月曜日のたわわ〜幼馴染はとてもたわわです〜   作:とちおとめ

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ジャックとジャンヌ、ジャックが当たると祈って投稿!


番外編です。


番外編
アイちゃんと身体測定


 その時アイに戦慄が走った。

 

「う、うそ……っ!?」

 

 信じられない、そのように目を見開く先にあるのは体重計。女子にとってデリケートな体重と言うデータ、アイが乗った体重計の示す針の先にある数字は――50。

 

「……な、何かの間違いです。もう一回!」

 

 アイは一回体重計から降りて再び乗る。

 けれども現実は無慈悲、いくら乗りなおしたからといって体重が変わることはない。数字に絶望し硬直するアイの姿に、担当の先生は「何を大げさな」と呆れた視線を投げかけていた。そのような視線を向けられたことでアイも悔しそうに顔を歪めるのだがここで一つ、ビビッとアイの頭の中を一つの閃きが駆け巡った。

 

「……(クイクイ)」

「うん? ……あぁ」

 

 アイは背後に控えていたバレー部ちゃんに指でこっちへ来いと合図をすると、バレー部ちゃんは何かを察したのかゆっくりとアイの背後に立った。アイとバレー部ちゃんのよく分からない行動に、先生と周りの女生徒たちは何事かと見守っている。

 果たしてアイは何を思いついたのか、そしてそれは定められた体重の数字に変化を及ぼすことができるのか。

 話し声は消え去り齎されたのは沈黙と言う名の静寂、小さく緊張の息遣いだけが聞こえるそんな場所で、アイとバレー部ちゃんは動き出すのだった。

 

「手を」

「ははぁ」

 

 アイがそう告げると、バレー部ちゃんは静かに腕を突き出しアイの背後からその胸へと向ける。

 優しく、壊れ物を扱うかのようにバレー部ちゃんの手がアイの豊満な胸を支えその重みを一手に引き受ける。重力に従い重さという概念を付与されていたバストはそれを超越し、重さから解き放たれた現実はアイの乗る体重計にも影響を及ぼす。

 50を刺していた針はゆっくり動き、その動いた針は45を刺して止まった。

 定められた体重の数字を変革することに成功したアイは言葉に言い表せない達成感を感じる。5キロもの重さが下がり45という数字は納得のものである。やり切った表情のアイ、クスクスと肩を震わせているバレー部ちゃん、目の前で行われた奇跡に拍手を贈る女生徒たち……けれども残念かな、先生だけは違った。

 目の前で行われた奇跡を全否定するかのように、先生は無慈悲な言葉を告げるのだった。

 

「駄目に決まってるじゃないの。はい。50っと」

「……ですよね~」

 

 大げさな前振りだったが何も変わらない、これが現実なのだから仕方ないのだ。

 しかし実際の話アイの胸を持ち上げて5キロもの重さが減ったという事実だが、女性のバストはJカップほどの大きさがあるとおよそ5キロほどの重さがあるらしい。普段ブラで支えているとはいえ、5キロの重さを首の下に抱えて生活しているという……それは肩が凝ると言うのも納得の話である。

 

「あ~あ、結局変わらなかったぁ」

「まあしょうがないでしょうに」

 

 身体測定が終わり教室へ帰る途中アイが小さく呟きそれにバレー部ちゃんが答える。

 気を落としているアイにバレー部ちゃんはニヤニヤしながら続けた。

 

「でもすごく成長しているということですなぁ。ユーに揉まれ愛されてるならそりゃ大きくなるってやつかねぇ」

「ちょ、ちょっと廊下で何てこと言ってるの!」

 

 いきなりのバレー部ちゃんの発言にアイが顔を真っ赤にして声を荒げる。とはいえアイにとって幸運だったのか周りに人はいない、今のバレー部ちゃんの発言は特に誰にも聞かれてはいなかった。その事実にホッと一息吐いたがすぐにアイはバレー部ちゃんとキリッと睨みつける。睨みつけると言っても本気ではないのが分かっているでバレー部ちゃんは笑みを崩さない。

 

「……全くもう」

 

 そんなバレー部ちゃんにアイも苦笑し諦める他なかった。

 アイが一先ず落ち着いたくらいで、バレー部ちゃんは少し真面目な顔になって話し出した。

 

「けど前の身体測定の時よりは明らかに大きくなってるよね」

 

 またその話するの? そんな言葉がアイの瞳から伝わってきたバレー部ちゃんだったがどうなのと続きを促す。ここまで来ると決してバレー部ちゃんが譲らないのはアイ自身分かっているので素直に答えることにするのだった。

 

「……確かに1カップ大きくなったけど」

「やっぱりねぇ。微妙に重さが違うと思ったのよ」

「重さが分かるって……呆れればいいのか凄いと思えばいいのか」

 

 自信満々なバレー部ちゃんに今度こそアイは呆れたような視線を向けた。

 確かにバレー部ちゃんに答えたようにアイはIカップからJカップへと成長した。胸の重さで肩凝りに困ることも少なくはない。そして何より学校では男子生徒が、外では大人を含めた男性たちが自身の胸に視線を向けてくることもあって正直……アイは自身の持つ豊満な胸があまり好きではなかった。

 

「……好きじゃなかったんだけどな」

「?」

 

 ボソッと呟いたアイにバレー部ちゃんは首を傾げる。

 そんなバレー部ちゃんの視線に気付かずアイは恋人であるユーのことを思い浮かべた。ユーに対して胸を押し付けたりすると顔を赤くして照れてくれる、大きな胸を魅力として真っ直ぐに受け取ってくれる……そして何より、ユーが顔を赤くして巨乳は好きだと言った時、アイは初めて自身の胸に感謝をした。

 大きすぎるこの胸でもユーが喜んでくれるのならいいかなと……そして当たり前だがこの胸を見せる相手など一生を通してユーしかいないとアイは思っている。勿論胸だけでなくアイの多くを好きだと言ってくれるユーに対してアイは既に限界を感じさせないほどの愛情を抱いていた。

 

「……うふふぅ」

「アイ~?」

 

 両頬に手を当てて顔をだらしなくしているアイ。

 バレー部ちゃんは一体どうしたのかと心配になるが、明らかにここにはいないユーのことを考えてトリップしていることが分かったのでやれやれと苦笑するだけだった。

 トリップしているアイにバレー部ちゃんは何を思いついたのかこんなことを囁く。

 

「エッチの時はやっぱりその胸を使ったり……?」

 

 普段ならそんなこと答えるわけもないのだが、今のアイはすっかり油断していた。

 

「えへへ、優しく挟んであげて口も一緒に……はっ!?」

 

 そこで何を口走ったのか気づいたのか一気にアイの首から顔にかけて真っ赤に染まる。

 赤い林檎のようになってしまったアイは小さく俯き一言――。

 

「忘れて……今言ったことは綺麗さっぱり忘れて」

 

 そこまで言われてしまってはバレー部ちゃんもニヤニヤ笑いはしても追い打ちを掛けようとは思わなかった。

 けれどと、バレー部ちゃんは思う。アイは今まで本当に可愛らしかったが、ユーと付き合いだし幸せな日々を送る中でその可愛らしさは更に磨きがかかった。恋をすれば人間は変わるし綺麗になる。雑誌かテレビかは忘れたがそんなことを聞いたなとバレー部ちゃんは思い出した。

 

「……恋人かぁ、アイを見てると私も欲しいなって思っちゃうかな」

 

 少しだけ、バレー部ちゃんはそう思うのだった。

 アイはそんなバレー部ちゃんに一瞬驚いたが、すぐに良い恋人ができて幸せになってほしいと願う。例えどんなにからかわれたとしても、弄られてしまうことがあったとしても、アイにとってバレー部ちゃんは自慢の親友であることに変わりはないのだから。

 

「きっと素敵な人が現れるよ」

「そうかなぁ……うん。アイがそう言うなら信じてみようかな」

 

 親友とは素晴らしいものだ。

 その縁は決して切れず、いつまでも続いていくもの……アイはそんな確かなものを感じバレー部ちゃんの幸せを願うのだった。

 

 

 

「あ、ユー君!」

「終わったの?」

「うん。一緒にいこ」

「おう」

 

 

「胸焼けしそう……私はあんな風にはなれそうにないなぁ」

 

 ……恋の仕方、付き合い方は人それぞれである。


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