IS あの空もきっと蒼い   作:AK74

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 第三話

「一夏。時間だ」

 

 自身の姉がかけてきた声に頷き、閉じていた紅い瞳を開ける。

 目の前には唯一の家族である千冬の姿。

 そして幼なじみらしい篠ノ之箒がいた。

 人体実験のせいで記憶があやふやだが、剣道が限りなく強かった少女だ。

 

「あぁ」

 

 言葉少なく立ち上がる。普段の何にも興味に示さない姿からは想像もできないほど、静かな威圧感を放ち、その瞳は強く光っている。

 まるで”死と隣り合わせの戦場”に行くかのようだった。

 それは、どちらがクラス代表になるかを決めるだけの戦いを超えている。

 

「オルコットは既に待機している。後はお前が出ればすぐにでも始められるそうだ。いけるな?」

 

「・・・・・・・・・無用だ」

 

「そうか」

 

 千冬は一夏を見て複雑そうな顔をする。

 一夏と再会できてから彼女は、千冬の中の一夏とのズレに困惑したものだ。明るく純粋で、小さい腕を振ってトコトコといつも後ろを歩いてくる、たった一人の可愛い弟だった。

 だが7年という歳月が、目の前で慕っていた大切な人を失うという出来事が、一夏を豹変指せてしまっていた。

 笑わなくなった。人と関わらろうとしなくなった。口数がほとんどなくなった。

 どうにか、人と少ないにしろ会話できるようにまでなったが、失声症で人を近づけようとしなかった頃と比べればずっとましにはなったが。

 そして大きく変わったこととして、今の一夏の状態が1つ挙げられる。

 試合などの戦いをする場面では同一人物か、というほど豹変する。

 それがわかっているからこそ、何一つとしていうことはないが、やはり昔の一夏と比べてしまうのが悪い癖だった。

 

 対する一夏は、そんな千冬を気にも止めずに自身のIS、篠ノ之束によるワンオフを展開する。

 一点の曇りも感じられないほど、眩しいなまでに白いISを一夏は身に纏う。

 ISに感じられないフルスキン装甲。

 普通ならば、アンロックユニットのはずのブースター。

 その顔はフルフェイスに隠され見えず、横一列にに蒼いカメラアイが取り付けられている。

 異質な雰囲気を放つそのISの名前は

 

 

 

―――――白い閃光(ホワイトグリント)

 

 

 

「い、一夏」

 

 今まで黙っていた箒が口を開く。

 ISなのだからわざわざ振り向かなくてもいいはずだ。だが一夏は振り向き、紅い瞳と対照的な蒼いカメラアイで箒を自身の視界に捉える。

 

「頑張れ・・・・・・」

 

「心配無用だ」

 

 箒が次の言葉を紡ぐ前に一夏はアリーナへと飛び立つ。

 そんな一夏の姿を呆れながら千冬は眺めていた。

 豹変しきった”弟”を。

 

 

 

 

 

 

 約20m先にいる俺の敵を視界に捉える。

 システムには異常なし。最高のコンディションだと言える。

 

「それが貴方のISですか・・・・・・・・・」

 

 オルコットが俺のISを見てそうつぶやく。自身のISの常識とかけ離れているホワイトグリンド が気になるのだろう。そうそうフルスキン装甲などない。

 だがこのISをオルコットが纏っているような”出来損ないのと同じにされたくはない。

 しかし今ここでそんな感情など必要ないのだ。

 

 オルコットを倒す。今はそれだけでいい。

 

「不満か?」

 

「あ、い、いえ・・・・わたくしの知っているISというものとかけ離れえているものですから。不思議

なんですね・・・その機体は」

 

 自分のISの常識と違うものだからすぐに受け入れることが出来ないらしい。幾分か性格は良くはなってきたが、そういう所はまだまだのようだ。

 不愉快だ。本当のISも知らないくせにそう言われるのは。

 

「うるさいぞ。本当の戦場なら死んでいる」

 

「・・・・・ッ、何をおっしゃっているんですの・・・?ココは戦場ではありませんわ。それにISには絶対防御もありますか―――――」

 

「そんな程度で操縦者か。絶対防御があるからと言ったな。忘れたのか?ソレを破壊するためだけに創られた存在を、な」

 

 思い出したのか、驚きに目を見開く。

 

「”異能・・・者”!!」

 

「そうだ。”異能者”は絶対防御を容易く貫ける。お前みたいな考えを持っていたからこそ、30人以上の腕のいいパイロットが死亡し、4つのコアを破壊した。ソレに乗っていれば絶対防御があるから死なない。5~6機で国を滅ぼせる兵器を扱うのにそんな考えがあっていいのか?」

 

「そ、それは・・・」

 

「人を殺せるということは、自分も殺されることもあると覚えておけ。その覚悟を持たなければソレに乗るのはやめろ。エネルギーが尽きればただの鉄塊だろう?」

 

 本物の戦場を知っているがゆえに言える事。死が目の前に迫る一歩間違えれば、未来が潰えるそんな場所。目の前のオルコット(死を知らない子供)には到底理解できないだろう。

 あれは経験した者でなければ理解できない事だ。

 今は知らなくてもいつかは知ることになる。兵器を扱っているのだから当たり前だ。

 

「それに俺は”異能者”に限りなく近い存在。無論本物の戦場も知っている。だからこそあえてキツイ事を言わせてもらった。無理があるかもしれないが気にしなくていい。素人と同じにして欲しくないだけだ」

 

「・・・・・・そうですか。そうですわね。大切なことを学ばせてもらいましたわ。ありがとうございます」

 

 オルコットの目が閉じられ、次に開けられたときには戦う意思が溢れた目に。

 本気になったか。

 なら、1つ言わせてもらおう。

 

 試合開始のブザーが鳴る。

 

「ホワイトグリントをそこら辺のと同じにするな」

 

 先手必勝と言わんばかりにオルコットが、手に持ったレーザーライフルで狙撃してくる。

 だがそれをよけずにワザと当たる。

 威力を調べる為だ。

 

「なっ!?ダメージ・・・無し!?」

 

 調べるまでもなかった。

 このホワイトグリンドのみに搭載された、シールドバリアーとは別の特殊シールドに阻まれ、そのレーザーは届くことなく消滅した。

 弱い。ただそれだけ。

 BT兵器と聞き期待はしてはいたが、期待は悪い方向に裏切られた。

 こんな出力でよくBT兵器搭載の三世代といたものだな。

 この程度などこの機体に搭載されているレーザー兵器の半分、いやそれ以下だ。

 

 本当のエネルギー兵装を見せてやる。

 

 背中にハイレーザーキャノンを二つ展開。

 そのままロックし放つ。

 

「ッ!?」

 

 自慢の武器が通用しなかったことに驚いていたオルコットは避けることもできず直撃。

 ブルーティアーズというらしい機体の装甲は、直撃部位は吹き飛びその周囲も高出力のハイレーザーの熱で融解しかけていて、あまり使えそうにもない。

 

 脆い。

 

 こんな程度でISを名乗っているのか。こんな程度のモノがアイツの望んだ夢なのか。

 

「なんなんですのその馬鹿げた威力は!?」

  

 気に食わない。

 

「何を言っているんだ。このホワイトグリントを作ったのは誰だ?」

 

 そんな出来損ないの機体ごときでISを名乗るな。

 

「・・・・・・・篠ノ之・・・・博士・・・!」

 

 アイツの夢だったISを穢すな。

 

「そうだ。言っただろう?そこらへんのと同じにするな、と」

 

 穢されたもののせいで、俺は人生を狂わされたのか。

 

「いい機会だ。お前に」

 

 

 いいだろう。

 

 

――――本物の戦いを教えてやろう」

 

 

 

 ”本物のIS”を見せてやる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オルコットとの試合を終わらせピットに戻ると、険しい顔をした千冬姉さんがいた。

 多分、試合中に俺が言ったことが原因だと思う。

 俺が椅子に座り、ペットボトルを渡してきてからしばらく。

 

「一夏。なぜあんな事を言った?」

 

 予想通りだ。

 あいにく篠ノ之はこの場にはいない。

 

「あんな事って?」

 

「とぼけるな。なぜ今更”異能者”の名前を持ち出した?一夏、お前は・・・・・・お前はもうそれにしばられなくてもいいだろう?」

 

「千冬姉さん。悪いけどソレは違う。俺は救い出されたのは確かだけど、絶対に変えられないんだ。

俺が”異能者”って事には、さ」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「どんなにもがいても、情報を消しても、俺には死ぬまで”異能者”の肩書きがつきまとってくる。

それに俺はこの手で”人を殺した”。能力でな。沢山の命を奪っておいて、俺だけ逃げるなんてできることじゃないんだ」

 

「やめろ一夏」

 

 静止の声がかけられるが止めたりなどしない。

 ソレは俺の罪なんだから。

 

「・・・・・・・・無理なんだ。俺はその現実から目を背けるほど強くない。俺が逃げるまねをしちゃ駄目なんだよ」

 

 そう言い終えるとピットから出るために立ち上がる。

 とても居づらい雰囲気になった。

 千冬姉さんが言いたいことは嫌でもわかる。

 俺を守りたいんだろう。”異能者”だったことを忘れさせて、少しでも日常と言うモノになれてもらおうとしている。

 でもソレは無理だ。戦いに生きるものは戦いにしか生きられないという、ルールでも約束でもない現実が俺にはあるから。

 それに俺は長くはないから、なれてもすぐに死ぬことになる。

 残された者がどれだけ辛いか身を持って経験しているからこそ、このままの方がいい。

 俺にはこれ以外の選択肢などない。

 

「・・・・・・・一夏」

 

 振り向く。

 

「疲れただろう、ゆっくり休むといい。明日は休みだ」

 

 俺は

 

「あぁ」

 

 とだけ返事をする。

 ソレは不器用な姉の気使いだとわかったから。

 

 

 

 

 

 

 

 

「やあ。初めまして織斑一夏君」

 

「・・・・・・・・・・・どうやって入った」

 

 大量の女子からの質問攻めで疲れたため、部屋に帰って休もうと思っていたんだが、思わぬ来客が部屋にいた。

 一人部屋になったから静かに休めると思ったのに。

 

 ・・・・・・・・・・鍵は閉めたはずなんだがな。

 

「おねーさんにはあんな程度の鍵なんて、ちょちょいのちょいよ?」

 

 扇子を出してウザイ笑顔を作るこの女は無視して、無言で携帯を取り出す。

 

「無視なんておねーさん悲しい―――――」

 

「もしもし、千冬姉さん?部屋に不h―――――」

 

「わああああああああ!!??ストップ!!ストーーーーーーップ!!!」

 

 問答無用で携帯をむしり取リ、ぶち切りして電源まで落としやがった。

 

 ちなみに、電話先は俺の家であって決して千冬姉さんではない。

 

 ・・・・・・・・・恐るべし。名前を出しただけでこうもなるとは。

 

「くっ・・・!貴方が初めてよ。ここまで私を追い込んだのは・・・・・・」

 

「はい、そうですか~それは良かったですね~」

 

 ぱちぱちぱち

 

「・・・・・・・・へっ?」

 

 目の前の女の首根っこをつかみあげる。突然だったから分からかったのだろう、抵抗はない。

 そのまま部屋のドアまで歩くとソイツを蹴飛ばすように部屋からたたき出す。

 

「帰れ」

 

 思いっきりドアを叩きつけるようにしめる。

 一件落着。

 後は部屋の鍵をどうにかするだけだな。

 また来られたらたまったものじゃない。

 トラップを仕掛けるという手もあるにはあるのだけれども、俺が不便になる。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「ちょっとこれはないんじゃ―――――ッ!?」

 

 ドアを蹴飛ばして(破壊してたら昇天させていた)ISを展開し青筋を浮かべていた、女の顔が一瞬にして青ざめる。

 

「予想済みだ」

 

 ホワイトグリントを部分展開し、右腕に腕部用レールガン左腕にはサプレッサー装備のマシンガン、背中には30mm口径ガトリング砲(3000/S)とデュアルハイレーザーキャノンに肩にはASミサイルポットを女に向けて構えたからだ。

 そのうちガトは砲身回転済み。

 正直、こうなるのは分かっていた。

 

「あ、ああああ、あ、あの・・・・・・ね?流石に撃ったりはしないわよ・・・・・・ね?か弱いおねーさ―――」

 

 プスッ!!

 

 ためらわずにマシンガンを発泡。狙いはこの女の顔のすぐ横。

 ためらう必要はどこにもない。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(汗)」

 

 余談だが、この女はこの時本気で死を覚悟したそうだ。

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