前作書いてる時は誤魔化してたところとか描写しないといけないので……。
誤字脱字等御座いましたらご報告していただけると助かります。
1994年五月。危険生物処理委員会からまた手紙が届いた。私が圧力をかけただけあって、今度は本気で殺しにかかるそうだ。ホグワーツで裁判を行い、その場でこちらに引き渡すという。もう判決は決まっているようなものだ。
私はその答えに取りあえず満足したが、何やら不審なことも書かれている。一応形式上はホグワーツでヒッポグリフを処刑することになっているのだが、それを魔法大臣が見に来るというのだ。それは色々と困ったことになる。魔法生物の譲渡は非公式に行われているもので、中には取引することが違法である魔法生物もいる。ヒッポグリフもそのうちの一つだ。
そんな現場を魔法省のお偉いさんに見られるわけには行かない。流れが悪いとヒッポグリフはその場で本当に処刑されてしまうだろう。一体何を考えているんだ委員会の連中は。なんにしてもこのままじゃ拙いのでこちらで手を打つことにする。処刑がほぼ決まっているのなら、処刑人が同行するはずである。確か委員会の処刑人はマクネアだったはずだ。確か元死喰い人である。それの代わりに処刑人として美鈴を送り込もう。美鈴はあんな態度を取っているが頭が悪いわけではない。口八丁でその場を切り抜けて無事ヒッポグリフを紅魔館に持って帰ってくるはずである。
私は処刑人をこちらで用意するという旨を羊皮紙に書き、蝙蝠に縛り付ける。そして窓からその蝙蝠を放つと、庭仕事をしている美鈴に話しかけた。
「美鈴、ちょっといいかしら。」
「なんですか? おぜうさま。」
美鈴はスコップを壁に立てかけるとタオルで汗を拭いて窓際に近づいてくる。なんというか、その様子だけ見ると田舎の農家のように見えるので少し笑える。
「一昨年みたいにホグワーツに行ってきて欲しいんだけど。お願い出来る?」
「分かりました。また詳しい話を聞きに伺いますね。」
美鈴はこちらに向けて親指をビシッと立てると、庭仕事に戻っていった。いや、なんだあの返事の仕方は。アレならまだ敬礼のほうが良かった。どちらにしてもふざけていることには変わりないが。私は窓を閉めると仕事に戻る。多分美鈴がここに来るのはあと一時間以上後だろう。それまでは仕事を進めなくては。
1994年六月六日。私はお嬢様のご命令で委員会の老人と共にホグズミードに来ていた。勿論、ひと目見て私だと分からないように軽く変装はしている。赤い髪を黒く染め、全身黒一色の服を着て、ダメ押しに真っ黒のローブに目元までかかるフードだ。そして、背中には草刈り用のどでかい鎌を背負っている。これで何処からどう見ても死神にしか見えないだろう。更に、パチュリー様お手製の魔法薬で顔を変え、なんと妖怪臭さまで消しているという。
「確か三本の箒で待ち合わせですよね。」
「ああ、そこでファッジ大臣と合流する。にしても、その恰好はなんじゃね。まるで死神のようではないか。」
老人は私の服装を見ると皺枯れた声で言った。老人には私は紅魔館に雇われたフリーの処刑人だということを伝えている。
「仕事着ですよ。そんなことよりも、到着しましたね。」
私と老人は三本の箒の中に入った。平日ということもあり店の中にはあまり人はいない。まあまだ昼も過ぎていない時間だ。こんな時間から混んでいたら私は魔法使いという生き物を軽蔑する。私たちは入り口から見やすい位置にあるテーブルに座ると、度数のあまり高くない酒を頼む。こんな時間からのお酒はご老体には答えるかと思ったが、どうやら身体だけは頑丈なようだった。
こんな服装の私にも物怖じせずに話しかけてくるところを見るに、なかなか肝が据わった人物のようだ。二十分ほど老人と世間話をした頃だろうか、入り口からファッジ大臣が現れた。私はポケットから腕時計を取り出して時間を確認する。今からホグワーツに向かえば十分時間には間に合うだろう。
「やあやあ委員長さん、お変わりはありませんかな?」
「相変わらずじゃよ。ファッジ。」
あ、こいつ委員長だったのか。だめだ、老いた人間というのは全部同じに見えてしまう。額に番号でも振っておいてくれないだろうか。大臣と委員長は握手の後軽く抱擁を交わす。その後ファッジは私の方に振り向いた。
「そちらの方は? 処刑人にはマクネアが来るものだと思っていたが。」
「私は雇われの処刑人ですよ。」
私はフードを被ったまま不敵に笑い軽く礼をする。大臣はその様子に苦笑いを浮かべると、一歩後ずさった。老人には効かなかったが、上手いこと怯えさせることが出来たようだ。私はケラケラ笑うとフードを取る。大臣は私が女性だと分かるとホッとため息をつき、その後笑顔になった。
「はっはっは、あまりからかわないでくれるかね。これでも心臓は弱いほうなんだ。あまり脅かさせると止まってしまう。」
「魔法大臣ともあろう方が何を。では、参りましょうか。」
私たちは三人でホグワーツを目指す。基本的には委員長と大臣が前を歩き、私は後ろからついていく感じだ。完全に老人の魂を刈り取ろうとしている死神にしか見えないが、まあ仕方がないだろう。というか、そう見えるように後ろを歩いているというのもあるし。前を歩く二人は世間話をしている。私はその後ろで今回やることを整理していた。
といっても今回やることは簡単だ。ヒッポグリフを人目の付かないところまで持って行ってパチュリー様お手製の魔法具で紅魔館に飛ばすだけである。ただそのヒッポグリフを人目に付かないところまで持っていくというのが至難の業なだけだ。きっとダンブルドアも来るだろうし、そういう目を欺かないといけない。
暫く歩くとホグワーツの城門が見えてくる。その周りには吸魂鬼が飛んでおり、厳重な監視体制を引いていた。なるほど、パチュリー様が私の匂いを消した理由が分かった。万一に備え、吸魂鬼に気が付かれないようにするためだろう。
大臣は吸魂鬼に簡単に事情を説明すると、城門を開けて中に入る。私もそれについて中に入った。吸魂鬼の横を通り過ぎるときやたらと見られたが、まあバレてはいないだろう。校庭を通り正面玄関の階段を上る。階段の一番上に来ると、大臣が不意に振り返った。
「委員長さん。ほれ、なんだか懐かしくないですかな。ここからの眺めは。学生だった頃を思い出す。それに今日はいい天気だ。」
「そうじゃな。ここから見える景色は変わらん。」
私も振り返り校庭を眺める。こうしてみると、ホグワーツの庭より紅魔館の庭のほうが立派だ。そして、紅魔館の庭を管理しているのは私である。流石私。そのうち庭師として独り立ちしてもいいかも知れない。……勿論冗談だが。
校庭を見ていた大臣が何かに気が付いたのか、驚いたような顔をする。視線の先を目で追うと、そこにはハリー、ロン、ハーマイオニーの姿があった。残念ながら咲夜ちゃんの姿はない。別行動をしているということだろうか。
「やあやあハリー! 試験を受けて来たのかね? そろそろ試験も全部終わりかな?」
大臣は陽気にハリーに話しかける。
「はい。」
ハリーは遠慮がちにそう答えた。他の二人はというと、さらに遠慮がちに一歩後ろに下がり、ハリーと大臣の会話を見守っている。まあ普通に考えて魔法大臣と気軽に話せる学生など限られてくるだろう。
「いい天気だ。それなのに……はぁ。」
大臣は湖の方を見ながら小さくため息をつく。
「今日は少しうれしくないお役目で来たんだがね。危険生物処理委員会が私に狂暴なヒッポグリフの処刑に立ち会って欲しいというんだ。といっても、ブラック事件の状況を調べるついでだが。」
「もう控訴裁判は終わったということですか?」
後ろの方にいたロンが思わずと言った感じで大臣に聞く。
「いやいや、今日の午後の予定だがね。」
「それだったら処刑に立ち会う必要なんか全然なくなるかもしれないじゃないですか! ヒッポグリフは自由になるかも知れない。」
「それは困るけどね。」
私はついついロンに反論してしまう。ロンは私の方を見た後ビクッと震え、一歩後ずさった。
「もし無罪放免になったら、私は何に鎌を振り下ろせばいいのかな。」
フードを深く被ったまま、私はロンに近づく。あと少しで手が届きそうになる距離まで来たところで、大臣が割って入った。
「まあまあ。仕事が無くなっても給料はでる。違うかな?」
「冗談ですよ。」
私はにこやかに笑うとロンの頭をポンポンと撫で、後ろに戻る。本当に殺されると思ったのか、ハーマイオニーは顔を真っ青にしてロンの腕を引っ張り城の中に入っていった。ハリーは慌てて大臣に礼をするとその後を追う。
「やれやれ、じゃて。ファッジ、二時じゃったかな?」
委員長の言葉を聞いて、私は懐中時計を取り出す。あと三十分ほどで裁判の時間だ。私たちは城の中に入り指定された教室を目指した。動く階段を上り、静かに廊下を歩く。今は何処の教室も試験中だ。邪魔をしてはいけない。先ほどまで喋っていた二人も、廊下を歩くときは何も喋らず静かに歩いていた。
暫く歩くと目的の教室に到着する。その教室の中は小さな法廷のようになっていた。既にハグリッドやダンブルドアの姿がある。
「やあ、ダンブルドア。」
「おお、コーネリウス。待っておったよ。」
大臣とダンブルドアは軽く握手をする。
「それに委員長殿も、わざわざホグワーツまですまんの。」
ダンブルドアは委員長と握手を交わしたあと、私の方を見る。私はフードで顔を隠しながら、小さく礼をした。
「わしはてっきりマクネアがくるものじゃと思っておったのじゃが……代理の方かね?」
「まあ、そんなとこです。」
私は適当に返事をし、後ろの方の席に座る。ダンブルドアと長話をすると素性がバレる可能性がある。ここに来る前に散々パチュリー様から言われたことだった。私としてはそこまで神経質にならなくてもいいとは思うのだが、そういうわけにもいかないらしい。
暫くすると裁判が始まる。前回の反省を踏まえてか、ハグリッドは少しはマシな証拠や、過去に起きた事例などを用いてヒッポグリフ(名前はバックビークというらしい)が無実であるという訴えをした。だがここでいくらまともな証言をしてもヒッポグリフの処刑は変わらない。最終的にはダンブルドアもヒッポグリフの無罪を訴えかけたが、委員長は頑なだった。ハグリッドはマルフォイから圧力が掛かっているものだと思い込んでいるようだが、本当はもっとヤバいところからの圧力が掛かっている。そして、ダンブルドアはそれを察しているようだった。
裁判の結果はハグリッドの敗訴。予定通りヒッポグリフは処刑されることが決まった。あとはどうやってヒッポグリフを持って帰るかだ。処刑は日没に行われるらしいので、まだ少し時間がある。私は少しホグワーツの中をうろつこうかとも思ったが、ダンブルドアが許可しないだろう。私は取りあえず、他の面子がどのように動くかを見守る。ハグリッドは泣きながら教室を出ていき、ダンブルドアは大臣とシリウス・ブラックについての話し合いをしている。委員長に至っては教室の中で居眠りを始めていた。そのまま永眠しそうな様子なので少し心配だが、まあ大丈夫だろう。委員長に倣って私も少し眠ろう。私は小さく欠伸をすると、鎌を肩に立てかけてうたたねをを始めた。
不意に人の気配がして私は目をぱっちりと開ける。そこにはダンブルドアが少し驚いたような顔をして立っていた。
「起こそうかと思ったんじゃがのう。鋭いお嬢さんだ。ほれ、仕事の時間じゃ。」
ダンブルドアにそう言われて、私は窓の外を見る。確かに、日はかなり傾いていた。あと数十分もしないうちに日が暮れる。私は軽く体を伸ばすと鎌を持ち立ち上がる。委員長は既に起きていたらしく、やれやれといった顔で私を見ていた。
「さあ、ハグリッドの小屋に向かおう。ヒッポグリフはそこじゃ。」
ダンブルドアを先頭にして、私たちは移動を始めた。ダンブルドアの後に大臣、その後ろに委員長、しんがりに私だ。私は少し離れたところから三人の会話を聞く。ブラックのことを話したり、マグルのお菓子の話をしたりと、いかにもな世間話をしながら城を出て、森の方に進んでいく。
そこには物置小屋のような小屋が立っており、周囲にいくつもの人間の匂いがしていた。小屋の中に四人、少し離れた木陰に二人。小屋の中にいる四人のうち三人は慌てた様子で小屋の裏口から出ていったようだ。姿は見えないが、草が踏まれている様子は見える。この匂いと気配はハリーたちだろうか。でもおかしい。同じような匂いが木陰の方からもするのだ。というか木陰に隠れている二人は一体なんの目的で隠れているんだ?
私は術を発動させ、周囲の人間の気配を探る。私の見立て通り小屋を離れていく三人はハリー、ロン、ハーマイオニーの三人で間違いなかった。ハグリッドと仲がいいという話は咲夜ちゃんから聞いているので、おかしな点はなにもない。
奇妙なのは木陰にいる二人だ。私の勘違いじゃ無ければ、木陰にいる二人はハリーとハーマイオニーだ。でも、それが本当ならおかしなことになる。今この場にハリーとハーマイオニーが二人いることになるからだ。魔法使いは分身できるのだろうか。
ダンブルドアが小屋の扉を叩くと、涙声のハグリッドが私たちを出迎える。私としてはもう少し木陰の二人の気を探りたかったが、ダンブルドアたちは小屋の中に入っていってしまった。私も後に続かなければならないだろう。
「あーハグリッド……我々は、死刑執行の正式な通知を読み上げねばならん。それから、君と処刑人が書類にサインする。」
大臣が気の毒そうにハグリッドに話しかけた。私は窓から外の様子を窺う。ヒッポグリフは縄で繋がれており、その奥の木陰にハリーとハーマイオニーの姿があった。二人はあれで隠れているつもりなのだろうが、体のあちこちが見えている。頭隠して尻隠さずとはこのことだろう。
「危険生物処理委員会はヒッポグリフが六月六日の日没時に処刑されるべしと決定した。死刑は斬首とし、委員会の任命する処刑人、メリー・ギルウェルによって執行され、アルバス・ダンブルドア、コーネリウス・ファッジを証人とす。ハグリッド、ここに署名を。」
メリーというのは私の偽名だ。私はハグリッドと共に書類に署名し、いよいよ処刑というところまで来た。私は委員長と顔を見合わせる。
「では、サクッと処刑してきますので、皆さんはここでお待ちください。」
どうやら外にいた二人はヒッポグリフを助けようとしていたみたいなのだが、私がしょっちゅう窓の外を見ていたため、完全に機会を失っていた。
「いや、俺はあいつと一緒にいたい。処刑の瞬間、あいつを独りぼっちにしたくねえ。」
私が一人外に出ようとすると、ハグリッドがそんなことを言う。いや、私としてはそれは非常に困るのだが……。
「だいぶショッキングなことになると思うので、ここに居てくださいよ。首を刎ねた瞬間に殴りかかられでもしたらたまったものじゃない。」
私は肩を竦め、外に出る。そしてヒッポグリフを結び付けている手綱を柵から解くと、手綱を引いて森の中に入った。そう、隠れている二人がいる森にである。
この角度から森に入れば、二人は逃げることができない。その場を後にしようとすれば、それはそれで見つかってしまうからだ。
「あ、えっと……。」
姿を見られたハリーはどうしていいか分からないと言った表情で目を泳がせている。ハーマイオニーもまさかこちらに来るとは思っていなかったのか、今にも腰を抜かしそうな様子だった。
「ほら、どいたどいた。今からこれを処刑しないといけないんだからさ。ていうか、ダンブルドアもザルよね。証人なんだったら普通ついてくるでしょうに。」
私は半分見なかったふりをしてヒッポグリフを森の奥の方へと引っ張っていく。そこに慌てた様子のハリーとハーマイオニーがやってきた。
「あの! そのヒッポグリフはバックビークじゃなくて……。」
「そうです。人違い? 馬違いなんです。だからその子を放してあげてください!」
二人してあまりにも分かりきった嘘をつく。ハリーはともかく、ハーマイオニーは頭が良いと聞いていたのだが。
「え? でも手綱にバックビークって書いてあるし……ああ、君たちはあれだね。ハグリッドの友達ですね。このヒッポグリフを助けに来たと。」
私は鎌をクルリと一回転させる。その仕草にハリーとハーマイオニーはビクリと反応した。私はそれを見てケラケラと笑う。
「大丈夫よ。このヒッポグリフは殺さないわ。あまり声を大きくしては言えないけど、とある富豪がこのヒッポグリフを気に入っちゃってね。このヒッポグリフはその富豪に売られることになっているわ。これ、内緒よ? バレたら法律違反で捕まっちゃうしねー。」
「富豪? それに売るって……もしかして強引に処刑する方向に持って行ったのは……。」
「そう、その富豪から圧力がかかったから。」
その時、私はズボンのポケットに違和感を覚える。ポケットに手を突っ込むと、中に一枚の羊皮紙が入っていた。そこにはお嬢様の筆跡で文章が書かれている。
『ヒッポグリフをハリーに渡しなさい。シリウス・ブラックがそのヒッポグリフによって逃亡する未来が見えたわ。少し惜しいけど、これも運命よ。』
どうやら、パチュリー様あたりが私の行動を監視していたらしい。それにしても未来が見えたって……予言者か何かですか? あ、占い師か。
私はため息をつくと、手に持っている手綱をハリーに手渡す。ハリーはきょとんとした様子で私の顔と手綱を交互に見ていた。
「えっと、あの……。」
状況が呑み込めないと言った様子で、ハリーが私の顔を見る。ハーマイオニーもどうしていいか分からず目を白黒させていた。
「気が変わったわ。そのヒッポグリフは君たちにあげよう。上手に使いなさい。じゃ、そういうことで。」
私は踵を返すと、まっすぐハグリッドの小屋を目指す。その道中で手に持っていた鎌を真っ二つにへし折った。私が森を抜けると、ハグリッド、ダンブルドア、委員長の三人が出迎えてくれる。ハグリッドは血の付いていない真っ二つになった鎌を見て、わけが分からないといった顔をしていた。
「ギルウェルさん、どうしたのじゃ、その鎌は。」
委員長がワザとらしく私に聞いてくる。私は苦笑いを浮かべながら頭を掻いた。
「いやぁ、逃げられちゃいました。やっぱり危険な生物ですな。逃げる時に私の鎌をこの通り……真っ二つですよ。」
私はダンブルドアの前に鎌を投げ捨てる。ダンブルドアは一瞬にして鎌を元通り修復してみせた。
「ビーキーが? 逃げた?」
ハグリッドは私の報告に目を大きく見開くと、オンオンと大声で泣き始める。
「よかった、可愛いビーキー、いなくなっちまうなんて!」
「ちっともよくないですよ。もう少しで私の顔面が血だらけになるところだったんですから。」
私はわざとらしく頬を膨らませると、ダンブルドアが修復した鎌を担ぎ直す。ハグリッドは私に何度も謝ったが、あれには絶対申し訳ないという気持ちは含まれていない。少し変則的にはなってしまったが、取りあえず私の任務はこれで終了だ。
私たちは泣いているハグリッドを置いて、四人で歩き出す。事情を知らない大臣がしきりに私の心配をしてきたが、怪我はないと伝えると少し落ち着いたようだった。大臣は委員長と共に歩きながら判決に間違いはなかったと話している。残された私とダンブルドアはその様子を少し離れた場所から眺めていた。
「にしても、とんだ茶番じゃの。」
私の横を歩くダンブルドアが、私にしか聞こえないほどの小声で言った。
「なんのことですかね。」
「委員会にも困ったものじゃて。小銭稼ぎのつもりなんじゃろうが、綱渡りもいいとこじゃよ。」
なるほど、全部お見通しということか。私は笑いながら鎌をくるりと回した。
「いいじゃないですか、無駄な命を奪わなくて済むんですから。それに、それがなかったらヒッポグリフは本当に処刑されてましたよ?」
「そうじゃな。ところで一つ気になることがあるんじゃがのう。」
ダンブルドアは立ち止まると、私の方を向く。私はフードで目元を隠しながらも、ダンブルドアと向き合った。
「どうしてヒッポグリフをハリーたちに渡したんじゃ? あのヒッポグリフはレミリア・スカーレットに売られるものだと聞いておったんじゃが。」
どうやら本当に全部お見通しらしい。そんなところまで知っているとは思わなった。まさか、私の正体がバレているという可能性はないだろうな。個人的にはそれが一番困るのだが。私はフードを取ると、満面の笑みを浮かべた。
「言ったじゃないですか、私。無駄な命を奪わなくて済むって。あの館に送られた魔法生物は一週間と経たないうちに衰弱死すると言われてますから。だから私は処刑人として潜り込んでヒッポグリフを助けたんです。」
「君は一体どこの所属じゃ?」
「殺す者がいるのなら、救う者がいてもおかしくないですよね? ようはそういう組織の者ですよ。」
私はフードを被りなおし、歩き始める。
「フードは被らん方がよい。優しい笑顔が台無しじゃぞ?」
ダンブルドアは笑いながら私に話しかける。私はフードを被ったまま振り向き、笑顔で答えた。
「だから隠してるんですよ。ほら、こうやって死神みたいな服装で顔を隠していれば、極悪人にしか見えないでしょ?」
「そうじゃな。」
私はダンブルドアと笑い合い、共にホグワーツ城を目指す。ふぅ、なんとか口八丁で乗り切ることができただろうか。取りあえずこれで私の任務は終了だ。私は城につくと一足先に帰る旨を伝え、ホグワーツを後にする。少し眠たいが、帰ったらまず洗濯物を取り込まなければならないだろう。そのあと夕食の準備をして……いや、その前に着替えか。私は溜まった仕事に大きなため息をつくと、ホグズミードへの帰路についた。
「……なんとかなったわね。」
私は図書館の机に映る光景を見ながら小さくため息をついた。パチェもやれやれといった顔でそれを見ている。
「なんにしても、いきなり計画を変更しないで欲しいわ。離れたところに数ミリの誤差なく物を届けるのって普通に難しいのよ?」
パチェが私に文句を言ってくるが、今回ばかりは甘んじて受け入れる。美鈴がヒッポグリフを連れてハリーと接触した時、不意にブラックがヒッポグリフに乗ってホグワーツ城から飛び立つ光景が見えたのだ。だが、よくよく考えたらそれは当たり前のことと言えるだろう。
「あの場にハリーとハーマイオニーが二人いたでしょう? きっと逆転時計か何かで未来から戻ってきたんでしょうね。過去を変えるために。そして私が見たヒッポグリフに乗ったブラック。もしこの予言が正しいとしたら、二人はブラックにヒッポグリフを渡したということになる。そしてホグワーツ城からブラックが飛び立つということは、ブラックは一度捕まったということ。全部足すと?」
私の質問に、パチェは面倒くさそうに答えた。
「ハリーたちはブラックと接触し、無実であるということを知る。その後ブラックは捕まり、城に監禁。ブラックを助けるために、ハリーたちは過去へと戻った。ヒッポグリフを美鈴から受け取ったハリーたちはブラックに再度接触。ブラックを助け出しヒッポグリフを与え、逃がした。こんなところかしら?」
「まあ、まだ起こってないけどね。私が見た時は夜だったし、それまでにひと悶着あるということでしょう。ブラックが関わっているとしたら必然的に咲夜も関わっていることだろうし、報告は咲夜が帰ってきてからゆっくり聞くわ。取りあえず、もう眠いし。少し仮眠を取るわね。」
私は大きく欠伸するとパチェに手を振り大図書館を後にした。
美鈴がヒッポグリフを引き取りに行く
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トレローニーが予言する(ペティグリューに関して)
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レミリアが運命を感じ取り、ヒッポグリフをハリーに与える
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第一次叫びの屋敷大戦(ブラック、咲夜VSハリー、ロン、ハーマイオニー)
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おいたん、ハリーに嫌われかけて本気でへこむ
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誤解が解ける
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ルーピンオオカミになる。おいたん頑張る
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スネイプと咲夜の間に暗黙の了解が生まれる
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吸魂鬼によって気絶したブラック御一行をスネイプと咲夜が捕える
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ファッジに事情説明「そうなんです大臣」
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美鈴から受け取ったヒッポグリフを使い時を掛けるハリーがブラックを助ける
大体ここ