出てくる女の子はグラドル幼馴染の子です。
顔が気になった方は“月曜日のたわわ すまん”で検索すると出てくるので見れると思います。
突然だが、俺にはグラビアアイドルの幼馴染がいる。
まだ高校生という若さではあるのに、大人顔負けのプロポーションを惜しげもなく披露し、世の男の心を鷲掴みにしている幼馴染だ。昔はずっと一緒に遊んだりして過ごしていたのに、最近になっては撮影の仕事が忙しいのかそういった時間を作ることはあまりできなくなった。まあ男女という関係上、高校生にもなって二人で遊んだりする関係というのもそうないか。恋人だと言うならまだしも、俺とあいつはそう言った関係ではないのだから。
「……雑誌か」
学校帰り、コンビニに立ち寄った俺の前にあったのは一つの雑誌。ただの雑誌なら見向きもしないのだが、表紙を飾っている女性が俺のよく知るあいつ――幼馴染だったため足が止まってしまっていた。
あまりこういった雑誌を手に取ることはないため、少しばかり緊張しながら雑誌を手に持つ。大きく書かれているキャッチフレーズは“人気急上昇中、あざとさを兼ね備えた話題の美少女、ハジけるH乳”なんて言葉だ……正直身近な幼馴染を指す言葉がこんな言葉だと少しだけ複雑に思ってしまう。
「……H乳……あぁHカップってことか。まああいつ巨乳だしなぁ」
雑誌に写るあいつは水着姿で、その豊満なボディが惜しげもなく晒されている。中学辺りから急激に成長していたのは知っていたがまさかここまでとは……まああいつよく肩揉んでとか言ってきたしな。
懐かしい記憶を思い出す傍ら、ちょっとだけ遠い場所に居るんだなと寂しさも感じてしまう。ただの幼馴染なら特に何を思うでもないのだろうが、憎からずあいつのことを想っているからこそこんな気持ちを抱いてしまうのだ。
グラビアイドルとして雑誌に載るたびに、買ってと学校で言われたりメールで言われたり……でも俺はつい恥ずかしくなって興味ねえからとその話を終わらせてしまう。そのたびにあいつはニヤニヤと笑って俺をからかって……それが面白くなくて意地になって、結局レベルの低い言い争いに発展してしまうのだ。本当はあいつをよく知る一人の幼馴染として、凄いじゃんって言いたいのに。
暫くボーっとしていたせいだろうか、今になって俺は店の外から誰かがガラスをコンコンと叩いていることに気づく。一度でもコンビニを利用したことがある人なら分かると思うが、雑誌を置いている場所の裏は基本中と外を隔てる一枚のガラスが設置してある。そうジロジロ見てくる人はいないが、簡単に言ってしまうと店の外から中はバッチリと見えるのだ。
……さて、どうでもいいことを長々と述べたがここに来て俺は漸く何なんだと思い雑誌から視線を上に上げた。俺が視線を上げた先に居たのは一人の女性、ニヤニヤと笑みを浮かべながらそこに居たのは……。
「……んなっ!?」
周りのお客なんてなんのその、俺は驚きで声を上げてしまう。
俺の視線の先に居た女性、まあお分かりだろう。今俺が見ていた雑誌の表紙を飾っていたグラビアアイドル、幼馴染その人だったのだ。
あまりに急な幼馴染の登場に頭が真っ白になった俺、そんな俺の耳にメッセージの受信を告げるスマホの通知音が届く。ほぼ無意識にスマホを取り出し確認すると、送り主は目の前の幼馴染で書いてあった言葉はこうだった。
『あれ~? 興味ないんじゃなかったの~??』
いつも聞くようなからかう声音がそのまま聞こえてきそうな文面だった。俺はどう反応すればいいのか分からず唖然としていたけれど、あいつは隣に居たマネージャーに腕を引っ張られて歩いていく。段々と距離が離れる中、あいつは最後に俺の方に振り返ってウィンクを一つして去っていった。
「……………」
突然のことに付いていけなかったが一つだけ、あのウィンクは可愛かったなと思うのだった。
突然だが、私には幼馴染が居る。
幼いころからずっと一緒に居た大切な幼馴染だ。最近はグラビアアイドルの仕事が思いの外忙しくて二人っきりの時間が取れないけれど、少しでも会えるだけでその日を笑顔で過ごせるほどには大好きな幼馴染だ。
好き、大好き、この気持ちは嘘じゃない。私はあいつが好きで好きで仕方ないのだ。素直に気持ちを伝えればいいじゃんって友達にはよく言われるけど、私だって結構な恥ずかしがり屋だ……あいつ限定で。だからあいつの前だといっつもからかうような言動をしてしまう。
「……あいつ、今何してるのかな」
傍に居ないあいつのことを考えて、私はスマホで時間を確認する。時刻は丁度下校時間と言ったところで、帰宅部のあいつも漏れなく学校から家に帰っている時間だろう。
最近遊べなくて寂しい、家にも行けてないな……なんて思っていると、ふと目に入ったコンビニの雑誌コーナーにあいつは居た。隣に居たマネージャーに少し許可を取り、気づかれるだろうくらいに傍に行ったのにあいつは私に気づかない。何をそんなに真剣に見てるのだろうか、そう思ってあいつの見ている雑誌に目を向けて……私は嬉しさのあまり大声を上げそうになった。
もしかしたら私ではなく別の子かもしれないのに気が早いと思われるかもしれないが、私に気づいたあいつの反応でその懸念も払拭される。あいつは私の写真を真剣に見てくれた……いつも興味ないと言っていたあいつが見てくれた。それが今まであったどんなことよりも嬉しかった。単純だと笑われそうだけど、本当に嬉しかったんだ。
結局その日はいつも通りあいつをからかうようなメッセージを送って終わりだったけど、次の日の私は最高に機嫌が良かった。身支度を整えて学校に向かうために家を出ると、お向かいの家から出てきたのは幼馴染のあいつ。
「おっは~!」
「……おう」
時間が合えば一緒に学校に行くのは当たり前、自転車を手で押すあいつの横を歩く。そんな中でふと、私はこんなことを口にした。
「ねえ、久しぶりに後ろに乗せてよ」
「はあ? まだ時間は全然余裕じゃん」
「いいじゃない。偶には乗りたいのよ」
「……まあいいけどさ」
めんどくさそうだけど、私の気持ちを汲んでくれるそんな所が好き。
あいつの後ろに乗って、落ちないようにしっかりと抱き着く。Hカップにまで成長した大きな胸があいつの背中に押し当てられるけど、私は恥ずかしさよりも幸福な気持ちが勝って幸せになる。まああいつは結構恥ずかしそうにしていたけどね。
「……安心してね。こんなことするの、アンタだけなんだから」
「何だって!?」
「ふふ、なんでもな~い!!」
あいつの後ろに乗って行く通学路、歩いている他の生徒が注目してくる。自分で言うのもなんだがグラドルとしてそこそこ人気になってからこんな視線が増えたのも感じていた。中にはイヤらしい目で見てくる視線もあったけど、あいつに抱き着いていたら嫌な気持ちも全部吹き飛んでしまう――そして。
人気になったからこそ、付きまとう存在が居る――所謂パパラッチだ。
マネージャーや所属する事務所の社長からもある程度は気を付ける様に言われているが、私はスカウトされた時に好きな人がいることを伝えているし、何より恋愛は好きにしていいとこの業界には珍しいがOKをもらっているのだ。だからこそ、私は人並みの中に見つけたカメラを持った人に笑顔でピースする。
撮りたければいくらでも撮ればいい、撮られて困ることなんて何もないのだから。
パシャっと、小さくシャッター音が聞こえた気がした。
きっとあのパパラッチのカメラの中に私の笑顔が保存されたことだろう。グラドルとして浮かべていた仮の笑顔じゃない、好きな人の傍で幸せを噛み締める最高の笑顔を浮かべた私の姿が。
結局その後、あの時の写真は週刊誌に載る形になった。
“人気急上昇の現役JKグラビアアイドル、幼馴染に売却済!?”なんて言葉で。
「おい、お前どういうことだこれ!」
「幼馴染って言ってたな。うらやまけしからん!!」
「うるせえ!!!」
クラスで友達に事の真意を聞かれているあいつを見て、ちょっと酷いかもしれないけどクスクスと笑ってしまった。でもこれで公になったねと、今日あいつにメッセージを送ってみるのもいいかもしれない。
あいつの傍に近づくと、この事態をどうにかしてくれと目で訴えてくるあいつの姿。でもごめんね、私はアンタが大好きなんだ。でも素直になれないから、だから今日も私はアンタをからかうようにこう言うのだ。
「すまん♡」
でもいつかは届いて欲しいな。
アンタを好きなこの想い。