IS あの空もきっと蒼い   作:AK74

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 遅れてすいません。
 拙い文章ですが、これからもよろしくお願いします。


 第十話

 

 明かりもない真っ暗な闇の中、彼はまだ眠っている。

 無理もない。まだ日も昇らないような時間なのだから。

 

 ただ夢の中、遠景を見続けている。

 

 思い出せないことも、思い出したくないことも、忘れたくないことも全てをひとくくりにされた遠景を。

 

 ベットの上で一夏が寝返りを打つ。

 ギシリとやけに大きな軋む音がしたが、あいにく愛おしい人は部屋にはいなかった。

 

 一夏の顔が苦悶に歪む。また寝返りを打つ。

 うなされている様だ。

 

 怖い夢を見ている。

 

 悲しい夢を見ている。

 

 苦しむ夢を見ている――夢の終わりはあまりにも遠い。

 

 

 

 

 一夏の目の前には研究所の内部と思わしき景色が広がっていた。

 

 それはいつか彼がみた景色。思い出したくなかった場所。

 

「―――!」

 

 爆音混じりの中で少年が大きな口で何か言ったが、一夏にはなんといったか分からない。

 少年は泣きそうな顔で18、9程の女性にしがみつく。傍らにはやはり同年齢ほどの女性が二人。アメリカ系だった。

 その女性たちの顔は一夏は知っている。

 

「大丈夫よ。貴方は独りじゃない、例えどんな時でもね。いつでも私たちが見守っているわ」

 

 優しそうに微笑む女性。

 ウェーブのかかった柔らかな金髪が靡く。

 

 その顔は記憶の中の変わっていなくて。ひどく懐かしい。

 

 あぁ、そうか。コレは。

 

 

――――あの日の夢なのか。

 

 

「―――!」

 

 少年が抗議の声を上げた。

 それは、離れたくないと言っているかのようだ。

 

「馬鹿野郎。お前は男だろ?ならしっかりしないでどうすんだ。安心しろ。絶対会いにいく。こんなところで死にはしないさ」

 

 もうひとりの女性が少年に言い放つ。

 やはり記憶のとおりで、どこまでも男勝りだ。

 

「ほら、早く逃げないと――――」

 

 その言葉は最後まで続くことがなかった。

  

 狭い通路故に響く、特有のブースト音。そしてライフルの発砲音。

 間違いなくアレが近づいてきている。

 

「ホラ!!早く逃げろ!!アリス、コイツは頼んだからな!」

 

「・・・・分かった。気をつけて」

 

「えぇ、そっちもね。また、会いましょう」

 

 その会話はあまりにも短く、別れの言葉だとは思いづらい。

 でも、親友とも言える彼女らにとっては十分で、やらなきゃいけないことは一つだけ。

 

「―――――!!」

 

 少年が泣き叫ぶ。

 ソレをアリスと呼ばれた彼女が抑え、引っ張っていく。

 その光景はあまりにも見ていられないほど、心が締め付けられる。

 

 もしも声が届くなら、彼女らに触れられるのなら、一夏は迷わず二人を助けていたに違いない。

 だが、既にこれが夢だと知っていた。

 

「すまねぇな。生き延びてくれよ」

 

 その言葉が聞こえ、少年と彼女との間に天井が崩れ落ちた。もう、向こう側にたどり着くことは叶わず、声も届かない。

 くずれたその天井。

 ソレは彼女が自発的に壊したもの。

 全ては少年を助けるためだけに。

 

 少年ががれきの山を取り除こうと必死になる。だが、たかが12歳の子供がどうにかできる問題ではなくて。

 

 その、名前を呼ぶ声だけは、なぜか

 

「スコール!!!オータム!!嫌だ!!嫌だぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 なぜか、鮮明に聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

「糞ッ!!なんだあの化物は!?」

 

 ――夢が移ろう。

 

 ISが戦闘行為をしていた。

 その操縦者は皆、IS操縦においてトップクラスの実力を誇る、文字通り切り札となり得る国家代表。

 今回の第三次世界大戦においても、国家代表という肩書きに恥じぬ戦績を残し、戦局を有利な方へと進めていた。

 そんな人物が5人も集められた編隊ともなれば、最強といっても差し支えない。ブリュンヒルデでも撃破に手間取るんじゃないだろうかという戦力。

 だが、その切り札はたった今壊滅仕掛けていた。

 たったひとりの”異能者”の手によって。

 ソレは少年。

 

「ああっ!!」

 

「ラグナ!?」

 

 また一人吹き飛ばされる。

 

 そこで繰り広げられていたのは戦闘という生易しいものですらなかった。

 一方的な蹂躙。

 ISがいくら攻撃しようとも、当たらず反撃の一撃で一気にエネルギーを持っていかれる。

 そんな、ワンサイドゲーム。

 

 一夏はその光景に目を細め、そして再度自分がどんな存在なのか再認識する。

 そこで戦闘をしているのは、紛れもない三年前の自分なのだから。

 

 IS、最強と言われたパワードスーツが何もできずに圧倒される。この光景を世界が知ったら大きな問題に発展しかねない。

 最も、そのISを圧倒する”異能者”の受け入れを拒否したのは世界なのだが。

 

「な、何なのよ。アイツ!」

 

 一機が、得体の知れない力によって跡形もなくこの世界から”消される”

 更に響く轟音――ISパイロットの心臓部分が巨大な槍に貫かれ、絶命する。

 

「死ねェッ!」

 

 ISの全長ほどもあるのではないのだろうかと言うほどの大きさを誇るエネルギーキャノン。その銃口はまっすぐと少年へと向けられている。

 穿たれる青く輝くレーザー光。ISを三機を軽く葬り去るほどの威力を秘めたそれ。

 だが、それは届くことはない。何かに阻まれる。

 

「嘘・・・」

 

 呆然としている暇はなく、いびつな音が響いた。

 それが自身の下半身をえぐり取られた音だとまでは分からなかった。

 

 静かな静寂がその場を満たす。

 焼き焦げたタンパク質や血の匂いが充満しているのだろうが、生憎一夏には感じ取れなかった。

 

 あまりにも圧倒過ぎているな・・・・

 と一夏が思った。

 

 全てが異能の結果だった。

 

 最強と呼ばれる一夏の能力は、異常過ぎた。

 

 全次元多方向同時攻撃能力及び全次元完全防御能力。極めつけには認識範囲内における物質の完全制御。

 

 いかれているとしか思えないような力。

 これらの前に、攻撃力と防御力など無意味でしかない。

 どんなに硬い装甲があろうともそれは三次元上だけであって、4次元方向からの攻撃にはあまりにも脆い。

 どんな攻撃が来ようと、その攻撃に対して完璧に防ぐ防御能力。

 核ミサイルをくらおうとも死ぬことはない。

 

 それはもはやISを圧倒するにはあまりにも小さすぎる。

 世界を相手にしようとも絶対に負けることはないほどに強すぎる能力。

 

 それが、”異能者”Cー047、NO1の実力だった。

 

 

 

 

 

――――暗転。

 

 また、夢が移ろう。

 

 少年が抱きとめられていた。

 抱きしめているのはひとりの女性。だが、さっきまで一緒にいた女性ではない。その人は近くに亡骸となって横たわっている。

 

「一夏・・・・・、一夏・・・・・!!」

 

 少年の顔には何も映っていなかった。抜け殻、もしくは人形。そんな表情。

 もちろん涙の一滴も流してはいない。

 肘から先がちぎれた腕、弾けとんでいる左目から、代わりと言わんばかりに紅い血が流れていた。

 

「    」

 

 少年の口から声にならずに空気だけが漏れる。

 どんなに耳を澄ませようとも声が聞こえない、ヒューと言う音だけ。

 

 失声症と言われるものだった。

 

 ストレスや心的外傷などによる心因性の原因から、声を発することができなくなった状態の事を指すものだった。

 言うまでもない。

 大切な人を短時間で3人、イヤそれ以上の家族を殺されて、しかもそれが目の前で虐殺された。ならないと言うのがおかしい。

 むしろ、失声症程度で収まったのが幸運とも言えるかもしれない。下手したら、精神が崩壊してもおかしくないのだから。

 

 ”千冬お姉ちゃん”

 

 そう、言おうとしていたはずだ。

 それは記憶に新しいことだった。忘れるはずもない、全てを失い、そしてたったひとりの肉親に再会した皮肉な日だったのだから。

 

 家族を失った代わりに、本当の肉親に会う。

 

 それはまるで代償として奪われた、そんな気がしてならない。

 

「本当に一夏、なんだな・・・・?」

 

 そう言う、女性―――千冬――の声は震えていて、目尻には大量の涙が溜まっていた。

 ひとりで生きて来て7年が過ぎようとしていた。

 一時期はヤケになって死のうとしたことさえ有り、その時の傷跡は生々しく今でも残っている。親友がいなければ今頃この世界に存在していないだろう。

 親友が居たから、どうにか生きてこれた。

 そんな中、死んだと思っていた肉親との再会。

 泣かない理由なんてどこにも存在していない。

 

 こくりと、少年が頷く。

 それは返事を言えなかった故の行動。

 

 ギュッと強く抱きしめられる。血がつくとかそんな些細な事など気にも指定ないくらい強く。

 それは、もう離さないと、どこにも行かないでくれと言っているかのようで。

 

 右手だけで精一杯に抱きとめ返す。

 

 姉の温もりがひどく懐かしかった。

 

 

 

-―-暗転。

 

 真っ白な空間。何も聞こえず、何もない。

 傍観者としているのは終わりになった。

 

 一夏の目の前に5歳ほどの子供がいる。その姿は夢の中の少年と瓜二つだ。

 

「ねぇ、君は誰が僕たちを地獄に引き摺り混んだか知りたいと思わない?」

 

 その言葉は耳から聞こえるのではなく、直接頭のなかに響いてくる。

 だが、そんな事を気にすることもない。ここは夢の中なのだから、何が起きてもおかしくない。

 

「・・・・別に。今知ったところで何になると言うんだ」

 

「さぁね?でも知るだけ知ってもいいと思うんだ」

 

 そう言う少年の顔は笑みにあふれている。だが、それはもはや子供が浮かべるようなのもではない。

 世界の裏を知りきった、そういった者が浮かべるような感じだ。

 

 正直な所一夏からすれば、今更その人物を知ったところで意味ないとしか思えない。環境は少々特殊では有るものの、愛おしい簪がいて、家族の姉がいる。離れ離れになった親友とも会えた。

 もうこれ以上望むことはないし、そんな事は欲張りだ。

 復讐に走るということももうない。

 本当に無駄だというに。

 

「勝手にすれば良い」

 

「そう。なら自分の選択を後悔しないことだね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

16代目更識楯無。

君も聞き覚えがあるでしょ?」

 

「・・・・・っ!?」

 

 嘘だ。

 ただそれだけが頭の中を満たしいてく。

 

「嘘じゃない。本当のことさ」

 

 少年はいつの間にか笑みをやめていた。 

 そこにあるのは無表情。

 

「あぁ、そうそう。君は見たから大丈夫だと思うけど、世界最強の単体戦力というのは忘れちゃいけないよ?どんなにISが集まろうとも負けることはなく、その戦闘は全部ワンサイドゲーム。君一人で戦いは決まる。かつて核が抑止力だったのと同じさ。

 いつか選択を迫られる時が来る。 きっと世界の命運すら変えてしまうような二択になるんじゃないかな?だって世界にすら勝てる君だから仕方ないよね。どっちを選ぼうとも僕には関係ないけど、きちんと考えたほうがいい。君の選択で世界が変わるんだからさ」

 

 

-―-暗転

 全てがブラックアウトしたあと、瞼に微かに光が舞い込んでくる。

 

 長い夜が、夢が終わったらしい。

 夢のせいだろうか。

 心臓が痛いほどに強く脈打っていた。

 

 

 

 

 

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