月曜日のたわわ〜幼馴染はとてもたわわです〜   作:とちおとめ

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本話の登場人物。

ユー君
アイちゃん
バレー部ちゃん


これまで読んでくださった全ての人に感謝です。
とてもあっさりした終わりになっていますが、物語の性質上シリアスとかもなかったのでこんなでもいいかなと思っています。

どこかで時間を見つけて番外編でも投稿しようかなとは思っていますが予定はありません。


おわりのたわわ!

 ただ一言好きだと、言葉にするのは簡単なのに伝えることがこんなに大変なんて思いもしなかった。

 ずっと変わらない存在だからと気持ちに蓋を閉め、ただ一緒にいれることに甘え傍にいた。本当はずっと前から気づいていて、その先の関係を望んでいたというのに。

 

「……アイが好きだ」

「……っ!!」

 

 ずっと言いたかった言葉、ずっと胸の奥に秘めていた言葉を伝えた。

 目を大きく開いて驚いたような、けれども待ってくれたことが伝わるようなそんな目をするアイ。そんな中俺はというと言い切ったぞと言わんばかりに楽な気持ちになっていた。伝えるまでは煩いほどに心臓が脈打っていたのに今はとても静かで、ゆっくりとアイの言葉を待つだけになっている。

 波の音だけが響く静寂の中に俺とアイの息遣いだけが聞こえるそんな空間。

 しばらく、おそらくは数十秒か。それくらいの時間が経ったとき、アイが口を開くのだった。

 

「……それは幼馴染としての好きじゃなくて、私を一人の女性として言ってくれた言葉……なんだよね?」

 

 震える声でそう言うアイを反射的に抱きしめたくなったがもう少し待てと自制する。

 俺は当たり前だと言う意味を込めて頷いた。俺の反応を見たアイの頬をつーっと一滴の涙が流れる。多くはないが少なくはない、そんな涙を拭いながらアイは笑みを浮かべた。俺がずっと傍で見てきて、そしてこれからも見たいと思うそんな笑顔を浮かべて。

 

「ずっと待ってた。ユー君が私を好きって言ってくれるの……ずっと待ってた」

「アイ……」

 

 俺はたぶん、いや確実に忘れることはないだろう。

 誰かに告白するという瞬間、誰しもがそうだろうが絶対に忘れることはない。これはそれほどに自身の魂に刻まれるほどの瞬間だと思うから。そして何より――。

 

「私も好きです。ユー君のことが大好き、ずっと大好きでした……っ!」

 

 ずっと幼馴染だった女の子が、自分のもっとも大切な恋人という存在になった今を。

 彼女の浮かべる輝くような笑顔、腕の中で感じるこの温もりを……絶対に忘れることなんてできない。腕の中に感じるその温もりをこれでもかと確かめるように抱きしめれば、同じように抱きしめ返してくれることの嬉しさ。優しく頭を撫でればもっとして訴えるようにその身を押し当ててくる愛おしさ……うん、俺は絶対に忘れることはない。

 

「ねえユー君」

「どした?」

「私たちってさ……これもう結婚まで秒読みだね!」

「気が早いって」

「それはそうだけど、気分だよ気分♪」

「……まあ否定はしないし将来はそうなりたいと思うけどな」

「えへへ、ユー君♪」

 

 ちょっとばかり気が早くて、人様に見せられないほどにだらしなく笑うアイも……きっと色んな意味で忘れることはできそうにない。

 

 

――数ヶ月後――

 

 

 アイに告白し、恋人という関係になったそれからは日常に更に色が付いたような錯覚を覚えた。

 元々俺とアイは幼馴染として距離が近かったせいか、付き合いだしても特に振舞い方に変化はない。精々が登校中も下校中もずっと手を繋いでいたり、いつもは外で朝待ち合わせにしていたのにアイが起こしに来てくれるようになったり……何をしているかは置いといて人が寝ているベッドに潜り込んでいたり。

 とはいえ特に変化がないと思っているのは俺とアイだけのようで、周りの人にはすぐに気付かれた。姉さんやアイのお母さん、妹ちゃんやバレー部ちゃんには一瞬だったし、お兄さんや先輩さん、学校の友人たちは一瞬考えすぐ答えが出たのか納得したような表情をする始末。コンビニの徳森さんに至っては店のケーキを自腹で奢ってもらったりとそんな感じである。

 

「……色々あったなぁ」

「な~におっさんみたいな声出してんの」

 

 しみじみと呟いて出た言葉、それに反応を返したのはバレー部ちゃんだ。

 今俺がいるのは学校の教室、アイが委員会の集まりでおらずその席にバレー部ちゃんが座っているという構図である。バレー部ちゃんは呆れたような表情でいたが、すぐに表情を柔らかくして続けた。

 

「まあ分からないでもないけどさ、あんな可愛い彼女ができたんならね」

 

 何度目になるか分からない言葉な気がするが気にしないでおこう。

 アイが可愛いという部分に頷くとバレー部ちゃんは苦笑して背中を叩いてきた。女子の力と思っていたがやはりバレー部ちゃんのは痛い、女の子の皮を被った男なのではないかと言われても俺は信じるかもしれん。

 

「失礼なこと考えてる~? 言ってみ~?」

「ほんへもないれふ(とんでもないです)」

 

 ……本当に鋭いなバレー部ちゃん。

 ほっぺを抓られ痛い痛いと手を叩いてやめさせる。少しばかりジンジンするがまあ失礼なことを考えてしまった俺が悪いとして今回は言い返すことはやめておこう。

 

「普段のアイを見ていたら玉砕濃厚、今のアイを見ていたら玉砕確実……いやぁ世の中辛いね」

「何のことだ?」

「あはは、アイのことだよ。あの子、すごいモテてたんだから」

 

 まあバレー部ちゃんと話しをすることも少なくないしアイがモテるのは知っていたことだ。

 告白されたり手紙を渡されたことがあるのも何度か見たことはあるくらいだし。

 

「可愛らしい顔、保護欲を誘う小柄な体形、そんな体に不釣り合いな豊満な胸、そして性格は優しいときた。こんなのモテない方がおかしい」

 

 アイを示す言葉に全面的に頷いているとバレー部ちゃんはまた呆れたような目をする。そんな目をされても俺にどうしろというのか、否定はまあする気はないができないしどういった反応をしろと。

 

「でもみんな大方気づいてたのさ、あのアイが本当に楽しそうにいられるのはあんたの隣だけってね。だからアイに告白とかしてたのは他のクラスばかり。このクラスはみんなあんたとアイのバカップルなやり取りを見てるからさ」

「なんだよバカップルなやり取りって」

 

 バレー部ちゃんがクラスの人間に視線を向ければうんうんと頷く……無駄に団結力あるなこいつら。

 

「……だからさ」

 

 そういってバレー部ちゃんは少し真剣な顔になって続けるのだった。

 

「アイのこと幸せにしてやんなよ? ……まあ今も十分幸せみたいだけど、今よりももっと、もっと幸せにしてやりな。あの子の親友としてあんたにお願いする」

 

 そんなこと言われるまでもない。

 そう返すとバレー部ちゃんは満足そうに頷いて、そして少し身を寄せてアホなことをしゃべりだした。

 

「でも本当はアイは私が欲しかったのに!! なんだろうこの感じ……これが寝取られた気持ち!?」

「お前は何言ってんだ!」

 

 何があろうとバレー部ちゃんはブレない。

 でもだからこそ愉快な友人であることに変わりはないのだろうが。

 

「でもあながち間違ってないんでしょ? カマ掛ける感じで聞いたらあの子顔真っ赤にして頷いてたし。ぐふふ、その辺詳しく聞かせてはもらえんかいなユー君や」

「ドアホ」

「いたっ!?」

 

 いい加減うざかったのでチョップを額に入れておいた。

 というかアイさん何自爆してんですかね……というか一昨日妙にアイがそわそわして顔を赤くしてたけどバレー部ちゃんにアレを追及されたからなのか。

 まあ俺から言うことはないのでバレー部ちゃんには諦めてもらおう。

 それにそろそろアイも戻ってくるだろうし――。

 

「ただいま~、ちょっと話長くなっちゃったよ」

「おかえり~! 所でアイさ、ユーとセッ――」

「バレー部ちゃんちょっとコブラツイストの練習に付き合ってくんね?」

「え、ちょ……ぎゃああああああああっ!!」

「ユー君どうしたの!? って、口から魂が……」

「ふ、悪は死なねばならんのだ」

「いやいや私はまだ死にたくな~い!」

 

 結局こんな騒がしいやり取りは担任が来るまで続くのだった。

 時間は流れ放課後、俺とアイは真っ直ぐ家に帰らず街全体が見渡せる高台に来ていた。二人揃ってベンチに座りその景色を眺めているとアイが俺に寄りかかる。こうして二人でいるとアイがこのように寄りかかってくるのは最早当たり前と言ってもいいもので、俺もいつもと同じように寄りかかってきたアイの頭を撫でる。

 

「……本当、幸せだなぁ」

「しみじみとしてんな」

「えへへ……でも本当だもん」

 

 アイが顔を上げて俺を見つめてくる。

 そしてゆっくりと手を伸ばして頬に触れた。少しだけひんやりしていたがそれが少し心地よかった。

 

「こうして触れることができる、触れてもらえる、好きと言ってもらえる……それが本当に幸せ」

 

 言葉に嘘などないように笑顔を見せるアイが愛おしくて、俺はそんなアイを抱きしめた。

 応えるように俺の背にもアイが手を回す。こうして抱き合ったのはここ最近何度目か、付き合いだしてから少しの時間を見つけてはこんな風に触れ合っている気がする。

 

「ユー君」

「うん?」

「キス……して欲しいな」

「お願いされなくてもするよ」

 

 そういってアイに口づけをする。

 一度離れては、また近づき、また離れては近づきと……本当に俺は馬鹿みたいにアイが好きなんだなと実感する。アイの温もりを感じて幸せな気分になり、心がポカポカと熱を持つ。暫くそうしていたがいい時間になったので名残惜しいが顔をアイから離す。

 アイの方は切なそうにしていたが、すぐに表情を切り替え笑みを見せてくれる。

 

「……これ以上続けると私が我慢できなくなっちゃいそうだし、帰ろうかユー君」

 

 恥ずかしそうにはにかむその姿、いつ見ても俺をドキドキさせる仕草をしてくれる。

 お互いに手を繋ぎその場所を後にして帰路に就く。おそらくこれから数えきれないほどの時間をアイと一緒に過ごすのだろう。こうして手を繋いで歩くのもそうだし、遠くに出掛けるのもそう……多くの時間と共に多くの思い出を作っていくはずだ。

 

「アイ、ずっと傍にいてくれ」

「うん。ずっと傍にいるよ。それこそ嫌だと言われてもね♪」

 

 アイを想い、アイに想われ、こんな幸せな日常を歩き過ごしていく。

 愛する存在が隣にいることの幸せ、それを噛みしめ俺とアイは傍に居続けるのだった。

 

「そういえばユー君」

「なんだ?」

「私たちさ、この前大人の階段上ったけど」

「お、おう……」

「ふふ、もう一つ……実は大人の階段を上ったのでした」

 

 そういってアイは胸を張る。

 アイの動きに合わせてぼよんと豊満な胸が揺れた。

 そういえば前に言ってたっけ、また胸が大きくなったような気がするって。俺の予想を裏付けるように、アイは教えてくれるのだった。

 

「Iカップ改め、Jカップになりました!」

 

 ……とりあえず一言言うなら。

 

 

 俺の幼馴染はたわわでした……ってか?

 




前書きにも書きましたが本当にありがとうございました!

書きたいことを書き続けた結果ではありますが無事に終われてホッとしています。

ラストやり取りですが、アニメの最後と同じように使いたかったので書きました。


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