『完結』黒歴史の輝き   作:万歳!

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たっち・みー様は嘘をついている。貴方は彼の嘘をいくつ見つけることができるか。


第4話 強者

 ガゼフたちは王都の蒼の薔薇が滞在している宿屋にたどりついた。

 

 そこには蒼の薔薇の戦士であるガガーラン殿と仮面をしているマジックキャスター、イビルアイ殿。そしてラナー王女の騎士であるクライムがいた。自分に気づいたクライムが真っ先に話しかけてくる。

 

「ストロノーフ様! 任務を終えられたのですか?」

 

「ああ」

 

 そして指名依頼の件を出す前にガガーラン殿がこちら……正確にはニグンを威圧していた。亜人種との問題で争ったとは聞いていたが……。私は亜人を抹殺するのが正しいかはわからない。だが竜王国で行われているビーストマンが人間を餌にしている行為を見てしまった。

 

 何が正しいのか自分にはわからない。

 

「てめぇ。よく顔を出せたな?」

 

「私としても、お前たちのような偽善者に会いたくはなかったよ」

 

 一触即発の空気である。だがそこは自分が止めるべきだろう。私は亜人種を守ることも抹殺することもどちらが正解かはわからない。ただ王国のために剣を振るうだけだ。

 

 だがその言葉を出す前に、イビルアイ殿が怯えだした。

 

「ひっ……ガガーラン黙れ、そこにいる聖騎士(パラディン)は私よりも数倍強い!」

 

 その言葉に部屋中が沈黙した。周囲にいる冒険者も、クライムもたっち殿を見ている。たっち殿を圧倒的強者と認識してくれるならやりやすい。ここで依頼を出すのがちょうどいいだろう。

 

 ニグンの件は後で話し合ってもらおう。

 

「ガガーラン殿。あなたにも言い分はあるだろうが、しばらく怒りを抑えてくれないか? それとラキュース嬢はどこにいる? 指名依頼を出したいのだが」

 

「……あっ? おっさんが私たちに指名依頼? どんな依頼だ?」

 

「すまないが、ここでは人が多すぎる。場所を変えてもらえるか?」

 

「……その必要はない」

 

 そう言うとマジックキャスターであるイビルアイ殿が怯えながら何らかの魔法を使ったのだろう。周囲の声が聞こえなくなった。

 

「なるほど、さすがアダマンタイト級冒険者というところか……。クライム、お前はどうする? 聞けば君にも協力してもらう必要があるが」

 

「……その依頼はラナー様のためになるものですか?」

 

「ああ。それは断言しよう。心優しきラナー様なら、賛同とまではいかなくと消極的賛成には回ってくれると思う。最善ではなく次善だがな」

 

「そうですか、では聞かせていただきます。あとラキュース様は現在、王宮でラナー様と八本指について話し合われています」

 

「何? そうか、しまったな……いやまだ知らない方がいいか」

 

 そう呟くと、クライムは不思議そうにしながら、近くのテーブルから自分たちが座る用の椅子を3つ持ってくる。本人は立って聞くつもりなのだろう。

 

「では早速本題に入らせていただく。麻薬を作っているものとそれで利益を得ているもの、末端を含めて調査してほしい」

 

「……何? そんなことを知ってどうするつもりだ。おっさんよ?」

 

「私たちの手で斬り捨てる」

 

 その言葉にクライムが息を呑んだ。いやクライムだけではない。ガガーラン殿もイビルアイ殿も驚いているようだ。今まで黙っていた、イビルアイ殿は恐怖の感情から驚いているような雰囲気に変わった。そしてイビルアイ殿が恐怖をこらえるようにしながら話し出す。

 

「……本気か? それはお前が仕える国王も知っていることなのか?」

 

「いや、まだ知らない。だが、次の御前会議の場で貴族派閥の者たちは全て斬り捨てるつもりだ」

 

 その言葉にクライムもガガーラン殿もイビルアイ殿も沈黙した。だが即座にガガーランが言葉を発した。

 

「待て待て、そんなことをすれば内乱になるぞ! それにおっさんの腕は知っているが逃げきれる奴もいるだろう。それに末端は生き延びるはずだ。そうなれば王国は内乱で地獄だぞ!」

 

 その言葉にニグンが怒りを出しながら我々の罪を糾弾した。ああ。確かに法国の立場を知ってしまった今なら、私たちが今まで何をしていたのか、彼の怒りが理解できる。

 

「だったら、お前たちは何をしていた!! 無能な貴族共は殺されて当然だ。ここにいるガゼフもな! ガゼフさえ死ねば王国は帝国に併合される! そうなれば八本指の活動も徐々に縮小していく!! 帝国になら我々法国も手を貸すさ! だがな、お前たちは何をした! 人間を守るために働いている我々を、亜人どもを殺すのを何故邪魔した!!」

 

「亜人にだっていいやつはいる!! それを人間を守るために虐殺するなんて理由になってないだろうがよ!」

 

「いいや、理由になる! お前たちは竜王国がどんな目にあっているか知らないだろう!! 竜王国ではビーストマンに人間が餌として食われているんだぞ!! 亜人どもが台頭すれば王国でも同じ景色が見えるかもな!!」

 

 そうやってガガーラン殿とニグンが激論をぶつけ合っているときだった。ラキュース嬢が戻ってきたようだ。

 

「ちょっと何してる……何であなたがいるの? いえ何でストロノーフ様と一緒にいるの?」

 

「ふん、私とてガゼフと同席などしたくない。貴様たちと顔を合わせるのもな!! だが法国は王国に手を貸して貴族等の膿をすべて斬り捨てる方針になった。元々はガゼフを殺して帝国に併合させるつもりだったがな!」

 

「ラキュース嬢、先ほどガガーラン殿にも言ったが、ニグンと因縁があるようだが、まずは私の話を聞いてほしい」

 

 私の言葉に大きく息を吸い込んだ。ガガーラン殿達のそばに座った。どうやら話は聞いてくれるようだ。

 

「では話させてもらう。先ほど途中まで話したが、麻薬を密売している組織と裏側にいる貴族と末端を教えてほしい。我々の手で斬る」

 

「……まって、八本指と対立するの? 陛下は知っているの?」

 

「陛下にはもちろんご報告申し上げる。まずは依頼を先に出して陛下から許可を得ようと考えてな」

 

 その言葉に蒼の薔薇の3人は全員で一度目を合わせた。不同意……だろうか。

 

「ガゼフさん。実は私たちはラナーに協力を求められてすでに麻薬売買組織と敵対しているの。だけど八本指は麻薬以外にも奴隷売買とかいろんな犯罪行為をしているの。やるならまとめて一網打尽にしないと。あいつらは残り続けるわ。ガゼフさんや法国の男たちが加わっても全て片付けるのは難しいわ……特に六腕と言われる者たちは私たちアダマンタイト級冒険者に匹敵すると言われてるわ。それを全て片付けるのはいくらガゼフさんでも厳しいわ」

 

「そうだな、私では厳しい。だがたっち殿ならたやすくアダマンタイト級冒険者を倒せる」

 

「たっち殿? そこの聖騎士(パラディン)さんのことかしら?」

 

「女、この方への不敬は法国が許さん。ガゼフは直接許可を得ているようだから、あえて口出しはしないが、そのお方は六大神様に匹敵するお方だ!! 場合によっては法国の全てが敵に回ると思え!!」

 

「……待て、今、六大神と同格と言ったか? まさかぷれいやーなのか?」

 

 そのイビルアイ殿の言葉に空気が止まった。何故、イビルアイ殿はたっち殿の事を知っていると、疑問が芽生えた。しかしそれにイビルアイ殿はたっち殿の強さに納得しているようだった。だが、それはたっち殿の言葉で書き消えた。

 

「あなたも知っているようですね。私はプレイヤーです。あなた達に分かりやすいように言えば難度は280です」

 

 たっち殿が言葉を発し終わった後、空間にとてつもない殺気が巻き上がる……クライムは腰を抜かしていた。いやクライムだけではない蒼の薔薇もあまりの殺気に、怯えの表情が見える。特にイビルアイ殿は最初からたっち殿の力が分かっていた。恐怖はより強いようだ。自分も、たっち殿が私利私欲で剣を振らないと知っているから耐えられているに過ぎない。ただ一人、ニグンだけは嬉しそうにしていた。たっち殿の力の一端を見れたからかもしれない。だが確かにこれほどの強さの人の下で、人類を守るために戦い続けていたなら狂信者になっても仕方ない。

 

「――さて、私の力の一端を認識してくれたと思いますが、私はガゼフ殿の数倍は強い自信があります。これでも六腕や貴族たちと戦うのに不足ですか?」

 

 たっち殿が殺気を放つのをやめた。耐えられないようにクライムとガガーラン殿が膝をついて息を吐いていた。イビルアイ殿は何かあれば即座に撤退できるようにしているように見える。魔法か何かだろうか?

 

 そして怯えながらパーティーのリーダーとして責任感からだろうか、ラキュース嬢が話し出す。

 

「……不足ではないわ。ただいくら強くても、全ての貴族と八本指を殺しつくすことは不可能よ。確実に内乱になるわ」

 

「それは認識の違いですね。御前会議で全ての貴族が集まっているのであれば、私は逃がさず千人でも一万人でも、殺しつくせます」

 

 ごくりと誰かが息を音が聞こえた。たっち殿が言っているのは真実だろう。だからこそ、最低限の犠牲で済ませられるというのだろう。ガガーラン殿が怯えの表情を隠しながらたっち殿に質問を投げかけた。

 

「……確かにあんたが強いのは理解した。でもよ、どうやって貴族共を殺しつくすつもりだ?」

 

「もちろん時間を止めてです」

 

「……はっ?」

 

 今たっち殿は何と言った。思わずたっち殿の兜を見る。ニグンだけは納得の表情をしていた。何か知っているのかもしれない。知らないことがもどかしい。

 

「あなた達は弱いから知らないかもしれないですが、難度210になるころには時間停止ができるようになっていなければ、何の対策もできずに殺されますよ?」

 

「……それはぷれいやーの常識なのか?」

 

「ええ、その通りです。イビルアイ殿。難度210で時間対策を怠っていれば棒立ちのまま殺されるだけです」

 

 時間停止。ニグンがぷれいやーを神というのも理解できる。そして時間停止の中動けるのであれば確かに貴族派閥を皆殺しにするのは可能だ。逃がさずに。いや王派閥にも癒着しているものもいる。だが時間が停止できるのであれば殺しつくすことは可能だろう。

 

「……御前会議の場に欠席する貴族もいるわ。その貴族たちはどうするつもり?」

 

「もちろん殺しに行きます」

 

「それだと、やっぱり内乱になって罪なき民が死ぬ可能性があるわ。その点はどうするの?」

 

「逆に聞きます。先ほどの殺気の中動ける兵士はいますか? もちろんショック死する者たちもいるかもしれません。その者たちは罪がなければ後で蘇生します」

 

「蘇生? あなた私と同じ蘇生魔法を使えるの? でも蘇生魔法には多額の金銭と一定程度の力がないと灰になってしまうはず」

 

「それはお前が使える蘇生魔法が下位だからだ。ぷれいやー様の使う蘇生魔法はより高位で金銭もかからず、難度3あれば蘇生できる。お前とは次元が違う」

 

 そのニグンの言葉にラキュースたちは黙ってしまった。他の者たちもだ。貴族派閥の討伐が成功するか、裏組織に生きる者たちを殲滅できるかの、それらが成功する確率がどのくらいか計算しているのだろう。

 

 そして結論が出たのだろう。蒼の薔薇は一度。全員が視線で会話した後、たっち殿に話しかけた。

 

「分かったわ。あなたに協力します。ただ一つだけ聞かせてください。何故、法国に協力するのか。法国は罪もない亜人種たちを殲滅しているわ。それはあなたにとって悪ではないの?」

 

「女!? まだそんなことを言うか! 貴様らは竜王国で行われていることを知らないからそんなことを言えるのだ!!」

 

「……そうですね。いい機会です。ニグン殿。あなたは蒼の薔薇と因縁がある様子です。仮初とはいえ味方として行動するのです。剣を交えず、言葉だけで議論で勝負してお互いの思うところを、話してみるのはどうでしょう?」

 

 剣ではなく言葉で刃を交わす。王国の貴族たちの会議でもよく見られる光景だ。だが今回は絶対者であるたっち殿がいなければ殺し合いになっているだろう。だがニグンはたっち殿に従うつもりのようだ。

 

「ぷれいやー様が望まれるなら」

 

「そうね、私たちも法国にいい感情はないわ。それを議論で変えられるかはわからないけど、ちょうどいい機会だから話し合ってみるわ」

 

☆ ☆ ☆

 

 ニグンは蒼の薔薇に対する怒りでどうにかなりそうだった。だがぷれいやー様の前で議論で勝負して勝利しなければならない。確かに私たちは人間も殺している。だがそれは全て人類のためなのだ。それを理解してもらわなければ、そのためには目の前にいる蒼の薔薇を論破しなければならない。

 

「まず、大前提としてだ人間が弱い種族というのは知っているな? 一般人であれば難度3程度であることも」

 

「ええ。それは知ってるわ。ね、イビルアイ」

 

 チームのリーダーではなく知恵役である、マジックキャスターに意見を言わせるつもりだろうか? だとしても負けるつもりはない。そう思っていたが、返ってきた返事は意外なものだった。恐怖に怯えているのが少しだけ、可哀そうだったが、その言葉で怒りを覚えた。

 

「……一つだけ言っておくが私は法国を評価している。お前たちがいなければ、人間が亜人種たちの食料になるということも理解している」

 

「……だったら何故、邪魔をした!!」

 

 その言葉に蒼の薔薇の戦士が反応した。そこには怒りの表情が見えた……大局が見えない愚か者め!

 

「確かに、お前たちが人類圏を守っているということはイビルアイから聞いてる。だがよ、人間に何もしていない亜人種たちを殺すのはいいのか!? あいつらは平和に生きているだけだろうが!!」

 

「それが甘いと言っている! いつ人類に牙をむくかわからない、そんな危険な存在と共存できるか!!」

 

「ふざけんな! やってもないことで殺すなんておかしいだろうが!!」

 

 議論が白熱してきた。このまま続けばお互いに掴み合いになる程度には、私たちが分かりあうことができないということが理解できた。ぷれいやー様の望みでもこれ以上話し合っても無駄だろう。そう思っていた。女神官が矛先をぷれいやー様に向けるまで。

 

「たっちさん。あなたは聖騎士(パラディン)ですよね? 罪もない亜人種たちを殺してもいいと考えているんですか?」

 

「貴様、よりにもよって、ぷれいやー様を侮辱するか!!」

 

「……ニグン殿、抑えてください」

 

 ぷれいやー様が私を制しながら、女神官に顔を向ける。そして溜息を吐いて話し出した。

 

「私は、誰かが困っていたら助けるのは当たり前だと考えています。そしてその中には亜人種や異形種も含んで考えていただければと」

 

 ……衝撃だった。では何故、私たちに協力してくれるかが分からない。だがそうなるとエルフの扱いは変える必要があるかもしれない。一応エルフは同じ人間種だから……だがエルフの王がいる以上難しいだろう。それともぷれいやー様にエルフの王を殺してもらうように依頼すべきだろうか?

 

「ですがそれは私が絶対的強者だからこそ、言える言葉です。ただの人間に私の考えは受け入れられないでしょう。そしてこの世界で一番困っているのは、今まで見てきた中では人間です。ゆえに私は次善として人間たちに手を貸します」

 

 ……これは本格的にエルフの扱いを変えなければならない。万が一エルフが一番困っていると判断されたら、我々が処断されるかもしれない。いや我々が処断されるのはいい。人間が見捨てられるのだけは許容できない!

 

「……あなたは聖騎士(パラディン)ですよね! 誓いを破ってるじゃないですか! 理想を求めなくていいんですか!! 聖騎士(パラディン)はどんなに困難でも理想を追い求めるものと私は知っています!! 本当にそれでいいんですか!!」

 

 その言葉にぷれいやー様は大きく溜息をはいた。痛いところを突かれたかのように少しだけ顔をしかめているような感じだ。

 

「例えばです。私ではなく、私が信仰する神々がこの世界に訪れていた場合……あるいは人間種も亜人種も異形種も平等に暮らせる国家を作ったかもしれません」

 

 ぷれいやー様の信仰する神々……ぷれいやー様よりも莫大な力を持っているのだろう。確かに力で押さえつければそう言った平等な国家も作れるかもしれない。

 

 いや、ぷれいやー様でもそんな国家を作れるだろう。もし、ぷれいやー様がそのような国家を作ると言ったら自分はどうする? 人間の尊厳ある生存を約束してくれるなら協力できる。そしてこの方ならそれができる。

 

 法国の神官長たちを説得してそういう国家を作るのも一つの手か? ぷれいやー様がいれば法国は纏まれる。何より、死の神スルシャーナ様という前例もあるのだ。なら上手くいくかもしれない。

 

「ラキュース殿、あなたは私を誓いを守る聖騎士(パラディン)と言いましたね? ええ、その通りです誓いは守らなければなりません。聖騎士(パラディン)ならね」

 

 何故だろうか。ぷれいやー様から暗い感情があふれ出している気がする。全員が何か寂しさ、悲しさを感じているようだ。

 

「私はね聖騎士(パラディン)失格なんですよ。何故なら一番守りたいと思った人が死ぬとき、何も、できなかった。ただ黙って、立って見ていることしかできなかった……そんな私に、もう一度、理想に殉じろと? できるわけがない!! 何故だ、何故あの時、私は動けなかった!! 何故守れなかった!! 何があっても守ると誓っていたのに!!」

 

 それは聖騎士(パラディン)らしくない嘆きの、心から叫びだった。今までぷれいやー様を否定的に見ていた蒼の薔薇も、痛々しそうに見ている。

 

「……ふぅ。大きな声を出して申し訳ありません。つまり私の信念は偽物で聖騎士(パラディン)失格なのです。そう、私の心も体も、偽物に過ぎないのです」

 

 我慢ができなかった。ぷれいやー様が悲しんでいる。なんとしなければならないと思い私は叫んだ。ぷれいやー様は弱くなく、聖騎士(パラディン)失格なんかではないと。

 

「そんなことありません! ぷれいやー様は人間の救世主です! たとえ誰が否定しようとも、ぷれいやー様自身が否定されようとも、あなた様は聖騎士(パラディン)です!! 法国の誰が聞いてもあなた様を聖騎士(パラディン)と称えるでしょう!!」

 

「……ありがとう、ニグン殿。それでラキュース殿。私の返答はこうです。私には亜人種や異形種を平定して人間と共存させるだけの、信念が欠けているのです。すでに誓いに背いた堕ちた騎士なのです。だから今の私は蛇足で動いているにすぎません。最も、困っている人を助ける、最後のよりどころを捨てる気はありませんがね……これで亜人種たちを救わない理由になりますか?」

 

「……たっちさんは死者の蘇生ができるんですよね? あなたが守りたいと誓った人の蘇生はしなかったんですか?」

 

「もちろん私が試せる手段はすべて試しました。ですが、蘇生はかなわなかった……だから私は遺言に従って、冒険をしているのです。もっとも今は冒険ではなく人類を救う役目ですがね」

 

 その言葉に蒼の薔薇たちは納得がいかない者、悲しい表情でぷれいやー様を見つめる者、何を考えているかわからない者に分かれていた。

 

 ガゼフは苦い顔をしている。あるいはぷれいやー様の境遇に自身を重ねているのかもしれない。

 

「……たっちさんがそれでいいなら、私たち、蒼の薔薇は問題ないわ。あと近いうちにガゼフさんと一緒にラナーに会いに来て。ラナーなら一番犠牲が少なくなる方法を思いついてくれると思うから」

 

「了承しました。ガゼフ殿。あなたの王とはいつ会うか決まっていますか?」

 

「5日後だ」

 

「では近いうちに、何もなければラナー王女に会いに行きましょう。これで問題はありませんね?」

 

「ええ」

 

☆ ☆ ☆

 

 ガゼフの家の帰り道、ガゼフは心配そうにたっち殿を見ていた。あの時の叫び、守ると誓っていた人を守れなかったという心からの叫び。もし自分が目の前で何もできずに王を殺されたらどうなるだろうか……きっと絶望するだろう。仇は討つかもしれないが、その後何もする気がなくなるだろう。

 

 たっち殿も同じ感覚なのかもしれない。だが彼には困っている人がいたら助けるという信念がまだ残っているのだろう。だから我々を助けてくれる。

 

 甘えてはいけないとは分かっている。本当は王国の膿を斬るのは私がしなければならないことだとも。だが私には力がない……。たっち殿に頼んで稽古をつけてもらうか。付け焼き刃かもしれないが貴族派閥の者たちを抹殺するのには少しでも力が欲しい。

 

 そしてたっち殿だけに汚れ仕事はさせない。何より王国の問題なのだ。私が手を汚さなければ意味がない!

 

 そんなことを思いながらたっち殿とニグン……ニグンとは奇妙な縁だと思う。自分を殺そうとしているものと仲良くとは言えないが、同じ目標のために行動していることが。

 

 そして家に帰りつくと二人の男がガゼフたちが帰ってくるのを待っていたようだ。

 

「これはこれは戦士長殿。私は巡回使のスタッファン・へーウィッシュである」

 

 その男たちは自分たちをごみのように見ていた。何より勝利を確信しているかの表情であった。いやな目だ。

 

「戦士長殿、あなたなら当然知っていると思うが、ラナー王女が先頭に立ち可決させた奴隷売買を禁止する法律がある。今回あなたがそれに違反していると通報があってね、まさかまさかありえないとは思うが確認のために来させてもらったよ」

 

 その言葉にたっち殿が救った少女の事かと思う。たっち殿も顔をしかめていることが分かる。どうする? まだ王から許可を得ていない。何よりここで斬り捨てれば貴族派閥の者に逃げられるかもしれない……どうすればいい。

 

 自分が悩んでいるとたっち殿が前に出た。

 

「うん? 私は戦士長殿に話しているのだが?」

 

「ごみのような扱いを受けて投げ捨てられた少女を救ったのは私です。捨てたものを拾っただけです。何か問題でも?」

 

「ラナー王女に逆らおうというのか!? それに従業員が殺されたとも聞いたぞ、重罪だぞ!?」

 

 その言葉にたっち殿が殺気を解放した。ただそれだけで巡回使は白目をむいた。後ろにいた護衛と思われる男は……汗を流していた。ありえないものを見たというような表情をしている。

 

「さて、まだ話を続けるのであれば、剣で話し合わなければならないかもしれませんが、どうします? まだ私に関わりますか?」

 

「――いや、あんたとは関わらない。失礼させてもらう」

 

 護衛の男は気絶した巡回使を連れてそそくさと逃げていった。だがこれで終わるとは思えない。何とかしなければ……。

 




六腕と因縁ができました! ペシュリアンとたっち・みー様との空間を断ちあうバトルが楽しみですね!
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