月曜日のたわわ〜幼馴染はとてもたわわです〜   作:とちおとめ

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本話の登場人物


ユー君
アイちゃん
バレー部ちゃん


次で最終話。
もう少し!


9たわわ!

「青い空、白い雲、そして広大な海! ってか」

 

 海に来ればお約束の何とやらである。

 今日はバレー部ちゃんに誘われ海に遊びに来ていた。メンバーは俺を含めアイ、バレー部ちゃん、そして特に顔見知りでもないバレー部ちゃんの友達だ。正直来る途中もそうだがきっとこれからもそう、俺を除いて他のメンバーは女子と言うことで気まずいことこの上ない。バスの中でもずっと俺の隣にいて会話していたアイだけが癒し、心の拠り所だったのは言うまでもなかった。

 とはいえ周りが女子とは言っても俺はアイの付き添いみたいなものなので、俺は無理に彼女たちに関わらずのんびりしていても特に何も言われないだろう。

 既に設置されていたパラソルの下、敷かれているシートの上に寝転がりゆっくりとした時間を過ごす。

 もっとも一人の時間なんてアイたちが一緒にいる時点でてきるわけもなく、誰かが俺の隣に立ったことで俺はそちらに視線を向けた。

 そこにいたのは見慣れた顔、純白のビキニに身を包んだアイだった。

 大きな胸が今にも零れそうで男の本能よろしく視線が向かってしまう。そしてそれはどうやらアイ自身にも気づかれてしまったようで、アイは顔を赤くしながら胸を隠すように体を抱いた。

 

「もうユー君……胸ばかり見ないでよ」

 

 可愛らしく口を尖らせてそういうアイ、俺はすまんと謝るが気付いているだろうか。そうやって体を抱くものだからアイの豊満な胸が腕によっていやらしく形を歪めていることに。まあ基本天然なアイのことなので気づいていないのだろう。

 俺の視線を感じて胸を隠していたアイだったが、すぐに腕を外して俺の隣に座った。

 アイが着替え終わったってことはバレー部ちゃんたちも一緒に来たものだと思っていたが、今ここにアイしかいないことに首を傾げる。そんな俺の様子に気づいたアイがとある場所を指差したので俺もそちらに視線を向けた。すると既にそこにはバーチバレーを繰り広げるバレー部ちゃんたちの姿があった……何ともバイタリティ溢れる連中である。

 

「アイは行かないのか?」

 

 そう伝えるとアイはこう答えた。

 

「行くけどその前にさ、ユー君オイル塗ってよ」

「オイル?」

「うん……ダメ?」

 

 首を傾げられ上目遣いに言われてしまっては断るわけにもいかないか。

 分かったと言うとアイは嬉しそうに笑顔を浮かべてうつ伏せに寝転がる。そんな体勢になったことで……まあ当たり前のことだが横乳が大変絶景と言わんばかりに見えるわけだ。先ほどアイに言われたばかりだと言うのに目が行ってしまうあたり俺もしょうがないやつだということか。

 アイから受け取ったオイルの液を手に落とし、しっかり混ぜてアイの背に触れる。

 

「ひゃんっ!?」

「……変な声出すなって」

「ご、ごめん……ちょっとひんやりしてたから」

 

 このやり取り、色々な漫画で見たことあるような気がするな。

 至極どうでもいいことを考えながらアイの背中からオイルを塗っていく。そこで俺は一つ壁にぶち当たるわけだが、背中から太ももに向かう中でお尻に触っても良いのだろうか。よくよく考えてみればアイと一緒に海に来たのはこれが初めてではないが俺がオイルを塗るのは初めてな気がする。

 背中を塗り終えどうしようかと手を止めているとき、まるで察していたかのようにアイが口を開いた。

 

「いいよ……? お尻も触って」

「……いいのか?」

「うん。大丈夫」

 

 純粋に信頼しているから故か。

 アイの言葉と目からそれを感じ取った俺は続きを再開した。まあ塗っている最中アイの柔らかな体に触れているのもあるが何より、くすぐったそうに切ない声を上げるアイのせいで俺は理性をフル動因して色々と戦っていたわけである。終わった後にありがとうといつも見せてくれる笑顔でお礼を言われたわけだが、この様子では俺の疲れにも気づいていないのかもしれない。

 小さく溜息を吐いていた俺だったが、そんな手をアイが引く。

 

「ほらユー君! 一緒にいこ!」

「お、おい!」

 

 本当ならアイを含め彼女たちが遊んでいるのをのんびりしながら眺めているつもりだったが……まあ。

 

「……まあいいか」

 

 楽しそうに手を引いてくれるアイが喜んでくれるなら、それでもいいかと思ったのだった。

 それからアイと共にバレー部ちゃんたちのビーチバレーに加わることになった。正直バレーなんて一切やってない俺とアイが相手になるわけもないのだが、どうやらその辺はバレー部ちゃんとその友達ちゃんも分かっているようで明らかに手を抜いてくれていた。

 手を抜いてくれていても勝てるわけではないけれど。

 

「それ!」

「うわっ!?」

「そら!」

「きゃっ!?」

「そ~い!」

「……うぅ!」

 

 バレー部ちゃんはアイを集中的に狙いそのミスを誘う。

 手段としては常套かもしれないが、ボールを取ろうとして動いているアイを見てニヤニヤしていることから単純にバレー部ちゃんは視線によるセクハラをしているらしい……というかアイの揺れる胸しか見てないのになぜあんなに上手くプレーができるのか全く持って謎である。

 

「そ~れい!」

「……えい!」

「なんと!?」

 

 何回かにしてのアイに向かったボールだったが、ここに来てアイがしっかりレシーブするというミラクルが発動した。アイのレシーブによって浮かんだボールを俺はネット際でジャンプしスマッシュを打つ。テレビとか体育の授業で見る連中の見様見真似だが意外に上手くできて俺自身驚いた。俺の打ったスマッシュは何の偶然か真っ直ぐにバレー部ちゃんの顔面に向かうという軌道を描き、アイのプレーに驚いていたバレー部ちゃんの顔面に突き刺さるのだった。

 

「ぷぎゃっ!?」

 

 女の子らしからぬ呻き声が聞こえた気がした。

 普通のボールより柔らかいからそんなに痛くはないはずだがパシンと結構な音が響いた。俺は大丈夫かなと不安になるが隣で飛び跳ねて喜んでいるアイの姿を見てまあいいかと無理やり納得する。というか喜んでいるアイだけでなく、相手チームの友達ちゃんもお腹を抱えて爆笑していることから本当に気に病む必要もなさそうだ。

 ボールを持ち直したバレー部ちゃんは無言のまま元の位置に戻る。

 

「……うっわ、あの目本気だ」

「マジで?」

 

 確かにバレー部ちゃんの目の中に燃える炎が見える気がする。

 どうやら俺の顔面への一撃がバレー部ちゃんの魂に火を付けたらしい。バレー部ちゃんは静かにボールを上げ、そして試合同然のように早いサーブを打ち出した。そのサーブは俺ではなく真っ直ぐにアイに向かう。結構な速度のボールにアイは慌ててレシーブの体勢に入る……が、ボールの軌道はアイの腕ではなく胸の辺りに向かっている。これは取れないか、俺も含めおそらく誰もが思っただろうがここで予想外なことが起きた。

 俺の睨んだ通りボールの軌道はアイの胸に向かった。

 そのままアイの体に当たって地面に落ちるかと思ったのだが――。

 

 ぽよん。

 

『な、なんだって!?』

 

 俺とバレー部ちゃん、そして友達ちゃんの声が重なった。

 何が起きたのか説明すると簡単だ。バレー部ちゃんのボールはアイの胸にぶつかり、その豊満な胸の弾力を持ってボールを跳ね返したのだ。思わず目を疑う光景だったが実際に起きたのだから信じるほかない。

 何が起きたのか分からないアイと一発で相手のコートにボールが帰っていったので何もできない俺。

 相手の友達ちゃんも同じらしくゆっくりとボールの行く末を見守っている。そんな中バレー部ちゃんはいうと……。

 

「まさかおっぱいでレシーブするなんて! これは新しいレシーブだわ。おっぱいを使った新しいレシーブ――正に乳(NEW)レシーブ!!」

 

 新しいと乳をかけて乳(NEW)レシーブってか?

 言っていることはアホだが言葉掛けが上手くて感心してしまった。とはいえそんな風に相手チーム二人が動かなかったためどうなるか、簡単である。

 受け手がいないため跳ね返ったボールは相手のコートに落ちる。

 向こうと違い二点取れば俺たちは勝ちのため、このポイントを持って俺とアイはバレー部ちゃんチームに勝利するのだった……勝因はアイのおっぱいレシーブという締まらないものではあったがな。

 それから少し休憩しバレー部ちゃんたちは二人で泳ぎに行ってしまい、俺とアイは一緒に海を歩いていた。

 アイを残しジュースを買いに行って戻ったとき、まあ海のお約束というか何というか、アイがナンパされている所だった。幼馴染贔屓かもしれないがナンパされてもおかしくないくらいにはアイは可愛い、それに小柄な体形に似合わない大きな胸も男の目を惹く要因だろう。

 

「……気に入らない……嫉妬かねぇ」

 

 アイが男に口説かれているのを見るのが気に入らない。

 自分で言葉に出して嫉妬だと納得して思わず苦笑すら出てしまう。俺の気持ちは一先ず置いておき、アイの顔を見るにやっぱり困っているようだ。無理やり誘われても突っぱねるほどには言うことは言うアイだが今回は少ししつこいか?

 

『駅でナンパしてくる人の目見ると、絶対私をホテルに連れ込もうとしてる目だよ』

 

 しれっと以前そういったアイに笑ったこともあったっけ。

 随分と前にそういうこともあったなと思い出しながら俺はアイの元に向かう。アイも俺に気づいたのか男に頭を下げてすぐにこちらに走ってきた。

 

「ユー君!」

「悪い、待たせたな」

「ううん、大丈夫」

 

 そう言ってアイは俺の腕を取り自分の腕を絡ませた。

 先ほどまで困り顔を浮かべていたアイが一瞬に笑顔に変わり腕も組んだことから、向こうもある程度察したようで俺に頭を下げて向こうに消えていった。

 俺はその様子を見て少し拍子抜けしたが、どうやらいい人みたいでアイと共に笑ってしまった。

 それから買ったジュースを二人で分けて飲みながら歩く。

 その間アイはずっと俺から離れることなく腕も組んだままだった。

 

「ユー君、こっちのジュースもいる?」

「いいのか? それじゃあ遠慮なく……うん?」

「えへへ~、間接キスだね……!」

「……ごほっ!」

 

 変なアクシデントもあったが特に変わったことはなく時間は過ぎる。

 ある程度歩き続け着いた場所は人目のない岩場、誰の目もなく騒がしくもなく静かな場所。俺とアイはゆっくりと腰を下ろした。

 波の音だけが静かに聞こえる静寂、隣に座ったアイがこてんと頭を俺の肩に当てる。

 しばらくお互いに何も言葉を発さない時間が続いた時、アイが口を開いた。

 

「ありがとねユー君。さっきの、助けてくれて」

「あぁあれか? 置いていった俺が悪かったのもある。ま、相手も悪そうな人じゃなかったけどさ」

「そうだけどさ……ふふ」

「?」

 

 小さく笑ったアイが気になって俺は視線を向ける。

 肩から頭を離し、目を合わせたアイは小さく語り始めた。

 

「ユー君はさ。いつも助けてくれるよね。ずっと昔から、どんな時もユー君が私の傍にいた」

「……………」

「甘えすぎかなって思って……ちょっとユー君離れしようって思っても、そんなことできるわけなくて」

「……アイ」

「ユー君が傍にいること、私がユー君の傍にいるってこと。これがもう当たり前のような気がして」

 

 確かにと、俺はアイの言葉を聞いて実感する。

 小さい頃からいつも隣にはアイがいた。ずっとずっと一緒にいて、それが当たり前のように俺も思っていた。成長して大きくなって、大人に近づくアイにドキドキしながらも何も変わることはなかった。

 

「……ユー君?」

 

 俺の顔を覗き込んでくる彼女。

 小さなことで笑い、小さなことで落ち込んだり、小さなことで怒ったり、小さなことで照れたり、小さなことで心配してくれるアイ。

 いつも傍にいてくれたアイを想うとこんなにも胸が温かくなる。

 ずっと幼馴染という関係、それもいいだろう。でもそれはきっとこの先何も変わらない。もっとその先へ、アイを特別と思うように、アイの特別にもなれるように……これは変わろうとしなければ絶対に変わることはないだろう。

 17年間生きてきて、ようやく勇気を出せるようになるとはヘタレってやつかね。

 

「……アイ」

 

「っ……はい」

 

 俺はアイの特別になりたい。

 アイを俺の特別にしたい。

 

 そんな想いを込めて。

 

「―――――」

「……っ!!」

 

 俺はこの想いを君に届ける。

 


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