和希「あの急須の中がカギになってると思うよ」
葉山「まさか!」
和希「そのまさかだよ」
黒木場「秋の選抜で見せた・・・」
創真「おあがりよ」
急須から丼に注がれたのは、熱々の透明な汁だった。
創真「カツ茶漬けっす」
【スタンド】
吉野「カツ茶漬け」
水戸「なんてことしやがる幸平」
一色「いや、創真くんは考えたんだよ。・・・究極な一手を」
【メインステージ】
司「幸平、そんなことをしたら表面がべたついてカツのサクッとした食感を台無しにするだけだろ?」
創真「ええ、確かに普通のカツなら・・・ですけどね」
審査員たちがカツ茶漬けを掻き込む。
審査員A「何だ。これは、まるでカツ丼ではなかったように思えてしまう」
審査員B「衣がかき混ぜることでご飯にうまくなじみさらに美味しさを増している」
審査員C「一体、この汁の正体は?」
創真「それは出汁として作ったもの。中には、野菜と魚介のブレンド出汁です」
審査員D「野菜と魚介のブレンドですって!」
審査員E「しかし、そんなんじゃ味のまとまりが」
和希「まとまりなら簡単にできますよ。ある調味料を混ぜれば、特にスープ系の物には」
えりな「まさか、コンソメのもとを入れたんじゃ」
創真「正解」
黒木場「そうか、魚介の出汁と野菜の出す出汁自体はフランス料理でも活用されることが多い。ポトフには野菜の出汁とベーコンなどの油とを結ぶ役目として使われる」
新戸「まさか、幸平がつなぎに麹を使い。マグロ、カモの肉をカツに加えたのもこの原理を生かした」
創真「うまみ成分を中質した一つのスープをひつまぶしの原理を応用したってことだ」
観客が創真のしでかした隠し玉に驚愕した。司もその場に固まった。
司「そんなありえない。僕の創造の領域を超える品を作ったというのか?」
審査員A「いやーこれはどちらも素晴らしいとしか言えんが」
審査員B「しかし、今回は一つの差が勝敗を分けることになるでしょう」
審査員C「みなさん、決心はついてるようですね」
司会「それでは、審査結果に移ります。審査員の方々はお手元のボタンをどちらかをお押しください」
新戸「この結果で遠月のすべてが決まる」
「両ベンチ」
両者監督が審査の結果を待つ。しかし、薊の様子がおかしい。妙に拳をいつもの力以上に握っているのに城一朗は気づいた。
城一朗「どうしたよ中村?」
薊「勝つのは私だ。私の作り上げた芸術があんなひよっこに崩されるものか」
城一朗「おっ、大した自信だな。だがな、天命を覆すことを諦めた奴に未来は訪れねえよ」
審査員の投票が一斉に掲示される。
次回、最終戦決着。どうなる遠月の未来