『完結』黒歴史の輝き   作:万歳!

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ニグンはたっち・みー(偽)に目を焼かれている。


第5話 再会

 ニグンはこの後どうすべきか悩んでいた。ぷれいやー様についていく。それは間違いない。だが、エルフの事、今後、亜人種や異形種などとどう関わるか、報告に戻りたかった。とはいえまずは、王国の膿を消すのに一緒に手を汚さなければ。ぷれいやー様だけに手を汚させるわけにはいかない。

 

 叶うのであれば王国の第一王子は私の手で討たなければならない。私が王国から追放されるのはいい。捕まって処刑されるのも許容できる。だがぷれいやー様を拒絶されるようなことはさせてはならない。そう信じている。

 

 いや、その前にこのガゼフの家で眠っている少女をどうするかだ。八本指の餌にする方法もある。だが、それを聖騎士(パラディン)であるぷれいやー様が承知なされるか……。何よりこれ以上誓いを破らせていいのか。できれば人間の英雄として国々に君臨してほしいとニグンは思っている。そのためには汚れ仕事は我々でしなければ……。陽光聖典の者を他にも連れてきていればよかった…しかし竜王国の防衛もある。難しいところだ。報告に行かせた部下とどこかで合流できればいいが…。

 

 ぷれいやー様に過度に負担をかけない。誓いを破らせない。そこはガゼフも同じ思いだろう。この国の王に仕えた以外、過失がある人間ではないのだから。

 

自分が考えていると、ぷれいやー様に助けられた少女が目覚めたようだ。

 

「お目覚めですか? 大丈夫です。もうあなたを傷つける人はいませんよ。救うのが遅くなって申し訳ない。食事はガゼフ殿の家の人からもらったようですね。安心しました」

 

「あ……ありが…ござ……ぃます」

 

「困っている人がいたら助けるのは当たり前です。ですがこの王都にいてはあなたは危険です……保護してくれる家族はいらっしゃいますか?」

 

「い……ない、です」

 

「そうですか、ではエ・ランテルかカルネ村か……ガゼフ殿、ニグン殿どちらに送れば安全だと思いますか?」

 

 そう言われて二人で考え込む。どちらにもメリットとデメリットがある。エ・ランテルであれば薬師などまだ体調が万全とは言えない彼女の面倒を見てくれる人物を探せるだろう。特に、エ・ランテルならガゼフも力を発揮しやすいはずだ。何しろエ・ランテルは王派閥なのだから。

 

 とはいえ大きな都市であるからこそ、八本指が勢力を伸ばしている可能性は高い。

 

 対してカルネ村は、薬師がいないだろう。それに開拓村などは閉鎖的だ。もちろんぷれいやー様に救われた恩義がある以上カルネ村でも問題はないだろうが……。

 

「ぷれいやー様、私はエ・ランテルに彼女を送るべきかと存じます。これから八本指も掃除するのであれば彼女のような被害者は多く出てくるはずです。その場合、王派閥で信頼がおけるもののところに彼女を置いておくべきです」

 

「なるほど。ガゼフ殿はどうお考えですか?」

 

「私もまずはエ・ランテルに向かうべきだと思う。そこで問題が生じた時にカルネ村に送るべきだ」

 

 その言葉にぷれいやー様がうなずかれた。ぷれいやー様も同じく同意されたと思っていいだろう。そしてアイテムが取り出された。遠くを見るアイテムだ。

 

「まずは、どこに飛ぶべきか遠隔視の鏡で探ってもらってもいいですかニグン殿?」

 

「もちろんです!」

 

 この遠隔視の鏡は自分も使い慣れたといえるぐらいには使った。下賜してもらいたいぐらいには。そうやって画面を操作して、エ・ランテルを見た。

 

 街が燃えていた。それを横からぷれいやー様とガゼフが見る。

 

「これは何かあったようですね……ガゼフ殿、私はエ・ランテルに今から向かおうと思います」

 

「私は王に報告をしてくる! できる限り早く戦士たちを動かす。時間を稼いでほしい!」

 

「となると、この屋敷は手薄になりますね……少女よ。あなたの名前は?」

 

「つ、ツアレ」

 

「そうですか、ツアレですね。いい名前です。ここにいては危険かもしれません。あなたも私に付いてきてください。ニグン殿、護衛は任せます」

 

「承知しました」

 

 そして転移の門が開かれ、私たちは飛び込んでいった。少女はためらっていたが最終的にはぷれいやー様の危険かもしれないとの言葉が決断を促したのだろう。

 

☆ ☆ ☆

 

 ニグンは見た。そこは地獄だった。アンデッドがあふれ出していた……。こんな光景を人間の世界で見ないために行動を続けてきたのに……自分の力不足が悲しかった。

 

 ぷれいやー様をみる。即座に動きアンデッドを消し飛ばしていく。それは通常では考えられない速度であった。この程度なら敵ではないのだろう。とはいえ見ているだけではいけない。天使を召喚して援護くらいはしなければ。

 

「ツアレ、見ればわかるように聖騎士(パラディン)様の近くにいるのが一番安全です。私と一緒に後ろについて進みますよ?」

 

「は、はぃ」

 

 ぷれいやー様はアンデッドを討伐してどんどん進んでいく。すると恐らく門が破られたのだろう。その門から敵が湧いて出てきていた。

 

「アンデッドはどこから出てきていますか!!」

 

 生き延びて必死に戦っている兵士にぷれいやー様は質問を投げかけた。まさか、一人で行かれるつもりだろうか。いや一人にはさせない。ツアレには厳しい思いをさせるが私も共に行く。

 

「墓地から出てきて倒しても倒しても、数が減らないんだよ!」

 

 そしてその言葉を聞いたぷれいやー様が武器を構えた。その一瞬後、周辺にいたアンデッドは壊滅していた。

 

「あなた達は門を守っていてください! 私が原因を潰しに行きます!」

 

 兵士たちが喜んでいるのが分かる。当然だ周辺にいたアンデッドが消し飛んだのだから。口々に勝てる。聖騎士(パラディン)様万歳などの声が響いている。

 

 ぷれいやー様。あなたが何を守れなかったかは知りません。ですが皆があなたを聖騎士(パラディン)と認めているのです。どうかその声にお答えください。

 

 

☆ ☆ ☆

 

「何故だ、何故アンデッドになれない!! まだアンデッドが足りないのか!?」

 

 クレマンティーヌはそろそろエ・ランテルからお暇しようと考えていた。カジットがアンデッドに進化? するのも見たかったが風花聖典の監視の目が緩んでいる今だからこそ逃げられる。

 

 そう思っていた。だが自分たちの目の前には聖騎士(パラディン)が立っていた。

 

「あなた達が、この騒動の首謀者ですか? 今すぐ降伏しなさい。降伏すればこの国の法に則り処罰するだけに留めます。ですが抵抗するのであればこの場で死んでもらいます」

 

 クレマンティーヌは震えていた。あの男は何かが違う。戦士だからわかる。あれは強者だ。自分でも届かないような……首を振る。そんな奴いるわけがない。この国で自分とまともに叩ける人物は片手で足りると知っている。自分より強いなんてありえない!

 

「ぷれいやー様! 御無事ですか!!」

 

 その後ろから、一人の少女と自分が知っている人物である、陽光聖典の隊長、ニグン・グリッド・ルーインが現れた。

 

 そして聞きたくもない言葉を聞いてしまった。

 

(嘘噓噓!? 今ニグンはなんて言った? ぷれいやー様だって!? まずい全力で逃げなきゃ)

 

 そう思い気配を消して、逃げ出そうとした。だが、逃げ出そうとした瞬間、ぷれいやーから殺気が漏れた。それは殺気と言っているが、弱いものであればそれだけで死ぬようなものだ。

 

 いや実際にカジットの弟子は死んでいた。私は動けない。怖くて怖くて動けない。

 

「何故邪魔をする!! 儀式は大詰めだったというのに、もう少しでアンデッドになれるというのに!!」

 

「それはあなた方が犠牲者を出しているからです。ふむ背後関係も洗いたいですし、事件の真相を知っていそうなあなたには、気絶してもらいましょう」

 

 そしてぷれいやーは踏み込んで剣ではなく、拳でカジットを殴り気絶させた。

 

「あなたもこの事件の共犯のようですね、気絶してもらいましょう」

 

「……お前はクレマンティーヌ!! この裏切り者が!! ぷれいやー様、この者は漆黒聖典に属しながら人類を裏切りズーラーノーンというアンデッドの秘密結社に所属しているものです」

 

 まずいまずいまずいまずい。このままでは弁明すらさせてもらえず殺される。逃走は不可能、ニグンを人質にとるのも難しい。その後ろにいる少女なら人質にとれるかもしれないが、そこに行きつくまでにぷれいやーに殺される。なら私がとる手段は一つ。

 

「降伏します!! だがらお願いですぷれいやー様! 弁明させてください!!」

 

「ふむ、いいでしょう。ではまずこの先に何があるか教えてください、それと私より後ろに下がらないように。私の後ろに行こうとした場合あなたを斬ります」

 

「ありがとうございます! 勿論です! 決して後ろには行きません!」

 

 一先ず生き延びることができた。だがどう弁明すればいいか……私が法国で受けたことをすべて正直に話そう。聖騎士(パラディン)ならそれで殺すことは免除してくれるかもしれない。

 

 そう考えながら奥へと向かう。奥の霊廟に向かう。自分が攫ってきた一人の人間がいた。

 

「目を切り裂いたのか……やったのはあなたですか?」

 

「は、はい私がやりました」

 

「ふむ、言い訳をしないのは殊勝な態度です」

 

 そう言いながらンフィーレアにぷれいやーが近づいていく。頼むニグンに気づかないでくれと必死に祈る。だがそのクレマンティーヌの願いはかなわなかった。ニグンたちが自分と距離を見ながら叫ぶ。

 

「それは、叡者の額冠!! クレマンティーヌ貴様!!よくも法国の秘宝を盗んだな!」

 

「反省してます!!……だからぷれいやー様、お慈悲を!!」

 

 今までの会話から今回現れたぷれいやーは、法国に接触して、人類のために尽くすぷれいやーなのだろう。何とかしなければ、何とかしなければ。自分は殺されてしまう。いや、それはいい。だが復讐できないことだけは許せない。何とか挽回しなければ……。

 

「この少年を気絶? させているアイテムは叡者の額冠と言いましたね。効果はどのようなものなのですか?」

 

「はい、叡者の額冠はは着用者の自我を封じて、人間そのものを超高位魔法を吐き出すアイテムに変える神器です……一度装着してしまうと安全に外す手段はありません。それと本来であれば女性しか装備できません」

 

「私にはこの少年は男に見えるのですが?」

 

「えっとそれはその、ンフィーレア君ってありとあらゆるマジックアイテムが使えるタレントを持っているんですよ。ですのでそのタレントでンフィーレア君をアイテムを吐き出すだけの道具にしたというか何というか」

 

「ふぅ……残念ながら私は彼を安全に解放する手段はありませんね……クレマンティーヌ殿。もし本当に、私に許しをこうなら武器を捨てて、ロープをもって私の前に来なさい。逃げられないようにロープで縛って街に戻ります。もちろんカジットもつれて……構いませんね? ニグン殿?」

 

「ぷれいやー様のお考えの通りに!」

 

☆ ☆ ☆

 

 ニグンはエ・ランテルに戻る道を歩きながら怒っていた。クレマンティーヌに対して。この裏切り者次第では、今まで構築した、ぷれいやー様との人間関係がだめになる危機感を抱いているからだ。とはいえ、裏切った理由は知らないが特に問題はないだろうとも思っていたが。

 

 街に首謀者を連れて帰ってくると誰もが喜んでいた。これで今回の事件は終わったと。しかしぷれいやー様の一言で事態は急変した。

 

「私はたっち・みーと申します! 皆さん疲れていると思いますが、どうか後ひと踏ん張りしていただきたい! 亡くなった方を私の下に連れてきてください! 私は蘇生魔法を使えます! 金銭も取りません。一人でも多くの人を助けたいのです! だからどうか私に協力していただきたい!」

 

 その言葉に周辺はざわめき立った。蘇生魔法の行使には冒険者組合などは多額の金銭を取るようにと規則で縛っている。当然と言えば当然だ。無秩序に使われた場合、どう悪用されるかわからないからだ。だがそれでもぷれいやー様は聖騎士(パラディン)として為すべきことをなそうとしている。なら配下として協力するのは当然だ。

 

 そして呆然として動けない中、ガゼフがあの転移門を使って部下たちとともに急行してきたのだろう。またぷれいやー様の声も聞いていたようだ。

 

「私は王国戦士長ガゼフ・ストロノーフである! ここにいるたっち・みー殿は私以上の戦士であり高位の蘇生魔法を行使することができることを私が保証する!! 今すぐにこの動乱で亡くなった者たちをたっち殿のそばに集めろ! 戦士団は行動開始!!」

 

「はっ!!」

 

 その言葉に冒険者や衛兵、ガゼフ直属の部下たちも動き出した。これなら救える命は多くあるだろう。

 

「ガゼフ殿、よく来てくれましたね。この女の監視を頼みたい。力はガゼフ殿より僅かに上と思われる。決して油断しないように」

 

「承知した」

 

 そうしてまずは一人の斬り捨てられた少年が運び込まれてきた。そしてぷれいやー様は何かを呟いた。恐らく呪文だろう。そのすぐ後には切り傷がない少年がいた。ただ混乱しているように見受けられた。だがそれを周りで見ていた者たちは目の色を変えた。

 

 本当に死者の蘇生ができるとは思っていなかったのだろう。だがこれで死者の蘇生ができると確信に変わったようだ。より多くの者たちが動き出した。

 

 そしてぷれいやー様が流れ作業のように死者の蘇生をするところを見ながら、自分が護衛している少女を見る。ツアレは死者の蘇生に驚いていた。どこか休ませてあげたいが……この混乱だ私やぷれいやー様の近くにいる方が安全だろう。そう思い今回の下手人の一人であるカジットを見る。まだ気絶から回復していない。

 

 ぷれいやー様がこの者たちをどのように裁くのか……それとも聖騎士(パラディン)として許しを与えるのか……。

 

 そして死者がどんどん蘇生されていく。そして後ろにいるまともに叫ぶことができない少女が、何かを叫んだ。

 

「せ、セ、リー」

 

「知り合いでもいたのか?」

 

「い、いも、うと、です」

 

「そうか、良かったな。お前たち姉妹は、聖騎士(パラディン)様に救われた。蘇生された妹と仲良く暮らすといい」

 

 そう言いながら彼女が蘇生される。疲労感が凄いのだろう。だがツアレは妹に飛びつくように体を抱きかかえた。

 

「セリー」

 

「……お姉ちゃん。やっと会えた。豚に連れていかれてからずっとずっと探してたんだ。やっと会えた」

 

 そこには涙が見えた。妹の方はまだ意識がもうろうとしているようなのでもしかしたら死後の世界と捉えているかもしれないが、落ち着いたらぷれいやー様に感謝するだろう。

 

 だが思う。王国の貴族……やはり滅する必要がある。一部の例外を除いて貴族は王国民に対しても毒だ。たとえ陽光聖典隊長の座を失ってもいい。私はこのお方についていく。

 

☆ ☆ ☆

 

 あれから一日が経った。その間たっち殿は休まずに死者の蘇生を続けていた。精神力も限界に近いだろうに。今度はクレマンティーヌとカジットの裁判だ。普通なら即座に処刑だ。

 

 だがクレマンティーヌはたっち殿に今回の事を起こした事情を弁明させてほしいと言い、たっち殿はそれに承諾をした。

 

 アンデッドの討伐に下手人の逮捕、さらには無償での死者の蘇生、彼こそが真なる聖騎士(パラディン)と街では噂になっている。パナソレイ都市長の耳にも入っているだろう。彼の活躍はそれだけの価値がある。

 

「ではこれより、クレマンティーヌの弁明を聞こうと思います。そしてその弁明が嘘偽り、騙すようなものであれば、私の手で斬ります。皆さんそれでよろしいですね?」

 

 その言葉に群衆が頷いた。だれもぷれいやー様に反感を抱かない。確かに子どもは蘇生できなかったが、多くの人間が蘇生されて救われた。ぷれいやー様に対する信頼は高いはずだ。

 

「では、クレマンティーヌ、何故このような惨劇を起こしたのですか?」

 

「私は法国から逃げるために、特殊部隊である風花聖典の目を撒く必要があった。だからエ・ランテルで事件が起きれば逃げ切れると思ったの」

 

「なるほど。あなたが盗み出した叡者の額冠……それを装着していたンフィーレア君はアイテムを外した後に私が蘇生しました。また亡くなった方々も私が蘇生しました。ですがあなたが犯した罪は消えません」

 

 そうだそうだと、群衆が大きく声を張り上げている。これは死刑は決まったものだなとニグンは思った。問題があるとすれば叡者の額冠をどうやって法国に届けるかだが……私はぷれいやー様から離れられない。転移の魔法を使用させてもらうのが一番かと思った。

 

「私がニグン殿から聞いた限り、法国は人類を守るために様々なことを行っていると聞きます。そしてあなたは特殊部隊の一員で、上の方にいたのでしょう? 何故法国を裏切ったのです?」

 

「ぷれいやー様。一つだけ言わせて。あなたは法国に騙されている。法国は必要があれば人間をたくさん殺している。私はそれが嫌だった。だから狂って快楽殺人鬼になったの。それに家族からも愛情を貰えなかった。兄だけが愛されて私を愛してくれなかった! だからいつか兄を殺す! それにぷれいやー様とは違って普通の人間は最低だ! 私がまだ弱いころレイプされた。人間なんてしょせんそんなものだよ。だからぷれいやー様の事は素直にすごいと思うけど、きっといつかその行為は徒で返されるよ。それでも法国に協力するの?」

 

 あまりにも重い人生歴だった。先ほどまで早く殺せとわめいていた者たちも、可哀そうなものを見る目でクレマンティーヌを見ている。

 

 まずい、このままではクレマンティーヌの行いが肯定されてしまう。最悪の場合、ぷれいやー様に法国はそんな国と誤解されてしまう。それだけは避けなければならない。

 

 そして自分が口を突っ込もうとしたとき、ぷれいやー様が話し始めた。

 

「……なるほど、それが法国の一面ですか。私はニグンや陽光聖典の者たちを見て人間を守るためなら何でもする集団だと理解していました。人間が弱いこの世界では正しい行いだと思っていました。ですが、そうか。そういう側面もあったのですね」

 

 まずいまずいまずいまずい。このままではいけない。何とかしなければ。だが言葉が出てこない。

 

「ですがクレマンティーヌ殿、それでも私は法国に協力するでしょう。我が神々も困っている人がいたら助けるのは当たり前! と言っているのですから。それに恩を仇で返す? そもそも私は恩など与えていません、ただ私ができることをやっているだけです。感謝されるつもりもない」

 

 群衆が黙り込んでぷれいやー様の言葉に耳を傾ける。その言葉はまるで本当の英雄のようであった。いやまさしく世界が求めている英雄であった。

 

「ですが、あなたの事を私は処罰する気は無くなりました。あなたが死刑にならないように私も都市長に嘆願しましょう。そしてあなたはこの街で武器を取らずに一生を終えなさい。兄を殺すことができないのが、あなたへの罰です。逃げ出したりすれば、私はどこまでも追いかけますよ?」

 

「……ありがとうございます。ぷれいやー様」

 

「さて、ではカジットの公開尋問を始めましょう」

 

 その言葉に今まで黙っていたカジットが。顔を表にあげた。そしてぷれいやー様に質問を飛ばした。

 

聖騎士(パラディン)様。あなた様は死者の蘇生が行えるのですか?」

 

「ええ、難度が成人した人程度あれば蘇生可能です」

 

 その言葉にカジットは頭を深く下げて懇願した。

 

「どうかお願いです!! 母を蘇生してください!! 私が行ったことは全て母を蘇生させるために必要なことばかりなのです! どうかお慈悲を!!」

 

「――そのために何の罪もない人々を殺したのですか?」

 

「はい、私が悪かったのです。どうか、どうか。伏してお願い申し上げます」

 

「ではこうしましょう。あなたはエ・ランテルで罪を償いなさい。そしてエ・ランテルに住む人の半数以上があなたを許したならその時はあなたの母を蘇生させてあげましょう。それでいいですね?」

 

 涙を流しながら。ありがとうございます。ありがとうございます。とカジットはしゃべっている。

 

「さて、それでは、ガゼフ殿、ニグン殿冒険者組合に行って、クラルグラが何か情報を持ち帰っているか確認したら王都に向かいましょう」

 

 

 

☆ ☆ ☆ おまけ

 

「それでイビルアイ、一応聞いておくけど、たっちさんの強さは分かった?」

 

「自己申告通りだろうな……分かっているのは私では手も足も出ないということだ」

 

「あの殺気は……アダマンタイト級冒険者でも厳しいだろうな。だから童貞、膝をついても仕方ない、だから気にすんな!」

 

「はっはい。ただストロノーフ様は本当に貴族派閥を殲滅するつもりなのでしょうか?」

 

 ガゼフ・ストロノーフは王の剣であり、王の意向のままに動く人物だ。加えて民を思いやる気持ちが強い。そんな人物が内戦を引き起こしかねないことを起こすなど……。

 

「たっち殿に勝てる兵士は王国にはいない。何より、たっち殿が王国の膿とともに戦ってくれるというなら……王国が回復する最後のチャンスだろうな」

 

「そうね、とりあえずクライム、あなたはラナーに見たままを報告して。それで彼女が策を練ってくれるはずだから」

 

「承知しました!」




皆さんはたっち・みー(偽)様の嘘にいくつ気づいたかな。これからも嘘は増えていくよ!
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