地方大会も終わった、7月の頭。
打っていた相手が普通以上に強かったからか。
或いは、運が良かっただけなのか。
俺は、個人戦2位という記録を残して全国への切符を手にしていた。
そして、怜さんと竜華さん。
いや、正確に言うなら千里山高校としての団体戦。
彼女たちも当然のように優勝、全国へ出場を決めて。
それを経ての、合宿中。
「ほい、京。 この場合は何を切る?」
「そうですね……ぶっちゃけ俺ならベタオリしますのでこれを。」
「んー……まあ間違ってるとも言えんからなぁ。」
顧問の愛宕先生。
彼女の娘さん達も団体として来たらしい。
つまり、当たる可能性があるけれど。
それはお互い様、何方も死力を尽くして戦うだけだ、と笑っていた。
「ま、攻める場面なら?」
「萬子系が臭い……かな?」
「ん、正解。 じゃ、先に休んどき。」
暫くの間打ちっぱなしだったというのもあって。
大分腕と、頭に疲労が溜まっている。
食事時というのもあって。
離席する旨を伝えて、対局場から一度出た。
たん、たん、たん。
やや古ぼけた、学校が保有する合宿場。
とは言っても、運動部や全国に出場する部活など。
地味に利用する部活は多いと聞く。
だから、なのか。
メンテナンス自体はしっかりとされていて、過ごしやすい。
「(――――あれ?)」
視線の先。
曲がり角の先、そう言えば見なかった姿が2つ。
怜さんと竜華さん。
怜さんの体調管理に関しては、医師から指示が出ている。
それを踏まえた上で、現団体メンバーが料理とかを作る手筈だったはず。
無論、俺も手伝えるところは手伝っているのだけど。
でも。
見えている二人は、何処か。
普段の二人ではなかった。
「――――。」
「――――。」
何かを話しているのはわかる。
いつもの、竜華さんの膝枕。
其処に怜さんが頭をもたれ掛かるようにする格好。
それで、何かを相談しているような。
――――或いは、争っているような。
「………………よ。」
「………………も。」
静かな筈なのに。
ただ、普段通りに見えるのに。
何故、違って見えるのか。
ちらり、と。
この間の、雨の日の出来事を思い出して。
頭を振った。
思い上がりだ。
ただ、確認したかっただけだ。
俺が、あの二人に好意を持たれているなんて。
――――何故、確認しようと思ったのか。
それに、気付いてしまえば。
それを、理解してしまえば。
多分、俺達の関係は完全に変わってしまう。
だから。
今は。
そう、今だけは。
気付かなかったフリをして。
その場を、離れた。
今、逃げても。
必ず、結果は追いかけてくる。
それを理解していながらも。
……居心地のいい関係を、崩したくはなかったのだ。
お久しぶりでございます。
今年もよろしくお願いします。