咲き誇る薔薇の帝都
SE・RA・PH領域内に存在する、ネロ・クラウディウスが新領域に作り出した、赤の軍勢の拠点とも呼べる領域にて、今、侵略戦争が行われていた。
「―――玉藻の前陣営のサーヴァントは、エリザベートのみ。
仕掛けたというよりも、独断専行か?」
単独ライブと言う名の、災害にも似た騒音。
ランクE-、と決して強力でこそないが、宝具の領域にすら踏み込むとは、驚くべきなのか、呆れるべきなのか。
ネロ・クラウディウスを始め、格上の5騎が集うこの領域に、単身で攻め入るところを見ると、やはり、呆れるべきなのだろうと、俯瞰していると、その優勢は分かり切った方へと傾いた。
「徹底したか、狙うなら今の内だな」
静久の狙いは、単純明快。
両陣営に存在するサーヴァントは、どれも一騎当千の強者。
サーヴァントと化した静久だが、その希釈された力では、決して敵わない。
だが、その唯一の例外、そうそうたる面々の中に一騎だけ、低級のサーヴァントが混じっている。
それが、今まさに手傷を負い、撤退しているエリザベート・バートリー。
イクステリアの様に、将を射よんとすれば将を射よ、と言う暴言の如き華々しい戦果を打ち立てることは不可能だが、将を射んとする者はまず馬を射よ、と倒せる敵から倒していく。
イクステリアの力の半分でも引き出せば、他のサーヴァントとも、同等の戦いになるだろう。
しかし、その目論見は、飛来した歯車によって打ち砕かれた。
「あれには、私も用があってね。
今、ここで倒されるわけにはいかないんだよ」
無造作に伸びきった髪、枯れ木を連想させる容姿でありながら、狂気じみた信念を宿す瞳。
両脇に二つの歯車を携えた男が、静久の前に立ち塞がった。
「――サーヴァント、なのか……?」
各陣営に身を寄せるサーヴァントはイクステリの手によって、その宝具・能力までも、明らかにされている。
万能を自称するイクステリアが、主戦力であるサーヴァントを見落とした?
「そう言う、貴様はNPC……いや、サーヴァントか?
興味深い研究対象ではあるが、不確定要素は少ないほどいい。
―――故に、ここで消えろ」
「―――ッ」
迫りくる歯車を跳躍し回避すると、儚き悠久を顕現させ構える。
息をつく暇も与えんと、二つ目の歯車が静久へと迫るが、宝具ですらない武器が、神殺しの聖剣と打ち合えるはずもなかった。
「―――薄紅色の刀身を持つ剣。私の歯車を両断したということは、宝具であることは間違いない。しかし、あれほど目立つ剣だというのに、一致どころか類似する伝承すらないだと……?
貴様、いったいどこの英霊だ?」
「答える必要はない!」
いくらステータスで劣ろうとも、この手に在るのは、旧文明最強の英霊が担った、神殺しの聖剣。
生半可な宝具では打ち合うことすら許されず、それが、宝具ですらないのなら結果は言うまでもない。
三度迫りくる歯車を、バターの如く両断し、謎のサーヴァントへと迫る。
――直接的な戦闘を仕掛けてこないと言う事は、召喚されたクラスは、アーチャーかキャスター。どちらにせよ、近づくことさえできれば!
「――認めよう。私ではその剣と打ち合うことすらできないようだ。
だが、打ち合えぬのなら打ち合わなければいいだけの事! 我が円は崩れていない!
殺戮技巧その1!
巨大な天秤が現れ、その秤が傾いた瞬間、超重力が静久へと襲い掛かる。
――だが、それがどうした。例え、紛い物とはいえ、この身はサーヴァント。この程度の足枷で、阻めると思うな!
降りかかる重力を振り切らんと、その足に力を込めた瞬間、天秤の秤が振れた。
「――なッ、がッ!?」
超重力が反転し、半減した重力。超重力を振り切ろうとした力を空回りし、宙に浮いた静久を見計らうかのように触れる天秤が、再び超重力を課し、地面に叩きつけられる。
敵の力を利用し、その動きを封じるアルキメデスの天秤。
「だったら、これでッ!――――どうだ!」
薄紅色の刀身が緋色に染まり、収束された陽光がそのまま刀身となり、その天秤ごと、謎のサーヴァントを貫かんと疾走する。
「容易い。実に容易い! 殺戮技巧その2!
だが、その行動はあまりに迂闊。
動けないのならば、飛び道具で攻撃するなど、あまりにも愚直すぎる。
案の定、その攻撃は天秤だけは、破壊できたものの剣を振り切り、隙だらけとなった静久に、鎌鼬を発しながら直進してくるスクリューに対応できず、その身を刻まれる。
「この―――程度でッ!」
「雑ですね。実に雑!程度を知れ!貴様に正しさなどない!
殺戮技巧その3!
鎌鼬に身を刻まれながらも、力技でその先に在るスクリューを溶断するも、敵サーヴァントの姿を見失った静久に降りかかるは、巨大なクレーン。
その数は8柱、例え、全てを溶断しようとも、静久めがけて倒れてくる、それらを防ぐことは不可能。
迫りくる死のかぎ爪に、己の浅はかさを呪った。
――これが、正規のサーヴァントの実力……!
手傷を負っていれば、直接の戦闘を苦手とするアーチャーやキャスターならばと、心のどこかで慢心していた。
桜の女帝の力を継ぐ自分の敵は、巨神のみと、その過程にある英傑たちを侮っていた、つけが、今、静久に降りかかった。