後輩ちゃんも可愛いけどアイちゃんがやばいです…
突然だが、空から女の子が降ってくると思うだろうか。
漫画やアニメではありきたりなこの展開だが、現実で起こることなんてそうそうあることではない。確実に起きないと言えるわけではないが、ぶっちゃけ空から女の子が降ってくる…それが現実で起きるものならそれは事件である。
更に言うならその落ちて来た女の子がナイスバディで、受け止める側の男の顔にその豊満なお胸様がダイブするようなラッキースケベ的展開も現実では起こるはずがないのだ……と、少し前までの俺は思っていた。
「いったたた……はっ!? 大丈夫ですか!?」
「あ、あぁ……大丈夫だよ……色々とクッションになったのかな? あはは……」
目の前で繰り広げられる現実、それは豊満な胸を持つ美少女が階段を踏み外して落下し、それを下にいた会社に向かおうとしていた男性が受け止めると言うもの……漫画よろしく美少女の豊満な胸を顔面で受け止めてだ。
まさかあり得ないと言ったその瞬間にこのような場面に出くわすとは思わなかった。最初は呆然てしていた俺だったが次には吹き出していた。いきなり笑い声が響いたためか件の2人の視線はお腹を抱えて笑う俺へと向かう。
いやぁ悪い悪い、でも許して欲しい。
月曜日の朝からこんなものを目撃できるとは思わなかったんだ。笑う俺を見て出勤途中の男性、《お兄さん》と呼ばせてもらおうか。お兄さんは先ほどの胸の感触を覚えているのか顔を赤くして頭を掻き、もう1人の豊満なお胸様を持つ女の子は少しだけ頬を染めながら口を開いた。
「もうユー君笑い過ぎ! そんなに笑わなくてもいいでしょ!」
そんな風に声を荒げる幼馴染、アイにすまんすまんと謝りながら俺は2人の傍に駆け寄った。
これから語られるのはなんてことはない。
ユーと呼ばれた俺、幼馴染のアイ、そして会社通いのお兄さん、その他多くの人によって描かれるただの日常風景である。
漫画のようなハプニングが起きてから、俺たち3人は揃って電車に乗っていた。
俺とアイは同じ学校に毎朝電車に乗って通っている。今となっては慣れたものだが、流石都会と言えるのか朝は学生もそうだが通勤する社会人が本当に多い。毎朝毎朝が席の取り合い奪い合い、そうでないものはつり革に掴まったり壁際に陣と取ったりなど……うん、本当に大変だ。
俺やアイは電車に乗るのは遅い方なので大概壁際に2人揃っている。当たり前のことだがアイが窓際、その理由と言うのが単純に痴漢対策である。幼馴染と言う贔屓目を抜きにしてもアイは美人だ。愛らしい表情もそうだが何より、異性の目を惹きつけて離さないのが彼女の持つ豊満な胸にある。
「……今日もいっぱいだね」
「まあ仕方ないよなこればかりは……」
それなりにギュウギュウ詰めされているせいかアイの声がすぐに届く。オマケと言ってはなんだが俺の胸に押し当てられる彼女の胸が潰されむにゅりと形を変えていた。
正直この状態は男である俺にとっては拷問のように思えないこともないがかなりの役得である。だって俺も男だもの、更に言えば巨乳が大好きな今時の男子高校生なのだ。アイには言っていない、言えるはずもないのだがこの直に伝わる柔らかい感触は1つの癒し。月曜が始まりまた1週間学校が始まってしまうと憂鬱になる俺を癒してくれる奇跡の一瞬だ。
「……えへへ」
アイは小さく微笑みながら少しばかり体重を預けてくる。
幼馴染としてずっと一緒だったのもあるのかアイは結構スキンシップが多い。勿論他の知り合いにこのような無防備な姿を見せることはないようだが、そう考えると少しだけ俺はアイと幼馴染であり最も近しい距離にいることがとてつもなく嬉しく思うことがある。
まあこう思うのも一重に、俺がアイのことを少なからず想っているのもあるのだろう。
「2人は本当に仲が良いんだね」
そうこうしていると俺の傍にいたお兄さんがそう言ってきた。
「幼馴染ですし」
「幼馴染ですから」
狙ったわけでもないのに俺とアイの声が揃った。思わずに互いに見合わせ小さく吹き出す。お兄さんもそれを見て優しく笑っていた。
それから電車が駅に着くまで俺たちとお兄さんは語り合った。
俺たちが抱える学校の愚痴を言えば、お返しにお兄さんからも会社の愚痴が帰ってくる。正直俺はまだ学生なので仕事の大変さなどは明確に伝わりはしなかったものの、いずれ迎えるであろう社会人の時を考えれば、お兄さんの話は新鮮でありとても楽しかった。……お兄さんが語る社畜云々の話はともかくとしてではあるが。
それから俺たちはそれぞれ目的の駅に着き別れる前にこれも何かの縁だと3人でアドレスを交換しいつでも連絡が取れるようになった。
「お兄さん良い人だったね」
「そうだなぁ、ゲーム好きに悪い人はいない」
「あはは……途中から盛り上がってたね」
アドレス交換の際にふとお兄さんのスマホに目が行った時、そこには俺も今ハマっているアプリがインストールされていたんだ。そこから互いにゲームについての話になり、アイには悪かったがあそこは趣味を優先させてもらった。いやぁいい時間だった。 今夜にでも次に始まるイベントについて大いに語り明かしたいところである。
ゲーム好きに悪い人はいない、ゲームは人と人を繋げるんだなと改めて実感した瞬間である。
そんな風にお兄さんとのやりとりを思い出していた時、アイがふと声をかけてきた。
「そうだユー君、今日放課後暇かな?」
そう問いかけられ考えてみるがこれといっ用事はない。
そう返すとアイはホッとしたように続けた。
「それじゃあ買い物に付き合ってくれないかな?」
買い物の誘いか、別に断る理由もないので頷いておく。
たったそれだけのことなのにアイは嬉しそうに俺の腕に抱きついてきた。アイの持つ凶悪な2つの胸の間に腕が挟まれ、何とも言えない幸福な気持ちになる。
「買い物って何を買いに?」
「まあお母さんに頼まれた夕食の買い出しもあるんだけど……えっとね、その……」
いきなりモジモジしだしたアイに首を傾げる。
アイは頬を真っ赤に染めて、上目遣いに口を開いた。
「また少し……大きくなっちゃったみたいで……今も少しキツイの」
あ……(察し
何が大きくなって何がキツイのか、アイの幼馴染をやっていてこれに気づかない奴に幼馴染の資格はない。キリッと言ったが別に胸を張れることでもなかったか…。それにしても……ふむ。
俺はチラッと視線をアイの胸へと向けた。
この凶悪とも言える大きさの胸はまだ成長しているというのか……。
邪な気持ちを頭を振ることで振り払い、表情に出ないようにそうかと短く返事をして通学を再開した。
それにしても普通は女子とかを誘うのではないのだろうかこういうのは……バレー部ちゃんとかは喜んでついて来そうではあるが。まあ何にしても可愛い幼馴染の頼みだし付き合うとしようか。
「……ユー君だから頼めるんだよ? 大切な幼馴染だし……その……ううん! 何でもない!」
途中で言葉をやめるも決して腕は離さないアイ。
そんなアイが可愛すぎて俺は心の中でこう呟くのはお約束である。
幼馴染が可愛すぎて生きるのが辛い。
今更か、そんな声が聞こえた気がするが気にしない。
今日も今日とて幼馴染と一緒に過ごす1日が始まる。