シン・ハゲと修羅   作:コテコテ

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第4話 強くなる意味

——ミッドチルダ・とある競技場のトレーニングルーム——

 

 

 

 

 

 

 

「うっ……」

 

「あっ、目が覚めた」

 

 意識が戻った途端、聞き馴染みのある声が聞こえた。リンネの知り合い兼ファンの男の子の声だ。彼が揺すっているからか、身体が変に揺れている感覚がある。それになぜかポカポカと暖かい。その気になれば二度寝もできそうだと、ぼんやり思ったりする。

 

「おーい。聞こえてたら返事してよ」

 

 だが気が付いたことはバレてしまっている。絶えず揺すってくるのもさすがに煩わしい。狸寝入りの趣味もないので、リンネはゆっくり目を開けた。

 

「へ?」

 

 その視界に見えたものは、ツルリとハゲあがったらっきょ頭だった。

 

「やっと起きた。サイタマさん、リンネが起きたよ」

 

「マジ? 早くねぇか?」

 

「そこはほら、リンネだし」

 

「……それでいいのかよ」

 

 サイタマとサンサーラが何か話しているがリンネの頭には入ってこなかった。謎の揺れ、目の前のハゲた後頭部、心地よい温もり……次第に頭も働き、少しずつ状況を把握していって————

 

「な、何で!? サイタマさん!?」

 

 ようやくサイタマにおんぶされていることに気付いた。

 

「お前が気絶してたからだよ。気絶してる奴を放っておく訳にはいかないだろ。俺達もここを出なきゃいけないし、おぶっていくしかねーじゃん」

 

「そ、そうですけど……もう大丈夫です! 自分で歩きますッ!」

 

 意識が戻ったのに、いつまでも背負ってもらう訳にはいかない。それに中等部にもなっておぶられているのは、さすがに恥ずかしい。早くサイタマの背中から降りようと身体をバタつかせた。

 

「コラ暴れるな。急に動いたら————」

 

「痛ッ!?」

 

 勢いよく振った右足が鈍く痛んだ。目を向けてみると、右足首に記憶にない包帯が巻かれている。ゆっくり動かしてみると歩けないほどではないにしろ、はっきりとした痛みを覚えた。痛がるリンネを見たサンサーラが、息を吐いて肩を落とす。

 

「他の打撲とかは治せたんだけど、足首だけは治しきれなかったんだ。明日には治ってると思うけどね」

 

「だから今は大人しくしてろ。出入り口までは運んでやるから」

 

 この競技場の選手用出入り口は駐車場と直通している。サンサーラの迎えもそこへ来るのだろう。リンネの迎えも同じ場所の予定だ。無理して歩いて足を悪化させるか、多少の恥ずかしさを我慢するか……

 

「お願いします……」

 

「暴れるほど元気なら大丈夫そうだね。吹き飛ばされたときはどうなるかと思ったよ」

 

「あ……」

 

 リンネの脳裏に模擬戦の記憶がフラッシュバックのように蘇る。最後にサイタマか独り言を言って、その後で砲撃が割れたところまでは覚えていた。だが自動車にひかれた様な酷い衝撃を最後に記憶が途絶えている。

 

「簡単に言うとね? 君の砲撃をサイタマさんのデコピンが真っ二つにして、そのまま君も吹き飛ばしたんだ」

 

「デコピン!? そんな訳——」

 

 ない、と言いかけて口を噤む。リンネが最後に見た光景はまさにそれだったからだ。放った砲撃が、サイタマの直前で真ん中から割れた……信じられないような結末だが、相手が彼となると途端に現実的なものに思える。最初は夢かと思ったリンネだが、やはり紛れも無い現実だと実感せざるを得なかった。

 

「私は……負けたんですね」

 

「うん。デコピン一発でライフ全部持ってかれてた。君の完敗だ」

 

「…………」

 

 リンネの持てる力を全部ぶつけても、表情を少し変えるのがやっとだった。ハンデをもらった上に手加減までされたのに手も足も出ず、得意の投げ技は全く効かなかった————彼女は負けたのだ。サイタマに。あの理不尽な強さの前に。

 

「さっきはすまん。ビームを吹っ飛ばすだけにするつもりだったんだけど加減ミスった」

 

「いえ……競技に怪我はつきものです」

 

「なんかあのコスプレのおかげで軽い怪我で済んだってな。名前はなんだっけ? バリアポケット?」

 

「バリアジャケットだよ」

 

「それそれ。あれも魔法らしけどかなり丈夫だったな。いろいろ面白かった」

 

 面白かった————それがサイタマの感想だった。楽しいのならわかる。模擬戦が楽しいという人間はいるだろう。だが彼は面白かったと言った。リンネが必死になって戦っていたというのに、それを面白がっていたのだ。

 

「私の実力はその程度だったということですね。わかってはいましたが……」

 

 ここまでの努力は無駄とは思わない。リンネが絶望するにはサイタマは強すぎた。彼に勝てないからといって、彼女が弱いことにはならない。だが……事実相手にならなかった。

 

「面白かったのはそっちじゃなくて別のことだけど?」

 

「別?」

 

 思わず聞き返したリンネ。まさか模擬戦以外とは考えてもなかったのだ。

 

「お前と戦ってたら中学生の頃を思い出したわ。ガキの頃の俺と今のお前って似てるとこがあるんだよなー」

 

 リンネと自分が似てることを面白がっていたというサイタマ。外見ではあるまい。性格……も多分違うだろう。自分はもっと空気が読めると、リンネは自信を持って内心頭を振った。

 

「似てますか?」

 

「お前ぐらいの年のときは、こんなに弱くて生きていけるのかとか考えてた。不良にも怪人にも負けてばっかだったし」

 

「サイタマさんが……!?」

 

「ガキの頃だぞ。あのときは社会との相性がよくないとか思ってたけど」

 

 今のサイタマからは想像もできない。まるっきり同じとは言えないが、自分に向けるか外に向けるかの違いだけで似ている気もした。

 

「他にはだな…………どうやって生きていけばいいのか全然わからないとか」

 

「————!!」

 

 懐かしいなーと能天気に振り返るサイタマとは裏腹に、リンネの呼吸が詰まる。実際には一瞬だったのだろう。だが彼女にはそれが何十秒にも感じられた。心の奥底に秘めてきた想いが、こうも容易く引きずり出されるとは考えてもいなかったのだ。

 

「お前の事情はわかんねーけど、これだけはなんとなくわかる。〝あの日〟とやらに何かあって、お前はどうすりゃいいかわからなくなった。訳わかんねーから、とりあえず(・・・・・)強くなろうって決めたんだろ?」

 

「とりあえずなんて!」

 

「ならお前は何を目指してんだ? 強さの先に何がある?」

 

 反論に対するサイタマの問いは、くしくも約束した勝者の権利。だが彼はもうほとんど核心に至っている。リンネにしては今更話したところなのだが約束は約束、口を閉ざしている訳にはいかない。目を閉じて今一度決心を決める。

 

「どんな悪意も手を出せない誰よりも強い自分。大切な人を誰も悲しませず、過去を振り払って前に進————」

 

「なんだそれか。止めた方がいいぞ。強くなって解決することじゃない」

 

 そしてサイタマは、真っ向からぶった切った。

 

「止めた方が……いい?」

 

「そうそう。どんなに強くなったってバカにする奴はいなくならないからな。それに強くなったって誰かを悲しませるときもあるし、守れないこともある」

 

 〝あの日〟を清算できなかった彼女は、強くなることで自分を変えようとした。誰よりも強くなれば前へ駆け出せると思っていた。

 

「お前をバカにしてる奴は、お前が弱いからイジメるのか? 強くなったぐらいで見る目を変えるのか? お前の強さが誰かを悲しませることはないのか?」

 

 だが強さの果てに行き着いた男は、悪意も手を出せない強さは幻想だと断じ、リンネの想いを一つ一つ丁寧に潰していった。目指す先人(サイタマ)の言葉はあまりに重くのしかかった。

 

「強さは今と未来は変えられても、過去の上塗りはできないぞ」

 

「っ…………!」

 

 そうじゃない、とは口が裂けても言えまい。相手はリンネが望んでやまない絶対的な強さの持ち主。そして幻が消えて唯一残った過去と向き合うには、今のリンネは弱いすぎる。立ち向かう術のない彼女は、結局サイタマの背中にしがみつくことしかできなかった。

 

「結果は結果だって割り切れないと。お前ならいけるだろ。さっさと受け入れた方が楽だと思うけど?」

 

「そんな選択ができるなら苦しむことはなかった! 誰もが貴方みたいに強くない!」

 

 気軽に無理難題を口にするサイタマに、リンネが声を荒げる。子供時代が似てると言えど、どう行動し、何が起き、どう捉えたのか。それらによって結果は違ってくる。リンネにサイタマの図太さはなく、サイタマにリンネの優しさはない。二人の結果は必然的に違うものとなった

 

「…………面倒な奴だな。それじゃあ今のままやれよ。俺も自分が絶対正しいなんて思ってないし、どっちがいいかなんて誰もわかんねーから」

 

「そんないい加減な……」

 

「るせー! 俺だって二十二歳まで何すりゃいいかわかんなかったんだ。ガキのお前にわかってたまるか!! 文句しか言わねーなら置いていくからな」

 

「ああっ! ごめんなさい!! 降ろさないで!」

 

 リンネを降ろそうとしたサイタマの背中に、リンネは必死になってしがみついた。好き勝手言っているのはハゲジャージだとわかっている。だが今のリンネは取り残されたくない一心だった。唯一の道標はへし折られ、示された道は越えられない程に険しい。そして何もない暗闇の中にいるのは、リンネとサイタマの二人だけだ。

 

「お願いだから置いていかないで…………」

 

 ここで答えを得なければどうなるか、彼女自身がよくわかっていた。

 

「えっ……わっ!? 落ち込むなよほら! いいよわかれば! わかれば!!」

 

 背中に顔を埋められて、サイタマもようやく失態に気付いた。さすがにヒーローが子供を泣かすのはマズイと思ったのだろうか。慌てて震えるリンネを慰めようと優しく揺する。

 

「こうなりゃあれだ。練習も結構やってるっぽいし、とことんやった方がいいなお前」

 

「えっ…………?」

 

 その最中、サイタマが諦めたように呟いた。リンネの耳にもはっきりと届く。

 

「どうしても〝あの日〟を受け入れられねーんだろ? だったらお前がやり切ったって思えるまで強くなって、後のことはそこから考えるしかないじゃん」

 

 それはとりあえず今やっていることを続け、〝誰よりも強い自分〟になったところで改めて道を探るというものだった。だが結局は問題の先送りだ。そして何よりも、一度折られた道標を目指せというのは素直に受け入れられるものではない。

 

「でも……さっきサイタマさんは強くなっても仕方ないって…………」

 

「だからそれは俺が思ってるだけだって。強くなるのはお前じゃん」

 

 サイタマの無愛想な声が静かな廊下に反響する。リンネは黙って聞いていた。

 

————人のことだからって適当なこと言って…………

 

 散々貶した挙句、最後はそのまま続けろと言われて納得など出来る訳がない。無責任な言い分になど腹立たしくて仕方なかった。

 

「途中で何かあるかもしれない。強くなったら何かが変わって、本当にバカにされなくなるかもしれないだろ」

 

————かもしれない……かもしれない!? だから無責任なんだ!! できるかもわからないのに好き勝手言って。本当に私を想ってくれるならこんなこと絶対に言わないっ!!

 

 サイタマの調子は全く変わらなった。抑揚のなく言葉を声に出しているだけで、そこに責任や想いなどは感じられやしなかった。彼女の養父養母、コーチがかけてくれる言葉のような暖かみはまるでない。

 

「前にも誰かに言ったっけ。自分で変われるのが人間の強さだ、って」

 

「ッ!!」

 

 それなのに、リンネには全部がひどく優しい響きに聞こえる。強さの頂点に立つ男は、いとも簡単に変われると告げた。彼女の心を叩きのめした〝あの日〟すら受け止められる可能性を口にした。

 

————変われるのが強さ…………

 

 格闘技、競技の強さとは違う、自分に向けられる強さ。それさえあれば、大きく歪んだリンネも変わることができると言うのだ。底にあるのは応援や愛情ではない。サイタマが積み上げてきたものに対する自信だった。圧倒的な自信に基づいた言葉は、自信のないリンネには憧れるほどに魅力的だったのだ。

 

「だけど私は…………」

 

 一方で自分が変わることができる自信は微塵も見つけられない。道標は見えた。だが至る道が見えないままだった。どう変わったら〝あの日〟を清算できるのか、ヴィジョンが露ほども想像できやしないのだ。

 

「どうして私が変われると思うんですか? こんな……こんな私が」

 

 だからこそ、サイタマがリンネの可能性を信じ続ける理由が知りたかった…………彼の言葉で聞きたかった。

 

「どうなんですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何言ってんだお前」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺を投げ飛ばせるぐらい努力してきた奴が、変わる努力ぐらいできない訳ないだろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

————ミッドチルダ・とある競技場の選手用出入り口————

 

 

「サイタマ先生」

 

「ん?」

 

「なぜ先生はリンネ・ベルリネッタをあれほど気にかけたのですか?」

 

 先生がリンネ・ベルリネッタに勝利して数十分後、俺とバングが通路の安全を確保したところに先生とサンサーラ、そしてリンネが出入り口までやってきた。足を負傷したという彼女だったが、間髪入れずやってきた迎えに連れて行かれてしまった。今はサンサーラの迎えを待って警戒態勢でいるところだ。

 

「気にかけるって…………ちょっと話してやっただけだけど……なんか変?」

 

「いえ…………先生が長話に付き合うのは珍しいと思っただけです」

 

「ああ、なるほど」

 

 長い話が死ぬほど嫌いな先生が人生相談にのるとはよほどのことだ。俺の考えが及ばない理由があるに違いない。

 

「あのリンネって奴、子供の割には強かったからな。油断してたら投げ飛ばされたし。ちょっと感動した」

 

「あれには俺も驚きました。見ている感じでもA級ヒーロークラスの実力はありそうですね。単独でも災害クラス〝虎〟ぐらいは容易く対処できると思われます」

 

 まさか先生が投げられるとは、天と地がひっくり返っても考えもしなかった。子供にしてあのレベルの戦闘能力は驚異と言うほかない。

 

「だけど口も態度も変だったしな。見て見ぬ振りして気分が悪くなるより、本人に直させた方が楽だって思ったってこと」

 

「なるほど…………自分の戦いだけでなく、他人の戦闘中でも相手の発言や挙動を分析していたんですね! 心理状態を読んで最善の選択をしていた……さすがです! 先生!!」

 

「どこをどう聞いたらそうなるの?」

 

 絶対的な力で生まれる余裕を利用した戦略は素晴らしいの一言だ。やはり学ばなくことはまだまだある。

 

「気分が悪くなったのは僕だよ。何でああなっちゃったのかなホント」

 

「あれ? 機嫌悪いのか?」

 

「先生は気にしないでください。結果が思い通りにならなくて拗ねているだけです」

 

「ふーん。よくわかんねぇ」

 

「いいよ別に。前向きに考えるから。サイタマさんで無理ならアレ(・・)しかいないってことで」

 

「なんだそりゃ」

 

 現実に目を向けさせるという奴の目論見は成功した。想定外だったのは、先生が思った以上にリンネを見込んだことだろう。そうでもなければ悩み相談に付き合ったりはしない。

 

「サイタマさんみたいに強い人がダメ出ししてくれたら、リンネも強くなるのを止めるかなって思ったのに」

 

「奴を止めるには他にあり方を示すしかなかった。力の近い奴や因縁のある相手の方がよかったな。先生では格が違いすぎて参考にすらならない」

 

「格が違うから諦められることもあると思うよ?」

 

 そうか。奴も強さを求める者の一人。だから先生に惹かれたのか。何事も苦としない圧倒的な強さは、力を求める俺達にはあまりに眩しい。同じ願望があり、同じ人物を慕う者として意見を交えるのも悪くないかもしれない。

 

「今度話してみるか」

 

 サンサーラに頼めば何とかしてくれるだろう。奴も先生について聞きたいことは山ほどあるに違いない。互いにメリットがある。

 

「何? なんか言った?」

 

「いえ何も」

 

 私用を先生に伝える必要もない。屋敷に着いたところでサンサーラを呼び出そう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

————一時間後・とある自動車の車内————

 

 

 

 

 

〝後悔が残った一日〟

 

 今日一日の総括をするなら、きっとこうなるに違いない。夢にまでみた強さを手にするチャンスがあって、新しい道を示されて、選べなかった日だ。こんなに濃い一日は〝あの日〟以降は一度もなかった。

 

(差し出された手を取れなかった…………眩しすぎて手を伸ばすこともできなかった)

 

 結局サイタマさんの答えを聞いた後も、私は変自分が変われると思えなかった。努力で〝あの日〟を受け入れられるなんて、やっぱり信じられっこない。格闘技しか取り柄のない私にできる努力は一つしかなかった。

 

(だけど…………ちょっと嬉しかった)

 

 手を差し伸べてくれたこと、変われるって言ってくれたこと、何も見えない場所で、私の隣に立って一緒に道を探してくれたこと………………置き去りにせずおぶってくれたこと。全部嬉しかった。今の私を否定した上に優しさの欠片もなくて素っ気なかった。でもそれも私を気にかけてくれていたから。

 

「私は彼の期待を裏切った。だからもう————」

 

 不安がない訳じゃない。意味がないかもしれないという恐怖はある。だけど可能性を見捨てた私に残された選択肢は一つだけだ。見下されない強さ、大切な人を不幸にしない強さを求めて戦うことだけ。この暗闇には二度と誰もやってこない。だけど覚悟はもう決めている。

 

「過去を振り切る日まで……私はもう誰にも負けない!! チャンピオンにも私に土をつけたあの子にも! 絶対に!!」

 

 強く握りしめた両手は冷えきっていて、とても冷たかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ウインターカップ開幕のひと月前のことだった。

 

 

 

 

 

 

 




〜オマケその1〜




サイタマvsリンネから数ヶ月後、ウインターカップ、とある試合の後


「うわ、ありゃ絶対アバラ折れてるだろ。変な音したぞ」

「何で聞こえるの…………でもリンネ渾身の一撃だったね。さすがにアレを受けたら立てない」

「アイツも余裕なさそうだったしな。本気を出したってことか」

「リナルディ選手も手強い相手だったからリンネも全力だったと思う。いい試合だったよ」

「でもアバラを砕くのはなぁ…………スポーツでそこまですることねぇのに。えげつねーなアイツ」

(いつもワンパンでブチ抜いたり四散させてる人には言われたくないと思う………)




〜オマケその2〜


更に少し経って、とある親友同士の決闘後




「負けたかー。あんだけやる気がなかったら仕方ないか」

「やる気がないって…………集中はしてなかったけど」

「悪口じゃねーからな。嫌いなことから逃げ続けるには限界がある。いつかは向かい合わなきゃいけないときが来る訳で、今日がその日だったってだけだ」

「なんかいいこと言ってるけど、そう思う訳は?」

「貯金が底をつきかけてるって言ったらわかるか?」

「そんなことだと思ったよ」

「るせー。わかったら給料ちゃんとだせよ」













〜オマケ3〜



同日、サンサーラの部屋


「………………………」

「………………」

「…………お久しぶりです社長さん。サンサーラです」

「…………」

「はいこちらこそ」

「…………………………」

「ええそうです。 一芝居打っていただいた甲斐がありました。彼女のためになると言ったでしょう?」

「…………」

「あははっ!! 思い出しました。僕が辞めさせるようにと言った途端凄い剣幕でしたね。喧嘩っ早いがアイツは根性がある! 辞めさせるなんてバカ言うなって」

「……………………………………」

「それを言われると痛いですね。最初は僕の先生に預けるつもりだったんですが、先にナカジマジムに拾われて…………けどいい方に転がってくれてよかったです」

「………………………………」

「知らないと思いますよ。社長さんも話してないでしょう?」

「…………」

「なら彼女は知る由もありません。知る必要もないですけど」

「…………………………」

「詳しいことは来週にまた話しましょう。それでは」

…………………………

………………

…………


「…………………」

「…………」

「……」

「…………サンサーラです、ってサイボーグゴリラか。博士かと思った」

「…………」

「悪いって。サイタマさんの評価項目は済んでるから」

「……………………」

「うん。結論から言うと博士の言う通りだった。間違いなくリミッターが外れてる。スピード、パワー………他に考えられない」

「………………」

「いや、僕が見たのはリンネ・ベルリネッタとの模擬戦だけだよ。後は護衛をしてもらったときとか。それでも嫌っていうほどわかった」

「……………………………………」

「僕の見立ては少し違う。〝聖王〟はリミッターを外し切れてなかったと思うんだ。もし外れていたら〝ゆりかご〟なんて必要なかったんだし。サイタマさんと違って、魔法も武術もできたんだから他の選択肢はあったはずだよ」

「…………」

「証拠はないけどあの時代にリミッターを外すのは至難の技だって。周りが強すぎてほとんどその前に死んじゃうよ。実際〝覇王〟ですら戦死しちゃったから無理だと思う」

「………………」

「まあね。そこのところは博士とまた話すよ。それから例の件のことだけど…………」


「………………………」

「まだ見つからないか…………弱ったなぁ。護衛の名目でサイタマさんは何度か呼んでるけど、これ以上頻度を増やすのは難しい。そろそろヒーロー協会にも報告した方がいいかも」

「………………」

「管理局と聖王教会にはもう情報は流した。けどアレが相手となると…………エース級が何人もいるだろうから大変だ。早く手を打たないと」

「……………………………………」

「わかった。こっちでヒーロー協会に働きかけよう。上手くいけば三者合同の討伐隊が組まれるかもしれない。その方向に動いてみるよ」

「…………………」

「ま、お互い死なない程度に頑張ろう。じゃあね」




次話から不定期更新になります。
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