……その通りだ。王国が帝国に併合されれば、助かる命は多いかもしれない。悔しいことに納得してしまった。自分が王に仕えたのは間違っていたのだろうか……。だが王は必死に民のための政治を行おうとしている。悪いのは貴族派閥だ。だが、民からすれば関係ない。カルネ村の者たちも納得している者たちがいる。恐らく一度は殺されたが、たっち殿に蘇生されたため怒りが軽減されているのだろう。

 

「それにだ、お前もお前が仕える王も、本気で権力争いを終わらせるつもりはないんじゃないか?」

 

 自分が侮辱されるのはいい。実際自分の力不足な面もあるのだから。だが、王への侮辱は見過ごせない。

 

「――王を侮辱するか!!」

 

「ああ、いくらでもしてやる。お前たちがその気なら御前会議の場に全ての貴族を呼び出して、抹殺することも可能だろう? だがお前たちは実行していない!!」

 

「馬鹿な! そんなことをすれば、内乱になってより多くの犠牲が出る!」

 

「言い訳だな。それが努力しない理由にはならない。お前たちは諦めている! それにだ麻薬売買で利益を得ているのは王族も同じだ。第1王子が麻薬売買から利益を貰っているのは調べがついている!! だから私たちが王国を救うのだ!!」

 

 ――悔しかった。確かにこの男の言うとおりだ。自分は努力をしたと胸を張って言えるだろうか。王の剣であることに徹して、政治を行ってこなかった。もし自分が政治を行っていれば、何か変えられたかもしれない……そんなことを考えているとたっち殿が話し始めた。

 

「なるほど、あなた達法国の立場は理解しました。ですがいくつか疑問点があります。それほど王国が腐りきっているのなら、なぜ法国が王国を占拠しないのですか? 帝国に対する遠慮ですか?」

 

「いいえ、我が国は人間至上主義の国家です。そのため王国を我々が占領した場合、アーグランド評議国と領地を接してしまいます。評議国はドラゴンを含む亜人種たちが治める国家です。そのため我々が王国を占領した場合、絶滅戦争を行わらなければならなくなります。そのため帝国に王国を占領させるために我々は動いています」

 

「……嘘ではないようですね。ではもう一つ質問をします。あなたは先ほど人類を救ってほしいと言いましたね? それはどういう意味ですか?」

 

「はい。我々人類は。とても弱いのです。六大神様が降臨されなければ我々人類は滅びていました。また現在も我々は滅びの可能性を消し去ることができておりません」

 

 滅びに瀕している? どういうことだとガゼフは考えるが、全くわからないのがもどかしい。

 

「まず、我々、陽光聖典の主な任務は台頭しようとする亜人種たちの殲滅です。ゴブリンの集落やオーガの集落等、普通の人間では太刀打ちできない亜人種を殲滅しております。ガゼフ、お前もわかるだろう? 人類は弱い難度で換算すれば、成人した人間ですら難度3程度だ。訓練を受け一流と呼ばれるものでも、難度30を超えない。お前のような英雄クラスは極一握りだ。だが亜人種たちは成長するだけで強くなる。そうだな、成人したビーストマンはそれだけで難度30はある。つまり我々が亜人種を狩らなければ、いずれは人類は滅びる。この理屈はさすがに、分かるだろう?」

 

 ……確かにその通りだ。私が手塩に鍛えた部下たちでも第3位階魔法を使える者たちにはまず勝てないだろう。そしてそれに匹敵する近接戦闘の使い手にも。そうだ、帝国の闘技場ではトロールがいたはずだ。トロールの能力を考えれば私でも勝てないかもしれない。

 

「そんな相手が複数いるのだ。だからこそ人類は団結しなければならない。そう考えた時、政争に明け暮れる王国は邪魔だ。だからこそお前を殺して帝国に王国を併合させる必要があるのだ。これが我々の主張であります。確かに村人を殺す罪はあるでしょう。ですが全ては人類の生存のためなのです! それでも死ねと言われるのであれば自害しましょう。その代わり法国に向かっていただきたい。そこでより詳細な話を聞いてもらいたいのです!」

 

「……まて、人類といったな。では何故法国はエルフを奴隷扱いしている? 彼らも同じ人類種だろう?」

 

「それはエルフが我々と共同戦線をすると言いながら数百年前に我々を裏切ったからだ!!」

 

「裏切っただと?」

 

「そうだ、エルフの王は我々を裏切り、法国の切札に許されざることをした。そのためにエルフを許すわけにはいかない!」

 

 自分の知識では何が正しいのかが分からない。分からないが、これ以上この男にガゼフでは反論することができない。論戦では間違いなくこの男の勝利だ。

 

「ぷれいやー様。我々の言うことが嘘だと思われるかもしれません。ですが、今王国では破滅の竜王が蘇ろうとしています。難度は200以上です」

 

「難度200以上だと!? 馬鹿な! そんなもの相手にできるわけがない!」

 

 フル装備で英雄に片足を突っ込んだガゼフでも難度は90いくか行かないか。難度200を相手できるわけがない。部下たちもこの男の言葉に混乱している。いや自分の部下だけではない陽光聖典の部下の者たちも驚いている。

 

「破滅の竜王に対しては法国の切り札である漆黒聖典、隊員は全員英雄級、難度は90以上で隊長に至っては難度170近くの部隊が一つの世界に匹敵する神器を用いて討伐する予定です」

 

「……ふぅ、なるほど、あなたの言葉に嘘はないようです。確かに英雄の難度が90で普通の成人した人間が難度3では人類は生きにくいでしょうね……私はこの地に来たばかりで情報を知りません。なので王国が本当に麻薬売買を行っているのか私の目で確認したいと思います。構いませんね? 何より私は聖騎士(パラディン)です。神にも誓っている通り困っている人を助けるのは当たり前です。ゆえに最善を求めなければなりません。神を救えなかった私に最善を求める資格があるかはわかりませんがね……

 

 その言葉は透き通っていた。周りにいる人間すべてに感銘を与えるかのように。最善を求める。それがどれほど困難か。だがたっち殿は最善を目指すのだろう。それが誓いを立てた聖騎士(パラディン)だから。

 

 だがその言葉の裏にある苦悩を自分は読み取れなかった……。

 

「はっきり言いましょう。私が全力を出せば破滅の竜王も簡単に倒せます。分かりやすいように言えば私の難度は280です。私のいる世界では難度300という人物もざらにいました。この世界では最強と言ってもいいのでしょう」

 

 難度280……驚きはなかった。たっち殿が自分をはるかに上回っているとは思っていた。だが目の前にいる陽光聖典の者たちは喜んでいた。

 

「280!! 成程それなら最善を目指すことも可能かと思います。我々は何をすればよいのでしょうか?」

 

「まずはあなた方が言った、王国が麻薬を作っているかの事実を確認します。そしてそれが事実であれば……知っていて麻薬を作っているものとそれを命じた者、麻薬によって利を得ているもの……改心を願いたいですが、それを待つ間に苦しむ民が出ては本末転倒ですね。全て、殺しましょう」

 

 その言葉は、今までのたっち殿とは異なっていた。怒りが噴出していた。私は、愚かだったのだろうか……。だが王に仕えたことは間違いでなかったと信じたい。

 

「では、ニグン殿あなたは私についてきてください。それとガゼフ殿もついてきてください。一方だけの意見に耳を貸すのは危険ですからね。あなたたち二人の意見を参考にしながらより大きな善を目指します」

 

「承知しました。ですが王国の件は、できれば早急にお願いします。実は竜王国という国があるのですが、その国では人類はビーストマンの餌となっております。破滅の竜王は王国で蘇る可能性が高いですが、目下の危機としては竜王国という国も危ないのです」

 

「何ですと? ……ではそうですね。このアイテムは遠隔視の鏡と言います。景色を見ることができます。攻性防壁の的になりやすいですが、これで竜王国のビーストマンを映してもらえますか?」

 

「少々お待ちください。使い方は成程。こうなっているのか。ならこうすれば……」

 

 そして村が映し出された。ガゼフも見える位置に立つとそこには……生きながらビーストマンに食べられている人間がいた。思わずガゼフはニグンに対して叫んでいた。

 

「どういうことだ! 何故兵士たちは村人を守っていない!」

 

「……余力がないからだ。ガゼフ、お前の暗殺の任務がなければ我々、陽光聖典が竜王国を秘密裏に救いに行く手はずになっていた」

 

「……なぜ秘密裏に?」

 

 相手の指揮官は苦虫をつぶしたかのような表情になっていた。それは彼自身も本意では今すぐ救いに行きたいと言っているようだ。

 

「竜王国を治めるのが竜王だからだ。一番上(トップ)が人間ではない以上、我々は表立って力を貸せない」

 

 ……自分は何も知らなかったのが悪かったのだろうか。これではガゼフや王は悪者だ。そして鏡の前で食べられる寸前になっている村人を見ることしかできない。

 

 気づけば歯をかみしめていた。だが――

 

「申し訳ないが、私はあの場に行きます。話はあとで伺います」

 

 すると目の前に何らかの門が現れてたっち殿はその中に飛び込んでいた。鏡を見るとたっち殿が生きたまま食べられそうになっている村人を助けているのが目に入った。

 

 そして陽光聖典のニグンが叫んでいた。

 

「我々も続くぞ! 一人は周りにいる部隊のものを呼び寄せろ。残りは私に……ぷれいやー様に続け!!」

 

 自分はどうするべきだろうか。続くべきなのか。それとも……分かっている自分が動けば外交問題になることも。だが無辜の民を見捨てることはできない!! 王もきっと同じ命令を下してくださるはずだ!

 

「我々も続くぞ! 罪なき民を救え!」

 

☆ ☆ ☆

 

 ニグンは興奮していた。ぷれいやー様と一緒に戦えることに。それ以上に自分を指名して王国の闇を潰しに行くと言ってくれた。我々ではできない最善がこの方と一緒ならできる。そう思うと嬉しくてたまらなかった。

 

 いけない。嬉しさで笑顔になりそうだ。今からはビーストマンを退治しなければならない。気を引き締めなければ。そう思い門をくぐる。そこは地獄だった。何の罪もなき命が殺されていた。食べられるために。許せるわけがない。

 

 だが怒りをぶつける対象はいなかった。すでに周辺のビーストマンはぷれいやー様に殺されていたからだ。ガゼフ・ストロノーフとその配下もどうやらついてきたようだ。真実を知るがいい。お前たちがどれだけの害悪であったかを。

 

 陽光聖典の者たちも到着したようだ。残心を行っていたぷれいやー様がこちらに振り替える。

 

「ニグン殿。このビーストマンの襲撃はよくあることなのですか?」

 

「残念ながらよくあることです。我々では殺しつくすことができないのです」

 

「……そうですか、一つ確認します。この国の王はどうしているのです? 特徴は兵力は?」

 

「この国の王は竜王の血を8分の1受けついでいるものです。内政能力は並以上はあるかと。兵士たちは度重なるビーストマンの襲撃で訓練が追い付かないまま兵士として駆り出されている、といったところでしょうか。またこの国の王は始原の魔法の行使が可能なため、偽りの竜王とも呼ばれています」

 

 確かにこの国王が何をしているかは伝える必要がある。確かにこの国の王は無能ではない。だが力が圧倒的に足りない。そしてそのことを伝えると疑問点が出たのだろう。さらに質問が飛んできた。

 

「始原の魔法とは?」

 

「なんでも魂を使って発動する魔法らしく、我々の神器と同じで世界に匹敵する魔法とも呼ばれています」

 

「……ふむ。優先順位をつけなければならないですね。王国の膿を先にたたき出すか、ビーストマンを先に殲滅するか」

 

 普通ならどちらも非常に困難である。だがぷれいやー様であれば、どちらも可能であろう。問題は時間がかかることぐらいか。

 

「ニグン殿、それとガゼフ殿、あなた達は私に付いてきてください。先に王国の方を片付けます。ですが、こちらを見捨てるわけにはいきません。例えばです、ニグン殿を除いた陽光聖典の者たちとガゼフ殿を除いた、王国戦士団が共同でこの地の防衛に回ることは可能ですか?」

 

「陽光聖典は私がいなくとも十分この国の護衛に残すことは可能です。ただ一人だけ報告のために国に帰らせていただければと」

 

「当然ですね。陽光聖典の者たちは残れると……ガゼフ殿あなたは戦士として国王の剣であろうとしているのでしょう。そのため政治とも距離を置いてきたことも推察できます。ですがここが分かれ道です。あなたは私を信じられますか? 信じていただければ必ず王国を救いましょう」

 

 ガゼフは苦虫を嚙み潰したような顔で(しか)め面をしている。王に命令されずに勝手に外国の防衛に回る。普通であれば決断できるはずがない。だが今は普通ではないのだ。上手くいけば王国の膿すべてに決着をつけることができる。この状況であれば我々は協力できるはずだ。それさえできないのであれば……。

 

 

「……分かった。たっち殿に従おう」

 

「ありがとうございます、ガゼフ殿。ではまず遺体を集めてください。私の魔法は難度が3あれば蘇生できます。ただし、肉体に大きな損傷がある場合蘇生が難しいです。難しい者たちは私のやり方で弔いましょう」

 

「承知しました」

 

「了解だ」

 

 そして王国戦士団と陽光聖典の共同作業が始まった。

 

☆ ☆ ☆

 

 死者の蘇生や遺体の始末が付いたのは夜になってからであった。たっち殿はどこの国とも違う言語で葬儀を行った。

 

 なお死者を蘇生した経緯でたっち殿自身が神と間違われて困惑していた。確かに神に仕える聖騎士(パラディン)が神自身と間違われるのは……少し笑ってしまう。

 

 だがたっち殿はそれほどの偉業を行っているのだ。

 

 生き延びた村人たちを避難させるために、どちらに向かうか副長同士が話し合っている。それは私とニグンが王国に戻るからだ。ここは任せるしかない。

 

 そして何ともなしにたっち殿を見ると一冊の本を取り出していた。そこには何かしらの葛藤があるかのように見えた。

 

「たっち殿、その本は?」

 

「……これは、金銭を消費して傭兵NPCを召喚するための本です」

 

「えぬぴーしー!? 従属神様を呼び出すのですか!?」

 

 ニグンが驚いたような表情をしている。それは驚きとともに恐怖を感じているようであった。この男はいろんな情報を知っている。自分とは大違いだ。

 

「ニグン殿はNPC、いえ従属神を知っているのですね。この世界ではどのように語り継がれているのですか?」

 

「はい、従属神様はぷれいやー様に付き従うものと伝わっております。そしてぷれいやー様が死ぬと暴走して、魔神となり多くの人間を殺したと伝わっています」

 

「……なるほど、確かにNPCは創造主であるプレイヤーが死ねば暴走するか自死するかの二択でしょうね。プレイヤーがいればどのような命令を下されようとも従うでしょうがね」

 

 そのニグンの発言にたっち殿は苦笑を浮かべた。何か思い当たる節があるのかもしれない。

 

「さて、従属神が危険とのことですが、この本から呼び出す傭兵NPCは安全です。召喚するのも私ではなく……そうですね実直で悪を働かないガゼフ殿に任せましょう。そのうえで命令権を二番目にニグン殿を三番目に私にしてもらいましょう。この本で呼び出されるNPCは召喚主に忠誠を誓いますから」

 

 そう言うとたっち殿は多額の財宝を取り出した。恐らく法国でも準備するのが難しい金銭を。

 

「これで傭兵NPCの召喚の準備が整いました。ハンゾウと言われる魔物を呼び出せます。難度は240。ガゼフ殿に召喚させ、この地にいる人間を守るために陽光聖典と戦士団に従うように命令すれば、人間が死ぬ危険性も避けられるでしょう、ではガゼフ殿。本を手にとって祈ってください」

 

 ガゼフは困惑しながら本を受け取り目を閉じた。すると金銭と本が輝き……。

 

「ガゼフ様、ハンゾウ召喚に応じました」

 

 ガゼフは召喚した従属神様はある程度の事情を把握していた。そのため、今後どうしたいかを従属神に説明する。そして、ガゼフは副長に従って人類を守るように命令する。

 

 了承の返事が返ってきた。

 

 それを見ながら思う。難度240の従属神。もしかしたら、陽光聖典と王国戦士団だけでビーストマンを壊滅できるかもしれないなとガゼフは思った。

 

「さて、ではカルネ村に戻りましょう。そこから王国の膿を叩き出します」

 




ニグンが仲間に加わった!

なおニグンさんは自分の意思でしゃべっているため死にません。

やったぜ!法国の機密が知りたい放題だ!
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