『完結』黒歴史の輝き   作:万歳!

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今日から書き溜めが尽きるまで07時21分と19時19分ごとに交互に投下することにするぜ!

私はきっと茶釜さまに呪われているんだろうな……だが本望だ。


第3話 怒り

 カルネ村に戻ってきた。ガゼフはこの魔法のようなものだろうか? 魔法がここまで便利だとは知らなかった。もしかしたら何らかのアイテムかもしれないが、これが使えれば帝国との戦争で優位に立てると思ってしまう。

 

 自分の顔面を殴る。

 

(馬鹿なことを考えるな、ガゼフ・ストロノーフ! たっち殿は王国の膿を消すことに協力してくれるんだ。それ以上の厚かましいことは考えるな!!)

 

 内心で自分自身の馬鹿さ加減を叱っていたが、たっち殿が話し始めた。

 

「さて、私は飲食疲労無効の指輪を装備しています。ガゼフ殿、ニグン殿、お二人は装備していますか?」

 

「いえ、残念ながらそのようなアイテムは非常に貴重であり、私は持っておりません。漆黒聖典なら持っているかもしれませんが……」

 

「私も今は持っていない。王国の宝物の一つに疲労を無効にするアイテムはあるが現在は装備していない」

 

「……左様ですか。ではお二人にもお貸しします。まずこの近くの都市に向かい情報を集めましょう。ガゼフ殿。あなたはどこで麻薬が作られているか知っていますか?」

 

 そうして二つの指輪が取り出された。それをガゼフは興味深げに装備する。ニグンは上位者からの下賜品を賜るようにお辞儀をしながら装備を身に着けていた。そして頭の中で麻薬売買が行われている場所を表そうとしたが、残念ながら自分は知らない。

 

「すまない、具体的な場所までは分からない」

 

 同じようにニグンにも聞いているがどうやらニグンも知らないようだ。麻薬の製造所をつぶすのは当然だ。だが問題はどこにあるかだが……。

 

「一つ提案がある。冒険者に依頼してみるのはどうだろうか? 戦闘力では私にも及ばないが、麻薬の情報を探ってくれそうな冒険者に心当たりがある」

 

「……それは蒼の薔薇か? ガゼフ・ストロノーフ? あの女たちは信用できん。私たちが人類を守るために亜人を抹殺するのを止めてくるぐらいには人間の将来が読めていない。ガゼフ・ストロノーフ。お前は竜王国を見たな? 生きながら食べられる人間を。私たちはそんな悲惨な未来を回避するために、亜人たちを殺して回っている。だがあいつらはそれを理解していない。アダマンタイト級冒険者だから生存を許されているが、これ以上我々の邪魔をするようなら漆黒聖典が動くぞ?」

 

「……私は竜王国で行われていることを知らなかった。蒼の薔薇も同じだろう。それに依頼は私の名前で出す。だから問題ないはずだ」

 

 そしてニグンは鼻を鳴らしながら、こちらに背を向けた。消極的賛同と考えていいだろう。あとはどれだけ早く王都に戻るかだが……。たっち殿に頼んで転移で帰るべきだろうか。

 

「たっち殿、王都に帰る方法だが、先ほどのように転移で帰ることはできないか? 今は時間が惜しい」

 

「確かに。王国の膿を消すのは早い方がいい。だがまずは、エ・ランテルに向かって王の直轄下でどれぐらい国民が苦しんでいるのかを見てもらう方がいい。王国には奴隷を廃止したと言われているが、実際は地下に潜っただけで奴隷はいるのだから」

 

「ふむ……では、こうしましょう。エ・ランテルに転移のマジックアイテムを使用して向かいましょう。そこでその街一番の冒険者に指名依頼を出しましょう。冒険者一グループに頼るより王国の膿を発見する速度が早くなるはずです。それから王都に向かいましょう」

 

「承知した」

 

「問題ありません」

 

「では行きましょう……その前に捕まえた捕虜をどうするか決めないといけませんね。王国に突き出しますか? それともこの場で討ちますか?」

 

「村人たちが言っておりましたが、囮の兵の生き残りは虐殺を楽しんでいた様子。可能であれば私の手で法国の恥を討たせては頂けないでしょうか?」

 

「ふむ、ガゼフ殿、どうします。すでに法国とは連携が取れる状況です。捕虜がいてもいなくても問題ないかと思いますが?」

 

 その言葉にガゼフは悩む。確かに下手人を連れて帰っても、意味がない段階だ。何より貴族派閥の者たちは討たなければならない。そうであれば捕虜がいなくとも問題はない。ならば……。

 

「たっち殿に任せる」

 

「左様ですか。ではニグン殿の判断に従いましょう」

 

「ありがとうございます!!」

 

 村長などと話して。ニグンが捕虜を殺しに行った。ニグンがいない今だからこそ、少しだけたっち殿に愚痴らせてもらおう。

 

「たっち殿……私は何も知らなかった。竜王国で人が生きたままビーストマンに食べられている。それも継続して。王国も民にとっては地獄だろう。だが竜王国も同じかそれ以上に地獄だ。私はどうすればよかったのだろうな……」

 

「あなたは王国に仕えている。ならばそこでの最善を目指すしかないでしょう。そして王国の膿をすべて削り取ったら、竜王国に救援部隊を率いて赴けばいい。あなたは真実を知った。挽回は可能です」

 

「そうか……そうだな。感謝する、たっち殿」

 

 そして二人でしゃべっていると、ニグンが村長たちとともに帰ってきた。たっち殿が村長と別れの言葉を口にした。

 

 

 そして先ほどの遠くを見る鏡が取り出される。そしてニグンが操作しエ・ランテルを見つけた。そしてそれを見た、たっち殿が転移のアイテムを使ったのだろう。ゲートのようなものが現れる。それにたっち殿は飛び込み、ニグンも続いた。自分も同じようにくぐる。

 

 そこはもうエ・ランテルであった。

 

(……こっちに残っている王国戦士団にも命令を下さないとな。さて私に付いてきた者たちはたっち殿の強さを理解しているが……私が強く言えば理解するか)

 

「では、たっち殿まずは冒険者組合に向かおう。それが終わったら王派閥のものである都市長と面談してほしい。もしかしたら。彼なら麻薬の事なども知っているかもしれない」

 

「分かりました。案内をお願いします」

 

 そして3人で冒険者組合に向かう。その間たっち殿はいろいろなことを聞いてきた。自分のいたユグドラシルという国家との差異を知ろうとしているのだろう。できるだけ協力したいが、ニグンがたっち殿を目上の者と扱っているため、周りの目にはどう映っているのか、少し気になった。

 

 そんなことを考えていると冒険者組合に到着した。ドアを開けて入ると、こちらを見て驚愕の表情をした後、目をそらすものが多数いた。恐らく自分の顔を知っているものがいたのだろう。それを無視して3人で受付に向かう。

 

「すまない、この街一番の冒険者に指名依頼を出したい」

 

「……えっ王国戦士長様ですか!? 少々お待ちください、上の者を呼んでまいります!!」

 

 受付が走り慌てて走っていく。そして受付がいない間に一人の男が話しかけてきた。

 

「これはこれは戦士長様。俺はクラルグラのリーダー、イグヴァルジだ。俺たちはこの街に3組しかいないミスリルの冒険者だ。依頼を受けるのに不足はないと思うが?」

 

「そうだな、今回の依頼の詳細はあとで話すが、探し物だ。お前たちは探し物は得意か?」

 

「なら俺たちは打ってつけだ! 俺はフォレストストーカーで野外での探し物に向いている。どうだ、問題ないだろう?」

 

「なるほど、では具体的な話をしたい。受付!! 部屋を貸してもらいたい!」

 

 話が一段落し、自分に売り込んできた冒険者は有用だと認識できた。後は人間同士の争いに関わらないという冒険者組合の不文律をどう破らせるかだが……いや場所がどこかを調べるだけだから問題ないか。

 

 そんな風に考えていると慌てるように一人の男が駆けてきた。

 

「これは戦士長殿! お戻りになられたのですね! 指名依頼とのことですが……どの冒険者に?」

 

「クラルグラに指名依頼を出そうと思う」

 

「承知しました。一応どのような依頼を出されるか私もお聞きしても?」

 

「ふむどうする、たっち殿」

 

「……問題ありません」

 

「では、そういうことだ。部屋に連れて行ってくれ」

 

☆ ☆ ☆

 

 ニグンは考えていた、仇敵と思っていたガゼフと仲間のように一緒に冒険者組合に依頼を出していることに人生の不思議さを感じていた……まずはガゼフの依頼のお手並みを拝見しよう。無理そうであれば法国からの要請であると言って無理やり受けさせてもいい。

 

 問題はどこまで情報を開示するかだが……自分の持っている情報は全て開示しても問題ないだろう。ぷれいやー様を助けるにはそれぐらいしてもいいはずだ。

 

「それで指名依頼の内容を聞かせてほしい」

 

 クラルグラと名乗ったメンバーたちが全員揃い、ギルド長がいる中でガゼフは言葉で切り込んだ。

 

「麻薬を使って儲けている者たちがいる。どの貴族が裏にいて、どこで作っているかを調査してほしい」

 

「――お待ちください、戦士長。それは冒険者組合の中立に反します」

 

 ギルド長が割って入ってきた。クラルグラの連中は難しそうな顔をしている。リーダーは悩んでいるようだ。ここは援護させてもらおう。

 

「すまない、名乗るのが遅れたな、私はニグン・グリッド・ルーイン、法国の上層部のものだ、今回の依頼は王国戦士長だけではなく法国からの要請でもある。受けてくれるのであれば最大限の便宜を図ろう」

 

 クラルグラの顔つきが変わった。難しそうにしている。だがイグヴァルジはチャンスではないかと思っているようだ。その顔を見るに実績をつめると思っているのだろう。その通りだ。そして神が話し出した。

 

「申し遅れました。私はたっち・みーと申します。見ての通り流れの聖騎士(パラディン)です。もし依頼を受けて頂けるのであれば前金としてこのワンドをあなた方にプレゼントしましょう」

 

 そしてぷれいやー様が机の上に一本のワンドを置く。それは法国でも国宝と言われるようなものだと思われる。

 

「確認していただければ分かると思いますが、そのワンドは、リザレクション、死者蘇生が可能な魔法が込められたものです」

 

「な、なんだと!?」

 

 クラルグラと冒険者組合長の顔つきが驚きに変化した。当然だ。死者の蘇生はほとんど伝説のようなもの。その魔法が込められたワンド。売れば一体幾らになるかわからないだろう。

 

 そしてようやくではあるが、この中で誰が一番力を持っているのか理解したのだろう。ぷれいやー様を見る視線が違っている。

 

 クラルグラのメンバーの顔は変わった。冒険者組合長を追い出してでも依頼を受けたいような顔をしている。ここはあと一歩ダメ押しだな。

 

「もちろん、報酬は法国も払わせてもらおう。第3位階のスクロールでほしいものはないか? もしくは金銭でもいい。私が掛け合えば、大抵の報酬は約束できる」

 

「……麻薬を作っている場所を探し出すのと、どの貴族が裏にいるか、調査するだけでいいんだな?」

 

 ガゼフと私、ぷれいやー様が同時にうなずいた。

 

「そうだ」

 

 クラルグラのリーダーが挑むように冒険者組合長を見ている。

 

「組合長さんよ、それだけなら冒険者の不文律は犯していないよな? 俺たちはこの依頼受けさせてもらうぜ」

 

 組合長が苦虫をつぶしたような表情をしているが否定はしてこなかった。

 

「では、多く見つけることと早く見つけることでボーナスを出しましょう。よろしくお願いします」

 

「こちらこそ、ボーナスは弾んでくれ、たっちさんよ」

 

 そして指名依頼は終わった。後は王都に転移するだけかと思ったが、その前にこの都市長に会う必要があるようだ。確かにぷれいやー様を王の陣営と紹介する作業は必要だろう。

 

☆ ☆ ☆

 

 パナソレイは、今後どうすべきか悩んでいた……ガゼフに援軍を出すべきか、せめて安否だけは確認したいと考えていたところだった。そんな時ガゼフが帰還して二人の従者を連れて自分と面談したいと言ってきた。

 

 ガゼフだけであれば報告を受けるだけと思うが、従者も一緒に面談させたいとは何かあったように思う。平民だからと見下したりしない。面会の場所を整えるように準備する。

 

 問題は従者がいるから演技を行うべきかどうかという具合だが……。わざわざ王国戦士長が私に会わせようとする二人組だ。一応最初は演技をしておくか。

 

 戦士長を信頼しているが、一応は戦士長が騙されている可能性も考慮しなければ。そして三人が待っている部屋に、たどり着いた。

 

「ストロノーフどの。おうめいはおわりましたか?」

 

「ええ。終わりました。最もより大きな問題が発生しましたが……。まず紹介します。彼はニグン。法国の特殊部隊の隊長で私を暗殺するために王国に参った者です」

 

 

 演技を続けようとしたが、思わず素の表情でしゃべってしまった。

 

「……なっ!? それなら何故、共に行動しているのですかな?」

 

「我々が協力できるようになったわけは後で話します。まずは、何故私が法国に暗殺されようとしているのかの理由を話します」

 

 そしてストロノーフ殿は話す。それによれば麻薬を密売し他国に輸出までしていること、人類が滅亡のさなかにいる中、政争に明け暮れていることに対して、法国はこれ以上は許せないとして帝国に、王国を占領させるためにストロノーフ殿を暗殺させようとしていること、等を聞いた。

 

 正直話の真偽が分からない。だがストロノーフ殿は真実と判断したんだろう。でなければ協力できないだろうから。

 

「ここからは私が話させてもらう。と言ってもだ。王国が腐敗しているのは確かだ。その膿を切り捨てなければならないのは間違いない。そのためには多少の犠牲が出ても仕方ないという思いが法国にはある。だが――そう言えば、お前は知っているか? 法国が信仰する神々を?」

 

「……確か六大神だったかね?」

 

「そうだ、そしてここにいるたっち・みー様は六大神様と出身が同じ……そうだな、私たちからすれば神の一柱だ」

 

「……それは、証明できるのかね?」

 

 分からない。ストロノーフ殿はそのような人物を私と引き合わせて何をしようとしているのかが。

 

「都市長殿、私はたっち・みーと申します。信じられないかもしれませんが……そうですね私の力の一端として私は蘇生魔法が使えます、それもアダマンタイト級冒険者蒼の薔薇より高位の、そうですね成人している人間であれば誰でも蘇生できます」

 

「!?」

 

 ……蒼の薔薇の蘇生にはいろいろと制約があると聞いている。それがなくて蘇生ができるとは……真実ならば。

 

「私は聖騎士(パラディン)として今苦しんでいる民を見捨てることができません。なのであなたの協力が欲しい」

 

「私に、何をせよと?」

 

「貴族派閥の資金源となっている麻薬の原料や民を苦しめている原因などを教えていただきたい。原因を特定すれば私が斬ります。いえ、それだけではありません。貴族派閥の者たちは全て斬り捨てます」

 

「……馬鹿な! そんなことをすれば内乱になる! 多くの民が犠牲になる! 戦士長! どういうつもりですか!?」

 

 戦士長は静かに目を閉じてただずんでいる。何かを悩むように。

 

「確かに犠牲者は出るでしょう。ですが私は先ほど言った通り蘇生魔法を使えます。極論を言えば貴族派閥の者を皆殺しにした後で罪なき民を蘇生するという方法も取れます」

 

「っ……しかし、王の判断もなく、私が決断することはできません!」

 

「無論、あなた達の王にも会わせてもらう予定です。ですが……私は転移することができます。そのため今からすぐに王都へ向かうつもりです。そこであなた方の王の許可を得て貴族派閥とそれに協力するものを抹殺します。なので、この辺りの麻薬を密売して利益を得ているもの、麻薬を作っている場所をまとめておいてほしいのです。もちろん王の許可は得ます」

 

「……王の書面が書かれた命令書があれば、情報を開示しよう。それでいいかな?」

 

「構いません。では二人とも、王都へ向かいましょう」

 

 そう言って三人は去っていった。大変なことになる。だがもし成功すれば国が立ち直るかもしれない……いや思考が先走っている。あの聖騎士(パラディン)の言うとおりになるとは限らない。だが情報だけは集めておいた方がいいだろう。

 

 そう思い部下を呼び出した。

 

☆ ☆ ☆

 

 都市長と面談した後、ニグンたちはエ・ランテルに残っているガゼフの部下の隊員を連れて、ガゼフの屋敷に転移した。ガゼフの部下たちは驚いていたが、ガゼフ以上の強者ということには納得していた。

 

 神であることは言わない方がいいだろう。まだ噂になったら問題なのだから。

 

「ではたっち殿、王と面談して今後の方針を話し合いたい。先触れとして行ってくる」

 

「ああ、その間にこの国がどれほど終わっているかの紹介は任せろ、ガゼフ」

 

「……任せたぞ、ニグン」

 

 そしてガゼフやその部下たちと離れた。王都の中心部を散策する。それだけでおかしいのをぷれいやー様は気づいた。さすがというべきか。

 

「……これは雑多というべきか、活気がないと表現すべきなのか」

 

「その通りです。王国では貴族たちの圧力によって民は苦しんでいるのです。より詳細な情報が分かる治安の悪い部分を見に行かれますか? 本来ならあなた様はそのような所に行く必要はありませんが……」

 

「いえ、行きましょう。私は王国の闇を見る必要があります」

 

 そして外の方向へどんどん歩いていく。そこはスラムで絶望した目をした子どもや大人。誰もが救いを求めているように見えた。それを見たぷれいやー様は怒りに震えていた。

 

「これを、こんな物を、王国は放置していると、いうのですか」

 

 怒りを解放するのを我慢するようにぷれいやー様は歩く。そして、ごみを捨てるように袋に入れた人間を捨てるところを発見した。

 

 ぷれいやー様はついに我慢に据えかねたのだろう。投げ捨てた男に詰め寄った。

 

「貴様、人間を何だと思っている!!」

 

「あっなんだ聖騎士(パラディン)様か。何って見ればわかるだろう? ごみを捨てたんだよ」

 

「ごみ、だと?」

 

 ぷれいやー様が唖然としているのが分かる。そうだこんな光景を無くしたいから我々、法国はガゼフ抹殺に動いていたのだ。

 

 

「ちっ仕方ねえなー。ほらよ」

 

 その男は地面に銅貨を投げ捨てた。口止め料だろう。恐らくは王国の王女が禁止した奴隷売買に関わるものなのだろう。聖騎士(パラディン)でも買収できるかのような表情だ。だがそれはぷれいやー様の怒りの限界に達したようだ。

 

 その男を一刀で斬り捨てた。そしてごみ袋に入れられている少女だろうか? その少女に魔法をかけだした。恐らく私が使うことができない位階の魔法なのだろう。顔色がとてもよくなった。もう大丈夫だろう。

 

「ニグン殿、このような扱いを受けているのはこの少女だけではないのですね?」

 

「残念ながら……男も女も多くの者が犠牲になっております」

 

「ふぅ。なるほど確かに王国は滅ぶべきですね。最低でもこのような行いがなくなるように一新しなくては。ではニグン殿、ガゼフ殿の屋敷に帰りますよ」

 

「承知しました。その少女はどうされますか?」

 

「この少女はガゼフ殿には悪いですが、ガゼフ殿の屋敷に連れていきましょう。そう言えば、あなたが嫌っている冒険者……蒼の薔薇でしたか? 彼らはこのような現状を知っているのですか?」

 

「知っているでしょう。ですが冒険者は人類の争いに関わってはならないことになっています。見て見ぬふりをしているはずです」

 

「……そうですか。ではガゼフ殿に依頼してもらいましょう。貴族派閥の抹殺に協力していただけるように」

 

「畏まりました」

 

 蒼の薔薇、大局が読めずに自分たち陽光聖典から亜人種を守るバカ者たち。せめてぷれいやー様に従い人間の開闢の力となれ。それさえできないのであれば、どんな手段を使ってでも、私が、法国が抹殺してやる。

 

☆ ☆ ☆

 

 王に無事に帰ってきてくれてよかったと言われたガゼフは、心から賛同することができなかった。だがその場で話すことは抑えた。ただ王に紹介したい人物がいると、自分より優れた力の持ち主であり、王国の膿を削るのに協力してくれる人物であると伝えて。できる限り早く、そして信頼できるものだけを集めてほしいと頼んで。

 

 たっち殿と合流しなければと家へと急ぐ。そして帰り着くと見知らぬ少女がたっち殿に抱きかかえられていた。

 

「ガゼフ殿、申し訳ない。王国の闇を見て、後先を考えず下手人を殺してしまいました。戦士長の屋敷でかくまっていただいても?」

 

「承知した」

 

「良かったなガゼフ、ぷれいやー様は王国の闇を一新してくれるそうだぞ? それでだ、麻薬の件だが――」

 

「それは私も考えている。蒼の薔薇に作っているものと、利益を得ているものの情報を調べてもらうつもりだ」

 

「調べるだけなのか? それで王国が良くなるとでも?」

 

 歯を噛みしめる。分かっている。それだけでは駄目だ。だからこそ、たっち殿がいる今しか頼めない。自分一人が動いただけでは内乱になる。だがたっち殿がいれば犠牲は最小限にできる。

 

「蒼の薔薇の情報を得たら……私自身の手で王国に、王に仇為すものを斬る!」

 

「ガゼフ殿、あなただけに汚れ仕事はさせません。私もご一緒しましょう。ですが、まずはどのタイミングで貴族派閥の上層部を斬るかも、考えなければなりません。そのためにも情報が必要です」

 

 その通りだ。今の我々には情報が少ない。場合によっては王都にいるすべての冒険者に情報を聞く必要があるかもしれない。

 

 そう考えているとたっち殿が決断した。

 

「まずはアダマンタイト級冒険者がいる場所に向かいましょう。そこで蒼の薔薇か朱の雫でしたか、どちらかのアダマンタイト級冒険者に依頼を出しましょう。ニグン殿とは因縁があるようですが構いませんね?」

 

「もちろんです。ぷれいやー様!」

 

「では、この少女をベッドに寝かせたら早速向かいましょう」

 

 

☆ ☆ ☆

 

 陽光聖典の一人である自分は必死に走っていた。上層部に伝えなければ、何としても。私の命がなくなってもいい。このことを伝えなければいけない。

 

 そして神殿にたどり着いた。そして叫んだ。

 

「神官長様!!」

 

「お前は陽光聖典のものではないか? ニグンはどうした? ガゼフ・ストロノーフの抹殺は成功したのか」

 

「それどころではありません!! 人間に好意的なぷれいやー様が降臨されました!!」

 

「――な、なんだと! それは本当か!?」

 

「はい、ぷれいやー様は王国の膿を全て自分の手で斬り捨てると言われ、現在王国に向かっております! また竜王国の現状を伝えたところ従属神様を下賜してくださり、陽光聖典の他の者たちは竜王国の防衛に回っております!」

 

「まてまてまて、なぜそうなったかもう少し詳しく話してくれ」

 

「承知しました!!」




なお時系列は多少前後します(`・ω・´)ゞ
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