彼女――――怜さんが目覚めてから、少しばかり経った。
俺が卒業したのが今月の頭。
転校とほぼ同時期で、竜華さんと出会ったのもその頃だ。
……つまり、もうすぐ高校が始まる。
「なー、京ー。」
「どうかしました?」
なのにも関わらず、俺は毎日のように病室にやってくるようになっていた。
準備はとうに済んでいる。
だから、だろうか。
此処に来れば、二人に会える。
そんな打算が無かったとは、思えずに。
「そういやな、聞いてなかったんやけど。」
「ええ。」
「今幾つなん?」
「あ、ウチもそれ気になってた。」
「え、15になったばかりですよ。 早生まれなんで。」
パイプ椅子、ではなく。
それなりにしっかりとした椅子から起き上がって、そう返す。
少しばかり高いであろう、個室を借りている怜さん。
その事実から考えれば、相応に金持ちの家なんだろうとは推測できる。
竜華さんも、着ている私服は金が掛かっていそうなモノ。
出会えたことは――――幸運というべきなのか。
或いは、不幸の幸いと言ってしまうべきなのか。
「おろ、一つ下かと思ってたんやけど。」
「ウチらが次で高3やからなぁ。」
それはいいんですが。
怜さん、なんで膝枕されてるんでしょうか。
起き上がって漸く気付いたことだったけど。
聞いてしまって良いのやら、悪いのやら。
「へぇ……因みに、何方の高校なんですか?」
「千里山、って分かる?」
「あー、わかりますよ。」
何しろ、俺が通う高校と同じなのだから。
「……実は、俺も其処なんです。」
「……え、テストケースの一人?」
「受かると思ってなかったんですけどね……。」
何しろ、受かった時は三度程見返した程だ。
千里山女子、本来は女子校として名高い高校。
だが、近年の統廃合を受け。
年に10人程度の男子の受け入れを決定。
ただ、模範とするために成績の基準は相当高く。
文字通り、運が良かったからとしか考えられない。
「後輩、かぁ。」
「せやなぁ。 それも男子の。」
「中々考えにくいですよね……女子校だったんですもん。」
「と言うより、今実感してる感じやねぇ。」
それもそうだ、と苦笑して。
相も変わらず寝転んでいる二人を見る。
嫌がっている、というわけではなく。
むしろ親しみが有るからこその、膝を貸している感じだろうか。
「しかし、女の子同士でも膝枕とかするんですね……。」
「ウチらは例外よ?」
「竜華の太腿がちょうどええからなー。」
「は、はぁ……。」
良く分からないけど、確かに柔らかそうでは有る。
丁度良い太さというか、肉感というか。
あんまりじっと見るのも悪いので、目を逸らしたけど。
「……あんま見んといてな?」
当然、気付かれていたらしい。
頭を下げれば、其処までじゃないと逆に遠慮された。
「京もやってみれば分かるって。」
「いやいやいやいや。 そういう訳にも行きませんよ!?」
「怜、恥ずかしいて。」
ただ、若干顔を赤くするだけでそれ以上は言わない竜華さん。
……恥ずかしいから、だけ?
ふと、そんな疑問が過ぎって。
考えすぎだ――――と。
自分で自分を戒めながら。
少しばかりの、平穏を楽しんだ。