紅く偉大な私が世界   作:へっくすん165e83

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これはな……ちゃうねん。最終章の展開色々考えてて遅くなったとか、そういう理由です。本当ですよ。決して身内に誘われてゲームしてたとか映画借りまくってたとか休みが取れたから旅行に行ってたとかそういうのじゃないです。
職場にあるキーボードをスマホに繋いでこっそり書こうとも考えたんですが、無線は無線でもUSBから飛ばすタイプでした。残念。

というわけで多分次回で最後です。年度末で忙しくまた遅くなるかも知れませんが、ご容赦ください。

誤字脱字等御座いましたらご報告していただけると助かります。


決闘やら、決着やら、決別やら

「あひゃひゃひゃ! そう来たか!」

 

 私はダンブルドアとヴォルデモートの予想外の行動についつい声に出して笑ってしまった。スリザリン寮に突入したダンブルドアは、ヴォルデモートと顔を合わせると肩を並べて歩き出したのだ。

 美鈴は状況が分からないのか、説明が欲しいとパチェの肩を掴み揺すっていた。大きく揺さぶられているためか、パチェの声は波打っている。

 

「だから――場所を――変えるって――ことでしょ? いい加減やめなさいそれ。」

 

 パチェは手元にあった本の角で美鈴の脳天を叩く。

 

「まあ、会話を聞いてみればわかるわ。」

 

 パチェは映像を大きくする。するとダンブルドアの声が大きくなった。

 

『何も不思議なことはないぞ、ハリー。無駄な消耗が嫌いなのはわしもヴォルデモートも同じじゃ。』

 

 私はこの結果を全く予想していなかったわけではないが、本当にそうなるとは思ってもいなかった。というか、一番無いパターンだと踏んでいたのだが……予想とも展開が違う。このように、ある程度理性的な話し合いが行われるとしたら、それはこの戦争の前だと予想していた。戦いの最中にこのような話し合いに繋がるとは……。

 

『ダンブルドア、先に確認しよう。私が勝ったらイギリス魔法界は私が頂く。』

 

『ほっほっほ、わしが死んだら確かにイギリスの魔法界はお主の手に落ちるじゃろて。じゃがのう、トム。わしが負けることは万に一つもありえんことじゃ。』

 

 ヴォルデモートがダンブルドアに確認し、ダンブルドアが自信満々に返す。つまりこの二人は今から決闘を始めようとしているのだろう。双方ともにこれ以上被害が大きくならないようにしようとしているのだ。ダンブルドアとヴォルデモートは校庭に出ると、杖を上空に向け花火を打ち上げる。そして喉元に杖を突き付け、ホグワーツ中の人間に話しかけた。

 

『わしら今から戦うからのう。見たい者はホグワーツのクィディッチ競技場にくるのじゃ。』

 

『私は今からダンブルドアと一騎打ちの決闘を始める。全員戦闘を止めクィディッチ競技場に集合せよ。』

 

 その声は直接紅魔館の地下の大図書館まで届いた。ここに届いているということはホグワーツの敷地内には届いているだろう。私はチラリとホグズミード村にいるクィレルを見る。クィレルも何事かとパーシーと顔を見合わせているところを見るに、声は届いたらしい。まあ何にしても、両陣営のトップの言葉に、先ほどまで戦っていたものは一人残らず手を止めて顔を見合わせていた。

 

「なんというか、あれね。初めからこれでいいじゃないと思うのは私だけ?」

 

 パチェはブスッと呟いた。いや、初めからこれだとあまりにも死者数が足りない。というか、このタイミングで戦いが止まると、普通に死者数が足りないだろう。まあでも、その辺はパチェの秘策とやらを使用しよう。私はパチェの言葉にケラケラと笑いながら答えた。

 

「戦争なんてそんなもんよ。利益を求めて戦争するのはあまりにも馬鹿らしいわ。」

 

 ホグワーツにいる人間たちは、皆言われた通りに競技場を目指して歩いていく。咲夜はその光景を信じられないものでも見るような目で見ていた。

 

「元々あの二人を中心として集まった勢力だからね。」

 

 私は飲み干したカップをソーサーの上で一回転させる。その瞬間、私の目の前にある暖炉が燃え上がり、クィレルが姿を現した。咲夜はいそいそと紅茶を用意をし始める。

 

「あ、いや別に紅茶を飲みに来たわけでは……。」

 

 そう言いつつも、クィレルは咲夜からティーカップを受け取った。クィレルはこの展開に混乱しているのか、いの一番に私に問う。

 

「お嬢様、この状況どう見ますか?」

 

 どう見ますか、か。どうもこうもありのままとしか言えないが、よくよく考えると少し都合がいいようにも思える。今まで立てていた計画では、乱戦の中ダンブルドアが死に、ヴォルデモートが死ぬ予定だったが、決闘を行うなら大体の可能性でダンブルドア、ヴォルデモートともに死に至るだろう。そして一か所に集まっているということは、パチェの術が使いやすくなる。

 

「丁度いいんじゃない? これなら確実にダンブルドアとヴォルデモートのどちらかが死ぬわ。そして人が一か所に集まっていた方がこちらとしても都合がいい。」

 

 私は見様見真似で机の上の映像を拡大する。そこにはダンブルドアとヴォルデモートが向かい合って立っていた。

 

「クィレル、そして咲夜。競技場に向かいなさい。貴方たち二人がそこにいない方が不自然だしね。」

 

 咲夜は皆のティーカップにおかわりの紅茶を淹れると、一礼してクィレルと共に大図書館を出ていく。私はそれを見届けた後、儀式について最終的な確認を取ることにした。

 

「さて、パチェ。現在の死者の数はどれぐらい? 目標は達成できたかしら。」

 

 私はパチェと小悪魔が書き込んでいた紙を覗き見る。パチェは小さく首を振った。

 

「いえ、達成できていないわ。双方合わせて四百人に達していないぐらい。あと二百人前後は死者が欲しいわね。」

 

 二百人。四百人に比べると小さな数だが、これからの戦況でさらに二百人の死者が出るとは思えない。ということは、やはりパチェの術に頼らざるを得ないだろう。こういった場合に備え、パチェが考え出した解決策が、無差別的な呪文の研究だ。本来、物や人に掛ける魔法というのはある程度の指向性を持っている。指向性を持った光線のようなものだ。だが、それを光や電波のように全方向に拡散させることが出来れば、魔法は全方向に飛ぶことになる。

 なんか凄い難しそうに聞こえるが、ただ拡散させるだけなら比較的簡単に出来るそうだ。だが、本当の意味で無差別攻撃になるが。ようは、爆弾を抱えての自爆と変わらないのだ。それだと、使い勝手云々の話ではなくなる。そこでパチェは魔法その物に改良を加え、新しい性質を付け加えた。本来魔法は体に当たっただけで効果を発揮するが、パチェが改良した魔法は体に当たっても無害だ。その代わり、魔法の光が目に入ると効果を発揮する。ようは、バジリスクの目を見たら死ぬというのを魔法で再現した、ということである。

 

「まあでも好都合じゃない。一か所に集まるんだったら術が掛けやすくなるでしょ?」

 

「そうなのだけどねぇ……。」

 

 パチェは机の上に映し出された競技場を見る。次第に各勢力の人員が集まってきているらしく、半分以上の席が埋まっていた。

 

「でも本当に戦闘がぴたりと止まりましたね。普通こんなことってありえないですよね?」

 

 美鈴が言うように、意識のある者は皆戦闘を止めて競技場を目指している。集団心理が働いているとはいえ、確かにここまでピタッと戦闘が止まるのは奇妙とも思えた。

 

「ダンブルドアとヴォルデモートが呼びかけた時に何か魔法を使ったとか? どう思うパチェ。」

 

「拡声だけではなく、沈静効果のある呪文ってこと? 多分無いと思うのだけど。そういう効果があったら少しは美鈴も大人しくなってるはずだし。」

 

 ああ、それは説得力のある話だった。だとしたら、純粋に二人のカリスマのなせる技ということか。私が一人納得していると、小悪魔がクスリと微笑んだ。

 

「多分双方ともにこの地獄のような戦争に嫌気が差してたんだとは思いますよ。だってこの戦争、どちらかを殲滅するまで終わらなさそうだったじゃないですか。機会を待っていたんですよ多分。」

 

「あー。」

 

 美鈴が曖昧な相槌を返した。というか悪魔であるこいつが一番人間の心理に詳しいってどうなのだろうか。いや、逆に悪魔だからこそ詳しいと言えるのか?

 

「集まるまで少し時間がありそうね。あ、そうだ。一応確認を取っておくわ。多分この後ダンブルドアとヴォルデモートが決闘を始めるはず。私の想定では、先に死ぬのはダンブルドアよ。その後、ハリーが決闘を引き継ぎ、ヴォルデモートが死ぬ。私たちが出ていくのはこのタイミングね。競技場の中心に堂々と現れて、パチェが一回ピカっと。それで術の条件は達成されるはずよ。」

 

 当初の予定とは少し異なるので、簡単に確認を取っておく。まあ場所が変わるだけなので特に問題は無いだろう。一番危惧していた展開は、ダンブルドアとヴォルデモートの和解だ。戦い事態が起こらなければ、数年の努力が無駄になるところだった。まあ、そんなことはありえないと分かっているが。

 

「そのあと、また紅魔館に戻ってくるってことですよね。で、ぴかっというのは?」

 

「ほら、クリスマスパーティーの時に咲夜ちゃんが使っていたアレですよ。あの全体攻撃的なやつです。」

 

「ちょっと待って、クリスマスパーティーでアレを使ったの?」

 

 私は慌てた態度が表情に出ないようにしながら小悪魔に確認を取る。クリスマスパーティーでそんな殺人光線を使う機会があっただろうか。私の知らないところで殺戮が行われていたのだとしたら、私の監督責任だが……内心少し焦っていると、パチェが説明してくれた。

 

「ああ、死の呪文ではないわ。服従の呪文よ。」

 

「もうそんな応用が出来ているの?」

 

 どうやらバジリスクの目というのは間違った表現方法だったらしい。パチェが開発したのは見たら死ぬ光線ではなく、魔法の在り方を根本から変えるものだったようだ。パチェ曰く、全ての魔法に応用できるらしい。

 

「なんというか、小悪魔やクィレルがパチェのことを規格外というのが分かる気がするわ。未来に生きてるわね。」

 

「そんなことよりも……レミィ、少しいい?」

 

 パチェは椅子から立ち上がると、私の袖を引っ張る。何かここでは話せないことだろうか。私は引っ張られるまま椅子から立ち上がると、パチェに連れられて図書館にある一室に入った。ここは元々何も置いていない小部屋だった場所だが、パチェが来てからは実質的にパチェの部屋になっている。人間だった頃はここで寝起きしていた記憶がある。

 

「この部屋に入るのも久々ね。で、話って何かしら。」

 

 私は使った痕跡の無いベッドに腰を下ろす。パチェは机の前に置いてある椅子を引きずり、私の前に腰かけた。

 

「さっきの話の続き。……ねえ、本当にやるの?」

 

 私は一瞬なんのことを言っているのか分からなかったが、パチェの目を見て察する。パチェは競技場に集まった人間に死の呪文を掛けることに戸惑っているのだ。それもそのはずである。研究や実験のために人間を殺すことはあっても、パチェは純粋な意味で殺人は犯したことが無い。それどころか、誰かと戦った経験すらないのだ。

 

「……パチェが嫌だというのなら、小悪魔にでも任せるけど。」

 

「そういう問題じゃ……。そもそも貴方が立てた作戦ってほぼ咲夜任せじゃない。」

 

「……そこは分かって頂戴。そもそも矛盾する二つの作戦を両立させるだけで精一杯なのよ。本来の計画が失敗するリスクを冒すわけにもいかないし。」

 

 私はパチェの肩に手を置く。パチェはその上から手を重ねた。

 

「分かってはいるのよ。分かっては……。」

 

 私はパチェの手を掴んでそのまま後ろに倒れこむ。パチェも引っ張られる形でベッドに倒れこんだ。

 

「もう、しっかりしてよね。貴方そんなに人情溢れるタイプでもないでしょうに。」

 

「これでもまだ百歳前後よ。人間を辞めてからまだ数十年しか経っていないし。」

 

「まあ、確かにパチェは勉強が出来るだけの普通の魔法使いだったもんね。」

 

「私は今もそのつもりよ。」

 

 もしパチェが私と出会わなかったらどうなっていたか。案外、ダンブルドアあたりと結婚していたかも知れない。少なくとも、魔法界で人間の理に順って暮らしたことだろう。

 

「ほら、しゃんとしなさい。まだ第一段階よ。向こうに行ってからが本番なんだから。」

 

「……そうね。」

 

 私はパチェの手を引いて立ち上がる。そのまま一緒に中央のテーブルまで戻った。

 

「話し合いは終わりましたか? あ、そうだ。先ほどダンブルドアが咲夜に変な小物を手渡していましたよ。多分灯消しライターだと思われます。」

 

 どうやら私がパチェを慰めているうちに少し場が進展したらしい。取りあえず、灯消しライターは無事咲夜の手元に渡ったようだ。ダンブルドアは無事咲夜の首に掛けられた逆転時計の意味を察したらしい。

 

「そう、わかったわ。決闘は始まりそう?」

 

「はい、今介添人が決まったところです。クィレルが決闘の証人となって決闘が始まるみたいですよ。」

 

 映像の中では、既にダンブルドアとヴォルデモートが向かい合っている。ダンブルドアの後ろにはハリーが、ヴォルデモートの後ろにはクラウチがいた。

 

「それじゃあ、いよいよってところかしら。」

 

 私は椅子に座り直し、その様子を静かに見守る。ダンブルドアとヴォルデモートが互いに杖を構え合い、油断なく一礼した。先に動いたのはダンブルドアだ。ダンブルドアは杖の一振りで炎で出来た巨大なドラゴンを出現させると、ヴォルデモートにぶつける。ヴォルデモートもそれに対抗するように水で出来た大蛇を出現させた。競技場の真ん中で巨大な炎と水がぶつかり、辺りは水蒸気で満たされる。チャンスだと思ったのか、双方ともにマシンガンのごとく呪文を打ち合った。

 

「手数が凄いですね。まさに弾幕と言ったところでしょうか。」

 

 美鈴がやんややんやと手を叩いている。ヴォルデモートが放っているのが死の呪文で、ダンブルドアが放っているのが失神呪文だろうか。緑と赤の閃光が飛び交う中、ダンブルドアが芝をナイフに変化させ、ヴォルデモートの方へと放った。ヴォルデモートは避けられるナイフは避け、身体に当たるルートのナイフを魔法で絡めとる。そして飛んでくるナイフに向けて放ち、ナイフを撃ち落とした。ダンブルドアが最後に放った一本が、両者の中心で大爆発を起こす。その衝撃波で双方ともに吹き飛ばされたが、すぐに両者ともに体勢を立て直した。

 

「あ、ダンブルドアの足元。」

 

 地面から生えた手がダンブルドアの足首を掴んでいる。ヴォルデモートはダンブルドアが拘束されている隙を狙って数発死の呪文を撃ち込んだ。ダンブルドアは死の呪文を体を逸らして避けると、足首を掴んでいる手を引き裂き、後ろへ跳ね退いた。その瞬間、ダンブルドアの動きが止まる。手の主が、地面から這い出て来たのだ。私の記憶違いでなければ、這い出て来た人物はアリアナ・ダンブルドアだろう。ダンブルドアが気を取られている隙に、ヴォルデモートが死の呪文を放つ。ダンブルドアが我に返った時には死の呪文はダンブルドアの目の前まで迫っていた。

 

「いまワープしませんでした?」

 

「……。」

 

 確かに、ヴォルデモートが放った死の呪文は、途中まで空中を走った後、急にダンブルドアの前に出現した。流石にこの距離からの攻撃を避けることは出来なかったのだろう。ダンブルドアは死の呪文に当たり、後ろに吹き飛んだ。だが、ただで死ぬほどダンブルドアは安い男ではない。死に際、最後の力を振り絞って放った魔法が、ダンブルドアの後ろにいたナギニへと直撃した。

 

「悪霊の炎ね。あれなら確実に分霊箱を破壊できる。」

 

 これでヴォルデモートの分霊箱はハリーだけになった。ダンブルドアも死に、あとヴォルデモートが死ねば条件達成だ。ダンブルドアが死んだことで、観戦席で一時的な混乱が起きるが、介添人のハリーが前に出たことで、また静かになった。ハリーは決意を固めた顔で宿敵ヴォルデモートと対峙する。だが、こんなものダンブルドアに仕組まれた出来レースもいいところだ。まあ、ダンブルドアが出来レースを組むように仕組んだのは私だが。

 ヴォルデモートとハリーの決闘が始まる。先手を取ったのはヴォルデモートだ。まあヴォルデモートとハリーの間にある戦闘力の差を考慮したら当然の展開だろう。ヴォルデモートが放った死の呪文は真っすぐハリーに向かって飛んでいき、ハリーの胸のど真ん中を突き抜けた。呪文を受けた衝撃でハリーは後ろへ吹き飛ばされる。そのまま宙を舞い、ハリーは地面に『着地』した。そう、ハリーにはリリーが掛けた護りの魔法があるので、ヴォルデモートの魔法で死ぬことはない。さらに言えば、今の死の呪文で分霊箱としてハリーの中にあったヴォルデモートの魂は死んだ。ヴォルデモートは攻撃を行うどころか、自ら己の魂を削った結果になる。

 

「これで、分霊箱はゼロ。さあ、決着がつくわよ。」

 

 私たちは椅子から立ち上がり、いつでも移動できる体勢を取る。次の瞬間互いに魔法を撃ち合い、ヴォルデモートが放った死の呪文は空中でハリーが放った武装解除呪文と衝突し、纏めてヴォルデモートの方へと飛んで行った。その光景があまりにもショックだったのだろう。ヴォルデモートは跳ね返ってきた呪文を避けることが出来ず、そのまま死の呪文に当たる。今だ。

 

「三、二、一……。」

 

 次の瞬間、私たちは競技場の中心に立っていた。私たちの登場と同時に紅魔館に掛けた忠誠の呪文の効果が切れるようになっているため、皆禁じられた森に突如現れた紅魔館に気を取られている。このままでは、拡散の死の呪文が上手く目に入らないだろう。

 

「みな、ご苦労だった。」

 

 そこで私はダンブルドアやヴォルデモートのように競技場の中にいる全員に呼びかける。それで気が付いたのか、咲夜とクィレルが私の近くに移動してきた。これでフランを除く紅魔館の主要なメンバーが競技場に揃うことになった。

 

「どういうことだ!?」

 

 ハリーが少し離れたところで何かを言っている。だが、ここはあえて無視だ。私は手首のスナップを使い、風を起こしてハリーを後ろに吹き飛ばす。よし、行うなら今だろう。

 

「パチェ。」

 

 私が合図をすると、パチェは一冊の魔導書を開く。その魔導書から緑色の閃光が打ち上げられたのが見えたので、私は急いで目を瞑った。強い光が瞼を焼く。恐る恐る目を開けると、観戦席にいる多くの者が倒れ伏しているのが見えた。そして、私の目の前にいるクィレルも倒れ伏した。まさか、このことを知らなかったのか。私は急いでパチェの手を握る。パチェは案の定震えていた。

 

「あら。」

 

 私は必死に平静を装いながら強気に声を出す。

 

「言ってなかったの? パチェ。」

 

「……貴方が教えていると思ってたわ。」

 

 これはとんだ誤算だ。クィレルは既に仕事を終えているため、要らない駒は要らない駒だ。いなくなったところで何の支障もない。それに、もし私の想定通りに咲夜が動けば、クィレルは生き返るはずだ。私はパチェの目を見る。パチェもそのことは分かっているようだ。取りあえず、クィレルはここに置いていくしかない。紅魔館に持って帰ってしまうと、一緒に移動してしまう為、灯消しライターで生き返らせることが出来なくなってしまうからだ。だからこそ、事情を知らない咲夜にはキツイことを言わないといけない。クィレルの遺体を担ぎ上げた咲夜に、私は一言言い放った。

 

「咲夜、捨てていきなさい。」

 

「ですが、今回一番の立役者ですよ?」

 

 間髪入れずに咲夜が反論する。そう、その通りだ。その通りだからこそ、ここに置いていくのだ。

 

「持って帰っても腐らせるだけよ。死体は死体。それ以上でもそれ以下でもないわ。」

 

 咲夜は素直にクィレルの遺体を地面に捨て、私たちの後をついてくる。小悪魔は、冷静に死んだ者の数を数えていた。私たちは歩いて競技場を出る。次の瞬間には、パチェの魔法で紅魔館の大図書館に出ていた。大図書館の床には巨大な魔法陣が掛かれている。術の準備は整っているようだ。

 

「確認を取るわよ。まず死者は?」

 

「ホグワーツの戦いで三百六十七人、さっきのピカで四百五十三人。」

 

 小悪魔がメモを見ながら答えた。術に必要な犠牲は六百人。十分だと言える。

 

「八百人そこそこ、生贄には十分よ。」

 

 パチェは魔法陣に手をかざし、魔力を込め始める。

 

「では参ろうか、新しい世界に。」

 

 私は揺れ始めた大図書館で皆の顔を順番に見る。美鈴は何処か楽しそうで、小悪魔は何処までも愉快そうで、パチェは少し心配そうで。

 咲夜は……今までに見たことが無い顔をしていた。

 

 

 目の前が白い光で満たされる。次の瞬間、強い揺れが全身を襲った。




ダンブルドアとヴォルデモートが決闘を行う

ダンブルドア、ヴォルデモート死亡

パチェが競技場にいる人間を大量に殺す

クィレル死亡

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