ハイスクールD×D 我埋葬に能わず   作:シグマ強攻型

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お知らせ

主人公の名前を「リボー」から「アッシュ」に変更しました。


第2話

 

『最適化』という神器は特筆するほど希少な神器ではない。十把一絡げと言うほどでもないが、やはり『魔剣創造』などと比べると地味で使い道も少ないと思われている。やはり『様々な魔剣を創造する』『様々な魔獣を生み出す』など派手な能力に人は目を移しがちなのだ。だが―――。

 

 

「要は頭の使いようだ」

 

 

『常に最適の状態を維持する』能力は言ってしまえば、刃は刃こぼれすることはなく銃は常に弾丸が入っている状態を維持すること。つまり、地味ではあるが継戦能力などを考えれば決して他の神器にも引けをとらない。むしろ、アッシュのような異能持ちが使えば状況次第では『赤龍帝の籠手』をも圧倒することができる。

 

 

「糞…なんだよこいつは! なんで腕を切り落としても腕があるんだよ!」

「『常に最適の状態を維持』っていうのは自分の体も効果のうちか」

 

 

アッシュは半狂乱になって光の槍を放つ堕天使を見据えながら突き進む。体にいくら槍が刺さろうとも動きは止めない。懐から取り出したのは柄。柄を掴んで振ると、そこには銀色に輝く刃があった。教会のエクソシストが使う兵装の一つ『黒鍵』。通常の剣として使うものもいれば投擲するものもいる。アッシュはその両方で、時に斬り払い、時には矢のように投擲する。

 

 

「『灰は灰に塵は塵に』」

「なに―――ッ!? 馬鹿な!?」

 

 

堕天使の羽を貫いた黒鍵。それは何ら不思議ではない。だが、問題なのは貫かれた羽が灰となって空に消えたこと。

 

 

「何故だ…何故!?」

「理解する時間は与えねぇ。埋葬なんぞさせねぇ。ただ灰となって消えろ」

 

 

堕天使の体に黒鍵が殺到する。ハリネズミのようになった堕天使は断末魔も上げる暇もなく灰となって消滅した。刺さる場所をなくした黒鍵は次々と地面に落ち、アッシュが指を鳴らすと黒鍵は柄を消し、アッシュの下へと帰っていった。

 

 

「討伐完了」

 

 

任務であった堕天使討伐を終了させたアッシュはタバコに火をつけながら報告を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

初陣から2年ほどしか経っていないが、すでにアッシュは千を超える任務についていた。理由としては、元々『大罪人として任務の中で死ね』と思われていたことに加えてアッシュの後ろにガブリエルが居ることによるやっかみや嫉妬もあるのだろう。結果としてほとんどがAランク以上の任務をたった一人でこなしてきた。だが、自身の異能と神器、訓練で培った技術などを惜しげもなく使い、今日まで生き残った。異能も進化し続けており、『祝福』のように異能を付与することができるまでになった。纏う雰囲気は年に似合わず剣呑なものへと変わり、タバコも酒も飲むようになった。

 

 

「次は確か……『癒しの聖女』様の護衛か」

 

 

神器を発動すれば常に最適の状態を得ることができる。そのため、酒をいくら飲んでも酔うこともなく、タバコを吸っても体に異常が起こらない。教会の人間が飲酒喫煙はどうなのかと言われそうだが、喫煙は風の流れを知るため、酒は見知らぬ土地に行った時の情報収集のツールとして使うという建前である。ぶっちゃけて言えば、教会へのささやかな反抗である。

 

 

ガブリエルとの邂逅の後、アッシュはガブリエルの加護を直接受けることとなった。ガブリエルが自ら作り上げたカソックはそれだけで低級神器程度の能力を持つ衣服となった。そして、任務から帰るたびにガブリエルに呼び出されて抱きしめられる。殺し合いのたびに強くなり、今では教会でも上位の戦闘力を持つアッシュを誇らしげに悲しげに見つめるガブリエルに徐々にアッシュも警戒を緩めていった。だが、決して心を開いたわけではない。すでに、アッシュの教会側への不信感は体に染み付いていた。

 

 

「―――はい。なんだフランか」

『何だ、はないだろう? それより、帰りにボクのラボに来てくれ。ぜひとも見せたいものがある』

 

 

紫煙をくゆらせながら取った電話から聞こえてきたのは教会でも名のしれた『技術者(マッド)』の声。このフランと呼ばれる少女は、アッシュと同じく教会に信仰などはなくただ『近くにあったのが教会だったから』という理由で教会に籍をおいておりアッシュ程ではないが煙たがれている少女でもある。

 

 

「見せたいもの? またライフル弾をそのまま発射する拳銃とかじゃないだろうな?」

『それを難なく使えるキミは凄いよ。あれ、反動すごすぎて天使連中ですら撃てなかったんだぞ? 『最適化』様々だね』

 

 

アッシュが先ほどまで使っていた拳銃を始めとして、全ての武装はこのフランが作ったものだ。威力・性能ともに低級神器並。しかし、ピーキーすぎるため扱える人間がいなかった。そこにあらわれたのがアッシュだった。

 

 

「『最適化』という神器は性能に対して評価が正しくない。ボクの神器で調べた結果だと禁手化すると『自分の体を敵対存在と戦闘するにあたって最適状態に作り変える事ができる』んだ。何故これが注目されていないのか、何か陰謀を感じるな。ていうか、キミすでに禁手化に至っているよね?」

「無駄口を叩くな。後二時間くらいでそちらにつく。用意しておけよ?」

『当然。ボクの作る武器を扱える人間は君しかいないからね。君の機嫌は損ねたくない』

「言ってろ」

 

 

電話を切るとちょうど教会からの迎えがやってきた。相変わらず「なんで生きているんだ」という顔をされるがもう慣れたもの。二言三言報告をした後、アッシュは迎えがやってきた道を進んでその場を後にした。さり際に迎えの連中が言っていた「たった一人で、あの年齢で任務を完遂なんて……バケモノが」という言葉を聞き流して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フラン。何用だ?」

「おぉ~来たね来たね来たね~。待っていたよ。まぁ、とりあえず、そこに座ってテキトーになんか飲んでいてくれ」

 

 

数時間後、教会本部の敷地の隅の隅にある小さな家。そこにアッシュはいた。彼を出迎えたのはスレンダーな長身の美女。しかし、だというのにボサボサの髪、眼の下に目立つ隈、充血して真っ赤な目がせっかくの美貌をマイナスにしている。とにかく、促されたとおり椅子に座ってコーヒーでも飲もうとすると先客がいた。

 

 

「ん? いよぅアッシュ。お前もフランに呼ばれていたのか?」

「ゲルト。お前もか」

 

 

アッシュと同じくカソックに身を包んだ男。ゲルト・ハイマン。ドイツ出身の男でアッシュと同じく異能持ちで冷遇されている人物である。アッシュとははみ出し者同士気が合うのかたまに一緒に任務に赴いたりしている。

 

 

「フランがなんで俺らを呼んだか知っているのか?」

「さあ? だが、絶対武装関係だろうな。つーか、アッシュ。今回お前が討伐した奴ってどうも堕天使の中でも中堅だったらしいぞ? ウチのお姫様が腹抱えて笑ってた」

「相変わらずラジエル様は性格悪いな」

「おいおいそう言ってくれるな。否定はしないが」

 

 

ゲルトもアッシュと同じく大天使の加護を受けている。その名はラジエル。アカシックレコードと同一視されることもある膨大な知識の集約書『ラジエルの書』を所有している天使。性格は天使のくせして小悪魔的というかとにかくそんな感じ。そんな彼女を一言で表すなら―――。

 

 

「ていうかさー。あのラジエル様が堕天しないなんておかしいと思うんだよ」

「フラン…まぁ、俺もそう思うが」

「……ひでぇ言われようだな」

「いやぁ…いくら未来予知もできるからって『孤児として捨てられた瞬間に拾ってそこから逆光源氏計画』とかないわー」

 

 

いつの間にか参加していたフランがげんなりしながらそう告げる。ゲルトもアッシュと同じく異能持ちだったため親に捨てられた。土砂降りの中路地裏の残飯を漁っていたゲルトを拾ったのがラジエルだった。

 

 

「別に食いもんくれるんならよくね? 神器や異能の使い方も教えてもらったし俺からすれば多少性格に問題あろうが関係ないね」

 

 

ゲルトの異能と神器はアッシュ以上に危険なもの。直接的戦闘力はないがそれ以外が危険過ぎる。あのミカエルですら処分したほうがいいのではと危惧していたほどなのだ。

 

 

「そういえば、ゲルっち。キミこの前ネコ型のはぐれ悪魔の姉妹を助けて悪魔側に引き渡したらしいね~。噂になってたよ」

「いや~その姉の方が黒髪ナイスバディで俺のドストライクでな。まぁ、妹もあと数年すればいい感じに―――」

「……女好きの神父、か」

「何が凄いって、この女好きの神父がある意味一番『神様の意思』を体現していんるんだよねぇ」

 

 

アッシュは酒もタバコも飲むがその他は一般的な神父とそう変わらない。しかし、ゲルトは違う。酒もタバコも飲むのは同じだが、それ以外にギャンブルもすればワンナイトラブもするし、肉体関係だけの相手なら世界中にゴマンと居る。しかも、それは人間・悪魔・天使・堕天使・妖怪と見境がない。だが、その御蔭なのかは知らないが各陣営に結構太いパイプが出来ており、今ではミカエルの信頼を得るまでになっており他陣営へのメッセンジャーもやっているほど。

 

 

「疎まれているけど実は所属する組織のトップの信頼厚い秘密エージェント…どこの特命係長だよって話だよね~」

「それいじょういけない」

「俺は神の『汝隣人を愛せよ』という言葉に従っているだけだ」

「……意味合いが違うような気もするが」

「いやいや。まぁ、これは俺の持論なんだが……神の僕であるというならば種族の垣根を超えて全ての種族を愛するべきだと思うんだ。なぜなら神は全てを愛しているからだ」

「……とてもじゃないが『誰もが体の中に神を持っている』と集会でいってのけたやつの言葉とは思えんな」

「ゲルトって全てを愛するとか言っている割に敵をたくさん作るよね」

「こちらが愛しているからといってあちらが愛してくれるとは限らないのだよ」

 

 

やれやれと肩をすくめるゲルトに二人は微妙な顔をするのだった。

 

 

 

 

 

 

「で? 結局俺らを呼んだ理由ってなんだ?」

「フッフッフ。これを見たまえ!」

「あ? 十字架?」

 

 

本来の要件を思い出し、フランに話を向けると彼女は思い切り壁を取り外した。その中空出てきたのは2つの十字架。大きさはアッシュやゲルトの身の丈よりも大きい。フランから触ってもいいと言われたのでそれぞれ触ると違和感に気づいた。

 

 

「……銃火器?」

「しかも…これ口径から考えてグレネード弾とかライフル弾を撃ちだすやつだぞ」

「フッフッフ。フが3つ。それこそボクが作り上げた暫定最強兵器『パニッシャー』!」

「おいアッシュ。このマッド『暫定』っつたぞ」

「ああ言ったな」

 

 

仕様書を見れば確実に言えることがある。これは常人の平気ではない。ライフル弾を機関砲の弾として使用するだけでなく、グレネード弾を発射する。更には総重量が凡そ二百キロという超重量の携行兵器。

 

 

「恐らくこれを扱えるのは人間では今のところ君たち二人。更にボクの神器で強化したから三陣営でも扱えるのは各陣営に二人いればいいほう。さぁ! 存分に扱うといいよ!」

 

 

 

どこぞの悪役のように高笑いをするフランを尻目に、二人はそれぞれパニッシャーを手にとって思い思いに振り回した。

 

 

「若干取り回しづらいな」

「まぁ、それは慣れだな」

 

 

通常ならば持ち上げることすらできない武器。しかし、彼らはそれを箸でも持っているかのように振り回している。アッシュは『最適化』があるため問題はない。だが、ゲルトが持ち上げられるのはなぜか? それは『可能性』があるから。

 

 

『予知眼(ヴィジョンアイ)』と呼ばれる神器があった。これは数秒先の未来を予知することができる神器で、これ自体はありふれた神器だった。しかし、禁手化を行った結果この神器はゲルトの異能と融合した結果突然変異を遂げた。ゲルトの持っていた異能は『アカシックレコードへのアクセス権と検索権』。アカシックレコードに自由にアクセスし、情報を閲覧することができる権利だった。これがミカエルすらも危険視した異能だった。そして、そんな異能と神器が融合禁手化した結果トンデモ性能の神器が爆誕した。ラジエルにより名付けられた新たな神器は『可能性の眼(アイオン・アイ)』と呼ばれた。その能力とは『ありとあらゆる可能性を引き寄せ現実のものとする』こと。たとえ、コンマ以下であろうとも可能性があるならそれを引き寄せる。たとえそれが誰からも恐れられるドラゴンであろうと可能性があるから殺せる。

 

 

『可能性の獣』―――それがゲルトに付けられた二つ名だった。

 

 

「さて、と。俺は次の任務に行く」

「確かアーシア・アルジェントの護衛だったか? なんで上も教会内で嫌われているお前を護衛に回すかね?」

「戦闘能力だけは教会トップクラスだからじゃないかな? それにキチ○イしかいない悪魔祓いの連中よりも精神的にマシだからじゃない? 上層部は個人的な好き嫌いを仕事には持ち込まないでしょ」

「普通は死ぬような任務に活かせるのも信頼ってやつかね?」

「知らん。とにかく俺は行く。このパニッシャーの初陣にもちょうどいいだろうしな」

「とりあえず、異常を発見したらすぐにボクに見せてね~」

 

 

アッシュは後ろ手に返事をしながら研究所を後にした。そして、ゲルトもパニッシャーを背に担いで席をたった。

 

 

「ほんじゃま俺も次の任務に行こうかね」

「ん? キミの任務は何だい?」

「南極でちょっくら山登り」

「……とりあえず「テケリ・リ」という声が聞こえたら逃げるといいよ」

「おk」

 




新キャラ二人出ました。レギュラーはこれで打ち止め。


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