<4:京太郎>
「怜ぃ!」
目の前で、竜華さんが抱き付いて泣いている。
さて、去ろうかと立ち上がった丁度その瞬間。
うっすらと、目を開けた少女。
「ん…………ぁ……?」
長い、永い眠りから醒めたように。
少しずつ意識が醒めていく。
本来なら、それで覚醒めるはずだったのだろうけど。
竜華さんが、感極まった様子で抱き付いた。
「ちょっ、竜華……!?」
「やっと、やっと起きたんやね……!」
「どういうことなん……!?」
困って、どうしたものかと周囲を見ている推定少女。
此方に気付いたように、助けを求める目と。
誰だろう、と。
純粋に、聞きたい目が混じったような不思議な状況。
「……竜華さん。」
「っ、怜、怜ぃ……。」
「…………あんな、悪いんやけど。」
「……説明しますよ。」
帰り際に倒れたこと。
それから約一週間、目を覚まさなかったこと。
ずっと、竜華さんが見舞っていたこと。
……身体に関しては、深く言わなかった。
当人が理解して良いこと、悪いこと。
それくらいは、俺にだって分かることだったから。
「……まあ、不思議な縁で俺も。」
「そう、かぁ……。」
「……須賀、京太郎です。」
「あ、私は園城寺怜。 よろしゅーな。」
「ええ。」
初めて、名前を知った。
そんな、目覚めた彼女――――怜さんは。
何処か、ふんわりとした少女だった。
地に足がついていない、というよりは。
目を離したら、消えてしまう。
そう言った、希薄さ。
「……飲み物でも、買ってきますね。」
今は、二人にしよう。
未だに、泣き続ける竜華さんのためにも。
それを、慈愛の目で見る怜さんのためにも。
……関係ない俺は、離れるべきだと。
静かに、戸を開いた。
<4:怜>
見知らぬ、夢を見ていた気がする。
何かに手を引かれる夢。
何処かを彷徨う夢。
行ってはいけない。
そんな声が、大きくなり始めて。
気付いたら――――見知らぬ、天井があった。
「ん…………ぁ……?」
「怜ぃ!」
ここは何処だろう。
そう思う間もなく、良く見知った声が聞こえ。
同時に強い衝撃と、柔らかい身体が当たるのが分かった。
清水谷竜華。
私の、大事な親友。
「ちょっ、竜華……!?」
「やっと、やっと起きたんやね……!」
「どういうことなん……!?」
ただ、何が何だか分からない。
誰か、説明をして欲しい。
首を捻ってみれば、見知らぬ少年が1人。
金髪の、困ったように頬を掻く少年。
竜華と、一緒にいた?
良く、分からない。
「……竜華さん。」
「っ、怜、怜ぃ……。」
「…………あんな、悪いんやけど。」
「……説明しますよ。」
そして、解説されたことに納得した。
あの時、私は意識を失ったのだと。
それから、眠り続けて。
――――あの夢は、死神の鎌だったのかもしれないと。
「……まあ、不思議な縁で俺も。」
「そう、かぁ……。」
「……須賀、京太郎です。」
「あ、私は園城寺怜。 よろしゅーな。」
「ええ。」
須賀、京太郎。
やはり聞いたことはない。
……はっきり言って、初対面。
だけど。
何故なのだろう。
悪い子じゃない、というのは。
痛いほどに伝わってくるのは。
「……飲み物でも、買ってきますね。」
……多分、細かい気遣いが故なのかもしれない。
普段と逆に、膝の上で泣きじゃくる竜華。
それをちらりと見て、席を外してくれたのだから。
……案外、いい出会いやったんかもなぁ。
男という存在に、殆ど触れたことは無かったけれど。
彼は、好青年なのだと。
そう、納得した。