えりな「幸平君が留学!」
仙左衛門「わしもそれには、同意している。遠月の代表として彼に行かせようと思っておる」
えりな「そんな学園のためなら私も・・・」
仙左衛門「えりな、お前の気持ちはよく分かる。だが、今の遠月においてお前は必要な存在になりつつある。我が遠月の信頼失墜し、先行きが不透明である。お前には料理業界を背負う薙切家の宿命は避けられぬ」
えりな「ですが、お爺様・・・」
仙左衛門「しかし、それでも行きたいというのなら薙切の家を捨てる覚悟をした時じゃ」
アリス「お爺様、それはいくらなんでも言い過ぎ・・・」
アリスが言葉を言い終える前にえりなは部屋を走り去った。あとを新戸が追う。
アリス「お爺様、アリスは・・・」
仙左衛門「分かっておるよアリス。だが、えりなも成長しなくてはならない。そのためには仕方ないのじゃ」
アリス「お爺様」
その頃、えりなは部屋に閉じこもったきり出てこない。新戸が何度もノックをするも返事が無い。
新戸(どうすればいいんだ?)
【極星寮】
寮では、その日一日創真は留学の件を考え続けていた。気づくと夜明けになっていた。
創真「もう、朝か」
すると、創真のスマホのバイブが部屋中に響く。
創真「新戸! はいもしもし」
新戸「幸平、えりな様はそっちに来てないか?」
創真「いや、俺一日中起きてたけど来てねえはずだぞ」
新戸「いないんだお屋敷に」
創真「えっ!」
新戸「なあ、幸平お前本当に留学するのか?」
創真「どうしてそれを?」
新戸「総帥から聞いた。まあ、そのことは今いい。えりな様を探すのを手伝ってくれ」
創真「ああ、分かった」
創真は、寮を飛び出しえりなを探しにいった。えりなが来るルートを彼は逆から辿っていった。しかし、彼女は見つからない。そこで創真は、えりなの屋敷への近道のルートを進んだ。するとその途中で・・・
えりな「きゃっ!」
創真「今の声」
えりな「いたたた」
茂みをかき分けて進むと尻餅をついたえりなの姿があった。
創真「薙切、こんなところで何してるんだよ」
えりな「あなたこそ何で?」
創真「新戸からお前が居ないって連絡があったんだよ。立てるか?」
創真がスッと手を出すと、えりなは手を掴み、創真の手によって起こされた。
えりな「ありがとう」
創真「お前、膝から血出てるぞ」
えりな「平気よこれくらい」
創真「バカヤローすぐ殺菌しないとまずいだろ。背中に乗れ、近くに寮の水場がある」
創真は、えりなをおぶって水場に向かった。着くとすぐ薙切の足に汲んだ水を少しづつ傷口に垂らし砂などを洗い流した。そして、いつも巻いてるタオルを膝の止血に巻いてくれた。
創真「これで良しと血が少し止まったら寮に行ってちゃんと手当てするぞ」
えりな「ありがと・・・ねえ、幸平君。海外留学するって本当?」
創真「ああ、そのつもりだ」
えりなは、正直その場でショックを受けた。元々、彼に恋心を抱いたりしている訳ではないと自分には言い聞かせている。でも、胸の鼓動が止まらない。むしろこんなにドキドキしたのは初めてではないか。
えりな「あなた遠月の十傑に入るんじゃなかったの? 私に勝つんじゃなかったの?」
創真「質問攻めかよ。確かに悩んだよ。でも、俺は料理の世界をもっともっと知りたい。そして自分の未知なる高みに挑戦したいんだ。できれば最後までお前と競いたかったけど、お前には薙切の家があるからな。まあ、俺がいなくなってもがんばれよ」
えりな「バカ・・・」
えりなは、声を震えさせて、目を涙目にして言った。
えりな「幸平君のバカ、私の気持ちなんて何にも分かってないくせに」
そういうとえりなは、走り去ってしまった。
創真「お、おい薙切」
和希「あーあ、女の子を泣かせたな創真」
木の陰から和希がスッと現れた。
創真「お前、こんなところでなにしてんだよ」
和希「お前が朝飯になっても戻ってこないから探しに来たんだよ」
和希は、創真に近づき彼に言った。
和希「創真、お前は本当にそれでいいのか?」
創真「何が?」
和希「えりなちゃん、本当は引き留めたかったんじゃないの留学を」
創真「バカ言いうなよ。あいつには、薙切の家があって料理界のこともある。俺が振り回すわけにはいかないだろ」
創真は、そういいながらせっせと行ってしまった。
和希「なるほど、そういうことか」
彼は、ポケットからスマホを取り出し、ある人に電話した。
和希「ちょっと頼みがあるんだけど」
次回は、創真とえりなの想いの結末が・・・