7年ぶりに再開した姉弟という事で姉が千冬姉さんということもあり、俺は結構有名にはなっている。
そんな俺だが、IS学園に入学することになった。
理由は単純で、俺自身が”異能者”とばれてもIS学園の規律で守るためだ。
元々”異能者”になるための実験で俺がISを動かせるというのを知っていたがゆえ。
千冬姉さんには教えていなかったからひどく驚かれたが、きちんと理由を説明したら納得してくれた。
でも千冬姉さんに説明したのは表向きであって本当の理由ではない。
理由を隠すためについた、半分嘘だ。
本当の理由は何かといえば、俺が”異能者”として生きることを強要されたことが一番大きい。
戦うために幼い頃から戦闘技術を教え込まれて、その他のことを知らない俺にとって日常というものは、あまりにも大きすぎる。
俺は裏世界のように戦うことでしか生きることができない人間だった存在だ。
だからこそ戦いに生きれる場所、IS学園にならばISを使い戦うことができると思ったからだ。
せめて、最期の時までは自由に戦って死んでゆきたい。
戦闘狂でもいいから俺の生きる道のまま行きたいから。
俺は、生きる意味を見つけられるのだろうか?
一年一組と聞けば、IS学園の生徒なら誰もが反応を示すであろうクラス。
そこには、世界を揺るがした初めてISを動かすことのできる男性である織斑一夏が在籍しているからだ。
そして時間帯から推測するならばHRの時間に当たるのだが、女子高であるIS学園の生徒からすれば男という存在は興味をそそる存在でしかない。
つまり、現在進行形という形で一夏はクラスメイト全員から注目されている。
あまりの注目ようにクラス全員が返事をしなくなるほどで、一組の副担任の山田真耶が涙目になる始末だ。どうにか自己紹介にはたどり着いたところだが、その自己紹介でさえ在り来りなものでアピールしようと言う気持ちはない。全て一夏に注目することに注ぎ込まれている。
一夏が注目を受けているのは男だからということだけではない。
織斑一夏は日本人だ。戸籍も、血筋も、すべてが日本国籍で登録してある。
だが、当の一夏は”日本人なのにも関わらず全く日本人には見えない”のだ。
背中の中程まで伸ばした男子の中では、十分に長いと言える髪を首元で束ねているのは少々高校生らしくないと言われるだろうが、それでもまだ良かった。
一夏の髪は銀色に染まり、その瞳は紅い。だがその瞳は冷たい印象を与えるもので、ルビーなどの紅さとは全くの別物に感じられるものだ。
アジア人の特徴である黒髪に黒い瞳と言うものを一切持っていない。
これら全ては”異能者”の実験ゆえに生じた副作用と言われるものだ。
一度だけは染めることで戻そうとしたことはあった。しかし、染めてもしばらくすれば元の銀色の髪に戻ってしまう。それ以来戻そうとすることはなかった。
そんな人目を惹きつける容姿をしてはいるが、一夏と言えば頬杖をついて床を見ているだけであり、全く視線など気にしてなどいない、否かなり退屈そうにしていた。
「え、えーと、次は織斑一夏……くん、お、お願いしますね?」
ふいに声をかけられた一夏が顔を上げれば、涙目でいる副担任の姿があった。
話の流れからすれば自己紹介の出番が回ってきたのだろうか、と薄ぼんやりと思う。
薄ぼんやりとした一夏の顔を見た瞬間、山田先生の顔がひきつる。
薄ぼんやりしているとなれば、目を細めているのが普通だろう。一夏も例に漏れず目を細めていたのだが、元々の顔と組み合わさりかなり怖い印象を与える。
戦いに明け暮れる者は自然ときつい顔つきになっていくもの。そこに目を細めれば・・・・・・もうわかるだろう。睨んできているようにしか見えないのだ。冗談抜きで。
が、一夏はそんな副担任を気にも止めず立ち上がり後ろを向く。
自己紹介がなんなのかということを事前に説明されているため、何も喋れないということはない。
「織斑一夏。趣味はない。知ってるだろうが、専用機持ちだ」
それだけを言い終えると何事もなかったように座り込む。「それで終わりですか・・・・?」という声が聞こえたが、無視していた。
面白みの何もない無骨な必要最低限しか言わない自己紹介だったが、血気盛んな年頃の女子に火をつけるのは十分すぎた。
「「「「「「「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!!」」」」」」」
突如として教室内に響く黄色い悲鳴。もとい大轟音。
突然のことに反応できなかった副担任は目を回してへたり込む。
「超クール系男子キタァァァァァァァァッ!!!」
「千冬様とどっちを選べばいいの!!??」
「あ、どうしよう・・・・・・!?直球ど真ん中ストライクなんですけど・・・・・・?」
「ヤバイ。濡れてきた・・・・」
クール系男子というのは、あまりにも血気盛んな女子には強すぎたらしい。
一部いろいろと危ないのも居るには居るが。
初日からこんな調子だと今後は大丈夫なのかと思うところは少なからず上がるところだが、そこはなんとかするのが彼女らなのだろう。
ちなみに、一夏は大轟音を間近で聞いたのにも関わらず平然としていた。やせ我慢している様子も全く見られない。つくづくすごい一夏だ。
目を回した副担任の山田先生が復活する頃・・・・・・といっても数分もないが、その時教室には新たな入室者が現れた。
「すまないな山田先生。会議が長引いてしまった」
その人物はこの世界で知らないと言われるほど有名、知らないこと自体が恥とも言われる認知度を誇る、一人の若い女性。
全IS操縦者のあこがれにして、未だ最強の座を守り続ける戦女神(ブリュンヒルデ)こと織斑千冬がそこにはいた。
「諸君私が織斑千冬だ。これから一年諸君の担任を務めることになった。よろしく頼む」
一夏のときと同じように黄色い悲鳴を超えた大轟音が響く。
やっぱりと言うのか、一夏は微動すらしていない。
「ちょっといいかしら?」
朝のHRから時間が過ぎ、一コマの授業を終えたところ。
突然かけられた声に顔を上げてみれば、ヨーロッパあたりの出身とひと目でわかる金髪に青い瞳。その上家柄がかなりいいところのようにも取れる高貴ないで立ちだ。
だが、友好的と言われれば否という雰囲気を纏っている。
男をあからさまに軽蔑する今時の女子と言った所で、高圧的な態度をとっていた。
今の時代。肩をぶつけられたくらいで女性が通報し、勝利してしまうような世の中だ。行き過ぎた女性優遇のせいで女というだけで偉いという認識が広まっている。
この手の女性など、数えるだけでバカバカしいくらいだ。
「何か用でもあるのか?できるならば手短に頼みたい」
一夏からすれば関わらないのが吉ということで、できるだけ柔らかに対応したが、相手は許さない。
「男がそんな態度をとっていいと思っていますの?7年ぶりに再開した姉弟などと言われておいて、結局は身の程を巻きまえない男ということかしら?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「それに貴方。”異能者”狩りの時に発見されたみたいですけど、見た目から”異能者”そのもの。
チカラが使えないにしろクズの手で改造されているのだから死んだほうがいいのでは?」
結局は”異能者”改造を受けたのだからチカラがなくとも殺すべきだ。
一夏が救出されて以降、そういった輩は少なからず存在していた。
”異能者”が起こした事件のせいで、”異能者”は嫌われ者の烙印をおされている。それをきっかけに”異能者”狩りを行われたが、その背景にあったのは男の作ったものだと出来損ないと思い込んだ女性たちの考えがあった。
だがそう簡単に行く訳もなく、僅かに残った数人の抵抗により10人以上の歴戦のパイロットを失うハメとなった。
しかしISが負けたと報道するわけにもいけないため、”研究施設の爆発に巻き込まれ死亡した”とあくまで負けたわけではないと嘘を伝えたのが実態だ。
そして救出された一夏の存在をどうするかということで議論された中、先ほどの事を主張する過激派が存在した。
理由こそ、改造を受けたなら十分に”異能者”として覚醒する可能性があり、覚醒されると同じような事件が起きるかも知れないため、亡くなってもらったほうが今後のためだというところだが、
結局のところ今の地位にとどまりたいが故の行動だった。
今では、堂々と発現するのはいないが、目の前の女子のようにいなくなったわけではない。
「だからどうしたって言うんだ?あんたに命令される筋合いはないはずだ」
「貴方・・・誰にそんな口聞いてるのか理解してますこと?」
気に入らないと言いたそうに眉に皺を寄せ一夏を睨む。
一夏からすれば、勝手に声をかけてきていい迷惑でしかない。
「男が弱いのはISが使えないからなんだろう?でも俺はISを使える。俺とあんたは同格じゃないのか?同じ専用機持ちだ」
「どうせ専用機を持っているだけで実力などないのでは?ニュースでは篠ノ之博士の贔屓があるようにしか思えません。ISを汚さないでくれます?」
「・・・・・・おい、弱い犬ほどよく吠えるって言葉知ってるか?」
「あ、あなたねぇ・・・!!」
日本語をスラスラと喋れるだけあり、その言葉は知っていたらしい。
言うまでもない。口だけうるさい人物に向けて使う言葉。
つまり、侮蔑。
「俺はあんたが誰だろうと関係ないんだ。ただな、俺の家族には誇れる最強がいるんだ。千冬姉さんはあんたらIS乗りを侮蔑したか?努力を全否定したか?言わなくても分かるな?何も行っていないだろうが。千冬姉さんはどんなに強くても力を振りかざすことなんてしなかった。だからあんたにはその言葉がお似合い・・・ついでに脳ある鷹は爪を隠すという言葉も送っておこうか?」
「男のくせに!調子に乗って!!」
「事実を述べたに過ぎないんだが。それにあえて言わせてもらおう。調子に乗っているのはあんただ」
「ッ!?」
一夏に高圧的な態度を撮った女子は戦慄することを初めて覚えた。
日本人離れしたその冷たい紅の瞳に見られて、体が硬直したように動けない。
怖い、怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。
心の中をそれだけが埋め尽くす。
その無機質に感情が込められてない瞳が伝えてくる。
―――――無能が。大して強くもないのに良くもそんなことが言えるんだな、と
15歳そこらの子供ができるような目ではない。
汚れ、汚さ、無情さ。
この世の裏を知りきったような、自分とは住んでいる次元の違いを見せつけてくる。
この男は自分よりも強い。
認めたくないことを、認めてしまうようなあまりにも冷たすぎる瞳だった。
そんな無言を破ったのは予鈴のタイム。
「っ!逃げるんじゃなくてよ!」
硬直からとけた女子はそれを言い残すと逃げるように一夏のそばから立ち去る。
「子供だな」
力を手にして、強くなった気でいる、そんな子供のようにしか一夏からすれば見えなかった。
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