地表が燃えている
世界が燃えている
文明らしきものはすべて踏みつぶされた
知性あるものは隷属さえ許されなかった
汚染された動物たちは苦しみ、巨大化し、走り続けた後に自壊した。
早すぎる、と予言者はおののいた
戦うのだ、と支配者はふるいたった
手遅れだ、と学者たちはあきらめた
でも、少しぐらいは残るだろう、とアナタたちは楽観した。
――――本当の脅威が、その姿を現すまでは。
遥か外来からの来訪者。
当時の人類の観測圏が、太陽系までであれば、太陽系の外である銀河の彼方から到来した、それは異世界からやってきた、来訪者ともいえただろう。
その来訪者が齎したのは、破壊。
略奪ですらない、一方的な破壊。地表を燃やし、世界を燃やした災悪でさえ、その前座でしかなかった。
突如現れた、巨神によって、あらゆるものは踏みつぶされた。
その正体は、あらゆる文明を破壊し収穫し養分とする、全知的生命体の敵。
暗黒の宇宙より来る箒星にて、あらゆる文明を終焉させる収穫の星、ヴェルバー。
そして、魔の流星より零れた涙の一滴こそ、世界を終焉へと導く巨神、セファール。
その超越した力は、一国を滅ぼす兵器も、根源に因を為す創世の神秘も、大自然への信仰により生まれた神々でさえ、成す術もなく破壊された。
最強の神である、軍神すらも破れ、終焉へと至る刹那の時、雄大なる桜の木の下、世界の危機に対し召喚された英霊が、巨神を見上げていた。
この文明において、遠き過去、世界を手中に収めた、最初で最後の女帝。
太陽の聖剣を振るい、万軍を討ち滅ぼし、神殺しを成した、最強の英霊でさえ、数多の英霊と同じ運命を辿ろうとしていた。
「軍神すらも敗れ去ったか。この戦、
く、呵々々、余が破れるなど生前を含め、初めてのこと、敗北の味とはこうも苦々しい物とは、死して尚、死に切れぬ想いよ」
豪華絢爛、幾重にも着込んだ和装は、無残に破れ、女帝の宝具である太陽の聖剣も、半ばから折れていた。
それでも尚、膝を付くことなく、凛と佇むのは、女帝としての矜持ゆえ。
敗北の味をかみしめながら、終焉への至る刹那の時であっても、満開に咲き誇る桜に手を添えた。
「―――すまぬな。如何なる敵からも護ると誓ったが、どうやら余はここまでのようだ。
余が盟約を破るのもこれが初のことか……まったくもって、忌々しい奴よ」
それは、彼女が女帝として歩む、きっかけ。
幾度、厳しい冬を迎えても、春には力強く、満爛と咲き誇る、桜が何よりも好きだった。
しかし、時は戦乱の世、戦禍の火が桜の木へ及んだ時、彼女は立ち上がった。
今も昔も、彼女が剣を持つ理由はただ一つ。
「我が盟友よ、余の覇道の散り際、そこで看取ることを許すぞ」
既に一度は死した身、そもそも、現界しているその体は霊体故に、今更、死は恐れるものではない。
死して尚、千年を超え、叶え続けた彼女の覇道の証
その証が、今、終焉を迎えようとした時―――――極光が、巨神の身を貫いた。
その超越した力は、一国を滅ぼす兵器も、根源に因を為す創世の神秘も、大自然への信仰により生まれた神々でさえ、成す術もなく破壊された。
しかし、生きたいという人々の願い。大切な誰かを護りたいという祈りが、希望の光となりて、神々さえ破壊した巨神を討ち滅ぼしたのだ。
はらはらと、雪の様に舞い散る光の中で、死に損なった彼女は、大いに笑った。
「呵々々々々々――――――――ッ!
おお、巨神よ! ここまで、余を愚弄するか!」
敗れ去った覇道。その時こそが、彼女の最期だと、生前より誓っていた。
だというのに、最後の最後、誰ともわからぬ希望の光によって、勝手に消えていったのだ。
赦されない、赦せるはずがない。敗北を与えておきながら、その最期を与えずに敗れた巨神へ、大いなる憎しみを抱いた。
「覚えておくがいい、巨神よ!
余は、最初にして最後、世界を手中に収めた、桜の女帝、イクステリア・ギルシレン・ルーヴェンフォード!
貴様に、終焉を齎す者の名である! 次に、まみえるときこそ、我が不滅の覇道が貴様を飲み込んでくれる!
呵々々々々々――――――――ッ!」
怨嗟と再戦の誓いをここに、盟友にして覇道の証である桜に、半ばから折れた聖剣を突き刺し、光となって消えていった。
そして、1万4000年の時が過ぎ、遠き月において終結した聖杯戦争。
その勝者である、岸波白野の下、新生される『SE.RA.PH』に新たに作り出された未開領域に、薄紅色の刀身が埋め込まれた、雄大に咲き誇る桜が現れた。