GATE くうかんポケモン 彼の地にて、時空を越えて戦えり   作:00G

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調子が良いぜ。


Oh year!あいむかみーん!

 コダ村からの避難民を護送しながらアルヌスの丘へと戻る第3偵察隊だったが、予想以上にうまく事は運んでいかなかった。

 事前に準備をしていたためコダ村からの出発は早い段階で達成されたが、荷物が満載された馬車は進行する速さは遅く、泥濘にはまれば抜け出すのに時間がかかったり馬車の車軸が折れてしまったりと様々な事故が起こった。

 車軸が折れた馬車の持ち主には可哀想だが、永遠とその場を動こうとしてくれなかったら逃避行の終わりはどんどん遠ざかってしまうため馬車を燃やすことで無理矢理諦めてもらった。

 そもそもこの逃避行はコダ村の村人たちがどこか安全なところまで逃げるという漠然としたものであり、伊丹たちは途中までそれに付き添うというものだ。

 宛のない逃避行は村人だけでなく、付き添う第3偵察隊の隊員たちをも消耗させていった。

 

 保護したエルフの少女は当初体温の低下で弱っていたが、今では眠ったままだが体調は良くなっているためこの逃避行の中の唯一の吉報だ。

 エルフの少女の面倒を見ていた黒川茉莉二等陸曹が、看護資格を持って正しい医療知識を持ち合わせていたのが幸いした。

 

「あれ?」

「どうした?」

「前方に、なにやら……」

 

 逃避行を続けていたある日、先頭を走る車を運転していた倉田が道の先に何かが見えると伊丹に伝えた。

 伊丹は双眼鏡で倉田が見たものであろうものを確認する。

 

「カラス?…………うわっ」

 

 双眼鏡で前方を見ると、何十羽というカラスの群れがバサバサと飛んでいるのが見えた。

 カラスが見えただけなら別にどうという事はないが、いきなり視界一杯に黄色の物体が広がり思わず驚いて後ろに下がる。

 もう一度よく見ようと双眼鏡を覗くと、デカイ斧と槍を合わせた武器ハルバートを持つ黒いゴシックロリータ調の服を着た少女が何やら憤慨した様子で黄色い物体を踏み抜いていた。

 

「ゴスロリ少女と……黄色い饅頭?」

「ゴスロリ少女!?」

 

 見えたものをポツリと口にすると、隣の倉田は興奮した様子で双眼鏡を覗く。

 ゴスロリ少女という単語だけで反応したのが彼らしい。

 一方で黄色い物体を踏み抜いていたゴスロリ少女は『はぁ』とため息を吐くと、地面に突っ伏す黄色い物体を無視して伊丹たちが乗る車へと近づいてきた。

 ハルバートという成人した男性でも持つことが難しそうな代物を持つ少女に警戒する伊丹たちだったが、避難民たちはそんな伊丹たちのことを無視して少女のもとへと近づくと祈りを捧げ始めた。

 

「祈りを捧げているように見えますね……」

「あのゴスロリには宗教的な意味があるのかな?」

「知りたいか?」

「どうおわっ!?」

 

 少女に祈りを捧げる避難民たちの光景を見ながら伊丹たちが少女の存在について考えていると、横からいきなり野太い声がかけられ伊丹の体がビクリと跳ね上がった。

 声がした方、より正確には車の前席の窓の下にはとてつもない間抜け面のような能面のような妙な表情をした50センチくらいの猫が下から見上げていた。

 

「い、今喋った?しかも日本語?」

「なぁにを驚いていやがる。喋る猫がいたって普通だろい」

 

 お前みたいな猫がいるかよと初対面で暴言を吐きそうになった伊丹だったが、ここはグッと堪える。

 ていうかやっぱり日本語を喋っている。

 マジでこの猫なんなの。

 

「あいつの名前はロゥリィ・マーキュリー。暗黒の神エムロイの神官だ」

「神官っていうことはやっぱり宗教的な意味が?」

「おうよ。つまり、メチャ偉い」

「は、はぁ……」

 

 この訳のわからない生物にどう接したらいいのかわからなかった伊丹だが、向こうから気軽に話しかけられているのでまあ敵対する意思はないのかな?と安心したくないが安心する伊丹。

 

「ちなみに歳は900越えのバb」

 

 ズゴンッ!と黄色い猫がハルバートに押し潰された。

 ハルバートの持ち主のゴスロリ少女は額に青筋を立てながらワナワナと怒りに震えていた。

 

「ちょっとぉ……勝手に人の歳を言うのは失礼じゃなくてぇ?ぶち殺すぞ」

 

 特地の言葉で甘ったるい艶やかさを含んだ声で喋っていたゴスロリ少女もといロゥリィだったが、途中でドスのきいた声で黄色い猫を脅す。

 祈りを捧げていた避難民たいも若干怯えている。

 

「そうカリカリするな。カルシウムが足りないんじゃないんか?んん~?」

 

 地面に顔を埋め込んだ状態で黄色い猫はさらにロゥリィを煽る。

 

「ふん!」

「どゅくし!」

 

 終いにはロゥリィが思いっきり黄色い猫の頭を踏み抜くことで二人の攻防は幕を引いた。

 その後何事もなかったように伊丹たちに『これ、どうやって動いているのぉ?』と訊いてきたロゥリィに別の恐怖を感じた。

 

「え、ええーっと……その、お供の猫は大丈夫なの?」

「?……あぁ、あれなら大丈夫よぉ」

 

 ジェスチャーと辿々しい特地の言葉で黄色い猫を心配する伊丹だったが、彼女からは大丈夫という返答が返ってきた。

 

「その通り!」

 

 黄色い猫はがばりと起き上がり間抜け面を伊丹に近づけたので、ロゥリィの言う通り大丈夫らしい。

 

「ちなみにロゥリィよ。これは車といって乗り心地は馬車よりも素晴らしいぞ」

「へぇそうぅ。 ねぇ、私も感じてみたいわぁ。これの乗りご・こ・ち」

「俺も感じてみたぁ~い」

 

 妖しく微笑むロゥリィにドキリとした伊丹だったが、後からくねくねと体を動かしながら喋った黄色い猫で台無しになった。

 その後、ロゥリィは伊丹の膝の上に座り、倉田がむちゃくちゃ羨ましがったことで黄色い猫に『なら俺が座ってやろう』と野太い声で宣言されて倉田の膝の上に座られた。

 その時の倉田の顔は死んでいた、と記述しておこう。

 だがさすがに膝の上に座らせるのは色々とまずいので、ロゥリィは運転席と助手席の空いたスペースに、黄色い猫は車の後ろで子どもたちと一緒に乗ってもらった。

 

「よ、よろしくロゥリィ・マーキュリーさんと」

「ロゥリィでいいわぁ」

「そ、そう……改めてよろしくロゥリィ。 それと……」

 

 伊丹はもう同行することが決まってしまったロゥリィに挨拶をし、黄色い猫の名前を訊こうと後ろを向く。

 むしろ名前などあるのだろうか。

 

「俺か?そうだな……平凡的な猫、略して『平猫(ひらねこ) 』と呼んでくれ」

 

 絶対平凡じゃない。

 黄色い猫改め平猫の自己紹介を聞いてそう思う伊丹だった。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 モグモグモグ……とパルキアは口をモゴモゴ動かしながら森から離れた荒野を飛行していた。

 口に入れているのは、なんと異世界で見つけたナナの実。

 異世界だから元の世界のものなどないと思っていたが、運良く見慣れた食べ物が存在していたことにパルキアは嬉しさを覚えた。

 このパルキアが甘いものが好きだったというのも理由の一端にある。

 久しぶりに見るナナの実に思わず歓喜の声をあげたのはちょっと恥ずかしかった。

 そんなことがありながらも、パルキアはナナの実を回収しておやつ感覚で定期的に口に運んで甘味を味わいながら荒野を散策していた。

 

 ナナの実の甘さに舌鼓を打っていると、パルキアの横を鳥の群れが横切っていった。

 何やら慌てた様子でバタバタと翼を羽ばたかせ飛行していたため、捕食者から追われて逃げてきたのだろうとパルキアは呑気に考える。

 だって自分には関係ないし。

 残っているナナの実を頬張りながら『ムクホークとかもいるのかな?』などと考えながら飛行を続けたが、飛んでいく先で鳥の群れが逃げていった理由を知ることになった。

 

――ゲェ、リザードン擬き

 

 なんとあの森を燃やしていたリザードン擬きを見つけてしまったのだ。

 なんというエンカウント率。

 ビッパも驚きの遭遇率だ。

 

 嫌なやつ見つけたなぁとげんなりするパルキア。

 折角上機嫌だったのに気分がダダ下がりになる。

 幸いリザードン擬きはこちらに気づいていないので、気づかれずに退散できるかなと思ったパルキアだが、比較的他のポケモンよりも良い視力が地面を走る黒い物体を見つけた。

 

――車?

 

 なんとまたまた元の世界の代物である車を発見。

 今日はなんだか怖いくらい運が良いぞ。

 

 パルキアは不機嫌から上機嫌にまた戻り、地上で繰り広げられる車の逃走劇を見る。

 車の数は3つ。

 どうやらリザードン擬きの攻撃を交わしながら戦っているようだ。

 

 それにしてもあのリザードン擬き、デカイくせに車3つに反撃されているなんて……まさか弱い?

 それならリザードン擬きが炎を思いっきり吐いても車に当たらないことの理由になる。

 獅子は兎を狩るのにも全力を尽くすというが、ちょっと全力を出しすぎじゃないだろうか。

 

 パルキアは他人事のように車とリザードン擬きの攻防を見届けていたが、ふいにエネルギー球体を作り出してリザードン擬きの足元へと球体を発射した。

 意外と威力があったのか、リザードン擬きは球体が足下で爆発した衝撃で大きく体勢を崩した。

 これまでのパルキアの異世界探索で、あの車を所有する者たちの言葉は理解することができるということはわかっている。

 デカイから警戒されているからどう接触しようかと考えていたが、ここで恩を売っておけば後々都合よく情報を手にいれることができるかもしれない、とパルキアは考えていた。

 ならさっさとリザードン擬きを倒してしまおうとパルキアは起き上がるリザードン擬きの前に降り立った。

 

 目の前にいるリザードン擬きの第一印象。

 結構でかかった。

 これでもパルキアは元の世界で大型のポケモンに部類される存在だったが、目の前のリザードン擬きはポケモンたちが赤ちゃんに見えるくらいでかかった。

 メガ進化も目じゃない。

 

「グオオォォオオオオオオオオ!!!!」

 

 目の前に降りてきたパルキアがさっき邪魔してきた敵だとリザードン擬きは理解すると、巨大な体に合った咆哮でパルキアを威嚇した。

 

――やかましいメスだ

 

 一方でパルキアは威嚇なんぞそよ風程度にしか感じておらず、他事を考えていた。

 パルキアからはリザードン擬きがメスということがわかったが、こんなキレ気味に吼えるようなメスは好みではない。

 むしろパルキアは物静かでクールな娘が好みであり、こんな不良みたいな野蛮なメスはこっちから願い下げだった。

 番にされたであろう青い竜のオスには同情する。

 

「グオオォォオオオオオオオオ!!」

「●●●●●●●●●●●●●!!」

 

 リザードン擬きの咆哮を合図に、パルキアは己の目的のために行動を開始した。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「怪獣と戦うのは自衛隊の特権だけどよ!走れ走れ!」

 

 避難民を連れて移動していた伊丹たちは、やっとのことでアルヌスの丘までの中間地点を越えた場所でもあるロチの丘まで来ることができた。

 ここまで来るのに避難民たちは疲弊しきっており、もうすでに何人かフラフラとおぼつかない足取りをしていた。

 しかも、荒野でもあるロチの丘を太陽が煌々と照らしているせいでより体力の消耗が激しくなる。

 何も起こらなければいいのにと思った矢先、空を飛んでいたワイバーンが横から現れた巨大な影に噛み砕かれた。

 赤い体躯と巨大な翼を持つ炎龍の出現だった。

 最悪な事態に伊丹は急いで号令をかける。

 そんなことは知らず、炎龍は餌を見つけたと言わんばかりに咆哮をあげると、逃げる避難民たちへ牙を向いた。

 逃げる者にはすべてを焼き尽くす業火を放ち、地面を這う者には尻尾で吹き飛ばす。

 たった一瞬の内に、数十名の人たちの命が散った。

 炎龍の暴挙を止めるべく、第3偵察隊は今ある火器を使用して炎龍へと攻撃する。

 だが炎龍の硬い鱗に阻まれ、手持ちの武器の火力では炎龍に決定打を与えるのは難しかった。

 しかも、飛んでくる銃弾を煩わしく思ったのか、炎龍はお返しと言わんばかりにブレスを放つ。

 なんとか回避できたが、当たればひとたまりもなかった。

 打つ手なし。

 焦りが伊丹を襲うが、事態は急変した。

 

 なんと、爆音と共に炎龍が地面に倒れたのだ。

 何事だと窓から顔を出して上を見れば、銀座で暴れた白竜が真っ直ぐこちらに降りてきていた。

 最悪だった。

 巨大な炎龍を相手するだけでも必死だと言うのに、白竜まで来られたら自衛隊といえどどうすることもできない。

 新たな竜の乱入に逃げる避難民たちのパニックも最高潮に達し、諦めて地面にへたりこむ者や救いを求める者たちまで現れた。

 

「くそっ!どうすれば……!」

「安心しろ」

 

 焦る伊丹に、平猫が声をかけた。

 

「パルキアはこちらの味方だ」

 

 どういうことだ、と伊丹は声を出そうとするが炎龍の咆哮でその言葉は出てくることはなかった。

 そして、炎龍の咆哮の後に銀座事件で聞いた白竜の咆哮が響いた。

 もう一度炎龍へと視線を向けると、なんと白竜が炎龍に体当たりを食らわせていた。

 白竜の体躯は炎龍よりも遥かに小さい。

 遠目で見て5メートルもないほどの大きさだ。

 対して炎龍は白竜よりも巨大で、50メートル以上はゆうに越えていた。

 だと言うのに、白竜が炎龍に体当たりをすると大きさなんて関係ねぇと言わんばかりに炎龍の体が後ろに大きく吹き飛んだ。

 

「す、すげぇ……」

「今の内に避難民を助けたらどうだ?」

 

 白竜の体当たりを目の当たりにして、倉田は呆けた声を出す。

 平猫は唖然とする伊丹たちに避難民の救出を提案し、我に返った伊丹が急いで他の者たちに指示を出す。

 

 一方で、白竜と炎龍の戦闘はより苛烈さを増していった。

 炎龍もただやられている訳ではなく、巨大な体を活かして白竜へと攻撃を仕掛ける。

 白竜は炎龍よりも遥かに小さな体を使い炎龍の腕や翼の隙間を移動しながらエネルギーの球体を炎龍の体へ当てていた。

 

「グオオォォオオオ!!」

 

 炎龍はこちらの攻撃が当たらないことに苛立ちがつのり、炎龍の最大の技でもあるブレスを白竜へと放った。

 炎龍の口から放たれたブレスは白竜の体を包み込み、業火で白竜を焼き尽くす。

 誰もが白竜がもう終わりだと悟った。

 炎龍のブレスの恐ろしさは襲われた彼らが一番よく知っている。

 炎龍がブレスを吐き終わった後には見るも無惨な白竜の死体が出来上がる。

 誰しもがそう思った。

 

 だが、その予想は大きく外れることとなる。

 突如、ブレスを吐き続けていた炎龍が急にブレスを吐くのを止めたのだ。

 その理由は、未だ炎に包まれている白竜が炎に焼かれたままエネルギーの球体を炎龍の口めがけて発射したからだ。

 エネルギーの球体を口の中に当てられた炎龍は口から血を出しながら苦しみの咆哮をあげる。

 白竜は苦しむ炎龍に向けて口元に大量の水を集めだした。

 白竜はその集めた水を勢いよく炎龍へと発射。

 白竜が放った水は一直線に炎龍の頭へと命中し、水ではなく一種のビームのようにも見えた。

 水の攻撃を食らっている炎龍はなんとかしてその攻撃がら逃れようともがいたが、白竜は顔を大きく振る炎龍の頭部を的確に狙い撃ちにしていた。

 

「今ならこっちを意識していない……勝本!」

 

 伊丹の号令で、勝本航三等陸曹が対戦車弾を撃ち込むべくLAMを構える。

 狙うは炎龍。

 

「おっと……後方の安全確認」

「「「「遅いよ!」」」」

「ガク引きかよ!」

 

 訓練のお陰か、勝本は引き金を引く前に後ろに誰もいないか確認してから対戦車弾を炎龍に放った。

 だが、悪路を走っているせいで車が跳ね上がり、対戦車弾は炎龍とは違う方向へと飛んでいってしまった。

 しかも最悪なことに、対戦車弾が向かう先には白竜がいた。

 

「カッ!」

 

 当たる、と誰もが確信する。

 だが、それを覆したのは平猫だった。

 平猫は車の後部を開け放つとぬるりとした動きで車の屋根に移動。

 口を開き、『カッ!』という声と共に口から閃光を放ちあわや誤射しかける対戦車弾を撃ち落とした。

 突然の爆発音に白竜は水を放つのを止めてしまう。

 炎龍はやっと止まった攻撃の隙をついて逃げ出そうと大きな翼を動かす。

 こうまでいいようにされしまえば逃げる以外手段がなくなってしまう。

 死んでしまったら意味がないのだ。

 しかし、炎龍の逃走を邪魔したのは平猫に続いて車から飛び出したロゥリィだった。

 平猫と同じように車の上に乗り、巨大なハルバートを小さく細い体からは想像つかないほどの速さで投げつける。

 投げられたハルバートは放物線を描きながら地面に突き刺さり、閃光を走らせながら地面を砕いた。

 足場を崩された炎龍は大きく体勢を崩す結果となり、白竜に攻撃させるチャンスを与えた。

 白竜は空中に留まりながら肩の宝玉を輝かせ、腕に桃色のエネルギーを溜める。

 宝玉の輝きが最高潮に達したとき、白竜は腕を振り下ろした。

 白竜の振り下ろした腕から放たれた斬撃は、真っ直ぐ炎龍へと襲いかかり炎龍の右腕を豆腐のように切り落とし、炎龍は腕を切り落とされた痛みに絶叫をあげる。

 炎龍は右腕を切り落とされる重症を負い、悲痛な叫びをあげながら一目散に空へと飛び上がって逃げていった。

 

「終わった……のか?」

 

 飛び去っていく炎龍を呆けた表情で見つめる伊丹たちだったが、まだ緊張は解けない。

 まだ空を浮遊している白竜が残っている。

 白竜はゆっくりと地面に降りていき、最後は伊丹を見下ろす形で地面に着地した。

 攻撃するか否か。

 一触即発の空気が漂う中、皆が隊長である伊丹の指示を待つ。

 伊丹は、ここでどう部下たちに指示を出すか必死で考えていた。

 自分の指示一つが部下たちの命を握っている。

 人生で味わうことなどないほどの緊張が襲う中、伊丹ではない声が白竜へと投げつけられた。

 

「礼を言うぞパルキア。お前のお陰で多くの人の命が救われた」

「私からもぉ、お礼を言わせてもらうわぁ。それにぃ、貴方の戦いは見事だったわぁ!」

 

 その声は、未だ車の屋根に乗る平猫とロゥリィのものだった。

 一人と一匹は白竜を賞賛し、白竜も黙って二人の言葉を聞いていた。

 

「ん?……なるほど、そういうことか。 パルキアよ、この自衛隊と行動を共にすればお前の目的は達成される」

「お、お前何を言ってんだ!?」

 

 急に、平猫は勝手に一匹で納得してパルキアと呼ぶ白竜に自衛隊につけと言う。

 勝手なこという平猫に伊丹は怒鳴り声をあげるが、当の本人(本猫?)は伊丹を無視して話を続けた。

 

「お前が自衛隊につくことで、ある程度人間の命令には従わなければならないことも出てくる。 だが、メリットは大きい。どうだ?イエスなら首を縦に。ノーなら横に振るといい」

 

 まるで白竜の言うことが通じているかのように平猫は白竜へと語りかける。

 白竜はしばらく唸り声をあげると、ゆっくりと首を縦に振った。

 

「つ、通じている……?」

「どうやら日本語なら通じるらしいぞ?伊丹も話してみたらどうだ」

 

 目の前のファンタジーな光景に間抜けな声をあげる伊丹。

 さらには平猫の尻尾が器用に車の扉を開け、尻尾で首を持たれてズルズルと外に引きずり出された。

 そして、立ち上がらされた目の前には白竜。

 緊張と恐怖でチビりそうだった。

 

「え、えーっと……その……」

「…………●●●」

 

 口ごもる伊丹にさっさと喋るように促したのか小さく鳴く白竜。

 だが目の前に立たされてはもう逃げられないと覚悟を決めて、白竜の目を真っ直ぐ見つめながら白竜へと言葉を投げる。

 

「お、俺たちについてきてくれるか? お前の目的というのはよく解らないが、自衛隊に協力してくれるなら出来る限り手を貸す。 それでいいなら、俺たちについてきてほしい」

 

 少々詰まりながらも、伊丹は白竜に自分達についてきてほしいと頼んだ。

 白竜は伊丹により顔を近づけ伊丹の目を覗き込むように見つめる。

 そして、白竜は伊丹から顔を離すと先程と同じように首を縦に振った。

 

「こ、言葉が通じている……」

「こいつの名前はパルキアだ」

 

 白竜と言葉が通じていることに驚愕する伊丹に、平猫は白竜の名前を伝えた。

 

「そうか……これから宜しく、パルキア」

「●●●●●●●●●●●●●!」

 

 伊丹の呼び掛けに返事をするように、白竜改めパルキアは空に向かって咆哮をあげる。

 斯くして、自衛隊はパルキアという予測しなかった心強い協力者を得ることとなった。

 と、同時にあり得ない状況を報告しなければならないと伊丹は気づき気分は一転、ため息を吐きたい気持ちになった。




友だちが作ってくれたキャラクター『平猫』。
ギャグキャラとして扱っても良いって許可もらったから遠慮なしに使わせてもらいました。

賛否分かれるかなぁ。
平猫も愛してやってください。

ちなみにその平猫制作者が描いてくれたイラストがこちらです。

【挿絵表示】


いつか平猫の設定を出します。
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